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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

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空賊連合(11)

 ベルシを殴り倒したフミコだったが、即「ばっちい、ばっちい」と言ってベルシを殴った手をアルコール消毒していく。

 そして次にベルシに触れられた頬を消毒液をしみこませた布で拭くと乱雑にぽいっと捨てた。


 そして武器を銅剣から銅戈に持ち替え、大きく振り上げると殴り倒したベルシに向かって一気に振り下ろす。


 「よくもかい君が見てる前で臭い息吹きかけながら近寄ってきやがったな、この変態め!! くたばれ!!」


 銅戈が倒れているベルシへと振り下ろされるが、ベルシはこれに気づき、慌てて赤紫色の靄を発生させてその場から姿を消す。


 ベルシが消えた床に銅戈が叩きつけられ、ガシャン!と大きな音が鳴った。


 「ち!! 逃げられた!?」


 フミコはすぐに周囲を見回す。

 すると少し離れた場所に赤紫色の靄が発生し、その中から勢いよくベルシが出てきて床に倒れ込んだ。


 「がはぁ!!」


 そしてベルシは口から血を吐き出す。

 床にぶち撒かれた血の中には歯が数本混じっていた。

 それほどまでに、さきほどのフミコのパンチが効いたという事だろう。


 「ぐ……なぜだ!? バカな!? そんなはずは!!」


 ベルシはフラフラしながらもなんとか立ち上がるが、信じられないといった表情を浮かべていた。

 それを見ていたフミカは、鼻で笑うと固まって動かなくなった触手を軽く蹴る。


 「ざまぁないね」


 すると触手は脆く崩れ去った。


 それを見て、こちらも目の前の動かない触手を蹴ってみる。

 呆気なく、触手は粉々になって崩れ去った。


 「こいつは……」

 「魅了(チャーム)を破られたからだよ」


 フミカはそう言ってベルシを見る。


 「言ったでしょ? ベルシの能力は魅了(チャーム)のコンボ数と連動してる。コンボの数が増えるほどベルシの能力は増すけど、逆に言えば魅了(チャーム)に失敗してコンボ数がリセットされれば能力値も大幅にダウンするのよ。言ってしまえば弱体化だね」

 「そうか、フミコに魅了(チャーム)が効かなかったから」

 「えぇ、コンボ数がリセットされたわけだ。でもマヌケだよね? 魅了模造(デミチャーム)なんて新技を自慢げにさっき言ってたのに、それを使わずコンボ数を失うなんて……まぁ、大方フミコの態度を見て、魅了(チャーム)で堕とせてコンボが稼げるとでも思ったんでしょ」


 フミカは哀れな生き物を見る目でベルシを見るが、当のベルシは忌々しそうにこちらを睨んでいる。

 自信満々で堕としにかかったら殴られたんだ、ベルシからしたらプライドを傷つけられたとか思ってるのかもしれない……


 何せよ、フミコが根拠もなく自分は魅了(チャーム)にはかからないと言っていたのが証明された。

 自分も慢心に繋がるから口にしなかったが、ある理由からフミコは大丈夫ではないか?と思っていたのだが、その通りだったようだ。


 コンボ数もリセットされたという事はこれで魅了(チャーム)の脅威は実質なくなったと思っていいだろう。



 ……しかし、本当にそうだろうか?

 ここで魅了(チャーム)に対して警戒を解くのは、それこそ慢心に繋がらないか?

 疑うのはよくないが、そもそもフミコは本当に魅了(チャーム)にかからなかったのか?

 もしかしたら、すでにフミコはベルシの手に堕ちているのではないのか?


 フミコとベルシの目が合った時、一瞬フミコは硬直した。

 そして頬に触れられ、腰に手を回されるまでベルシの接近を許した。


 もしかしたら、あの硬直した時点で魅了(チャーム)によってフミコは堕とされており、ベルシがフミコの腰に手を回して接近した時に、自分やフミカには聞こえない小声で自分を殴るよう指示を出していたかもしれない。


 魅了(チャーム)にはかかっていないという演技を見せて、こちらの油断を誘っているかもしれない。


 疑心暗鬼になると、仲間との関係がギクシャクして連携がうまくいかなくなる。

 信用しきれないでいると、信頼性が揺らぎ、結果ベルシのような相手に付け入る隙を与えてしまう。


 あまり気は進まないが、調べたほうがいいだろう。

 いままで鑑定眼で仲間のステータスを覗いた事はなかったが、確認のためには仕方がない……


 信用してないわけではないが、慢心しないためにも致し方がない事、これは安心のためにもやらなければならない事だ。


 そう自分に言い聞かせてフミコを鑑定眼で覗き見る。


 うむ、フミコのステータスに、アンリやチャームに見られた状態異常「魅了」「洗脳」「混乱」の文字はなかった。

 フミコの状態は正常、何より慢心になるため自分が口にしなかった、フミコは魅了(チャーム)にはかからないだろうと思った要因もちゃんと表示されていた。


 ならば安心しても大丈夫なはずだ。

 しかし、常に最悪の事態は想定しておくべきだろう。


 鑑定眼はヨハンから奪った能力であるが、ヨハンによれば鑑定眼対策でフェイクのステータスを相手に見せる術もあるのだとか……


 あの一瞬でベルシが堕としたフミコから鑑定眼の事を聞き、フミコにフェイクのステータスを用意するよう指示が出せるとは思えないし、フミコにフェイクのステータスを即用意できるとも思えないが、こちらの油断を誘うため魅了(チャーム)にかからなかったフリをするのなら、そこまで徹底するはずだ。


 しかし、そうなると鑑定眼で覗き見れるステータスの偽装を暴く手段を自分は持っていない。

 金銀錯嵌珠龍文鉄鏡を使ってみる以外に手がなくなってしまう、どうしたものか?


 そして、ベルシが使えるのかはわからないが、可能性として最も怖いのがフミコが何かしらの暗示をかけられているケースだ。


 ベルシの魅了(チャーム)は具体的には混乱状態下での洗脳という形式らしい。

 一方で自分の呪いの鏡は催眠術の類に近い。


 洗脳も催眠術も似たカテゴリーに属するが、洗脳は相手の思考を改竄、改造するという特徴を持っている。

 下手をすれば対象の記憶にすら手をつけて書き換えるのだ。


 そうなると、洗脳された人間は誰から見ても洗脳した人間の都合のいい駒となる。

 変化が周囲からはっきりと認識されるのだ。


 一方で催眠術は勘違いされがちだが、完全に術者の意のままにできるというわけではない。

 これは催眠術にかけた相手が自分が恥ずかしい、やりたくないと思う事は催眠状態になっても絶対にやらないからなのだが、だからこそ苦手を催眠術で克服する! というテレビでよく見るあれを実際にするには相当な時間と手間をかけなければならない。


 これを短時間で行うために非合法な薬などが使われたりもするのだが、洗脳が思考を改竄、改造するのに対し、催眠術は思考を上書きするのだ。

 やり口は違えど、これも洗脳と同じく変化が周囲からはっきりと認識される。


 では、どちらにも共通している技術で最も厄介なのは何か?

 それが暗示だ。


 暗示はかけられている事に周囲が気付きにくい。

 当然である、何せ暗示は仕掛けた術者が望むその時まで意識の奥底に潜伏しているのだから。


 普段と何も変わらない相手を誰も暗示にかけられているかも? と疑ったりはしないだろう。

 だからこそ、暗示はその瞬間まで誰も気付かない。

 かけられた本人も、周囲の人間も誰も……


 だからこそ暗示は潜伏的脅威なのだ。

 洗脳や催眠術のような厄介だがわかりやすい術と違うのだ。


 暗示は洗脳や催眠術のように相手を完全に支配する必要はない。

 ただ適切な時期に特定の行動を起こさせるように仕向けたり、誘導すればいいだけだ。


 だから本人も周囲も気づけないし、疑えない。

 そして、その行動を起こさせるタイミングも暗示をかけた術者が近くにいる必要はない。

 特定の時間や特定の場所、特定の音や、特定の言葉、特定のシュチェーションに反応してかけた暗示が発動するようにすればいいだけだ。


 だから直前に術者が怪しまれる行動を起す必要はない。

 これが厄介さを増している。


 つまりは術者が周囲にいない以上は暗示をかけられた本人を止めるしか術がなくなるのだ。

 そして誰が暗示にかけられているかなど、その時が訪れるまでわからない。


 自分も暗示をかけられているかもしれないし、周囲の全員そうかもしれないと疑心暗鬼になってしまう。

 これこそが暗示の厄介な点だろう。


 術者は何か手を出さなくても、暗示の脅威に気付いた相手が勝手に精神的に消耗して潰れてくれるのだから……


 (フミコが暗示にかけられていた場合、裏切る意思も素振りもなく突然攻撃してくるフミコの一撃をオートシールドモードで防げるか? ……どうだろう?)


 オートシールドモードは万能ではない。


 魔術障壁はケースによってその強度や形を変えられるが、オートシールドモードは攻撃を自動検知し、自分の意思とは関係なく勝手に発動する。

 そのため、その時々に適した強度や形の魔術障壁を発動できない、あらかじめ決められた強度の魔術障壁を自動で発動するわけである。


 だから攻撃を検知し、発動しても100%攻撃を防げる保証はないのだ。


 (オートシールドモードではもしもの時に心許ないな……体に負担が大きいからあまり使いたくはないが、アストラルシールドを発動しておくか)


 そう考え密かに術の発動に取りかかる。


 意識を体の内側に集中して、アストラル体を活性化させる。

 そうして自分以外には認識する事ができない、視認できないオーラが自身の体を包み込んでいく。


 それは上級クラスの魔術障壁であり、フミコやケティーに話した事も見せた事もない技、アストラルシールドだ。

 何せこの技は術者にしか視認する事ができないうえに体への負担が大きい。

 なんとも扱いに困る、どうにも説明しにくい魔術障壁なのだ。


 だからこの技の存在を知っているのは自分だけ、仮にフミコが魅了で堕とされていて、演技でかかっていないフリをしており、こちらの油断をついて攻撃してきても、または暗示によって突然攻撃を仕掛けてきてもアストラルシールドの存在を知らない以上、この技を突破する攻撃は放てないだろう。


 そんなアストラルシールドを発動し、改めてベルシを見る。

 ベルシは魅了(チャーム)を破られた事に動揺していたが、やがてその顔に怒りを滲ませる。


 「くそ! ここまでせっかく稼いだコンボが水の泡だ!! なんという事を!! 僕のこれまでをどうしてくれるんだ!? えぇ!?」


 そう叫ぶベルシはさきほどまでと違って余裕がないように思えた。


 「どうして!? なぜだ!? なぜ僕の魅了(チャーム)が効かなかった!? フミカのような自信満々の態度を見せていなかったのになぜ!? 確実に堕とせそうな雰囲気なのになぜ!?」


 ベルシはそうヒステリックに叫ぶと醜い面構えでこちらを向き、自分を指さしてきた。


 「貴様!! 一体どんなイカサマをした!? こんな事はありえない!! どんなこざかしい真似をした!? このような侮辱は断じて許されないぞ!?」


 そう叫ぶベルシを見て思わずため息が出た。

 まったく哀れで仕方がない。


 「どんなイカサマだ? は! てめーがただ単にフミコに拒否られただけだろ、侮辱もクソもねーよ! このクズ野郎! 妄想に浸ってないで少しは現実を見たらどうだ? それがてめーの限界だ」

 「貴様……誰に対してものを言ってやがるっ!!」


 ベルシが怒りで顔を真っ赤にさせて叫んだ。

 しかし、次の瞬間、広間全体がズシン!と大きく揺れる。


 「な、なんだ!?」

 「っ!! これってまさか!!」

 「わ!? な、何!?」


 転ばないように足元に意識を集中して周囲を警戒する。

 フミカは心当たりがあるのか、忌々しそうにある方向に視線を向ける。


 フミカが視線を向ける先は広間の壁であったが、その向こうからズシン、ズシンと振動が近づいてくる。

 そして、ドーン!という大きな衝撃音と共に広間の壁が砕け、その砕けた壁の向こうから大男が姿を見せた。


 「うわ!? なんか出た!?」

 

 思わず大男を見て口にしてしまったが、そもそも空賊どもはシャイニングバインドでさきほどベルシ以外まとめて倒したはずである、まさか取りこぼしがいたのか?

 そう思ったが、フミカが舌打ちしながら大男を見てその名を口にした。


 「筋骨隆々……鉄鋼ボディーのゾルダ。また面倒なのが」

 「知ってるのか?」

 「知ってるも何も、あいつもベルシと同じく空賊連合の幹部よ……ベルシとは別の派閥のトップ」

 「……マジかよ」


 まさか空賊連合の幹部が2人もこの場にいるとは……そりゃシャイニングバインドに引っかからなかったわけだ。


 壁を砕いて広間に入ってきた大男は鉄鋼ボディーのゾルダというだけあって、まさにその体は筋肉の塊であった。


 上半身は服を着ず、その筋肉を周囲に見せつけている。

 一様両肩にはトゲトゲの針の装飾がついたアーマーを取り付けているが、それだけだ。


 またズボンにもトゲトゲの装飾が施され、ベルトもトゲがまきついたものとなっている。

 そしてその素顔はトゲトゲが施された鋼鉄のマスクによって拝むことはできないが、鋭い眼光だけは威圧感をもってこちらを覗いているのがわかる。


 なんというか、世紀末な世界でヒャッハー!してそうなお方だ。

 これでバイクでも乗ってたら言うことなしだろう。


 そんなゾルダは酷い面構えのベルシを見ると肩を震わせて笑う。


 「おいおいおい! なかなか愉快な面構えになってるじゃねーかベルシよぉ? 空の貴公子さまらしいぜ!」


 そんなゾルダをベルシは侮蔑の眼差しでもって見上げる。


 「邪魔するなよゾルダ。お前に加勢を頼んだ覚えはない」

 「おいおいおい! つれねーな? こんな笑える状況になって何意地をはってやがんだ? あぁ?」


 ゾルダの言葉にベルシは舌打ちするだけで反論しない。

 それをどう受け取ったのか、ゾルダは肩を震わせて笑う。


 「いいからひっこんでろ! ベルシ、お前の出番は終わったんだよ。さっさと本拠地(ホーム)に帰ってお気に入りの女にでも慰めてもらえよ? なんなら広場で公開赤ちゃんプレイでもやってろ」


 そう言うとゾルダはこちらを向いて拳と拳を突き合わせ、上半身に力を溜める。


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 圧倒的威圧感がこの場を支配した。

 そしてゾルダは突き合せていた拳を離すと、こちらを睨んでくる。

 どうやら自分に照準を定めたらしい。


 「ベルシよぉ、お前の魅了(チャーム)を使って女を堕とす陰湿な趣味に口出しする気はねーがな? 男がいる女を効率よく堕とす方法を教えてやるよ!! それはなぁ!!」


 ゾルダは叫ぶと、床を蹴って駆け出す。

 が、一瞬にしてその姿が消えた。


 「な!?」


 そして、次の瞬間には目の前にゾルダが現れ、自分に向かって強烈な拳を放っていた。


 (速い!!)


 「男を女の前でボコって!! その後女もボコって言うこと聞かせんだよ!!」


 回避不能なそのゾルダの拳が目の前に迫ったその時、広間内に爆風が吹き荒れた。




 今からほんの少し前、コーサス要塞郡で最も南西に位置するギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>に割り振られた最果ての小砦。


 カイトの錬金術で装甲車両に改造されたトロッコが救援のためギルド<ザ・ライジン>の小砦に向かって行ったため、何もない状態となった駅ではアンリとチャームの死体が布に包まれて線路から離れたところに安置されていた。


 いくら空賊連合に寝返って敵となって現れた2人とはいえ、元はと言えばベルシの魅了(チャーム)で堕とされてそうなったのだ、自らの意思でギルドユニオンを裏切ったわけではない。


 なので、ドルクジルヴァニアに戻ったら墓を作って弔ってやりたいと考えたのだ。

 とはいえ、フミカ以外はこの2人の事をギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>の面々はよく知らない。

 なので死体の安置場所など扱いに少し困っていた。


 そんな駅でココとTD-66は地下坑道の先を見て警戒をずっと続けていたのだが、やがてココがあくびをすると。


 「カイトさまがいなきゃココ退屈で死んじゃいそうです」


 そう不満を漏らした。

 しかし、隣のTD-66はそもそもリーナ以外の相手とは必要がない限り会話をしない。

 それはTD-66がリーナの警護ドロイドなのだから当然なのだが、それ以前に隣のココは人間ではなくギガバイソンだ、会話をする必然性も見当たらないという事なのだろう。


 そもそもココが(無理矢理)仲間になったのも昨日と、お互い信頼関係がまだ出来上がっていない状態だ。

 TD-66としてはココの漏らした不満に何か返答する必要を感じないのだろう。

 ここにリーナがいれば違った結果になったのだろうが、安全確保のためリーナは今エマと一緒にケティーとリエルのいる警備コントロール室にいる。


 なのでココは唇を尖らせて。


 「カイトさま~♪ カイトさま~♪ はやくココを抱きに戻ってきて~♪ ココはいつでもウェルカムで~すよ~♪」


 と謎の歌を口ずさみだした。

 魔物であるギガバイソンがはじめて人型となり、たった1日で野生の魔物にはない文化である歌を口ずさむという行為をやってのける。


 学術ギルド<アカデミー>の学者たちが見れば涎を垂らして観察、研究したい光景だろうが、やはり隣のTD-66は無反応だ。

 リーナに関する出来事以外は記録媒体に映像保存しないし、する価値もないと思っているだろうから、この出来事は誰にも認識される事はないだろう。


 そんな、何とも見ていて反応に困る光景の中、突如ココの全身に衝撃が走る。


 「っ!!」


 ココは驚いた顔になってワナワナ震え出すと。


 「これは……まさかカイトさまに危機が迫ってる!?」


 そう言って、意識を耳へと集中させる。

 そして人間では決して真似できない恐るべき聴力で持ってこの地下坑道の先、カイトが救援に向かった小砦の様子を探る。


 「これは……大変!! カイトさまに危険が!! 危ない!!」


 そしてカッ!と目を見開くと、ココは姿勢を低くし。


 「待っててカイトさま!! 今カイトさまのココがカイトさまを助けに行きます!!」


 そう叫ぶと恐るべきスピードで地下坑道の先へと駆けだしていった。


 「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! カイトさまぁぁぁぁぁぁ!!!」


 TD-66が何か言う間もなく、その姿は一瞬で地下坑道の先の漆黒の闇へと消えてしまった。



 地下坑道内を走るココはその姿をギガバイソンに戻し、更にスピードを加速させる。

 一瞬にしてギルド<ザ・ライジン>の小砦の駅に辿りついたココは、ギガバイソンの姿のまま砦内に突入し、階段を駆け上がるなんて事をせず、天井をぶち抜いて広間へと飛び出すと、その姿をギガバイソンから人間へと変化させる。

 そして、今まさにカイトを殴りつけようとしていたゾルダに向かって一気に駆けだし。


 「カイトさまに何しとんじゃこのヒューマン風情がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 怒りのボディーブローをその筋肉ムキムキマッチョマンな鉄鋼ボディーのゾルダご自慢の鋼の腹筋に叩き込む。


 「ぐひぁがぁぁぁぁぁぁぁ!? な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ココのボディーブローをくらったゾルダはカイトに拳を叩き込めず、断末魔の叫びをあげた。

 ゾルダの腹はココのボディーブローによって吹き飛び、血と内蔵が勢いよく飛び散る。

 そして上半身と下半身に別れてゾルダの体は吹き飛んでいき、それぞれが壁に激突した。


 そのあまりの勢いでゾルダの上半身と下半身はそれぞれ壁にねじ込む形のオブジェとなってしまった。

 見る人が見れば思わず吐いてしまう光景だろうが、ココは気にせず拳を収めて軽く深呼吸をする。


 そんなココの背後に新たな大男が現る。


 「てめー!! よくもボスをやりやがったな!!」


 ゾルダのような大男は叫んで、その巨腕で持ってココに背後からラリアットをかまそうとするが。


 「ふんっ!!」


 ココは特に何かするでもなく、ラリアットをかまそうと背後からせまってくる大男の顔に向かって裏拳を放つ。

 すると。


 「ぐじょぼぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 ココの放った裏拳は大男の顔面に直撃し、その顔を粉々に粉砕、破壊した。


 ココの裏拳が決まり、顔の表面が陥没して目玉や血が飛び出し、粉々に砕け散った骨が肉を斬り裂いて飛び出し、脳が飛び散る。

 まさにグロ注意な光景である。


 頭部がグロッキーなミンチ状態となって失われた死体はそのまま後ろへと吹っ飛んでいく。

 一瞬にして広間に現れ、瞬殺で2人の大男を屠ったココは「ふぅ」と一息つくとカイトのほうへと振り返り。


 「カイトさま!! ココ、カイトさまの事が心配で駆けつけちゃいました!!」


 そう笑顔で言ってのけたのだった。

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