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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

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空賊連合(9)

 地下坑道内を装甲車両が爆走する。

 そのスピードはあまりに速すぎるため、2つ3つほど小砦を一気に通過した。


 目的地のギルド<ザ・ライジン>の受け持つ小砦に近づくと、予想通りギガバイソンたちが一気にこちらに向かって群れをなして走ってくる。


 「きたぞフミコ!!」

 「了解だよかい君!!」


 フミコが装甲車両の天井から上半身を出して枝剣を構える。


 「いっけぇぇぇぇぇ!!」


 そして枝剣を突き出し6匹の大蛇を出現させる。

 爆走する装甲車両から放たれた大蛇たちは迫るギガバイソンたちを次々となぎ倒していく。


 「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 そして、そんな大蛇を逃れたギガバイソンたちに向かって自分はXM806重機関銃をぶちかましていく。

 大蛇が蹂躙し、それを逃れたものを銃弾が襲う。


 ギガバイソンたちの悲鳴と銃弾の音が地下道に響き渡る。

 そうして装甲車両が通過した後には大量のギガバイソンたちの屍の山ができていった。


 「まったく、あれだけの死体が地下道に残されたんじゃ、後の片付けが大変だな!!」

 「ギガバイソンのフルコース料理がいっぱい作れていいんじゃない?」

 「確かに! でもあいつらもベルシに操られてるんだろ? だったらその肉食うのはまずいんじゃね?」


 フミコは大蛇を放って、自分は銃をぶちかましながらそんな会話をしていると、装甲車両を操縦をしているフミカがため息交じりに。


 「あれだけの量、普通に今回参加してるギルドだけじゃ食べきれないよ? まぁあれを解体して食べるつもりならベルシは確実に倒さないとね。そうすれば赤紫色の靄もギガバイソンの体内からは消えるでしょ」


 そう言ったので、フミコはますます気合いが入る。


 「だったら絶対にベルシってやつを倒さないとだね!!」

 「あぁ、そうだな!!」


 そんなフミコに自分も同意して、ドンドン銃撃をぶちかましていく。


 そうこうしているうちに装甲車両はいよいよ目的地のギルド<ザ・ライジン>の受け持つ小砦の駅の目前までやってきた。


 「見えた!! あそこだ!!」

 「ってかい君なんかいっぱいいるんだけど!?」


 フミコが叫んだ通り、ギルド<ザ・ライジン>の受け持つ小砦の駅には空賊たちが大量に群がっていた。


 砦内へと入る階段の入り口や線路の上、さらに地下道の幅いっぱいにまで空賊たちがびっしり密集している。

 まるで蜂の巣の中の群がる蜂たちを見てるような感覚だが、やつらこんな地下道で何してるんだろうか?


 仮にもうギルド<ザ・ライジン>の受け持つ小砦が陥落したのだとしたら、はやく次の砦に向かえばいいものをなぜ地下道でたむろしているのだ?


 そう疑問に思っているうちに装甲車両はドンドンと目的地に近づいていく。

 そしてやつらの発する声もだんだんと聞こえてきた。


 愉快そうに騒ぐやつらの声に混じって聞こえた女性の悲鳴で、ようやく状況が掴めた。


 「っ!! あんのゲスども!!」


 即座にXM806重機関銃を構えて銃撃を開始する。


 「くたばりやがれクソッタレ!! おぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 銃弾は愉快に声をあげてむらがる空賊どもを次々と撃ち殺していき、彼らはすぐにパニックとなった。

 そんな彼らに容赦なく銃撃を続けていく。


 「フミコ!!」

 「わかってるよかい君!!」


 フミコも試製3式軽機関銃を構えて銃撃を開始する。

 さきほどまでと同じく枝剣で大蛇を出せばすぐに、密集して逃げ場もない空賊どもを一網打尽にできるだろうが、そうしてしまうと彼らが強姦している女性まで一緒くたに殺してしまう。


 なのでここは大雑把に、でも慎重に空賊どもを殺す事ができる機関銃のほうがいいのだ。


 しかしXM806重機関銃と試製3式軽機関銃だけで片づけるには地下道にいる空賊どもは数が多すぎた。

 装甲車両が駅に止まるまでに連中をすべて撃ち殺せそうにない。


 そうなると、あの数の前で装甲車両を止める事になるが、そうすると即座に囲まれてしまうため、さすがに分が悪い。

 とはいえ一旦通過するにしても、その時に連中が強姦していた女性を轢き殺してしまう危険性もでてくる。

 一体どうすべきだろうか?


 しかし悠長に考えている暇はない。

 すぐにでも装甲車両は駅に到着する。

 ならば……


 「フミコ! それに車内にいるから大丈夫だとは思うけど一様フミカも! 一瞬目を閉じて耳を塞いでくれ!!」

 「何をする気!?」

 「いいから!!」

 「わかったよかい君」

 「まぁ目を開けてよくなったら言ってよ? さすがに目をつむったままじゃ操縦できない」


 そう言って2人は目を閉じて耳を塞いだ。

 それを見て懐からM84スタングレネードを取り出す。


 安全ピンを引き抜き、むらがっている連中の中心付近へと投げ放つ。

 そしてすぐに顔を伏せて目を閉じ、耳を塞いだ。

 自分を含め、フミコもフミカも銃の発砲音対策で耳栓をつけているが油断はできない。


 直後、M84スタングレネードが炸裂し、激しい閃光と爆発音を放つ。

 空賊どもに強姦されている女性をまずは救出しなければいけないため、敵を一時的に行動不能にする非殺傷兵器である閃光弾を使ったのだ。


 地下道が一瞬にして真っ白となり、空賊たちは誰もがうめき声をあげて倒れ込む。


 「フミカ!!」

 「わかってる!!」


 フミカは目をあけると装甲車両を停車させる。

 それと同時にXM806重機関銃を解除しアビリティーユニットにハンドガンの銃身を取り付けて、アビリティーユニット・ハンドガンモードを手にするとすぐに地面へと飛び降りた。


 スタングレネードによって行動不能にできる時間は大体45秒ほどだと言われている。

 その間に空賊どもが強姦していた女性を救助して装甲車両の中に避難させないといけない。


 ここからは時間との勝負だ。

 飛び降りる直前に全体像を見たが、かなり厄介な事になってる。


 (くそ!! 連中に強姦されてたのは全員で3人、間に合うか!?)


 一番近い場所にいる女性の元まで走っていき、その手を掴んで起こそうとするがうまくいかない。

 というか、この女性を起こして抱きかかえるなり、おんぶするなりして装甲車両まで走って戻っているうちに制限時間がきてしまいそうだ。


 (こうなったら形に拘ってる暇はない、とにかく装甲車両まで避難させる事を優先しよう!)


 そう思って女性を起こすのをあきらめ、その手を引っ張りながら引きずって装甲車両まで戻る事にした。

 こうすれば多少はスムーズに行くはずだが、この女性は空賊たちに服を破かれたり、脱がされたりしたのだろう、衣服はほぼ着ておらず、ほとんど裸の状態だった。


 そんな状態で走って引きずっていけば当然ながら体に擦り傷などが残る事になるだろうが、今は急を要する。

 申し訳ないが、あきらめてもらうしかない。

 すべてが終わったら死ぬほど謝るとしよう。


 1人を装甲車両まで避難させた時点でタイムリミットはわずかとなっていた。

 あと2人、今から助けに行けば確実に動けるようになった空賊どもに囲まれてしまう。


 自分だけならいいが、救助した女性も同伴となるとそういった状況はまずい。


 (くそ! どうする!?)


 焦ったところで足下に空賊どもが落したナイフなどの武器が転がっている事に気付いた。

 そして反射的に簡易錬成を行っていた。


 (うまくいくかはわからないが、迷ってる暇はない!)


 錬金術で無数に転がっているナイフなどから2本のワイヤーロープを生み出す。

 そしてそれを残る2人の女性へと投げた。


 成功するかはわからないが、直後に風の魔法を放ち、女性の体を軽く浮かせて、その体にワイヤーロープを巻き付かせる。

 即興でするには精密な作業が必要であったが、うまくいった。


 「よし!」


 そして一気にこちらへとワイヤーロープを引っ張る。

 2人の女性の体をこちらに引き寄せ、すぐに装甲車両に避難させた。


 「なんとか間に合ったぞ!」


 救助した女性を装甲車両の中にいたフミカに預けると、手にしていたアビリティーユニット・ハンドガンモードにアビリティーチェッカーを取り付ける。


 アビリティーチェッカーの画面上に浮かび上がった拳銃モードのエンブレムのスタイルの中からサブマシンガンスタイルを選択。

 するとハンドガンの周囲の空間に紫電が迸り、何もない空間に弾倉や銃床などの外装が半透明に浮かび上がる。

 やがてそれは完全に物質化し一気にハンドガンの元へとくっついていき、サブマシンガン、CZ スコーピオンEVO3 A1へと姿を変えた。


 CZ スコーピオンEVO3 A1を構えたと同時に空賊たちは次々と正気に戻っていく。

 そんな彼らに状況を理解し、体勢を整える時間を与えるわけがない。

 なので遠慮なく引き金を引く。


 「わるいな、さっさとベルシとかいうクズ野郎をぶっ倒しに行かないといけないんだ。だからてめーらにはここで即退場してもらうぞ!!」


 9mm×19mm弾が復活したばかりの空賊たちを次々と襲い、倒していく。

 訳もわからぬまま死んでいく仲間を見て空賊たちはパニックとなるが、逃げる間もなくフミコが枝剣から放った大蛇によって挽き肉にされていく。


 CZ スコーピオンEVO3 A1の射撃とフミコの大蛇を運良く逃れた空賊は地下坑道の先へと逃げようとするが、装甲車両から降りてきたフミカが背中から大刀を引き抜き、駆けると一瞬でその首を刎ねられる。


 数分もしないうちに地下坑道と駅にいた空賊たちは全滅した。




 空賊たちを倒した後、少し先の地下坑道にも進んで討ち漏らしがないか確認する。

 安全が確認できたので救助した3人の女性にとりあえず適当な布を被せて装甲車両の中に寝かせる。

 そうして自分とフミコ、フミカの3人は駅から小砦の中へと入る階段を見据えた。


 深呼吸して気持ちを落ち着け、そして一歩を踏み出す。


 「さて、それじゃあ突撃するぞ!!」

 「うん!!」

 「行こう!!」


 2人の返事を聞いて一気に駆けだし階段を駆け上る。


 地下から1階へとやってくると、やはりここにも空賊どもが沢山いた。

 そして床にはギルド<ザ・ライジン>の団員たちの死体が転がっており、壁や床に血が飛び散っていた。


 それを見て、怒りが沸々とこみあげてくる。


 「こいつらよくも!! ぶっ殺す!!」


 銃口を空賊どもに向け引き金を引く。

 小砦1階に銃声が響き渡った。


 その銃声を聞きつけて小砦中にいた空賊たちが続々と集結してくる。

 フミカは自分が銃撃を行っていない方向の空賊たちを目にも止まらぬ速さで次々と斬り伏せていき、フミコも試製3式軽機関銃で銃撃を行っていく。


 しかし、次々と空賊どもがやってきてキリがない。


 「くそ!! ゴキブリみたいにうじゃうじゃ湧いてきやがって!! こうなったら!!」


 CZ スコーピオンEVO3 A1で射撃するのをやめて、サブマシンガンスタイルを解除する。

 そして銃身を外してレーザーブレードを出す。


 「ベルシと戦う前にシャイニングアタックを使うのは気が引けるが……切り口を変えるか」


 シャイニングアタックは秘奥義ほどではないにしても、それなりに体力を消費する。

 これは光魔法の中でも上級魔法であるシャイニングを発展させた形のシャイニングシリーズが多くの異世界で秘奥義クラスの威力に相当するからなのだが、ゆえにシャイニングも含めて、できれば戦闘の途中で使いたくはないのだが今は言ってられない。


 アビリティーユニットから飛び出すレーザの刃の出力が増し、自身の周囲に光が渦巻いていく。

 レーザーブレードを構えると、その渦巻いていた光は一気に砦全体へと広がっていった。


 「めんどうなザコとの戦闘をこれ以上ちまちま続けるつもりはないんでな! 三下にはここでまとめて退場してもらうぞ!! くらいやがれ!! シャイニングバインド!!」


 叫んでレーザーブレードを掲げると、眩しい光がレーザーの刃から放たれ、砦全体に広がった光が砦の中にいる空賊どもを一気に捕らえ、自分の目の前へと転移させる。

 まとめて転移させられた、状況が理解できない空賊たちに向かって掲げたレーザーブレードを振り下ろした。


 するとそのレーザーの刃から巨大な光の刃が生まれ、空賊たちを一瞬にして光の中に消し去った。


 シャイニングバインド、それは自身でイメージし、己が魔力でカバーできる範囲にいる自分より弱い敵をまとめて拘束し、光の中に消し去る魔法だ。


 シャイニングアタック同様、発動すれば秘奥義を使用した状態に近い疲労感を伴うが、これでベルシ以外の空賊どもは倒せたはずだ。


 「はぁ……はぁ……おっと」

 「か、かい君!! 無茶しすぎだよ!! ここで倒れたら元も子もないよ?」


 一瞬フラっとしたが、慌てて駆け寄ってきたフミコに支えられ、なんとかその場にとどまる。

 ウエストポーチから回復薬を取り出して飲み干し、空になった瓶を捨てた。


 「ふぅ……大丈夫だフミコ。ありがとう」

 「もう! 心配かけないでよ!!」

 「わるいわるい、それより……」


 目の前の2階へと上がる大きな階段を見る。

 これを登っていけば、その先は広間だ。


 そしてベルシは確実にそこにいる。

 ギルド<ザ・ライジン>はもう全員がやられてしまったのかはわからない。

 ギルドマスターであるボベルトや彼の恋人であるリベラの姿、少なくとも死体は見ていない。

 ここに突入する前の駅で助けた3人の女性の中にリベラの姿はなかった。


 すべては広間に行ってみない事にはわからない。

 深呼吸してレーザーブレードを手にし、フミコとフミカの顔を見た。

 ふたりはそれぞれ頷き、フミコはその手に銅剣を、フミカは大刀を手にする。


 「よし行くぞ!!」

 「うん!」

 「えぇ!!」


 自分達は2階へと上がる大きな階段を一気に駆け上がる。

 そして広間へと飛び出した。


 「ボベルト!! リベラ!! 無事か!?」


 叫んでも、それに対する返事はなかった。

 まず最初に目に飛び込んできたのは、壁が崩れ青空が見える変わり果てた室内。

 そして床に転がっている複数のギルド団員の死体。


 そこにはボベルトとリベラも含まれていた。


 「そんな……」


 そして、階段からあがってきた自分達の真正面、広間の中央にそいつはいた。

 崩れた壁から見える青空をバックに、まるで自分がこの砦の主だと言わんばかりの偉そうな態度で椅子に座ってこちらを見ている。


 「おやおや……もう救援が駆けつけるとは、予想外に早かったな?」


 そう言って、その男は椅子から立ち上がった。

 そんな男を睨み付け問う。


 「お前が……ベルシか?」


 すると男はニヤリと笑い。


 「あぁ、そうだとも……この空に浮かぶ古の遺産すべてを引き継ぎ、統べることを許された唯一の人間、約束の地に立つ事を世界から認められた空の貴公子……それがこの僕、ベルシだ。覚えておけギルドの若造」


 両手を大きく広げて、自らを誇示するように答えた。

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