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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
12章:定例クエストをこなそう!

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次元の狭間の空間にて(4)

 次元の狭間の空間にあるアビリティーユニットをメンテナンスするための施設。

 その中にある医療施設であるメディカルセンターには地球で言うところの最新医療器具が揃っている。

 CR装置だとかCT検査だとかMRI検査だとか、その他にも色々な検査装置がある。


 地球における現代医療の最先端機器ばかりが目立つが、自分がプログラミングの能力でこの施設を追加した以上、自分が知り得る情報のみの機器になるのは致し方ない。

 何せスマホや自室にあるパソコンで情報収集する以上、知識は現代の地球のものになってしまう。


 とはいえ、中にはケティーが無償提供してくれた、よくわからないどこぞの異世界の医療器具や検査キットもあるのだが、どうにも活用しようという気にはなれなかった。

 ケティーからちゃんと説明も受けて、使い方もわかっているのだが、こればかりは実際に自分がその世界で使用されている場面を見ていないのが大きいだろう。


 百聞は一見にしかずという言葉が物語っているように、人間誰しもそれが安全に使用されている場面を見ない限りはただの言葉を信じる事はないのだ。


 とはいえ、今回に限ってはそうもいかなかった。


 「ふぅ……正直、CTもMRIもまったく慣れないけど、これに比べたらまだマシか」


 スキャンが終わり、機器の中からスライドしてベッドが出てくる。

 検査が終わったと言わんばかりに点灯していたランプが消えるとベッドから起き上がって、さっきまで自分をスキャンしていた機器を見る。


 一見MRIのようにも見えなくもないその機器は体内に宿る呪力をスキャンして体全体の異常を感知するという。

 どこぞの異世界では魔法と科学が混合した魔科学と呼ばれる技術の医療機器なのだそうだ。

 これに関してはケティーから色々と説明は受けたが、話の半分も理解できなかったのは内緒である。


 「さて、結果は……体に異常は見られないか」


 謎の魔科学医療機器が採取したデータをタブレット端末で確認する。


 実戦でははじめて使用した魔物の擬態能力+1による魔獣ビッグフットへの完全変化での格闘戦闘。

 長時間、魔獣ビッグフットに完全変化し続けたわけではないが、戦闘中に妙な頭痛に襲われて魔物化を解いている。


 何かしら体に影響がないか確認しないといけないと思い、メディカルセンターで検査を行ったが今のところ特に問題はないようだ。

 とはいえ1回の検査で安心していいわけはないのだが……


 「うーん、今後も魔物への完全変化を使うなら検査はこまめにしといた方がいいかもな。というか検証とデータの蓄積は必須だよな」


 そう言ってメディカルセンターの中を見回す。

 それなりに広い空間には色々な検査装置や診療器具が並んでいるが、自分以外に誰もいないためメディカルセンターというよりは医療メーカーによる展示会のように思えてなんだか寂しい光景だ。


 「いや、まぁ医師や受診しにきた患者がここにいたらおかしな話なんだけどね……でも看護婦さんあたりはいてもいいような……まぁ、こんな事言ったらフミコやケティーが怒るだろうけど……」


 とはいえ、リエルあたりなら交渉次第では見た目はほぼ人間の医療従事型ヒューマノイド看護婦を入手してきてくれそうなものだが、それをするにはリスクが大きすぎる……


 まずリエルはケティーの親友ゆえに確実にケティーに話が漏れる。

 そしてロボットとはいえ、なんで看護婦なのかと確実に攻められそうだ。

 なんでと言われても、ロボットとはいえ検査中に看護師(男)に絡まれたくないと言い返したらきっと余計にややこしい事になるだろう。


 まぁ、言って自分の周りに男は今のところヨハンとTD-66と自称神のカグしかいないわけだから、そこで男要素を増やしても構わないのだが……

 というか警護ドロイドのTD-66を男と認定していいのか?

 そこに疑問を持つと医療従事型ヒューマノイド看護婦も女になるのか?という問題が出てくるのだが……


 あれ?この論点に持ち込めば医療従事型ヒューマノイド看護婦を導入してもケティーやフミコから怒られないでは?


 そんなバカな事を考えて、すぐにその考えを否定する。

 それで怒られないのならギガバイソンのメスであるココにあそこまで敵意、否、殺意を剥き出しにはしないだろう。

 やはりギガバイソンだろうとヒューマノイドだろうと見た目が女の子だとアウトなのだ。


 となればもうここには男の看護師ヒューマノイドしか設置できないのでは?

 だったらいらないなーと考えていると、どこからか菌を媒介するかもしれない医療施設内に本来いてはいけない動物がバサバサと翼をはためかせながらやってきた。


 「なーにをくだらん事考えとるんじゃこやつは」


 そう言って自分の肩に止まったのはカラスだ。

 とはいえ、それは外見だけの話であって、このカラスの正体は神を自称する老人、カグである。


 「なんだいたのかよ」

 「そんな鬱陶しそうな態度とられるとわしは悲しみに暮れて泣いてしまうぞい? 随分と久しぶりの登場じゃと言うのに」

 「誰もカラスの姿をした爺さんの登場なんか待ち望んでねーよ」

 「つれないの? この作品のマスコットキャラだと言うのに」

 「爺が化けたカラスがマスコットの作品なんてどの層に受けるんだよ」

 「若者じゃよ?」

 「絶対ねーわ」


 呆れて言うとカグは「わかったとらんのー」と羽根を広げながら言ってきた。

 やめろ、肩に乗った状態で翼を広げるな!バシバシ顔に羽根が当たってうぜー。


 「で、何の用だ?」

 「何、面白い仲間を増やしたなと思ってな?」


 カグがニヤニヤしながら言ってきたので思わずため息をついた。


 「成り行きだ、仕方ないだろ? 誰も好き好んで巨大な牛の魔物なんか仲間にしないだろ」

 「でも見た目は超絶美少女だぞ?」

 「元を知ってたら何とも言えん気持ちになる」

 「ほっほ……男心は複雑じゃな?」

 「勝手に人の心情を察するな」


 この神を自称する正体が老人のカラスと会話していると苛々してくるので、肩に乗っているカグを払いのけようとした。

 カグは素早く飛び上がって近くの医療危惧に飛び乗るとため息をつく。


 「やれやれ、歓迎されとらんの」

 「むしろ何で歓迎されると思ったんだよ」


 そう言うとカグは小馬鹿にしたように笑い。


 「ほっほ、いいのか? せっかく耳寄り情報を伝えに来たというのに」


 などとぬかしだした。


 「耳より情報?」

 「そうじゃ、まだ気付いとらんようじゃからの?」


 そう言ってカグはニヤリと笑う。


 「アビリティーチェッカーを見て見よ、新しい発見があるかもの」

 「?」


 何の事だ?と思って検査機器の横にある荷物置き台に置いていたアビリティーチェッカーを手に取る。

 そして起動してみると。


 「ん? なんだこのエンブレム? なんか増えてるぞ?」


 アビリティーチェッカーの液晶画面から投影された複数のエンブレムの中に知らないエンブレムがあった。

 新たに能力を奪ったわけではないというのに……


 とはいえ、その形はどこか複数のエンブレムを組み合わせたようにも見える。

 これは一体どういう事だろうか?


 「おい、これって一体どういう事だ?」

 「だから言ったじゃろ? 新しい発見があるかもって」


 そう言ってカグは笑う。

 笑って説明してきた。


 「それは『混種能力』、似通った別種の能力を複数所有し、一定の条件を満たした場合に発生する特殊能力じゃよ」


 カグが言うところによると、例えば魔法の能力のように「魔法+2」となってるものは各異世界でその内実が違えど、どこの異世界でも「魔法」と認識されるため奪った数が表記される。

 ところが似通った能力でも母体が同じと認識されなければ別種の能力と認定され、同種の能力を奪ったと認定されない、つまりは+○○と奪った数が表記されないのだ。


 とはいえ、実質的に同じか、似たような能力を複数所持した場合、エンブレムが違っても互いに影響しあって+○○と奪った数字が表記されるのと同じ効果を生むという。

 そして、それら影響し合った能力を使用し一定の条件を満たした場合、混種能力が発生するのだという。


 そして今発生した混種能力は「混種能力:獣」。

 「魔物の擬態能力+1」、「召喚」、「菌糸生命体」の3つの能力で一定の条件を満たした証だ。


 「本来ならアビリティーユニットを扱う異世界渡航者には転生者、転移者、召喚者から能力を奪う以外の能力はない。言うなれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし混種能力だけは例外じゃの……奪った能力のブレンド、オリジナルの能力がない異世界渡航者じゃからこそできる裏技じゃの」

 「奪った能力のブレンド……」


 言われてみれば確かに投影された新たなエンブレムは「魔物の擬態能力+1」、「召喚」、「菌糸生命体」の3つのエンブレムを重ね合わせたようなデザインをしていた。

 という事は、他の能力でも何かしらの条件を満たせば新たな混種能力を生み出せる可能性があるのだ。


 思わず口元が緩むがしかし、カグはこう忠告してくる。


 「とはいえ他の能力と同じと考えない方がいいぞ? 使いどころは見極めないと、連発はできんからの?」

 「どういう事だ?」

 「混種能力は言わば各能力の秘奥義を合併して強化、極めた究極の能力……そうじゃな極奥義とでもいうかの、扱いとしてそんなところじゃ、じゃから当然使えば秘奥義以上の反動、疲労、虚脱感に見舞われる。倒れるのは確定じゃろうな」


 カグはそう言ってうんうんと頷いた。

 いや、それ戦闘で使えるのか?

 まぁ切り札は最後まで取っておくべきものだから確実に勝てるって確証がない限りは使わないだろうけども……


 「まぁ、リスクもなく気軽に扱える超強力な能力なんて便利なもの、そう都合良くあるわけないか……」

 「そういう事じゃ、それじゃ引き続き修羅場頑張れよ」

 「おい」


 そう軽口を叩いてカグはどこかへと飛び去っていった。

 本当にあのカラスはいつかしめてやらないと!

 そう思って、カグに色々と問いただすと療養中だったフミコにかつて誓った事を今更ながら思いだした。


 「しまった……あれ以来姿をめっきり見せなくなってたから久々すぎて忘れちまってた。くそ! 今度会った時は絶対にとっちめるぞカグのやろう!」


 そう叫ぶが反応は何もなかった。




 カイトがメディカルセンターで体に異常がないか検査していたその時、フミコたちはどこで何をしていたかと言うとフミコたちの姿はトレーニングルーム内にあった。


 「ねぇ……さっきからこいつすごく気持ちよさそうに鳴いてて、なんだか腹が立ってきたんだけど?」


 フミコはそう言って怒りをこらえながらモップを手にしている。

 ちなみにフミコの格好は水着姿であり、そんなフミコの目の前には笑顔のココの姿があった。


 とはいえ今のココの姿は美少女の姿ではなく本来のギガバイソンの姿であった。

 ここはトレーニングルーム内の温室プール、その横に設置された大きなシャワールームである。


 5メートルはある巨体であるギガバイソンを収容するには十分な広さを誇るその場所で、今まさにココの体を洗浄すべく水着姿のフミコ、ケティー、リエル、リーナによる「ココの体(ギガバイソンver)を綺麗にしよう!シャワー大作戦」が始まろうとしていた。

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