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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
11章:依頼をこなそう!

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11.5章:定例クエストを前に.Ⅰ

 「そんなわけで今日からギルドの一員になるヨハンだ」


 そう言って皆に隣に立っているヨハンを紹介した。

 今自分とヨハンはギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>本部の客室にいる。


 目の前にはフミコ、ケティー、リーナ、リエルがおり、部屋の奥にある客人用のソファーにはフミカが腰掛けて茶碗を持ち、高級茶を味わっていた。


 ちなみにこの高級茶は地上へと逃げたクイーンギガローチをフミカが討ち取ってくれた際、報酬の一部を譲渡するのを断ったフミカが代わりにと要求したものだ。


 当初は高級なお茶と言われて、日本は京都の老舗有名店で出されているような抹茶だとか宇治茶で大丈夫かな?と思ったが、ケティーに。


 「いや、川畑くん……いくら東方出身者が見た目も文化も日本人そっくりだからって、この異世界の「東方」と地球の「東アジア」は同じじゃないんだよ? 同じお茶でも味も何もかも違うはずだから、ちゃんとこの異世界の東方のお茶を入手したほうがいいと思う」


 そう言われたので、提携している商業ギルド<トルイヌ商会>から東方の高級なお茶を仕入れたのだった。

 ちなみに東方からこの無干渉地帯まで運んでくるコストなども含めて、ただでさえ高級なお茶が更にビックリな価格になっていたので心臓が飛び出そうになった。


 あまりに高額で購入をどうしようかと迷っていると、京兆億万長者幼女であるリーナが。


 「マスター、これはギルドとしてのお礼の品なんでしょ? だったらわたしもギルドの一員としてお手伝いしないと!」


 そう言って輸送コスト込みの驚愕お値段高級茶をまるで駄菓子屋でう○い棒やチ○ルチョコ、ヤッ○ーメンを買う感覚でリーナが買い上げてしまった。

 ワオ! 怖いぜ京兆億長者幼女!


 そんなリーナの買った高級茶をフミカにお出しするための茶碗も、これまた東方では有名な○○焼的な陶磁器でクッソ高い代物だった。

 うん、お兄さん、これから先のリーナちゃんの金銭感覚が破綻しないか心配で仕方ないぞ?



 そんなエピソードはさておき、ヨハンは自分の後を継いでフミコたちに自己紹介をする。


 「えっと……ご紹介にあずかったヨハンです。知っているとは思いますが以前は冒険者サークル<月夜の刃>の代表をやっていました。ふつつか者ではございますが誠心誠意、頑張りますのでこれからよろしくお願いします!」


 ヨハンは緊張しているのかぎこちない動きで頭を下げて挨拶をした。

 そんなヨハンを見てフミコとリーナ、それにケティーは笑顔で「よろしくー」と言って拍手し、リエルは。


 「なんや君、男やったらもっとシャキっとせなあかんで!」


 そう言って笑いながらバシバシとヨハンの背中を叩いた。

 うむ、緊張をほぐすにはいい行為かもしれない。

 しかし、それ以前にまずは言わなければならない事がある!


 「いや、というかリエルはなんでここにいるの!? ねぇ!? あなたここにいたらダメな人でしょ!?」


 思わずツッコむとリエルはニヤリと笑い。


 「まぁまぁ堅いこと言いなさんなや君? TD-66の修理もメンテも一段落したんやし、たまにはえぇやん」


 などと言い出した。


 「いや! ダメでしょ!? この人絶対、隙をついて外に出るでしょ!?」

 「何でやねん、ケチやな! 仕事はちゃんとしてるんやから、それくらいええんとちゃう?」


 リエルは唇を尖らせてそう言うが、この人が「異世界探索やー!」って言って外に飛び出したらろくな事にならないと思うのだが?

 唯一の頼りの綱である彼女の親友のケティーのほうを見るが、しかしケティーはやれやれと言った表情で首を振るだけだった。


 あ、ダメだこれ……ケティーに任せたら外にリエルが解き放たれるわ。

 思わずため息が出てしまう。


 「とにかくダメなもんはダメだ! はやく次元の狭間の空間に帰りなさい!」

 「ブー! ほんまドケチやな君」

 「はぁ……TD-66をちゃんと整備してくれてる事に関してはほんとに感謝してるよ」

 「そない言うんやったら少しくらいええんちゃう? 外……」

 「ダメです」


 強い口調で言うとリエルは観念して、ガックリとした様子となり。


 「あっそ……なら仕方ないわ、今回は外を散歩するの諦めるわ」


 そう言って、しかしニヤリと笑うと。


 「その代わり、今度うちとデートしたってや!」


 などと言い出した。

 わお! 突然のデートのお誘い、そんなフラグ今までありませんでしたけど、どうしたの?

 というか、そんな事言うと例の2人が黙ってないんだが!?

 案の定、フミコとケティーがこれに即座に反応してリエルを睨む。


 「ちょっと!! 突然何言ってるの!? そんなのダメに決まってるでしょ!? バカなの!?」

 「リエル、いきなり何言ってるの!? 私を応援してくれるんじゃなかったの!? 裏切る気!?」


 フミコとケティー、2人してリエルに怒鳴ると、そんな反応を見てリエルは腹を抱えて大いに笑った。


 「冗談やって、過敏に反応しすぎやでおふたりさん!」

 「ちょっとリエル!?」

 「あーごめんやで堪忍したってな? いや何、2人が新たにギルドに加わるのが女やなくて男やって聞いてライバルは増えへんって安心しきってたさかいな? ちょっとは危機感を持ってもらわな思ったんやけど刺激が強すぎたようやね? 特にケティー、焦りすぎやで? 親友やったらこれくらいの嘘見抜いてや?」


 そうリエルは言うが、ケティーは小声で「いや、どう見ても冗談じゃなく本気の仕草だったじゃない」と漏らしていた。


 そんなリエルたちのやり取りを呆然として見ていたヨハンはどうしたらわからずその場で固まっていた。


 「えっと……」

 「あ、ごめんな君? えっとヨハンやったっけ? まぁ、こんな感じでここにおる女子全員ギルマスにしか興味ないギルドやけど、これからよろしゅーな?」


 そう言うリエルを見てヨハンは渇いた笑いを浮かべた。

 恐らくヨハンはリエルみたいな性格の女性は苦手なのかもしれない。


 そんな自分たちの会話を聞いていたのか、特には気にせず聞き流していたのか、客人用のソファーでお茶を飲んでいたフミカは茶碗の中身を飲み干すと。


 「ふぅ……いいお茶でしたね、おいしくいただきました。ごちそうさま」


 茶碗をテーブルに置き、手を合わせてそう言うと立ち上がって大きくのびをした。

 そんなフミカを見てフミコが声をかける。


 「あ、フミカ、何かお菓子でも食べる?今もってくるけど」

 「フミコ大丈夫だよ、気にしないで? それにもう帰ろうと思うし」

 「えぇ!? フミカもう帰るの? もっと話そうよ!」


 フミコが慌ててフミカの元へと駆け寄っていくが、フミカはもう十分楽しんだと言わんばかりに満足した表情で。


 「新入りをギルドメンバーに紹介する時に他のギルドの人間がいたら変でしょ? それに私も自分のギルド本部に顔出さないとだし、今日のところはここまでにするよ。また遊びにくるから」


 そう言ってフミカはフミコに小さく手を振って、扉のほうへと歩いて行く。

 その途中でフミカはヨハンの横を通り過ぎるとき、小さく笑うと。


 「まぁ肩の力抜いて頑張りなさいよ新人さん」


 そう言ってヨハンの肩をぽんと叩いた。


 「あ、はい! 頑張ります」


 ヨハンは慌ててフミカに挨拶しようとするが、フミカは気にせずそのまま去って行った。



 「あ~あ、フミカともう少しお話したかったな」


 フミカが帰った後でフミコが残念そうに言うと、ヨハンが申し訳なさそうに身を縮まらせる。


 「すみません、僕のせいで」

 「え? いや、君のせいじゃないと思うけど」

 「でも、せっかくお喋りしてたのに僕の自己紹介のせいで中断してしまって、そのままお帰りになってしまったし」


 そう言うヨハンの背中をリエルがバンバン叩く。


 「君、ほんま根暗やな? あの子も言ってたやん、自分とこのギルドに顔出さなあかんて。そないに気にしなさんなや?」

 「は、はぁ……」


 ヨハンはリエルのテンションにどうにもついていけてないようだった。

 なんだろう?この東京へ観光にきた大阪のおばちゃんの勢いに押されている東北の山奥から上京してきて、まだ都会に馴染めていないずうずう弁を隠すシャイボーイ大学生を見ている感覚は……


 「とにかく、ヨハン。これからは同じギルドの仲間なんだし、あまり気を使わなくていいぞ?」


 そう言うとリエルが「せやせや」と同意するように頷いた。

 いや、あんたは遠慮しろよ?

 つーかギルドメンバーでもねーし!


 そんな時だった。

 ギルド本部の外から子供の声が聞こえてきた。


 「ここか!? ここににいるのかヨハン!! 出てこい!! お姉ちゃんの仇め!!」


 そんな叫び声を聞いてヨハン以外の皆が顔を見合わせる。

 一方のヨハンは驚いた顔で慌てて外へと飛び出した。


 「この声、まさか!?」


 そんなヨハンを見て、皆も後に続いて外に出る。

 するとギルド本部前の路地にはひとりの女の子が険しい表情で腕組みして立っていた。


 外見は幼く、見るからに子供で、恐らくはリーナと同い年くらい。

 険しい表情もどこか愛くるしく感じるその女の子は目の前のヨハンを睨み付けると、腕組みを解いてビシっとヨハンを指さし。


 「ヨハン!! お姉ちゃんを死なせておいて、よくもまだぬけぬけとギルド活動するなんて言えるな!! この恥知らず!! 絶対に許さない!!」


 そう怒鳴った。

 このご立腹の幼女は一体誰だろうか?

 まぁ、ヨハンに言い放った内容から大体察しはつくが……


 「なぁ、ヨハン。この子は?」


 とりあえず聞いてみるとヨハンは頭を押えてため息をついた。


 「はぁ……すみません、騒がしくて。この子はエマ。ミラの……冒険者サークルで一緒だった、死なせてしまった幼馴染みの妹です」


 そう言うとヨハンはエマに尋ねる。


 「エマ、どうしてここに?」

 「決まってるでしょ! お姉ちゃんを殺した重罪人が罪を償わずにのうのうとこんなところに遊びに出向いたから、一体何をするつもりなのかと思って付けてきたのよ!」


 エマというらしい幼女がそう言うとヨハンがため息をついてエマを怒りだした。


 「エマ……一体何を考えてるんだ!? 僕を付けてここまできただって? その途中で事故にでも巻き込まれたらどうするつもりだったんだ? 誰かに誘拐でもされたらどうするつもりだったんだ? この区画に来るまでには治安がよくない区画も通らなきゃいけないんだよ? そこで何かあったらどうするつもりだったんだ?」


 言われたエマは「う」と唸ってたじろぐ。

 しかし、すぐに怒鳴り返す。


 「うるさい! うるさい! うるさい! お姉ちゃんを殺したくせに!! そんなやつがあたしの心配とかするな!!」


 しかし、そんなエマにヨハンはしっかりと言い聞かせるように怒る。


 「心配するさ! 当然さろ! ミラだってこんな事したエマを怒るはずだよ? 大人が同伴でないと家の周囲の区画から出たらダメだって規則をなんで守らないんだい? それでエマに何かあったらみんなどんな思いになると思う?」

 「あーうるさい!! だからお姉ちゃんを殺したやつが、勝手にお姉ちゃんの思いを代弁するな!! お姉ちゃんを語るな!! お姉ちゃんを殺したくせに!! この人殺し!!」


 エマは感情的になったのか涙目になった。

 そしてヨハンの言葉を遮るように泣きながら叫ぶ。


 「そうだ、あんたがお姉ちゃんをサークルなんていう遊びに誘わなければ……そんな事しなければお姉ちゃんは今もエマと……エマと一緒にいてくれたはずなのに!! あんたが奪ったんだ!! エマのお姉ちゃんを!! それなのにあんたは!! あんたは!!」


 そんなエマの言葉をただヨハンは聞いていた。

 聞いて受け止めていた。

 自分にはそれしかできないと言わんばかりに……


 そんな2人の様子を見ているとリーナが声をかけてくる。


 「マスター、いいですか?」

 「ん? リーナちゃんどうした?」

 「ここは一度、わたしが中であの子の話を聞きます。だからヨハンお兄さんとここで待ってて貰えませんか?」


 そう言うリーナにフミコやケティー、リエルも賛同する。


 「そうだね、かい君それがいいかも」

 「うんうん、憎い相手には感情的にしかなれないだろうし、ここは同い年くらいのリーナちゃんに話し相手になってもらうのがいいんじゃない?」

 「せやな、それがええと思うで?」


 それを聞いてヨハンの方を向くと、ヨハンも頷く。


 「すみません、お手数をおかけしますがそうしてもらえますか?」

 「決まりだな……じゃあリーナちゃん頼めるかな?」

 「はいマスター! 任せてください!」


 リーナは満面の笑みで答えるとエマの元へと歩いて行く。


 「えっと、エマちゃんだっけ? 良かったら中で少しお話しないい? あ、わたしはリーナ=ギル=ドルクジルヴァニアっていうの、よろしく」


 エマの前に立ち、笑顔で手を差し出してきたリーナを見てエマは少し警戒するが。


 「え? う、うん……よろしく」


 差し出された手を取る。


 「じゃあ、中に入ろっか」


 リーナはそんなエマをギルド本部の中へと招き入れた。

 2人が建物の中へと入っていくのを見て、これからどう時間を過ごそうかと考える。


 さて、リーナはうまくエマの気持ちを静められて、話を聞かせられる状態にできるだろうか?

 同年代だから話が通じるとは限らない。

 むしろ年上のほうが言い聞かせられるかもしれない、というか普通はそうだろう。


 でも、リーナもギルドの一員だ。

 あの子が自分に任せろというなら任せるべきだろう。


 それにリーナにとっては同年代の友達を作るいい機会かもしれない。

 そう思い、もしリーナがエマと意気投合して友達になれたなら、その時はリーナの為にもエマもギルドの一員にならないか? と誘ってみるのもいいかもしれない。そう思うのだった。





 ギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>のギルド本部がある区画からは遠く離れた、いくつもの有力なギルドの本部が軒を連ねる区画。

 その一角にAランクの冒険者ギルド<明星の(アシェイン)>のギルド本部はあった。


 「あ、フミカおかえり!」

 「えぇ、ただいま戻りました」


 1階の玄関入り口からではなく、2階のベランダにどこからか飛翔して着地し、窓を開けて入って来たフミカにマリが笑顔で声をかける。


 こんな粗暴をしていると、「ちゃんと入り口から入って来い!」と誰かが注意しそうなものだが、ギルド本部にいる誰もそんな事は言わなかった。

 ギルドメンバーの誰もが、フミカがどんな人物であるかを知っているからだ。

 言うなれば、もう諦めているのである。


 この東方出身の神秘の隠密少女に常識は通用しない。

 この少女はその出自ゆえに、感情も押し殺して希薄。

 隠密を常とするため神出鬼没、入り口からわかりやすく入ってくるなどありえないのだ。


 しかし、この日はそんなフミカに変化があった。


 「ん? フミカどうした? 何かいい事でもあったか?」


 その変化に気付いたのは冒険者ギルド<明星の(アシェイン)>のギルドマスター、ハンス=ビストリツァ=ドルクジルヴァニアだ。

 彼はいつもは感情を押し殺しているため無表情なフミカが珍しく笑っている事に気付いたのだ。


 なので尋ねると、意外な答えが返ってきた。


 「実はさっきまでギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>の本部に行ってた。お茶にお呼ばれしちゃってね……まぁ、お茶は前に私が要求したからなんだけど。久々に『アカツキ』のお茶を味わえたよ」


 感情が希薄でいつもは言葉数少なく、必要最低限の会話しかしないフミカが珍しく愉しそうに語った。

 その事にギルド内にいる誰もが驚いた顔となる。


 とはいえ、東方出身のフミカの事だ。

 久々の故郷の味に柄にもなく少し上機嫌になっただけだろう。

 誰もがそう思った。


 しかし、ギルドマスターのハンスだけは別の部分に反応していた。

 そしてマリも同じく。


 「ジャパニーズ・トラベラーズだって?」

 「うん、最近ブレイクギルドの異名で名を馳せてるギルド」

 「フミカ、そのギルドと何か接点でもあったのか?」


 ハンスがそう尋ねるとフミカはクイーンギガローチの一件の事を話した。

 それが縁で今日、ギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>の本部にお茶を飲みに行ってきた事も。


 「なるほど、そうだったのか……」

 「別に向こうの依頼を受けて手助けをしたわけでもなかったし、たまたま偶然そうなっただけだからうちのギルドが関わった事にはならないだろうから黙ってたけど、何か問題があった?」


 フミカが尋ねるがハンスは首を振る。


 「いや、別段問題じゃないよ。むしろ、それくらいでうちも関わっただろ? って言い出したら横やりを入れられたってクレームになる」


 そう言うとギルド内にいる誰もが頷いた。


 「ところでフミカは今日、<ジャパニーズ・トラベラーズ>の本部に行ってきたんだよな? ()()()()()()()()()?」


 ハンスが尋ねるとフミカは考え込み。


 「()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そう答えた。


 「何を目指してるかわからないって……ブレイクギルドなんだから解体業者なんじゃないのか?」

 「それを言うとギルドマスターはすごく怒ってた。自分達はそんなんじゃないって」

 「じゃあ何のギルドなんだ?」

 「さぁ? 専門を定めない何でも屋みたいだけど」


 フミカの言葉を聞いてハンスは考え込む。


 「何でも屋か……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 ブツブツと呟いて再びハンスはフミカに尋ねる。


 「そのギルドのメンバーってどんなだった?」

 「ハンス、やけに聞いてくるけど何か気になる事でもあるの?」

 「いや、ちょっとした興味だよ?」


 そう言ったハンスを見てフミカはしばらく黙っていたが。


 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ。あとギルドメンバーにもう1人東方出身者がいて私と名前が似てるけど、まぁ偽名だよね。でも、こんな街にいればそれは普通な事だし深掘りする事じゃないかな?」


 フミカはそう強い口調で言った。

 彼女にしては珍しく、あまり踏み込んでやるなと言いたいのだろう。

 しかし、ハンスにとってはその情報で十分だった。


 「そうか、それはそうだよな……なぁフミカ、彼らはギルド名の由来について何か言ってか?」

 「いや、何も。どうかしたの?」

 「ん? 別に。気になっただけだよ。()()()()()()()()()()だからね」

 「そうだね……でも、それを言ったら意味がわからないけど響きがカッコイイって理由で変な名前をつけてるギルドなんてゴロゴロいる」

 「まぁ、そうだよな」


 フミカの指摘にハンスは苦笑し、そして少し考えて頷くと。


 「うん、そうだな……フミカ。次の定例クエスト、<ジャパニーズ・トラベラーズ>は参加するのか?」

 「たぶんするんじゃないかな? Cランクになったって言ってたし」

 「そっか、俺たちは今回定例クエストは遠征のため参加しない予定だったけど。フミカ、君は街に残って定例クエストに参加してくれないか?」

 「どうして?」

 「フミカには残って定例クエストでの<ジャパニーズ・トラベラーズ>の様子を観察してもらいたい」


 そう言ったハンスに対して、フミカはしばらく考え込んだのち。


 「わかった……定例クエストは<ジャパニーズ・トラベラーズ>をサポートするって形で参加して様子を窺うよ」


 そう答えたのだった。

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