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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
11章:依頼をこなそう!

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依頼をこなそう!(4)

 予想以上の速さで元雑貨屋である廃墟を解体した事に雑貨屋の店主は驚いていたが、依頼達成には違いない。

 なので酒場でのウエイターのお手伝いと雑貨屋の解体のお仕事を終えた事を報告しにギルドユニオン総本部へと向かった。


 とはいえケティーは商業ギルドとの提携の交渉でいないので自分とフミコとリーナの3人で次の仕事を総本部で探して受領する事にした。


 一様は受けた依頼の完了報告はユニオンギルドマスターであるヨランダに必ずしないといけないのだが、今は用事で席を外しているため次回の報告時にまとめてでいいと受付で言われたためだ。


 ルールとしては受けたすべての依頼を包み隠さず報告しないといけない事になっているが、この街に存在するギルドの総数を考えたらすべてのギルドの報告を一々受けていたらヨランダが1日の時間をすべてそれに奪われてしまい他の仕事がままならなくなってしまう。


 なので受領した仕事の達成報告で頻繁に会えるのは優遇されている上級ギルドのみ、ランクの低いギルドは優先度が低くヨランダとは滅多に会えないという事なのだろう。


 そしてユニオンギルドマスターに滅多に会えないということは彼の目には止まらない、彼の記憶に残らないという事だ。

 ランクアップの査定に彼の意向がどこまで反映されるかは不明だが、それは上級ランクを目指す上では不利となるだろう。


 ならば彼に取り入るにはどうすればいいか?

 ユニオンにとって重要な仕事をこなしまくって名前を売るか、もしくはヨランダの取り巻きやユニオン幹部に取り入ってゴマをすり有利になるよう働きかけるか……


 ようはギルドとしての実力がなければ賄賂や接待による懐柔がなければのし上がれないという事だ。

 どこの世界でも政治は似たような一面を見せるというわけである。


 自分たちはそんな賄賂も接待もするつもりは毛頭ないので仕事をこなしまくるしかない。

 とはいえ新規ギルドであり最底辺のFランクでこなせる依頼は雑用ばかりだ。


 受付で見せられた依頼のリストや玄関ホールの巨大クエストボードに張り出されている内容を見てもFランクではまともな依頼はほとんどない。


 「ねぇ、かい君……なんか微妙なお仕事しかないけど、どうするの?」


 フミコが巨大クエストボードを見上げながら聞いてくる。

 リーナも受付嬢さんからもらった今ユニオンに届いている依頼のリスト用紙を見て「うーん」と唸っていた。


 「まぁ、正直パッとする依頼は見当たらないけど、今は数をこなすことが大事だからな……すぐ終わるような内容の仕事でも何十件と同時に受ければ1日で一気に依頼完了数稼げるんじゃないか?」


 言って巨大クエストボードに張り出された依頼の中で家屋の解体作業のものを探していく。

 そして予想通り家屋の解体依頼はかなりの数があった。

 しかもさきほど達成した雑貨屋の解体現場の区画である4番街での依頼が集中している。


 (やっぱりな……あの区画人通りも少なく寂れてると思ったが、やっぱ解体依頼待ちだったか)


 念のためリーナの見ている受付嬢さんからもらった今ユニオンに届いている依頼のリストも確認したが、やはりあの区画での家屋解体依頼が多数を占めていた。


 「よし! とりあえずあの区画での解体作業、ありったけ受けよう! 2人ともいいか?」


 フミコとリーナに確認を取る、2人とも問題ないと頷いた。


 こうして数十件の家屋の解体作業を受領したがわけだが、解体すべき物件すべてが4番街というあの区画内であったため移動距離も少なく、かつ爆薬CVZI-Eを使って複数同時に解体作業をこなせるという利点から2日とかからないうちに一気に何十件もの依頼を達成する事ができた。


 ケティーのほうも商業ギルド<トルイヌ商会>との提携の話をまとめ、さっそく複数の商品納入の仕事が舞い込んできた。

 納入依頼のあった商品を作るのに必要な素材も商業ギルド<トルイヌ商会>が持っていたため採取に行く必要がなく、すぐに錬金術で商品を作る事ができたため即納入が完了した。


 こうして1週間と経たない数日のうちに100件以上の仕事をこなしたギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>はそのランクを最底辺のFからEへと押しあげたのだった。


 この勢いのままEランクからDランクへとさらに駆け上がるため、より多くの家屋解体の依頼を受ける。


 おかげで4番街のみならず他の区画の解体作業も大量に受領する事になったのだが、その仕事の速さと家屋の解体作業ばかり受領する姿勢からドルクジルヴァニアに存在する廃屋の3分の1はギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>がぶっ壊したという与太話が流れるようになった。


 そして、そんな与太話は酒場を介してドルクジルヴァニア中に広がり、いつしか自分達には「ブレイクギルド」という異名がついて回っていた。

 おかげで解体業者のギルドと勘違いされてしまったのか、仕事をギルドユニオン総本部に取りにいかなくても廃屋の解体依頼がギルド<ジャパニーズ・トラベラーズ>本部に直接舞い込むようになった。


 うん、この状況は喜んでいいのだろうか?

 わからないが、このままでは本当に商業ギルド<トルイヌ商会>からの仕事以外は家屋の解体作業しかなくなり、解体業者のギルド認定されかねない。


 なので解体作業とは違った依頼をギルドユニオン総本部で探す事にした。

 すると……


 「あれ?今日は解体の依頼を探しにきたんじゃないんですね?」


 受付でミルアに首を傾げながらそう言われた。

 いや、あなたまでそれを言いますか?


 「別にうちは解体業者でも何でもないんですけどね? まぁ、手っ取り早く仕事の数をこなすために解体作業ばっか受領したのは事実ですけど……今は別の仕事をこなさないと解体専門ギルドと思われたら、たまったもんじゃないんで」

 「そうですか……解体ギルドの道に進むのもそれはそれで仕事を独占できてありだと思いますけど、それは残念ですね。まぁランクを上げたいというなら確かに解体作業では限界がありますからね」


 そう言ってミルアはいくつかの依頼書を提示する。


 「Eランクであればそれなりの仕事は受領できるようになりますが、街の外での大型の魔物の討伐はまだ無理ですね」


 そう言って街の外での仕事の依頼書をいくつかを見せてくるが、どれも条件がイマイチであった。


 街の外での魔物討伐の依頼は数日時間を要する事が一般的であり、特定の魔物の討伐数を指定されていたり、特定の個体の捕獲が必須となるが、レアな魔物討伐や捕獲の依頼ほどランクアップが期待できたり、お金が大量に入手できたりする。


 とはいえ、数日かけて多くの魔物を討伐してもランクもあがらず報酬もイマイチという依頼も少なくない。

 Eランクで受けられる仕事はまさにそんな依頼ばかりであった。


 (数日かける割に成果がまるでないな……それなら街で解体作業してるほうがましってもんだ。今は街の外に出ての魔物討伐はスルーだな)


 だとすると他にいい仕事が目につかなくなるのだが、どうしようかと悩んだ時だった。

 ミルアがこんな事を言ってきた。


 「まぁ、街の外に出なくても魔物討伐の依頼は受けられますよ。街の中にも魔物はいますからね」

 「……は?」


 街の中に魔物?

 一体どういう事だろうか?

 困惑しているとミルアがニヤリと笑って床を指さす。


 「地下ですよ地下。正確には街の地下に張り巡らされた大迷宮とも言える下水道ですね……ここにはジャイアントラットやギガローチといった汚水や汚物を好む魔物化した害獣や害虫が多数生息しているんですよ、怖いですねー」


 わお!聞きたくもなかった、想像したくもない嫌な事をケロっと言いやがったよこの受付嬢さん……

 そしてここまで来れば一体どんな依頼内容かは容易に想像がつく。


 「まぁ、棲息範囲を飛び越えて地上に飛び出してくる事は滅多にないんですけど、何事にも例外はありますからね」

 「例外って?」

 「数が増えすぎて共食いも追いつかなくなった個体はどこに溢れ出ると思います?」


 嫌な事を聞くな……そんなの、超弩級のドブネズミや超巨大なGがお日様の元に這い出てくるに決まってんじゃん!

 想像したくもねー……


 「えーっと……つまり、そうなる前に下水道に潜って数を減らせと?かのGやドブネズミを?」

 「はい! そうなりますね!! 安心してください! 報酬は弾みますしランクアップのためのポイントも大幅加算します!」


 満面の笑顔でミルアは答えた。


 あ、うん……これは、どうしようか?

 話を聞いて猛プッシュされた以上受けないといけないのか?

 思わずため息がでそうになった。

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