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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
10章:SFの世界

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SFの世界(1)

 「いやー、しかしほんとに凄いなこの街は!」


 歩きながら周囲を見回して関心してしまう。

 自分でもわかってはいるが、端から見ればきっと自分はお上りさん全快な態度を取っているだろう。


 しかし、これは仕方のない事だ。

 まさにTHE近未来なSFの世界全快のその光景を目の当たりにすれば誰だってそうなってしまうはずだ。

 何せ、日本にいた頃は無趣味で世間に無関心であり、それは今でも変わらずの自分が少し興奮してしまっているのだ。

 自分基準で申し訳ないが、そりゃ誰だってそうなるに決まってる。


 ちなみにリーナはこの世界に着いてから一言も言葉を発していない。

 見た事もない世界に圧倒されているのだろう。

 ずっと開いた口が塞がらない感じだでキョロキョロとしている。


 そんな自分やリーナと違ってケティーは何度も商売や取引で訪れている事もあって、特に気にした風もなく目的地へと向かう。

 超高層の建物に入ると、どういった原理なのかわからない移動する通路や昇降装置をいくつか経由して目的のフロアに辿り着く。


 そこはフロア全体が警備設備を取り扱っており、どこを見てもよくわからない設備の一部が展示されていたり、機械やドローンのようなものやロボットのようなものが展示されていたりする見本市のような空間であった。


 一際目をひく大きなステージでは人型ロボットのデモンストレーションが行われていた。

 そこ以外でも至るところでドローンのようなものを飛ばしたり、動物型のロボットを動かしたりして通行人に性能を見せて商談が行われていた。


 「へぇ~すごいなこれは!まさにロボット博だな!」


 そう素直に感想を述べるとケティーが苦笑いしながら指摘してくる。


 「川畑くん、ここは別に変哲もないただの通常の売り場だからね?川畑くんの世界で言うところのデパートや百貨店の特設売り場だとかイベント販売だとか、大きな会場で年に数回あるなんとかフェスみたいな最先端技術の見本市や展覧会じゃないからね?」

 「わ、わかってるよ!少し興奮しただけで……」

 「まぁ、この街の規模や先端技術はこの異世界でもちょっと異常だから川畑くんの世界での見本市クラスのものが通常の売り場販売レベルになってたりするから仕方ないとは思うけど……」


 そう言いながらケティーはフロアの端まで来ると誰かを探すようなそぶりを見せる。


 「知り合いでもいるの?」

 「ん?いつも懇意にしてるお得意先……というかディーラーがこのあたりにスペース確保したって聞いたんだけど、どこなんだろうって……あ、いたいた!お~い!!」


 そう言ってケティーは少し離れたところにいた女性に大きく手を振る。

 その女性はこのSF世界ではスーツになるのだろうか?シックな服装に身を包んでおり、いかにもキャリアウーマンといった印象である。


 その女性は商談中なのか、シックな服装の中年男性と目の前の空中に投影された何かしらの資料を見ながら話し込んでいたが、すぐにケティーに気がつくと中年男性に一旦断りを入れてこちらへと歩いてくる。


 2人は笑顔でハグし合うと恐らくはこのSF世界の現地語であろう、聞いてもまったく理解できない言語で話し合いだした。


 (何を言ってるかわからないな……なんでだ?ってそうか、簡易ラーニングをしてないからか!そりゃわかるわけないよな)


 考えてみれば、いつも異世界に行く前には必ずアビリティーユニットをメンテナンスする施設で現地語を簡易ラーニングしてるわけだが、この異世界はケティーのムーブデバイスで移動してきたために言語を簡易ラーニングしていないのだ。

 そういえば以前、ケティーにデートと称して買い物の荷物運びをさせられた異世界も言語がわからなかった事を思い出す。


 (となると、俺は言葉がわからないから翻訳されない限り、話しかけられて説明されても何言ってるかわからないし、文字も読めない。それ以前にこの異世界の技術が地球と違いすぎるというか、地球より遙か先をいってそうだから詳しく解説されても理解できるかわからない……リーナは当然わかるわけがないから、もうケティーに丸投げするしかないな)


 そう思って1人頷く。

 ここで自分が何かできることはない。

 これは仕方がないことだ……


 そして、その事はケティーもわかっていたようで、女性と会話しながらこっちを向いて女性に一様は自分とリーナの事を紹介し、軽く会釈する程度の挨拶を交すがすぐに2人は会話、もとい商談に戻る。

 どちらにしろ、値段の交渉などは商人のケティーに任せるしかないのだ。

 後はただ待つのみである。




 ケティーと女性は2人の目の前に投影されて浮かび上がった資料を見ながら話し込む。

 時に2人はジェスチャーを交えながら、よくわからないがあーだこーだ言って商談を進める。

 端から見てる分には分からないが、値段の交渉をしているのだろうか?

 それともセキュリティーのシステムについて交渉しているのだろうか?


 設置するセキュリティーがより厳重でシステムが複雑になれば、その機材も大きくなったり、専門的になり素人では簡単に配置する事が難しくなってくる。

 何より見た事ない機械やシステムなどブラックボックスすぎてDIYをやるような感覚で気軽に素人が設置など不可能だろう。


 だからこそ、ギルド本部の建物へのセキュリティーシステムの設置にはこのSF世界の施工業者に設置に来てもらわないといけないが、その人件費や工事にどれだけの規模がかかるのかなども問題になってくる。


 大がかりになれば、建物全体を工事しないといけないかもしれない……そうなれば、建物に足場を組んでという事もありえる。

 つまりはこのSF世界の住人をあの異世界に招き入れないといけない事になる。


 (う~~ん、マジでこれ大丈夫なのか?って思えてきたな……警備を厳重にする改装をしようって提案したのは俺だけどさ)


 そう悩んでいるとケティーと女性は商談を終えたのかお互い笑顔で握手を交すとそのまま女性はどこかへと去って行ってしまった。

 そしてご機嫌な様子でケティーが自分とリーナの方へとやってくる。


 「終わったよ!いや~中々いいセキュリティーになりそうだね!」

 「おつかれ、一体どんな感じのを頼んだんだ?」


 そう聞くとケティーがニヤーっと笑う。


 「それはだね……これだよ!」


 そう言ってケティーは自分の目の前に資料のようなものを投影して浮かび上がらせる。


 その目に前に投影されて浮かび上がった資料とケティーの説明によれば、まず建物の敷地全体にレーザースキャニングセンサーを設置、レーザー光を道に面した入り口や裏手、周囲にすべて張り巡らせ常時スキャニングを実施。

 侵入する者がいればすぐに警報を発するシステムを取り付ける。


 尚且つ、建物の外部には屋外監視システムとして赤外線とレーザービームを放つ屋外侵入監視センサーを建物全周囲カバーできるように設置し、人の体温を感知すると自動的にライトが点灯するセンサーライトも複数設置する。


 それだけでなく防犯カメラも複数台設置し、尚且つ光学迷彩で見た目には見えず、プロペラ音もサイレント機能で出なくなったステルス監視ドローン数台を建物上空とその周辺に浮遊させて警戒する。


 ……という感じらしい。


 「どう?いい感じでしょ?」


 ケティーは笑顔で言うが、どうにもしっくりこなかった。

 なんというか肩すかしをくらった気分だ。


 「う~ん……これ、なんか地球の警備システムそのままじゃね?なんていうか、こんなSFバリバリな世界なんだからもっとこう……何て言ったらいいかな?ハリウッド映画で出てきそうな感じのやつ想像してたんだけど」


 語彙力が貧困なのはご遠慮いただきたい。

 日本にいた頃は普通の高校生、しかも無趣味で世間に無関心だった自分がマニアックな近未来SF用語など知ってるわけがないのだ。


 そんな自分の感想を聞いたケティーは真顔で一言こう告げた。


 「いや、さすがにこの異世界の最先端技術導入したら私の財布がすっからかんになるよ?」

 「……ですよねー?」


 うん、そうだよな。

 商人とはいえ、ケティーにも予算はあるもんな……出せる額に限度はあるもんな……

 過度な期待をしていた少し前の自分を殴りたい。


 「それに、最先端じゃなくてもこの異世界の標準技術レベルだと普通に設置するだけでもサーバーだったりを置く施設が別途必要になるから、まぁ厳しいよね?」

 「なるほど……」


 要するに、買えなくはないが広さが足りないらしい。


 「一方でこの異世界では川畑くんの時代の地球の技術レベルのものだったら()()()()()()()()()()()()()になるから川畑くんの時代の地球で同じシステム買うより安くで購入できるんだよね」

 「あ、なるほど……まぁそうだよね?こんな近未来SF世界から見たら現代の地球の技術なんてカビが生えた古くさい技術だよね?うんうん、わかるよ?」


 現代人は今の文明をデジタル社会、一昔前をアナログ社会と呼ぶが、このSF世界からすれば現代の地球がアナログ世界に見えるだろう……

 なんだか文明の差を感じて地球人類が、そう自分が負けたような気分になる。


 ごめんよ地球人類の文明……俺が不甲斐ないばかりに勝手にそんな風に思い込んで……

 でもここじゃレトロとか言われてるらしいぜ?

 なんでもう少し技術の進歩を頑張らなかったんだ?地球人類の科学者たちよ?


 金か?やはり金か?

 研究資金がないからなのか?

 それとも狂人は戦争とエロの探求が科学を発展させたとか意味不明な事を抜かすから第3次世界大戦が発生してないのが原因とか、表現とエロの規制が加速したから衰退したとか抜かすのか?


 それ言ったらもう人類に先はねぇよ……


 「川畑くん……なんか1人で勝手に落ち込むの止めてもらえる?」


 ケティーに言われて思考を元に戻す。

 そうだ、今は地球の技術の敗北に沈んでいる時ではないのだ。


 「あ、あぁ……ごめん。で、導入するセキュリティーはそれだけなのか?」

 「まぁ、後は建物の内部にも防犯カメラを設置とかかな?でもね!いいものは手に入れれたよ!」

 「いいもの?」


 そう聞き返すとケティーはニターっと笑って新たな資料を目の前に投影する。


 「これこれ!レーザートラップ」


 それを見て一瞬固まってしまった。

 うん、これ色々とあかんやつや!


 「なぁ……大丈夫なのこれ?」


 念のために聞くとケティーは笑顔で答える。


 「大丈夫!私達がいる時は発動しないから!建物に誰もいなかったり、夜寝てる時とかに発動するから!」

 「いや!発動する時の事じゃなくてね?まぁそれも大事だけど!身の安全のためにも、とっても大事だけど!!これバ○オハザードの映画に出てくるサイコロステーキ隊長を製造したやつだよね!?そこんとこ大丈夫なの?」

 「ロ○クマンにも出てくるよ?たぶんそっちが先じゃない?」

 「……いや、正直俺は日本じゃ無趣味・無関心高校生だったから仕方ないけど、なんで異世界人のケティーが俺より日本のサブカル知ってるの!?」


 思わず叫んでしまったがケティーは笑うとすぐに話を進めてしまい、スルーされてしまった。


 「まぁ、レーザートラップに関してはそれなりに設置に工事がいるけど、他のセキュリティーに関しては業者を呼ぶほどじゃないから物さえ手に入ればすぐに戻って設置できると思うよ?」

 「いや、そんなんでいいか?DIYのノリで素人が軽く設置できるレベルなのか地球のセキュリティー設備は?まぁ、一度動画アプリで調べてみるか……屋外侵入監視センサーの取り付け方」


 とにかく、セキュリティーシステムが決まったならもうここには用はないだろう。

 長居してもフミコが怒りそうだし、この異世界はSFしすぎているせいで自分がお上りさん丸出しになっているのがどうにも恥ずかしくて居心地が悪い……


 だから、さっさと帰ろうと言おうと思ったところでケティーが追加の買い出しを提案してきた。


 「川畑くんあと、もう一ついいかな?」

 「今度は何を買うんだ?」

 「ふふ~ん、リーナちゃんの護身用グッズだよ!」


 そう言ってケティーはリーナの背後に回って両肩に手を置いて笑って見せた。

 なるほど、確かにそれは必要だろう。

 しかし、見た感じこのフロアには個人の護身用携帯グッズはないようだ。


 つまりはまだまだこのSF世界での買い物は続くと言うことだな……

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