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3話

「あー、なんというか、すごいな……」


 なんというか、女という感じがする。それも肉食系の。


「これが5年前の話ね。高校を卒業してから2年間も色々あってね。今は大学なのだけど大学に入学すると同時に一人暮らしを始めて明人を迎えに──」

「ちょ、ちょっとまて、まだ続くのか?」

「あら、私ったらついつい話し込んじゃって」


 さらに二年間の思い出を語ろうとしている三雲さんを止めようとすると自分がずいぶん熱をこめて話していることに気づいたのだろう興奮で少し赤く染まっている頬へ手を当てて恥ずかしそうにする。


「それにしても難病すら治すとか知識と知恵を与えるとか本当に何でもありだな」

「んー、そうなんだけどねー。でも便利すぎて何か大きなことをすると余波が怖くてね。世界平和のために全人類洗脳とか洒落にならないでしょ?」

「それは、確かに危ないな……」

「だから、世界に影響がない範囲でこそこそしてるんだ」


 なんというか、大きすぎる力っていうのも不便なようだ。


「じゃあ、お兄さんに力をあげようか」


 そういって、手を差し向けられる。これで俺も未来予知能力sy──


「はい、おわり」

「え? 早くないか? なんかこう、ぽわっと光るとか」

「光って欲しかったの?」

「いや、そういうわけじゃないけどな、もっとなんかあってもいいかなって思ってな」

「言いたいことは分かるけどね」


 くすくすと明人は笑う。こいつワザとか!


「私にはくれないのかしら明人の……すっごいの」

「悠ねぇには知識と知恵をあげたでしょ。それはそれでかなりすごい能力なんだよ?」


 後ろから抱きしめられた明人があごを持ち上げられ見上げるように三雲さんの方へ顔を向けられて艶かしく能力の催促をするがすげなく断られている。明人うらやましい。

 と、思っていると目の前がぶれ暗転し、まるで別の風景が流れ込んでくる。


「え?」

「何が見えました? 制御されてない能力はなにをみるかわからないかr──」

「女の子が……暴漢に襲われて……っ!」

「あら、それは大変ね」

「あー、そういう……」


 二人は何でもないことのようにそういう。


「女の子が! 暴漢に襲われてたんだぞ!? どうしてそんなに冷せ──」

「加藤さんそれは違うわ。女の子が暴漢に襲われる未来よ。それは確定してない未来の出来事なの」

「それはっ! ……そう、なのか……そうだよな、これは未来予知能力で……なぁ、この女のこの子と助けられるか?」

「え……助けるつもりなの?」

「そりゃあ、当然だろ! 助けられるんだからっ!」


 胡乱気な目を向けてくる明人に思わず立ち上がって食って掛かる。


「んー、その未来は何時のこと? 何年何月何日の何時何分なの?」

「っ!? そ、それは……分からない」

「それでよく助けるなんていうね」

「でも、お前なら……!」

「助けられるだろうね。で? 信者でもない人間になんで僕が目を向けないと駄目なのかな? 神様の力はそんなに便利に使えるものじゃないんだよ? それにそんなことなんだよ僕にとっては……全てを助けることもできるけど全てを救うわけには行かないんだよ」

「それじゃあ、俺はどうしたら……」

「お兄さんのその力は理不尽をはねのけることのできる力だよ。力は願いなんだ……だからもっと願えばいいんじゃないかな」

「願う……」


 俺は目を閉じる。助けたい。助けられる力があるなら……助けたい!!





 私、|曙≪あけぼの≫|美晴≪みはる≫は最近恋をしました。

 それは、夜になるとんな道を通ってもずっとずっと家の前まで着いてくる足音に悩んでた頃。


 うちはお母さんと二人暮らしでお母さんを心配させたくないので相談することもできず……。なるべく明るいく人の多い道を選んでいるんですが……。正直怖くて仕方なかったです。


 それでもついてくるだけで何かをしてくるわけではないとそんな風に思ってしまったのが間違いだったのでしょう。


 お母さんの誕生日だからと急いだのも悪かったのでしょう。近道である公園の奥へ進んだとき……私の後ろからついてきた足音が急速に近づいてきて……!


「おーい、お嬢さん。こんな暗い道を一人で歩いてたら危ないぞ」


 前方から声が聞こえました。それが私と彼の出会い。

 彼が話しかけてくると同時に後ろからついてきていた足音は止まり離れていきます。


「あ、ありがとうございます」

「おう、気をつけろよ」


 前方から声を掛けてくださった彼はそういって二カッと笑います。私は思わずその笑顔に見惚れてしまいます。


「ん? どうした?」

「い、いえ! ほ、本当にありがとうございました! そ、それでは!」


 私はお礼を言って走ってその場を離れます。きっと今の私の顔は真っ赤になっているでしょう。




 あれからもちょくちょく彼、加藤さんに会います。

 加藤さんは不思議なことに私が夜、人通りの少ない場所を通ろうとするたびに現れるのです。


 そのことに気づいてからは私は会いたいなと思ったときはそういう場所に向かいます。加藤さんはきっと私の王子様なんです。


「おい、お前はなんでこんな道を通ろうって思うんだよ。明らかに女の子が一人歩きするには危ないだろ」

「一人じゃないですよ? 私と加藤さんで二人です」

「お前は……はぁ、偶然、偶々俺が居たからよかったが俺が居なかったらお前どうするつもりだったんだよ……」

「……? 加藤さんは私の王子様だからきっと私のピンチには颯爽と現れてくれます」

「……はぁ、何だってこんなことに……」


 加藤さんは飽きれた様に溜息をつき呟きます。私、勇気を出せ!


「そんなに心配ならLIME交換しませんか?」


 今までガラケーだった私は最近買ったばかりのスマホを取り出し加藤さんに見せる。


「LIME……? あぁ、あれか正直よくわからんがいいぞ。……それでどうしたらいい?」

「えっと、私も詳しく知ってるわけじゃないですけど、こうやってこうやって……近づけてフルフルです!」

「お、おぅ」


 スマホを取り出した加藤さんとLIMEの交換をする。がんばった私!


「えへへへ、へへへへ」

「はぁ、ほら家の前だ。またな」

「あっ!……はい……またです!」


 何時の間にかうちへ着いてました。でも、今日はLIMEの交換もできたし、ふふふ。





「あーあ、言わんこっちゃない……あんなに依存させて……かわいそうに」

「……」

「第一、助けるだけならさっさと襲わせて犯人をぶちのめせば早いのに……あれじゃあ、真綿でじわじわ締めていってるだけだよ」

「明人……人はそこまで簡単にいかないわ」

「うん、分かってるつもりだけどね。あぁ~うまく行かないね。本当に……」


 神様……か。


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