2話
祈っていた。毎日毎日ただただひたすらに祈っていた。徐々に不自由になるこの体を恨んで、そして純粋に祈っていた。この狭いベットの中にずっとずっと何もできずに縛り付けられるくらいなら死ぬことでもいいここから解放してもらいたかった。
それでも神様はやってこない。
祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る祈る。
お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします。
「君の声が一番近かったから。君の望んだ神様じゃないけど僕が君を助けてあげよう」
そして、その声と共に私の祈りは通じた。
目が覚める。光、それから……ぼんやりとした像。目をこする。自分の手で……!! 自分の手で!!?
「う、ごく? あっ、あ、あ、あぁぁぁぁああ!!」
少し違和感はあるが昔のように、動く! 体が動く! 奇跡? これは奇跡? 神様が……いや、ちがう、昨日のあの声……私の望んだ神様じゃないって……じゃあ、誰が……?
「え……っ! 三雲さん!!? あ、あなた、どうして、せ、先生、先生! 大変です! せんせーい!」
私が歓喜に打ち震えているとちょうど看護師が入ってきた。その看護師は私が動いてることを確認すると目を丸くした後、転ぶ勢いできっと私の主治医だろう先生を呼びにいった。
「おはよう」
昨日と同じ声。私は顔を跳ね上げ声のしたほうへ顔を向ける。そこにはそれなりに整った顔立ちをした黒髪の少年がいた。
「お、はよ……ございます。神様」
「神様じゃないけどね。僕は■■明人。多分苗字は聞き取れないから明人って呼んでくれればいいよ」
「は、い……明人、様」
「様も要らないのだけど」
困ったように笑う明人様。いや、明人。私の神様。
「はい、明人」
「……うん! そうそう、それでいいんだよお姉さん」
一瞬目を見開いた後頷きくすくすと笑う明人。見れば見るほど普通の子供だ。
「明人は、神様じゃないなら……何なの?」
「ん? 何なんだろうね……神のごとき者? かな?」
明人は一瞬考えそう答えた。神ではない神のごとき者。私の願いを聞き届けてくれた私にとっての神様。明人は神ではないというけど私にとっては神様だ。
「私の祈りを……聞いてくれたの?」
「うん、ここから助けてって。そんな祈り。鳥かごの中の鳥が時たま願う願い事に似てたかな」
明人はどこか遠くを見るように優しそうに悲しそうに笑う。
「鳥かごの中の……鳥。そうかもね……私に自由はないから……」
確かに私は助けられた。そうだ、でも忘れていた。私はベットに縛り付けられているだけではない。私の家は裕福だ、私を病院の個室に閉じ込め治療費を払い続けられるくらいには裕福だ。
例えベットから解放されたとしても私は──。
「お姉さんは自由になれるよ」
「え?」
「望んだでしょ。ここから助けてって、だからお姉さんが望めば自由になれる」
「……?
「お姉さん。中高の勉強って分かる?」
「え……私中学は通ってなくて高校も今年からだ、か……ら? ……え? あれ?」
「あんまりやりたくはなかったんだけど、お姉さんは小学生から知識レベルがとまってたからね。そこらの大人より上等な知識と知恵を与えたから、まぁ、聖書でいうなら禁断の果実を与えたって所かな……?」
私の知らない知識が私の中にある。それも違和感なく、それがどんなに異常なことか分かるがそれと同時に望めば自由になれるという言葉の意味も分かる。
私は親に縛られる生き方をしなくてもいいと。そのための知識も知恵もある。
私は私が望めば今すぐ自由になれる……! でも、それよりもほしいものができた。
「今はまだ……」
「ん?」
「今はまだ力をつけます。確かに十全に使えるでしょうけど、だからこそ年齢というものがネックになってきます。3年です。私が高校を卒業したら、私が明人を迎えに行きます」
「え? なにをいって──」
「大丈夫です。安心してください、私の知識は完璧です」
「いや、そりゃあ、僕が与えたものだから完璧だと思うけど、なんかおかしくない?」
「いえ、何もおかしくありません」
そう、何もおかしくない。だって、私はこの小さな神様に恋をしてしまったのだから。




