三話
さて、今日から魔力制御の練習が決まって、頑張るかと思いながら、食事を再開しようと、パンとスープを食べ始めたら、シャロンが話しかけてきた。
「ノエル、串肉食べないの? ならちょうだい?」
と言ってきたので、シャロンの方を見ると、俺が喋っている間に、自分の分を食べ終わったが、朝御飯を食べなかった為に足りないらしく、俺が手をつけていなかった、串肉が気になっていたみたいだ
「シャロン、これは食べないんじゃなくて、串肉は後で食べようと思ってたんだよ。もしかして足りなかったのか?」と聞いてみる
すると、お腹を触りながら頷いた。すると話を聞いていたミケナが
「それなら、ノエルの分じゃなく私の分の串肉をあげるニャ」と言って、串肉をさしだす。
そのやり取りを見ていた母さんが
「あげなくてもいいわよミケナ、それはあなたが食べなさい。シャロン、スープなら余ってるから、ノエルの分を貰おうとしないで、こっちを食べなさい」と言ってスープのお代わりをすすめる。
「スープより串肉の方がいい」と、スープと串肉を交互に見たあと、ダメだろうなと思いながらも、どこか期待するような表情で、俺の方を見ながら言った。
そんな言葉とシャロンの表情を見たあと、自分の串肉を見て、ダメと言える訳もなく仕方ないかと思い、シャロンに串肉を差し出す
「ノエル、いいの?それはあなたの分なのよ?」と母さんが、聞いてくる。
「いいよ、お母さん気にしないで、そのかわりスープをもう少しちょうだい」といってお皿を渡す。
すると、満面の笑顔でシャロンが
「ありがとう、ノエル」と言いながら、串肉を美味しそうに食べた
「本当にノエルは、シャロンに甘いわね、もう少し何とかなんないの?」 と、事のなり行きを見ていた、ティナがちょっと怒った感じでいってくる。
「そんなことないよ、今回はシャロンだったけど、ティナ姉が、同じような状況だったら、同じようにしていたよ」と返す
すると母さんが、スープのお代わりを、差し出しながら。
「そうね、ノエルは優しい子だから、ティナにも同じ様にしてくれるわ。でもこうゆう事は無い方がいいから、今日の晩御飯から少し量を増やす事にするわ」と言った
それを聞いた、ティナは、若干言い足りない感じだったが、分かったわと言って、残っていた自分のスープを平らげにかかった。
その後は、何事もなく、食事が終わり、母さんとミケナは、仕事に戻り、俺とシャロンとティナは自分達の部屋に戻り、食休みしていた。
部屋に戻った俺達は、ティナと俺は、椅子に座って寛ぎ、シャロンは自分のベッドで満足そうな顔をしながら横になっていた。
それから少しして、ティナが話しかけてきた。
「ねえ、ノエル夜まで何するの?」
お昼ご飯を食べて、頭を俯けながら少し眠りそうになっていた俺は、ゆっくりと頭を起こしてティナの方を向いて、少し考えて話す
「特に考えて無かったけどティナ姉は、何かやりたい事でもあるの?」と返事を返す。
「じゃあ、わたしと一緒に読み書きの練習をしましょう。あんた、お母さんに魔法を習う代わりに、読み書きの練習を今日からするって言ってたわよね」と確認をするように聞いてくる
それを聞いた俺は、そういえばそんなことを言ったなあと思い。
「分かったよ、ティナ姉夜まで読み書きの練習に付き合うよ。もちろんそこで今にも、寝そうになってるシャロンも一緒に」と言いながら、シャロンの方に顔を向ける
「もちろん、そのつもりよ、今寝ちゃったら、夜に寝られなくなるから、起こして連れて行くわよ」と、言って俺とティナは二人で寝そうになっていた、シャロンを起こして、書斎に連れていき、読み書きの練習を始めるのだった。
それから夕方になり、ミケナがお店を閉める準備をし始めるので、俺達も邪魔にならないようにしながらお手伝いを始める。お母さんは、湯浴びのためのお湯と晩御飯の準備に取りかかる。するとしばらくして、父さんが帰ってきた。
「ただいまエステル、今日の稼ぎも中々だったぞ」と言いながら、料理中の母さんに、薄い板らしき物を見せた。
それを見た俺は気になったので聞いてみる。
「父さん、それ何?稼ぎって何処にあるの?」
ただいま〜と言いながらシャロンを抱っこしていた父さんが、俺に顔を向けて話す。
「なんだ? これの事か? そういえばまだ、お金の事について、まだ話していなかったな、ちょうどいい話してやるか」と言いながら、椅子に座ろうとしたら。
「その前に、あなたお湯の準備ができてるから冷めない内に湯浴びをしてきて」と、言って母さんに洗い場に追いやられていった。
それを見ていた俺は、タイミングが悪かったと思い、気になりながらも手伝いの続きを始めた。
そのあと、閉店の準備が終わったミケナとその手伝いをしていたティナが、リビングに顔を出してきた。
「お母さん手伝いが終わったわ」と、ティナが言って
「店長、閉店の準備と店の戸締まりが終わりましたニャ、これで失礼しますニャ」と、ミケナが言ってきた
「そう、二人ともご苦労様、明日もよろしくね」と、ミケナに顔を向けて言った
「帰るの? ミケナ」と言って、リビングにいた、シャロンが前からミケナに抱きつく。
「お疲れさまミケナ、また明日もよろしくね」と言いながら俺も、後ろから抱きつく。それにしても、ミケナって特に何もしてないはずなのに、何かいい匂いがするんだよな。何でだろ?それにほっそりしてるわりに柔らかさも感じるんだよな。おそるべし女体の神秘。
「分かったニャ、明日もよろしくニャ、店長に、三人ともおやすみニャ」と言いながら、ティナとシャロンと俺の頭を撫でたあと、裏口から帰っていった。
そのあとしばらくして、父さんが湯浴びから戻り、食事が始まった
「さてノエル、さっきの話の続きだがな、まずこれを見ろ」と言いながら、さっきの薄い板らしき物を見せてきた。
「これはな冒険者カードと言って、冒険者ギルドってゆう組織に加入しているやつなら誰でも持ってるやつだ」と言って、俺に渡してくる。
それを受け取った俺は、じっくり観察することにした、まずは大きさを確認してみる、大きさは、スマホぐらいで、厚みは、かなり薄い、次に手触りを確認してみる、手触りはつるつるとしていて、とても滑らかな感じだ、次に重さを確認する、重さは、ほとんど感じないぐらいか、特に変わった感じはしなかった。カードと言われても、違和感はなかった。一通り確認したところで、父さんに顔を向ける。
「表には、名前とランクとチーム名が刻印されていて、裏には特に何も無い、一見ただのカードに見えるが、かなり便利なカードだ」と言いながら、俺に手を差し出してくる。
俺は、その手にカードを乗せて続きを聞く。
「これには、色々な情報が詰まっているんだ。例えば依頼の達成率と失敗率、それと、今まで倒してきたモンスターの名前と種類、それと、ギルドに対する貢献度、それから、このカードが自分を証明する、身分証にもなるため、表彰歴と犯罪歴もこの中に情報として詰まっている、そして最後に、俺が一番便利だと思っているのが、このカードがあれば、嵩張るうえに重たい貨幣を持ち歩かなくても大抵の所は、このカードでお金のやり取りができる事だな」と言って、カードをヒラヒラと振って見せる。
なので気になった部分を聞いてみる。
「それって、僕も冒険者ギルドに入ったらもらえるの?」 と、聞いてみる
父さんは、頭を縦に振りながら。
「すぐにでも発行してもらえるが、だいたいは10歳ぐらいに成ったら、親の手伝いや小遣い稼ぎで素材や採取物を個人的に売るために発行してもらうんだ、仮登録って感じでな、当然だが、クエストは受けることはできない」と、言う。
「分かったよ、じゃあ、次だけどその中に詰まっているって言う情報はどうやって確認するの?」 と質問する。
「俺も詳しいことは、知らないんだよ、このカード自体が、ダンジョンから持ち帰られた、オーパーツって言う、ほとんど解明されていない、古代文明の遺産から作られた物らしくて、貴重なものらしい。それで俺が、今、この場でもし確認できる情報があるとすれば、この中にいくらのお金が入っているかの確認ぐらいだ。それ以外の情報は、国やギルドが所有する特別な道具を使わないとだめなんだよ。それにこの中に入ってる情報は、俺が知ってることしか入っていない、おもにこの中の情報を確認するのは、俺以外の第三者だけなんだよ。俺がどんな人物かを確認するためにな」
「そうなんだ、ありがとうよく分かったよ。じゃあ最後に、そのカードでお金のやり取りってどうやってするの?」と聞いてみる。
「そうだなやって見せた方が早いし分かりやすいな悪いけどエステル、カードを出してくれ、ついでに今日の稼ぎも渡しておく。ノエルこっちに来い」と言って、俺に来るように言う。
俺は頷き、父さんの方に行く、すると父さんが俺を膝の上に乗せて、後ろから抱き締める様に両手を前に持ってきて、カードに手を翳すと、なんと、カードが淡く光だし、少し上の方に、タッチパネルの様な立体映像が浮かび上がった。すげえ!なんだこれ!こんなの始めて見たどうなってんだ!? っと、おもわずガン見していると、母さんの方も、操作したのか同じようになっていた。すると、父さんが、そのタッチパネルを操作して数字を打ち込んでいく。すると、パネルに譲渡しますか?と言う文字が表示されてその下に、はい、いいえが表示されていたので、父さんが、はいの文字を押したら、譲渡されましたと言う表示がされたのを確認し、母さんの方を見る、すると母さんも、確認を終えたのか、父さんに。
「確認したわ、今日も十分に稼げたみたいね、よかったわご苦労様、あなた」と言ってカードをしまい、父さんに笑顔を向ける。
すると、父さんが、照れくさそうに。
「これぐらいは、当たり前だ、気にするな、新人がもう少し使える様に成ったら、もっと稼げるようになるから期待しててくれ。それと、どうだったノエル、少しは分かったか?」と言って、さっきから、異世界の謎技術に興奮していた、俺に聞いてくる。
「すごいね父さん、これどうなってるのか分かんないけど、ものすごい技術で作られていて、とても便利な物って事がわかったよ」と、返事をする。
「そうか、まあこういった物に興味があるなら、将来は、研究職や技術職に就いてもいいかもな」と、言いながら頭を撫でてくる。
「それもいいかも、でもその前に、魔法について勉強したいんだよ、そのために、このあと母さんから、魔力制御のやり方を教えてもらうんだよ」と言いながら、父さんに膝の上から下ろしてもらい、自分の席に座り直す。すると、父さんが、母さんを見ながら。
「おいまじかよ、ノエルに魔力制御なんか、早すぎじゃないのか、普通だったら10歳ぐらいから始めるもんだろ?危なくないのか? 」 と、母さんに確認する。
「危ないに決まっているでしょ。それに本来ならそうよ、でもノエルが、読み書きの練習とお手伝い頑張るから、どうしてもって言うから、まあ、一度お試しで、
教えてあげようと思ったのよ。できなくても問題ないし、魔力制御の感覚だけでも掴めれば、ノエルにとってはためになるし、でも生活魔法以外は絶対に教えないけどね」 と、言って俺の方を見る
おかしい、読み書きの練習は頑張ると言ったけど、お手伝いを頑張るとは言ってない気がする、やくに立ちたいとは言った気がするがと昼間のやり取りを思い出していると。
「ノエル、絶対に無理はするなよ、危ないと思ったらすぐに止めるんだぞ。あと母さんに魔力制御を習ったら、書斎にある、魔術書を読むのを禁止する。分かったな」と言って父さんが強めに念押ししてくる。
「分かったよ、絶対に読まないって、約束するよ」と、父さんに、真剣な顔して返事をする。
「そうか分かった、ノエルを信じよう、魔力制御を失敗するだけなら問題ないが、魔法の暴発だけは、取り返しのつかない事になりかねないからな、絶対に約束だけは守れよ」と言って、この話は終わった。そのあとは、今日はどうして過ごしたかとかたわいもない話をしながら、晩御飯は過ぎていった。
「それじゃあ、湯浴びの準備が出来たから、シャロンから順番に、体を拭くから洗い場にいらっしゃい」と、リビングにいた俺達に、洗い場から戻ってきた、母さんが呼びに来た。
「わたしは、拭かなくていい、汚れてないから」と言って、椅子の上で眠そうにしていたシャロンが嫌がった。
それを聞いた母さんはすこしイラっとした感じで。
「冬の間は寒くて、湯浴びするのも嫌になるかもしれないけど、人は何にもしなくても汚れるものなのよだからうちは、最低でも二日に一回は、湯浴びをするのよ。昨日はしなかったわよね、だから今日はするのよ、それに済ましたらすぐにでも、寝てもいいから」と、言って椅子に座っていたシャロンをすこし強引に抱っこして連れていった。
それを、苦笑いで見送った父さんが、俺達に話してくれた。
「あれは、しょうがないんだ、エステルは元冒険者だったうえに女だから冒険者時代は、クエストやダンジョンを攻略するために、数日間汚れたままなんか当たり前だったんだ。湯浴びなんてほとんど出来なかったんだ、それがかなり嫌だったらしい、その反動でこの町に完全に住むにあたって店舗兼住居を建てるのに、わざわざ洗い場まで作ったんだ、ほんらいなら部屋に、桶に湯を入れて持っていってそこで、簡単に体を拭いたりするもんなんだ」と話してくれた。
そう思えば、家って普通か普通よりは上の生活ができてるんだな、お湯だって沸かすのにお金がかかるし二日に一回のちゃんとした湯浴びって結構贅沢かも。
そんな風に考えながら、待っていると。
「あなた、シャロンが湯浴びを済ませたわ、部屋に連れていって寝かせてあげて」と、言ってシャロンを連れてきた。
「わかった、ほらシャロン、父さんが部屋に運ぶからこっちにおいで」と言いながら母さんから、シャロンを受け取り部屋に運んでいった
二人を見送った母さんがこっちに顔を向けて
「それじゃあ、二人ともいらっしゃい、三人で済ましちゃいましょう」と言いながら、俺とティナを洗い場に連れていった。
それからしばらくして、湯浴びを済ませた、俺と母さんはリビングにティナは部屋に戻って寝てしまった父さんはここにいないから書斎か部屋にいるんだろう。
「さてと、それじゃあ魔力制御についてなんだけど、その前に、魔力について説明するわね」と、言って正面に座る俺を見る。
「魔力とは、いまだに解明されていない、魔法や魔道具、それ以外にも無くてはならない謎の力よ」と、言ってすごく真面目な顔をして俺を見た。
俺は、どうリアクションしていいのか分からず固まってしまった。なぜなら、地球出身の俺が、魔力だけを説明するなら、今母さんが言ったような説明になるだろう。だか、生まれも育ちも、この世界の母さんがそんな説明をするとは思わなかった。
「そうよね、そうなるわよね、だって母さんだって魔法を習い始めた時に、魔力については、ほとんど教わらなかったのよ。人や生き物、はては植物や鉱石にだってある力なんですもの分かるわけないじゃない?これが人だけにあったら少しは、魔力が何なのか解るかもしれないけど、ありとあらゆる物にあるから、とりあえずこの世に無くてはならない物と、母さんは覚えたわ」と言って、私なんか真理を言ったみたいな感じで一人で納得していた。
その姿を見た俺は、何このカワイイ女性と魔力とまったく関係ないことを思ってしまった。だって普通、もう少し経験や知識から魔力について話すとばかり思ってたのに全くそんなことはなかった。俺は、そんな母さんに、苦笑いしながら。
「分かったよとりあえず魔法に少しでも関わる物すべてに必要な、謎の力ってことでいいんだよね」と、簡潔にまとめて返事をする。
「そうよ、とりあえずそれで十分よ、もし魔力について深く知りたいなら、これから少しずつ、勉強していけばいいわ」と返す。
「じゃあ、魔力はどうやったら手に入るの?」と、聞いてみる。
「それは簡単よ、人は生まれながらにして、多かれ少なかれ備わっているものノエルにだってあるわよ、ただ、魔力を感じるには、魔力はこんな感じのものって体験しないとダメなのよそれ以外は、スキルや種族特性を使って感じるのよ。でも今は、関係ないから、その話はまた今度ね。それじゃあ、ノエルには、魔力を体で感じてもらうわ、こっちにいらっしゃい」と言って、椅子ごと後ろにさがり、俺を膝の上に座れるようにする
俺は、とりあえずゆう通りにするべく、椅子から降りて、母さんの元にいく。
すると母さんは、俺を後ろから抱き上げ膝の上に乗せる、ちょうど母さんの胸が後頭部にあたって柔らかくて気持ちがいいが、今はそっちに気を取られないようにする。さっき間近でさんざん見たしね
「じゃあやってみるけど気分が悪くなったり、なんかおかしいって感じたら、すぐに言いなさい、分かったわね。じゃあ、私の魔力をノエルにゆっくり流すから感じてみなさい」と言って、俺の手を握り、そこから魔力を流し込んできた。
あ〜〜・・・・・・これは、どう表現したらいいのか分からんな、とりあえず、この外から俺の体に入ってくるなんとも表現しづらい物が母さんの魔力ってことは、何となく分かった。が、それじゃあ、受け入れたあとの魔力はどうすればいいのか分からない、聞いて無かったし、なんかゆっくりとだけど体内に溜まってきてるのが分かるし。そうゆう訳でちょっと焦りながら母さんに聞く。
「お母さん、魔力は何となく分かったけど、この取り込んだ魔力はどうなるのどうすればいいの?」と早口で聞く。
「何言ってるの、これからが魔力制御の本番でしょうもしかして、初めて魔力を感じて、怖くなったの?しょうがないわね。じゃあこれ以上はやめておきましょうか? あと、ノエルが取り込んだ魔力は心配しなくても、勝手に馴染んでしまうから、違和感はあるでしょうけど問題はないわ」と顔は見えなくて分からないけど、若干ニヤニヤしていそうな雰囲気をだしながら聞いてくるので、図星をさされてイラっとしたので続きを強行することにする。本当は止めてもよかったんだけど。
「大丈夫、問題ないならいいよ、続きをお願いします」 とツンとした返事を返す。
すると母さんは、俺を安心させるように頭を撫でながら。
「べつにからかった訳じゃないのよ、怒ったのならごめんなさいね。最初は誰だって通る道なのよ、お母さんだって、最初はノエルと同じだったんだから、その事を思い出して、笑ってしまいそうになっただけよ気にすることはないわ」と言ってくるので。
「怒ってないよ、すこしだけ体の中に溜まってくる魔力に怖くなったのは、本当の事だし」と、返事をする
「やっぱりそう感じるわよね、ごめんなさいね。最初に言っておけばよかったわね、魔力制御を練習するのに、体内に魔力を溜める必要があったのよ」
「お母さん、もう分かったから、僕は大丈夫だから続きをお願い」と、先を促す。
すると母さんは、深く深呼吸して、意識を切り替え。
「分かったわ、じゃあ続けるけど、もう少しだけ、ノエルに魔力を流し込むわね、そのあとに私の指示にしたがって、魔力を動かすのよ」と、言って魔力をさっきより早く、流し込んでくる。それにたいして俺はゆっくり呼吸しながら、受け入れる。すると自分でも結構溜まったか?と、思い始めた辺りで、母さんが、魔力を流し込むのをやめて聞いてくる。
「これぐらいかしら、魔力制御の練習をするには、十分なはずね。それじゃあ、どこでもいいから、一ヶ所に魔力を集中してみて」 と、母さんから指示がでたので、俺は素早く言われたようにしてみる。まず体全体に薄く広がる魔力を、改めて感じてみる。さっきまで違和感があったが、今はそれほどでもない、なのでゆっくりと魔力に意識を向けてみる。すると何となく動かせそうな気がしたので、まずは、心臓に集めることにする、一番分かりやすいしね。ゆっくり呼吸しながら、体内中に広がっている魔力を集める。ゆっくり・・・・・・・ゆっくり・・・・・・すると、できた! さっきまで、俺の体内に薄く広く流れていた魔力が、俺の心臓に集まった。お〜〜〜何かすごい不思議な気分、思わず声が出そうになった。
「すごいわねノエル、一回で成功させるなんて、普通できないわよ、最初はだいたい、体内に流れる魔力に慣れるのに、最低でも半年は掛かるのよ、その後に最低でも一年以上は掛かって魔力を一ヶ所に集められるようになるのよ。それなのに、今日初めてやったのに成功させるなんて。信じられないわ」と、母さんの驚いた声が聞こえてきた。
「いやいや、まだ魔力に完全に慣れた訳じゃないよそれに、まだ集めただけだし、これからこの集めた魔力を動かしてみるよ」と返事をする。それから、俺は心臓に集めた魔力を、まずは、左手にゆっくり持っていく、そのあとまた心臓に持っていき、その繰り返しで、右手、左足、右足、最後にまた、体の隅々に魔力を薄く伸ばして広げていく、なんだが段々楽しくなってきて、この一連の動作を三回ほど繰り返した所で、母さんから声が掛かった。
「ノエル、十分よ、正直ここまで出来るとは思わなかったわ、お母さん、ビックリしすぎて何て言ったらいいか分からないわ」とかなり驚いている感じで話しかけてきた。
「ごめんなさい、驚かせるつもりは無かったんだよただ途中から段々楽しくなってきて、止められなかったんだよ」と言って、やり過ぎたかと少し落ち込む。
「大丈夫よ、正直、あまりにも呆気なく魔力制御ができたから、驚いただけよ、ごめんなさいね。お詫びと言ってはなんだけど、もっと後で教えるつもりだった生活魔法を教えてあげるわライトと言って明かりを灯す魔法よ、いいかしら、よく見ておくのよ」と言って座ったままで、手を持ち上げて正面につきだして。
「灯りよ」と、母さんが魔法を使った瞬間、目の前に、拳大の光の球が現れた! これが、俺がこの世界に転生して初めて見た、魔法だった。