二話
「二人とも、起きなさい、ノエル、シャロン、朝よ、早く起きないと、スープが冷めちゃうわよ」
この声は・・・・母さんか? なんだ?・・・もう朝なのか・・・昨日の夜は、シャロンがなかなか寝付けなくて、俺が相手してたんだっけ。そのせいで、寝るのが遅くなって、あんまり寝た気がしないんだけど、しょうがないからとりあえず、朝御飯を食べてから、どうするか考えればいいか。
そうと決まれば、早く返事しないと。
「おはようお母さん、今起きるよ、すぐに着替えるからちょっと待ってて」 と言いながら、横でまだ、夢の中にいる、シャロンを放置してベッドから降りて着替えを始める。脱いだパジャマを、母さんに渡して、畳んでもらう。そしてちゃんと着替えられたか、チェックしてから、気になったことを聞く。
「母さん、シャロンはどうするの?昨日はベッドに入ってからなかなか寝付けなくて、寝るのが遅かったんだけど?」 と言いながら、今だ眠っている、シャロンに視線を向ける。すると母さんが諦めた様な声で話す。
「しょうがないから、このまま寝かしておくわ。これ以上起こしても、グズるだけで起きないでしょうし」 そう言って、母さんは、俺を抱っこして、一階にある洗い場にに連れていく。そこには水の張った桶があり、それで顔を洗う。この時期は水が冷たく、かなり厳しい戦いになるが、顔を洗わない事には、朝御飯が食べられないので、我慢して挑むことにする。
「う〜〜冷たい、早く顔を洗わないと、ご飯が食べられない、え〜〜いままよ!」 まずは、桶に手を突っ込み冷たさを確認し、いつも通りに凹みつつ、気合いを入れ直し顔を洗った。
それから、片付けをしてから、今度は自分で歩いて、リビングに向かう。後ろから母さんが着いてきて、俺が毎日座っている椅子に近づくと、後ろから抱き上げ座らしてくれる。すると、先に座って待っていた、二人が挨拶してくる。
「「おはよう、ノエル」」
と、父さんとティナ姉が挨拶してきたので、返事を返す。
「おはよう、父さん、ティナ姉、遅くなってごめんなさい」と挨拶と遅くなったことを謝罪する。
「ノエル気にするな、遅くなったと言っても、少しだけだ。それより、シャロンはどうした? 」 と聞いてきたので、返事をしようとしたら。
「シャロンは、まだ寝てるわよ、ノエルが言うには昨日シャロンがなかなか寝付けなくて、寝るのが遅かったみたい、起こしてもグズるだけだから、寝かしておいたわ」 と、母さんが俺の代わりに返事をしてしまった。
それを聞いた父さんが、仕方がないなみたいな感じで頭を軽く振り、返事をする。
「ならしょうがない、シャロンの事は置いておいて、まずは冷める前に朝御飯を食べるとするか」と言ってみんなで食べ始めた。
そして、朝御飯をみんなが食べ終わり、お茶を飲んでいると、父さんが今日の予定を話してくる。
「俺は、今日もダンジョンに行ってくる。帰りは夕方になると思うから、あとは頼んだ、エステル」と言って、母さんの方を見る。
「分かってるわ、あなたも油断して、怪我しないように気を付けて」 と言って父さんを見る。 そして父さんは頷き、今度は、俺たちに話しかけてくる。
「ティナとノエルは何するんだ?」
するとティナが返事をする。 「今日も読み書きの練習をするわ」と返すので、俺も続けて答える。
「僕は、特にやることが無いから、シャロンと一緒にいるよ」と言って父さんを見る。すると、父さんは分かったと頷いて、出掛ける準備は出来ていたのか、リビングにあった荷物を持って出掛けて行った。
父さんが出掛けて行って、母さんが、お店の準備に向かうので、俺とティナは母さんの後ろを着いていく、なぜかというと、家の店のたった一人の従業員に挨拶するためだ。
そして、店舗部分に着くとそこには、お店の開店準備に奔走している彼女が居た。
「ごめんね、ミケナ遅くなって、私も手伝うわ」と言って、母さんが、開店準備に取り掛かる。
するとミケナが作業を中断して、こっちに向かってくる。
「大丈夫ですニャ、店長、問題ありませんニャ、それから、ティナとノエル、おはよニャ」と言って、頭を撫でてくる。
ここで、ミケナの紹介をする。 年齢は15歳で、 髪と瞳の色は茶色で、愛嬌のある可愛らしい顔をしている、身長は160㎝ぐらいで体型は、ほっそりとしており、かなり身軽な印象を受ける、胸の方は、多分だかCぐらいだと思う。あと語尾で分かるように、猫獣人である。 もともと孤児で教会で育ったらしい、最初は、俺とシャロンが生まれたことで、何かと人手が必要になったため、募集したところ、教会から紹介されて、うちで働きだしたらしい。最初は通いだったが、最近成人したため、教会を出ることになり、準備が出来たら、住み込みで働くことになるらしい。ちなみに俺が初めて出会った獣人でもある。
俺はミケナに視線を合わせ、両手を上げながら挨拶をする。
「おはようミケナ、抱っこしてほしい」と言って子供の時にしかできない特権をいかして。全力で甘える
「いいですニャ、ノエルは甘えん坊さんですニャ」と言いながら、屈んで、俺のことを抱っこしてくれる。
すると、ミケナの耳が近くなり、ピコピコ動く耳についつい手が延びてしまう
「ダメですニャ、ノエル、くすぐったいニャ、あまり触っちゃいけないニャ」と言いながら、くすぐったそうにする。
それを見ていた母さんが 「ダメよノエル、ミケナに関わらず、獣人族の耳と尻尾は大切な物であり場所なの、だから許可なく勝手に触っちゃダメなのよ」と注意してくる。それを聞いた俺は、ハッとなり、耳から手を離した。俺としたことが、ミケナのピコピコ動く耳の魅力に負けてしまい、若き衝動をおさえられなかった、中身はおじさんなのに、なんたることか。これがケモミミの魔力か。
「ごめんなさい、ミケナ、今度から気を付けるよ」と言いながらシュンとする
「大丈夫ですニャ、ノエルはまだ子供だから、私は気にしてないニャ、でも店長も言ったように、できれば触る前に、相手に触っていいか聞いてほしいニャ」と、笑いながら言ってきた
「それじゃあそろそろ続きを始めましょう、お店が開けられないから」と言って母さんが開店準備に戻る。
俺は、ミケナに下ろしてもらい、ティナと二人で二階にある自分達の部屋に戻る。
ここで、三歳になって自分である程度、動けるようになり、改めて、家の中を見て回った結果、こんな感じだった。一階は、店舗部分に調理場兼リビングと洗い場とトイレ、それから母さんが商品を作るための地下室兼物置があり、二階は居住エリアで、両親の部屋に俺達の部屋に客室に書斎があり、最後に屋根裏部屋がある。
「わたしは、書斎で読み書きの練習するけど、ノエルはどうするの? 」と、二階に着いたので、ティナが聞いてくる。
「僕も一緒に書斎に行くよ。見たい本があるから」と言って着いて行くことにする。そこでつい最近から読み始めた、初級魔術入門編の本を見る。
「ノエルは文字が読めないのに、難しい本を読むわね、魔法はもっとあとじゃないと教えてもらえないのに、先に文字を覚えるのがさきだと思うけど?」と言いながら、俺が読んでいる本を横から覗き込んでくる
五歳になって、幼いながらに赤い髪がよく似合う、俺が言うのもなんだが、美少女の片鱗を見せる、ティナが無防備に近づくのは、どうも落ち着かない、なので本は遠ざけずに、体だけ軽く離し説明する。
「読めなくてもいいんだよ、何となく見てるだけだから、分からなければ、母さんに後で聞けばいいし」と言いつつ、じっくり読み込んでいく。
なぜなら、ムト様から貰ったスキルの中に、完全翻訳のスキルがあり、本に書かれている文字はこちらの世界の文字だが、俺が読み始めると、すべて日本語に翻訳されて読めるのだ。
俺が、本に夢中になったことで、ティナは、文字の練習に励み出した。
それからお昼ぐらいになった頃、廊下の方から、俺を呼ぶ声が聞こえる。
「ノエル〜 ノエル〜 何処にいるの?」と、シャロンの声が聞こえる。俺は、読んでいた本を閉じ、ティナと顔を合わせる、するとティナがドアに視線を向けるので、仕方なく、俺が書斎から顔を出して、シャロンに話しかける。
「シャロン、やっと起きたのか? 下に行って、顔を洗ってこいよ」と言って声を掛ける。
するとシャロンが俺を見つけて、近寄ってきて抱きつく。
「おはよう、ノエル、お腹空いた、わたしのご飯は?」と、起きてそうそうにご飯の催促、寝坊したうえにまだ、顔も洗ってないし、パジャマのままだし、いったいこの子は何がしたいのか。
「おはようシャロン、と言っても、もうお昼前だけど、まず着替えて、顔を洗って、母さんに挨拶がさきだよ、ご飯はその後」と言いながら、部屋に戻して着替えをさせる。シャロンが脱いだパジャマをたたみ、着替えに問題ないかチェックする。確認が終われば、下に行き、洗い場で桶に水を入れ、水が冷たいとグズるシャロンに、顔を洗わせ母さんのいる、店舗部分に向かう。
「お母さん、シャロンが起きたよ」
「おはよう、お母さん」と俺が、母さんに声をかけたあと、俺の横に並んだ、シャロンが挨拶する。すると、カウンターにいた、母さんがこっちに向かってくる。
「おはようシャロン、お寝坊さんね、顔は洗ったの?」と母さんが聞いてくる、それにシャロンが頷きで返す。
「そう、それならいいわ、お腹が空いてると思うけどもう少し待ちなさい。今ミケナがお昼御飯を買いに行ってくれてるから、帰るまでリビングで待ってなさい」と言って、俺達をリビングに行くように促す。
「わかったよ、リビングで待ってる」と言いながら、シャロンをつれて行く。
リビングに着くと、シャロンを椅子に座らせる、おとなしく座っているように言い、俺は、二階に上がり、書斎に居るティナにそろそろ昼御飯だから、下に来るように伝える。ちなみに町に暮らす人たちは、基本的に朝と夜しかご飯は食べないらしい。人によっては昼も食べるけど、家は両親共に元冒険者と現役なため朝昼晩としっかり食べるのだ。
それから少したち、ミケナが昼御飯を買って戻ってきたので、いったん店を閉めて、みんなでご飯を食べる。
「お待ちどうさまですニャ、今日のお昼は、スープと串肉とパンですニャ」と言って、ミケナがスープの鍋をテーブルに置き、母さんがみんなの分を装う。その間にミケナがパンと串肉をみんなに配る。最後に母さんが確認しみんなで食べ始める。
「お母さん、さっきまで初級魔法の本を読んでたんだけど、全然意味が分からなかったんだけど?あとで少しだけ教えてほしいんだけど」 と、言いながら母さんの方を見る。
すると母さんが、呆れた顔をしながら。
「ノエルは、まだ全然文字が読めないでしょ? それに魔法を習うには早すぎるでしょうに、ノエルはまず焦らずに文字を覚えなさいその後に、魔力制御の仕方を教えてあげるわ、それから生活魔法も教えてあげるわ」と言われてしまった。
「じゃあ、明日から、読み書きの練習を始めるから、今日の夜から魔力制御の仕方を教えてほしい」と食い下がってみた。
「どうしてそんなに、魔法を覚えたがるの?何かあったの?」 と聞いてくるが、本当の事を言えるわけがない。
三歳になって、ある程度体の自由が利く様になったから、本格的に自分の持っているスキルを使って行動を起こそうと思ったが、それだと、面白く無いと思い直し、すこし遠回りをしたくなったと言える訳もなく
「特に何かあった訳じゃないよ、ただ今は、全然母さんの役に立ててないから、少し考えたんだよそしたら魔法が使えたら役に立つんじゃないかと思っただけなんだよ」と言ってシュンと項垂れてみる。
「そんなのノエルが気にする事じゃないでしょう、まったく、お母さんの役に立ちたいと、思ってくれたことはすごくうれしいわ。だから、魔力制御だけ教えてあげるわ、そのかわり絶対に一人で練習をしないでね。お母さんの近く、あるいは見える場所でしなさい」と言って、今日から魔力制御を習う事になりました。