プロローグ1
「ここは、何処だ?」と、 視線を巡らせるが、真っ暗で何も見えない。
俺は、何故こんな真っ暗な場所に居るのか、さっきまで自分が何をしていたのか思い出すことにした。
そして自分が何をしていたのか思いだし、そして半信半疑ながら理解する。
「そうか、これが世間一般で禁忌とされる事をした者の末路であり、これからの居場所になるのかと」そんなふうに思い始めた。
だが、そんな状況に思いもしなかった不意打ちを受ける。
「ここが何処か、知りたいのか?」と、突然声を掛けられたのだ。
「誰だ!? 誰か居るのか!!」と、さっきまで、人の気配それよりも生き物の気配すら感じなかったのに、突然声を掛けられ驚いた。
「俺が誰かだって、決まってるだろ?こんな場所で自分の意思で話せる奴なんて神様以外に、誰が居るんだよ。そして此所は、死後の世界って言われる処だ」と、声の主が言ってくる。
そして俺は、呆気にとられた、突然話しかけてきて、自分は、神様だと言う。それから此処は死後の世界と言う、正直、神様うんぬんは置いといても、やはり死後の世界だったかと理解した。
「やはり死後の世界だったんですね、真っ暗で何も見えない、寂しい場所ですね、でも、自分にはお似合いの場所ですね」と、思った事を口にする。
すると自称神様が言った。「真っ暗で何も見えない、寂しい場所だと?そう言われればお前には何も見えていなかったんだな、悪かったな、これなら判るだろ」 と、言われた瞬間、さっきまで真っ暗だった処が、空には満天の星空、そして地上は、地平線の彼方まで、この世のものとは思えない一面色とりどりの美しい花畑に変り、彼方此方に人の後ろ姿らしきものが数えきれない程浮かんでいるのが見えた。
「さて、これで判ってもらえたと思うが、どうだろうか?」
「そうですね、こんな光景を見たら、死後の世界だって理解できるし信じることができます」と、言いながら改めて回りを見回して見る、そして今さらにして、気になっていたことを聞いた。
「あのですね、さっきから声は聞こえるんですけど、神様の姿が見当たらないんですけど、何処にいらっしゃるんですか?」と、言いつつ改めて回りを見回してみる。だがいくら見ても神様らしき人は居なかった。
「やっぱり気になるよな神様の姿って、でも残念ながら姿を見せられないんだよ」と、言いながら残念そうにため息をついた。
「理由を聞いてもいいですか?」
「それは、俺がお前が今居る世界の神ではなく、別の世界を管理する神だから直接行くと大なり小なりそっちの世界に影響があるから仕方なく声だけで対応するしか無かったんだよ」と、理由を話してくれた。
「そう言った理由があったんですね、ありがとございますスッキリしました」
「分かってもらえたんならかまはない。じゃあ改めて、自己紹介といこうか。俺は、異世界『フルムーン』を管理する『ムーンライト』だ。短く『ムト』と呼んでくれ、次はお前の番だ」 と、言うわけで次は俺の番らしいので、自己紹介をすることにする 。
「初めまして、ムト様、私の名前は」と、名前を名乗ろうとしたとき驚くことが起きた、自分の名前が出てこなかったのだ。 有り得ない自分の名前を忘れるなんて。さっきまで、確かに覚えていたのに自己紹介の寸前に自分の名前を忘れるなんて可笑しいだろ。自己紹介の途中で急に黙り込んでしまった俺に、ムト様が話しかけてきた。
「やはり、名前を忘れてしまったのだな。心配するなボケてしまったわけでわない、お前みたいな存在になった者は皆名前を忘れるんだよ」と聞き流せない事を言ってきた。 どうゆう意味なんですかと、聞こうとしたら続けて話しかけてきた。
「気づいてなかったのか、自分の存在が、ここに居る彼らと違うことに」と訳のわからない事を言って、これぐらいなら問題ないだろうと、鏡を出して見せてくれた。 お礼を言って鏡の前に移動して、驚いた 当たり前の様に生前の自分の姿が写ると思ったのに、そこには『光の玉』が写っているだけで他には何も写っていなかった。
「これはどうゆう事なんですかムト様! 回りに居る人たちと違うじゃないですか! 回りに居る人たちは姿がボヤけてハッキリ分かりませんが、生前の姿たのままだと思うんですが違いますか?それにさっきから普通に景色もみえますし、会話もしてますけど、目も口も、と言うか光の玉以外何もないんですけど!?、どうやってムト様と、コミュニケーション取ってたんですか!?」と、ビックリしてパニックに、なりそうになった所に、ムト様の冷静な声が聞こえた。
「先ずは落ち着け、先に、彼らの事だが、彼らはまだ輪廻転生を繰り返している最中だ。だから、生前の姿のまま順番が来るのを待っているのだ。そしてお前の事だが、お前のように条件を満たし輪廻転生から脱却すると魂の質がはね上がりついでに、魂の器が大きくなり純粋な魂だけの存在になり、今の状態を維持できるようになる。あと、今まで出来なかった事が出来るようになるのだ、だからなんの問題もない」 と言われてしまった。何故か言外に、お前はとんでもない偉業を成し遂げたんだぞ。と、言われている気がするが、はっきり言って身に覚えがない。名前は忘れてしまったが生前の記憶は確りと残っているのだから。俺がそんな偉業を成せる人間じゃ無いことぐらい判っているのだから。
「ムト様が仰る事は分かりました。こうやって会話したり、景色が見えているのは知らない内に自分に身に付いた能力だと言うことですね。ですが、ここまでの話を聞いて、正直、何かの間違いじゃ無いですかと思うんです。俺は、そんなすごい力を貰える人間じゃないですよ。ここだけの話ですが、俺が此処に居る理由だって世間一般的に禁忌とされる」と、理由を言おうとしたら被せぎみに反論してきた。
「お前が生前どんな生き方をしたか、そしてどうやってお前が此処に来たか事前に調べたから知っている、だからそれ以上言う必要はない」と、強めの口調で言われてしまった。 だから俺はこれ以上言うことをやめた。そのかわり、ムト様が少しだけ声を柔らかくして話し出す。
「お前の言う世間一般の禁忌扱いにされていることは俺たち、神と呼ばれる存在は何ら関係が無いと言っておく。神と呼ばれる存在がお前たちに介入するのは、最初と最後と、お前たちには絶対に解決できない様な事が起こったときのみ介入することになる。だから、基本的に宗教で禁忌扱いされていることに、神は一切関係が無く、そういたことは人間が勝手に神が決めたことにして自分達の都合の良い事悪いことに利用しているに過ぎない」 と、ムト様が、遮り、俺が言葉にしなかった事を何の躊躇いも無く言ってしまった。でも理解できた、数ある宗教でも一つだけ共通して不変の言葉がある、それは、
「神はいつまでも見守っている」と、見守るだけだと、神様自身が言っているのだ。
「わかりました、これ以上聞くと、不味そうなので聞かないことにします」と、言って話題を変えることにした。だから、さっきから気になっていた事を、聞くことにした。
「それでですね、この世界の神様じゃないムト様が、どうして俺なんかにわざわざ声を掛けてくださったんですか?」 と、最初の方で聞かなきゃいけなかったことをようやく聞くことができた。と、言っても最初の方で色々ありすぎて聞けなかったからだけど。
「そうだな確かにまだ言って無かったな、俺が、お前に興味を持った理由を、たまたま休暇中だった、俺が、ネットサーフィンみたいに、俺が管理していない色々な世界を観察している最中に、たまたま目に留まったのが切っ掛けだ、それから直ぐにお前の事を調べて、多少問題が有ったが許容範囲だと思い、声を掛けたんだ」 なんか運が良かった、みたいな感じで言われたけど、これってよく聞くと管轄がいの世界に、その世界の神様を押し退けて介入してきたって事になるんじゃ。
「あの、それって問題になるじゃないんですか、この世界の神様に怒られるんじゃないんですか?」と、恐る恐る聞いてみる。
「大丈夫だこの世界の神も少し前から休暇中で、今この世界にはいないから問題ない、それにさっきから俺とお前がやり取りしてるのに介入してこないのが答えだ」と、言われてみて思うと最初から今まで一切この世界の神様あるいは部下みたいな方々から接触がなかった。と、言うことはやはりムト様が言うように問題がないのだろうと納得したしたところで、声が掛かる
「それに、お前の様な存在に、声を掛けるのは早いもの勝ちと暗黙のルールになっているんだよ」と、そんな裏話まで聞かせてくれた
「ではあらためて、これから俺はいったいどうしたらいいのか聞いてもいいですか」と、質問をしてみる
「それは俺の管理する世界に招きたいと思っている」 ふむ、これってあれか、所謂、死んでしまって、魂だけになった俺を、ムト様が管理する世界に転生させてやるってことか。 異世界転生物によくあるパターンじゃないのか。
「詳しく聞かせてください」と、言うとムト様が話し出す。
「輪廻転生からの脱却のお祝いと思ってくれればいい」 と、言われて少しビックリした。少し前の会話を思い出すと、自覚は全くないが偉業を成し遂げたみたいな事を言われたのを思い出した。そう思うとこれは受け取っても問題がないじゃないかと思う、が、「ムト様、俺を招く本当の理由をお聞きしてもいいですか」と、声に真剣実を含み聞いてみた。ぶっちゃけかなりビビっているが、俺の今後の人生に大きな影響があるのが分かったから、ここは絶対に本音を聞かせてもらわないと間違いなく後悔すると直感で感じたので濁して貰うわけにはいかない。 「わかった本当の事を言おう、さっきも言ったがお祝いと言う意味は間違っていない、今からが本音の部分だ聞いてくれ。輪廻転生から脱却し、魂の質がはね上がり、器が大きくなったお前はもう、人間と言う括りから解放された存在だ今の状態を分かりやすく言うと『半神』と言う。そんな状態のお前を、放置するわけにはいかないから、俺たち神々は見つけ次第声をかけ自分達の管理する世界に招き落ち着くまで保護することが決まっているのだ、そのついでに将来は自分の眷属になってもらおうと、アピールする期間にもなっている」と、話してくれた。そして俺は、今の話を聞き少し考えてから話す。
「つまり、半神の状態の俺は間違いなく右も左も解らないから半神としての生き方、振る舞い方、力の使い方をムト様が教えてくださると言うわけですね。ですが正直言いますと、ムト様の眷属になるかどうかは判りません。それでも構わないと仰るのでしたら、正直、お世話になりたいとおもいます」と、正直、神様相手に、都合がよすぎる返事だと思うが心から思ったことなのでハッキリと言った。返事を聞いたムト様が答える。
「今は、それで十分だ、では、改めてよろしく。今は、名前が無いのだったな、では、仮に『ナナシ』と呼ばせてもらうとする。では、ナナシよ、俺の管理する世界『フルムーン』に招待しよう」と、ムト様が言った瞬間俺の意識がとうのき、俺の生まれ故郷、地球を後にしたのだった。