9 わたしのおねえちゃん
わたしには、年のはなれたおにいちゃんがいる。血がつながってないんだからおにいちゃんじゃないんだよってゆってたおばちゃんがいたけど、やっぱりわたしのおにいちゃんだと思う。だってだいすきなんだもん。
そんなおにいちゃんとこの前ケンカしちゃった。1人でお友だちの家に遊びに行くってゆったら、ぜったいダメ!って怒ったから。
それまでおにいちゃんが何かりゆーがあるの?って、やさしく聞いてくれなかったことがなかったからビックリして、おにいちゃんなんか知らない!足の小指ぶつけちゃえばいいのに!ってゆっちゃった。
どうしよう······。今までわーってケンカしたことないからどうすればいいのかわからない。おかあさんに聞いたらごめんなさいすればいいよってゆったけど、イタイ思いをしちゃえって大きな声でゆったことも許してもらえるのかな。もう小指どこかにぶつけちゃってるかも。
泣きそうになってたら、仲直りの『わいろ』を用意するといいよっておかあさんが教えてくれた。『わいろ』は貰ったら嬉しい気持ちになるようなものなんだって。それを聞いてすぐに、じゃあイタイ思いをしてもそれよりイイコトがあるようにって4葉のクローバーを探すことにした。がんばって見つけたらその分イイコトがあってよろこんでくれるかも!
ぜんはいそげ!おかあさんにいっしょに行くよってゆわれたけど、しめ切りが近いんでしょ?ダメだよ。1人で行こうとしたら手にスマートウォッチをつけられた。これはどこにいるのかすぐにわかる便利なやつだ。そして、数字が1と5になるころには絶対に帰ってくるってお約束をして、わたしは公園に行った。公園ならすぐそこだから大丈夫だもん。
公園で4葉のクローバーを探しはじめたらおねえちゃんにであった。
おねえちゃんは少し髪の色が茶色っぽくて、手とかお顔の色がまっしろで、まつげが長くてお人形さんみたいにキレイ。それにすごく優しい。いっしょに4葉のクローバーを探してくれたし、転んじゃったらおんぶしてくた。わたしもう大きくてタイヘンなのに!なにより、わたしのお話しを最後まで聞いてくれる。嬉しい。
そんなおねえちゃんだけど、実はいま迷子らしい。おねえちゃんなのにね。でも、お家にお泊りしてくれるからとっても楽しい。もっとお家にいてほしいな。
そんなある日、夜におねしょをしてしまった。どうしよう。わたしもうすぐ1年生なのに···。はずかしくて泣きそうになりながらお部屋をでると、おねえちゃんもお泊りしていお部屋からでてきた。どうしよう、笑われちゃうかな。おねえちゃんは、わたしを見て手をつなぐ時のように差し出した。
「そのままだと寒いでしょう。お風呂で少し流そうか。それとも誰か他の人を呼ぼうか。」
いつもみたいにニコニコしてるけど、おねえちゃんはバカにしたりしなかった。おかあさんはお仕事で、おとうさんはしばらく帰ってこないってゆってた。おにいちゃんたちはなんだかはずかしい。だからそのままおねえちゃんの手をとった。
おねえちゃんはわたしのお部屋に入って、よごれたシーツをまとめた。次にお風呂につくと、わたしの足をお湯でさっと洗ってくれた。すっきりして新しいパジャマを着るとなんだか安心した。そのあと、汚しちゃったパジャマとかもお湯で流してせんたく機に入れた。「一軒家だし静かな洗濯機だからいける!」んだって。
わたしのお部屋に戻ると、新しいシーツを準備してくれた。横になっていいらしいけど、またおねしょしちゃったらと思うと眠くなくなってきた。
「まだ身体が小さいんだからこういうこともあるよ。大丈夫、お布団とかは洗えばいいだけだからね。」
「もうすぐ小学校になるのに···?」
「あるあるなことだよ。ヘーキヘーキ。そもそもおねしょをしたことがない人の方がいないだろうし、お年寄りって呼ばれる頃になるとまた皆するようになるからね。」
びっくりした。
「大人でもおねしょすることあるの?」
「あるよ。加齢が原因でってこともあるし、私と歳が変わらない人でもストレスやら病気やらが原因なこともあるらしいよ。あるいはお酒とか。······ちなみに加齢は年齢の増加による変化のことで食べ物のカレーじゃないからね。」
カレーじゃないかれーだった。良かった、カレーが食べられなくなるのかと思った。
「そうなんだ。あのね、前にね、おねしょなんてもう恥ずかしいしおかしいよってゆわれたの。」
「うーん。その発言をした人がどうしてそう言ったのかはわからないけれど、私は恥ずかしくもおかしくもないと思うし、そうだったらいいなって思ってるよ。いつか来た道、いつか行く道だからねぇ。」
「そっかぁ。」
皆おねしょしたことあるし、これからすることもあるって考えたらまぁ、いっか!って気がしてきた。
そのままおねえちゃんとお話しをした。おねえちゃんも小学校になるまえにおトイレに間に合わなかったことがあったんだって。もし、本当になやむようだったら病院で相談すればいいんだって。病院でなおしてくれるんだ。すごいなぁ。
でも、わたしは今こうして、おねしょや知らないことを変な風に笑ったりしないおねえちゃんに他のことも教えてもらいたいな。きっとちゃんと教えてくれるから。
「あのね、おねえちゃん。わたしね、おにいちゃんと血がつながってないんだけどね、」
「うん、ん???うん。」
なんだか少しお返事が変だったけど、眠くなってきちゃったのかな。でも、もう少しだけ。
「なのにね、おにいちゃんにいっつも甘えるからダメなんだって。おにいちゃんにね、甘えなくても1人でなんでもできるようにならないと、みんなにきっ嫌われちゃうんだって···。」
「まず皆に嫌われるということはないなそんなことはあり得ないしだれだそれ言ったの」
「しんせきのおばちゃん。」
アカン、アウト、ハイジョしてもらわなきゃとおねえちゃんがつぶやく。本当に嫌われないのかな。
「ああ、だから1人でお出かけしたのかな?」
「うん。早くなんでもできるようになりたかったの。」
「なるほどね。まず、先程も申し上げた通り嫌いになるなんてことはありえません。もしそんなこと言う人間がいたら私に教えてね。納得できないだろうけどしっかりお話し合いをしないといけないからね。」
グーの形に手を握ったおねえちゃんがとっても堂々とゆってくれたからなんだか大丈夫な気がしてきた。
「それにね、瑠璃ちゃんのお兄ちゃんは血の繋がりは関係無いくらい瑠璃ちゃんのことが大好きなんだよ。可愛い瑠璃ちゃんが1人でお出かけするのを心配するくらいにはね。だから急になんでも出来るようになると寂しくなって泣いちゃうんじゃないかな。」
「えっ、そうなの?」
おにいちゃん泣いちゃうの?
「そうなの。だから沢山甘えていいんだよ。そもそもこれから出来ることを少しずつ身につけるんだからね。その為に学校にも通うんだから。ゆっくりで大丈夫。」
そうゆっておねえちゃんが頭を優しくなでてくれるから、なんだか眠くなってきちゃった。
「けど、血が繋がってなくても兄妹は兄妹だろうに。年齢が離れてるからかそれとも桃華さんの知り合いのお子さんだったりするとか······?」
「ううん、おにいちゃんはね、おかあさんのおねえちゃんの子どもだって。」
「それは血が繋がってるだろうし、少なくとも従兄弟同士だよね??うん。やっぱり親戚のおばちゃんとやらの話は間違ってるから。瑠璃ちゃんのおにいちゃんは可愛い瑠璃ちゃんを家族として大事にしているし、嫌いになんてならないよ。」
「そっかぁ···。」
おねえちゃんにそーだんして良かったな。みんなに、家族にきらわれると考えるのがずっと怖かったから。
もう大丈夫って思ったら、別のことが気になってきた。おねえちゃんの家族は、おねえちゃんがこのお家にお泊りしてても寂しくて泣いちゃってないかな。きっとおねえちゃんみたいに優しいんだろうから、さみしくしてないといいな。
「おねえちゃんのかぞくは、どうしてるの?」
「さて、どうだろうね。まぁ、元気に過ごしてると思うよ。」
「どんなかぞくなの?おねえちゃんはさみしくない?」
「寂しくはないよ。瑠璃ちゃんのお姉ちゃんをするのは楽しいし。家族については、気がむいたら詳しく教えることもあるのかもね。それよりも今はおやすみ。」
「ん。」
やさしいおねえちゃんの家族が泣くことがありませんように。
朝起きたらおにいちゃんに親戚のおばちゃんについて聞かれた。お名前は覚えてなかったけど、どんな人だったかゆえばわかったみたいで、覚えててえらいねってほめられました!えっへん。それとわたしのこと大好きだなんだって。わたしのおねえちゃんがゆってたことのほうが正解でした!おねえちゃん、このお家にずっと一緒にいてくれないかな。そうしたらきっと、今よりしあわせになれるのに。




