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第三十五話 自分だけの道

年の瀬に特に意味のない更新再開が読者を襲う!!



あ、あと前に言ってた気晴らし用のくっそ明るい話も少し書き溜め出来たので放出します

うまく行ってればあとがきの下の方にリンクとか出てるはずなのでよければどうぞ!


 ――ジェネシスの世界には、もうラストホープのメンバー以外に生きているプレイヤーはいない。


 そんな衝撃的な告白をロコが聞かされてから、そして、モンスターの襲撃によってラストホープの一番の高レベルプレイヤーであるシアが右手を失い、エリクサーによって辛くも命を拾った日から、一週間が経った。


 あれから、ラストホープの面々は表向きはいつもの平和な日常を取り戻している。

 だが、ロコだって気付いている。


 あの日以来、シアは少し優しく、そして涙もろくなった。

 リューはあまりシアに無茶を言わなくなったし、ミィヤはシアに以前より気遣いを見せるようになった。


 それから、ロコの敬愛するルキも……。


 ルキの生活も態度も、今までとそう変わりはない。

 変わりがないように、振る舞っている。


 けれど、時々メニュー画面で天秤を見ては、ため息をつく回数が増え。

 夜、ロコとの訓練を早めに切り上げて、自室にこもることも多くなった。


 ――そしてロコは、誰よりもルキの行動を間近で見ていたロコは、それが何を意味するのか、とっくに気付いている。


 昼間、チャットの終わり際にシアは時折、怒ったような声でルキに向かって「数字」を口にする。



「あんたは十回反省しなさい!」

「あとで九発ぶん殴る!」

「十一時間くらいそうしてたら?」



 好意の欠片も見えないとげとげしい言葉は、しかし全てシアからルキへの「符牒」だ。


 シアが「十」と口にした日、ルキは九時四十五分にはロコと別れ、自室に戻ってしまう。

 限定的なターミナル機能を持ち、「チャット機能」を備えている塔の自室に。


 そもそも、チャットが昼間にしか出来ないのは、初心者の塔以外からでは、チャット機能を使う費用が莫大になってしまうから。

 逆に言えば、お金さえあれば、昼間のフリータイム以外にチャットで会話をすることが出来る。



 ――つまり、シアの口にする「九発ぶんなぐる」はその実、「夜の九時に二人きりでチャットをしたい」という彼女の精一杯の「おねだり」なのだ。



 シアが数字を口にする度、ロコの胸にはもやもやとした何とも言えない気持ちが渦巻く。

 それでも、あの日の光景を見ているロコに、彼女の切実な願いを妨げることは出来なかった。


 ……それに、ロコにはシアを邪険に出来ない、もう一つの理由があった。


 シアはあの日から少しずつ、ロコに様々な話をするようになった。

 それはルキの好物であったり、ルキがよくやってしまう失敗であったり、とにかく今までは意図的に避けていたようなそんな話を、まるで大切な宝石でもあるかのように愛しげに、そっとロコに語って聞かせていた。


 それはまるで、もうすぐいなくなってしまう人間が、必死に誰かにあとを託そうとしているような……。


「……ロコ?」


 かけられた声に、ロコはハッと我に返った。

 その声の主は、ロコが敬愛してやまない先輩プレイヤー、ルキだ。


「もしかして、つまらないか?」


 そして、二人が並んで見ているのは……。


「い、いえ! 昔の闘技大会の映像は見れてなかったので、とっても参考になります!」


 過去の闘技大会の映像だった。

 その映像の中で、今は二人の男が対峙していた。


 一人は輝く光をまとった剣を持った、騎士風の装備をした優男。

 もう一人は、武器を何も持たず、普段着としか思えない服装をして、口に木の葉をくわえた軽薄そうな男。


 軽薄そうな男が、くわえた木の葉をつまむと口を開いた。


「悪いけどな、勇者様。オレはまだるっこしいのは嫌いなんだ。ここはひとつ、一発勝負と行こうぜ」

「一発勝負、だと?」


 対峙する男の言葉に、勇者と呼ばれた男が眉をひそめる。


「せっかくだから、おたくの最強の技を撃ってきてくれよ。それをオレが耐えたらオレの勝ち、できなきゃオレの負け、でどうだい?」

「僕の、勇者の剣を受けるつもりか? 今この瞬間においては、僕の剣技に制約はない。……死ぬぞ?」

「ははっ! 上等だ! 勇者様の剣と、オレの防御、どっちが本当の最強か、試してみようじゃねえか!」


 男の煽りに、勇者が応える。


「よかろう! ならば冥府にて、己の浅慮を悔いるがいい!」


 手にした光剣を大上段に構え、



「この一撃に、全てを賭ける!! 奥義、スターシャイン、ブレェェェェェェェェェド!」



 叫びと共に振り下ろす!

 同時に剣からはまばゆい光の帯が伸び、それが正面の男を直撃した。


 閃光が奔り、一拍遅れて轟音と土煙が場を支配する。


「……やったか?」


 勝利を予感する勇者の言葉。

 しかしそれに反し、土煙から現れたのは……。


「なっ!?」


 無傷の「地蔵」だった。

 突然の地蔵にざわめく観客たち。


「ば、バカな!! 僕の一撃が、防がれた、だと!」


 だが、一番衝撃を受けているのは勇者だった。

 誇らしげに立つ無傷の地蔵の姿に男の面影を見た勇者は、がっくりと膝を折る。


「まさか、地蔵に姿を変えて僕の必殺剣を防ぐとは、想定外だったよ。この勝負、僕の負……」


 だが、そこで気付く。

 男が姿を変えた地蔵が、必殺剣を耐えきっても全く動く気配がないことに。


「…………」


 勇者は無言で地蔵に近寄ると、つんつん、とその額を突き、それでも反応がないのを見て取ると、よいしょ、と地蔵を持ち上げ、そのまま場外に転がした。


「おーっと、これは大逆転だぁ! 勇者の渾身の一撃を防いだタヌタヌ選手、あえなく場外! 闘技大会第一試合は、勇者、もとい†ユージ†選手の勝利だああああああ! せこいぞ勇者! ずるいぞ勇者! そこに痺れる憧れるぅぅう!!」

「う、うるさい! 勝てばいいんだよ勝てば!」


 わああああ、と沸き立つモニターからロコが視線を外すと、その右隣から声が降ってくる。


「なぁロコ、どうだ? 今のスキル、勇者の必殺技を防ぐなんてすごいんじゃないか?」

「は、はい。すごい……です、けど。あれは、一度使ったら二十四時間解けないそうです」

「に、二十四時間? そ、そうなのか」

「あ、あと、あれはユニークジョブの化け狸の限定スキルだそうなので、わたしは……」


 ロコが申し訳なさそうにそう言うと、右隣の声の主、ルキががっくりと肩を落とした。


「そ、そっか。ごめんな。俺はスキルにはあんまり詳しくなくてさ」

「い、いえ」


 そうして微妙な空気のまま、二人はまた正面の巨大スクリーンに向き直る。


 今、ロコたちが見ているのは、ロコどころかルキがまだゲームを始めていなかった頃、第一回の大会の記録だ。


「やっぱり、ゲームってのは初期の混沌とした状態が一番面白いんだよなぁ」


 とつぶやくルキの言葉には、ロコも大いにうなずけるところはある。

 ある程度効率化がされていた最近の戦闘と違い、戦いで繰り出される技がいちいち新鮮で、練られていないからこその多様性があった。


「と、とにかくだな。こんな風に、ジェネシスには果てしない種類のジョブとスキルがある! 創意工夫次第では、格下が格上を倒すことがあるんだ!」

「そ、そうですね! すごいですね! ……参考には、できそうにないですけど」


 ロコはどこか陰のある表情で、画面に目をやった。

 画面の向こうの彼らは、誰もが楽しそうだ。


 画面の中で、ある者は歓声を上げながら、またある者は試合内容に一喜一憂しながら、ある者は手に汗を握りながら、はたまたある者は地蔵のポーズで身じろぎし一つしないまま、それぞれそのお祭りを楽しんでいた。


 ロコだって、こんな風にルキと並んで映像を見るのが楽しくないはずはない。

 ない、のだが……。


「……わたし、も」


 視線だけは、闘技大会の映像に向けながらロコは、


「……わたしも、決めなきゃ」


 と、小さくつぶやいた。



 ※ ※ ※



 恨み屋という特殊な職業の男がでかい五寸釘を相手の背中に出現させ、対戦相手を一撃で倒すのを眺めながら、ロコはふと思いついた、というように尋ねた。


「そういえば、ルキさんもスキルとかアビリティって工夫してるんですか?」

「え? 俺か? うーん……」


 いまだに、ルキはロコに自分のジョブを明かしてなかった。

 それを当てるのも勉強、と言われればロコとしてはそれ以上踏み込めなかったが、今なら、と思って聞いてみる。


「俺は、ちょっと特殊だからなぁ。あんまり参考にならないと思うけど……」

「で、でも、方向性とか、コツとかだけでも」


 ロコが食い下がると、ルキは言葉を選ぶように話し始めた。


「方向性、かぁ。俺は、うーん、弱いからなぁ。何でもバランスよく伸ばしているというか、ああ、でも、一番力を入れてるのは、やっぱり防御かなぁ。言うなれば、守備寄りの万能型、というか」

「万能型で、防御寄り、なんですか? ちょ、ちょっとだけ、意外です」


 その反応に、ルキは苦笑する。


「そりゃ、俺には突出した才能とか、そういうもんはないからさ。反射神経だけで全部の攻撃を避けるなんて不可能だし、だったらまず攻撃を受けてもいい環境を整えなきゃな。攻撃とか移動とかはまあ、そのあとだよ。だから、そういう意味では、結構工夫してる、って言えると思うけど」


 ルキの言葉に、ロコはふんふんとうなずく。

 うなずいたけれども、心の中では少しだけ、その言葉に反発するものがあったのも確かだった。


 いや、もちろんロコだって、スキルが創意工夫によって思わぬ効果を発揮することは実感としても理解しているし、そこに異論はない。

 例えば、ロコが今サブジョブに設定している探偵のスキル「ディテクト」は「接触しているプレイヤーの情報を読み取る」というもの。


 ジェネシスのシステム上対人戦を行う機会はそうそうなく、あったとしても敵プレイヤーに悠長に触れて情報を見る暇などない。

 はっきり言ってほとんど役に立たないスキルだ。


 ただそこで目先を変え、スキルの対象をもっとも身近で、触れることが困難ではないプレイヤー、すなわち自分自身とすることで、新たな使い道が生まれる。


 ロコはおもむろに自分の胸に手を当てると、「スキルコール:ディテクト」と小さくつぶやいた。



――――――【ロコ】―――――――


マジカルガンナー/探偵

LV    48/  45

HP  1380/1380

SP  2112/2112


攻撃:158 防御:146

魔攻:504 魔防:117


使用可能スキル:9

装備アビリティ:67


―――――――――――――――――



 ロコの視界に直接映し出された情報は、通常のステータス画面よりもいくらか簡潔だ。


 プレイヤー名や装備品、種族の項目がない代わりに、補正込みの最終能力値やスキルやアビリティの数が網羅されている。

 これはディテクトのスキルが対人戦に使われることを想定しているからだ。

 戦闘中に敵の名前や種族をのんびり眺めている暇はないし、一方で相手がどんなステ振りをしているのかはより重要度の高い情報になる。


 これを使えば、戦闘中であっても自分の今の情報を素早く知ることが出来る。

 それだって有用とまでは言い難いが、使い方としてはありだとロコは思っていた。


 ロコは、自分の網膜に直接投影されたかのように映し出される情報に、眉根を寄せた。


 ――やっぱり、足りない。


 映し出されたその能力値に、ロコは焦燥を覚える。


 レベルを五十以上に上げれば、初心者の塔にはいられない。

 だからレベル五十を越えない範囲で、ロコは出来る限りのことをしてきたつもりだった。


 可能な限りの下級職を経験して、少しでも能力の上がるアビリティは全て取得した。

 その結果が装備アビリティ六十七という数字で、魔法攻撃力五百越えという値だ。

 これはレベル五十前後のプレイヤーとしては破格の能力値だろう、とルキもほめていた。


 ……だが、それだけだ。


 これではルキが倒したキマイラには到底およぶものではないし、まして外にいるレベル数万を超えるモンスターたちに歯が立つはずもない。


 スキルとアビリティについてもそうだ。

 いや、スキルについては数が多ければ必ずしも強い、という訳ではないし、サブにつけているのがスキル数が少ない探偵でなければもう少し増える。


 問題は装備中のアビリティの数。

 能力アップのアビリティの数は、単純にパラメータに直結する。

 六十七という数値は決して少なくはないが、ベテランプレイヤーと比べれば明らかに足りない。


 現にシアの装備するアビリティ数は二百を越えていて、そのアビリティによって特化させた魔法攻撃力は、補正込みで十万の大台を超えているそうだ。

 文字通り、桁が違う。


 ジェネシスの成長システムには拡張性と自由度がある。

 レベルが全て、ということは必ずしもない。


 ――だが一方で、レベルが全ての基本ということもまた、真実だった。


 レベルが上げられなくて生まれる問題は、レベルアップ分のステータスだけの単純なものだけではない。


 まず、上位職への転職条件が満たせないから、覚えられるアビリティが限られる。

 装備だって、レベル五十以下で装備出来るのは序盤用のものか、例外的に装備条件がレベル一以上になっているネタ装備だけで、強力なものはまず身に着けられない。


 特別な立ち回りを追求しようにも、レベルという絶対的な制限がある限り、その範囲は強制的に狭まる。

 ルキが言うようにどんなに防御手段を整えても焼け石に水だし、このステータスでモンスターに有効打を与えるなんて、出来るはずがない。


 ――ほんとうはずっと、気付いてたんだ。


 初心者の塔周辺よりも強い外の敵を、フィールド規模で爆殺してしまうシア。

 レベル数万を誇る敵の跋扈する塔の外に、毎日散歩感覚で出かけていくルキ。


 知れば知るほど彼らの領域は遠くて、果てしなくて、それでもロコは今まで、現実から目を逸らすように、ただがむしゃらにレベルを上げ、パラメータを上げるアビリティを取って、能力値を上げようとしていた。


 でも、そのやり方じゃ、届かない。

 レベル五十より下のレベルでキマイラを倒せるほど強くなるには、ほかのジョブの何万倍も経験値を必要とするような、とんでもなく大器晩成なユニークジョブを手に入れるか、あるいは勇者の特殊能力のように、敵が強ければ強いほど自分も強くなる能力を手に入れるか、どちらかしかないだろう。


 そして、ロコにはどちらも不可能だ。


 それが現実で、認めなくてはいけないスタートライン。

 だから……。


「ルキさん。わたし、決めました」

「え?」


 ロコは、隣に座るルキの目をまっすぐに見つめ、厳かに口を開く。


 憧れの人たちと同じ道を歩むのは出来ないと、そう、認めた上で。

 ロコは自分の、自分だけの道を歩くことを、決めた。



「――わたしは、サブジョブに『駆け出し冒険者』を選びます」



 ※ ※ ※



 ロコの宣言に、しばらくあっけに取られていたルキだったが、慌てて話し出す。


「ロ、ロコ! シアも言ってただろ? 駆け出し冒険者はステータスに補正がつかないし、メインジョブに出来ないからスキルの熟練度上げも出来ない。将来のことを考えるなら……」

「でも! わたしは『今』、力がほしいんです! ルキさんを、支えられる力が!」


 必要なのは、認める勇気だった、とロコは思う。


 自分には、キマイラや強化されたオークと渡り合うだけのステータスは手に入れられない。

 能力値の高さでモンスターに対抗するのは、ロコには不可能なのだ。


「だからわたしは、スキルで戦おうと思うんです。マジカルガンナーは、各種の属性に状態異常、それから相手の魔法を封じたり、弾に込めた魔法を撃ち放つ魔法弾があります。これなら、たとえ能力値ではぜんぜん敵わない強い相手でも、戦いの手助けをすることはできます」


 ロコだって本当なら、ルキと肩を並べて戦いたかった。

 自分でもバンバン敵を倒して、頼れる相棒だって言ってほしかった。


 けれど、そんな望みを、ロコは切り捨てる。


「その時に役に立つのは、高い能力値補正でも、スキル熟練度でもない。どんな場面でも有用で、どんな格上の敵にだって通じる汎用性なんです」

「だ、だけど、危ないぞ。能力値に差がある状態で、もしモンスターに攻撃されたら……」


 殺される、とはルキは口にしなかったが、それくらいはロコにも分かった。


 サブジョブに駆け出し冒険者を選ぶことは、能力値の半分を捨てたも同然。

 その道を進むとしたら、これから先、まともな方法で敵と渡り合うことは、もう出来なくなるかもしれない。

 それはきっと本来、リスクの代わりに即戦力を取る、「正しくない」道で、自分の憧れるルキやシアに続く道に続いていない選択かもしれない。


 そう悟っても、それでもロコの決意は変わらない。


「だいじょうぶ、ですよ、ルキさん。わたしの魔導銃なら、離れた場所から攻撃できます。それに……ルキさんがわたしを守ってくれるって、信じてますから」

「ロコ……」


 驚いた顔をするルキに、ロコは口にするべきか、何度か迷ってから、ゆっくりと口を開く。


「それから……。これは、ただのわたしの、わがままなんですけど」


 きゅっと拳を握って、訴えるように、ルキを見上げる。


「『駆け出し冒険者』だって戦えるんだって、だれかの役に立てるんだって、信じたいんです。わたしが、『ジェネシス最後の新人』としてこの塔にやってきたことに意味があるんだって、そう、思いたい、から」


 だからこそ、この「駆け出し(ルーキー)」の名を冠するジョブで、戦っていきたい。

 そんな思いを込めて、ロコはルキをまっすぐに見つめた。


「……まったく。ロコには、敵わないな」

「ルキさん! それじゃあ……!」


 不安そうなロコに、ルキはニッと笑って見せて……。



「――ああ、よろしく頼むよ。ジェネシス最後の、期待の新人ルーキーさん!」

「――はいっ!!」



 ロコはジェネシスで戦うための第一歩を、こうして踏み出したのだった。
























































「――ルキさん? 寝ちゃった、んですか?」


 疲れていたのだろうか。

 ロコがサブジョブを決めたあとも、「せっかくだから」と大会の映像の続きを見ているうちに、ルキは寝入ってしまったようだった。


「……あ、の。ほんとうに、寝てるん、ですか?」


 穏やかな寝息を立てるルキのほおに、ロコの手が伸びる。

 その手がそっとルキのほおをなで、やがて、吸い寄せられるようにロコの顔がルキの唇に近づいて……。



「――こういうのは、ダメ、ですよね」



 唇と唇が触れ合う直前で、ピタリと止まった。


 良心が咎めた、というのももちろんだが、それに、最初は相手からしてもらいたいという気持ちもあった。

 ロコはそれでも、後ろ髪引かれるような気持ちでルキから離れる。


 ただ、その途中、


「あ。いま、なら……」


 ふとつぶやいたロコは、ぐっすりと眠るルキに向かって、そっと手をかざす。


 ――それは、ちょっとした思いつきだった。


 探偵のスキル「ディテクト」は、対人戦ではおおよそ役には立たない。

 けれど、こうやって無防備に寝ている相手であれば……。


「ごめんなさい、ルキさん。少しだけ、ズル、しちゃいますね」


 ロコはそうささやくと、ルキのほおに愛おしげに指を触れる。

 そうして、ルキが今までひた隠しにしていた秘密を、その強さのカラクリを暴くため、その言葉を口にする。



「スキルコール:ディテクト」



 直後にロコの視界に情報ウィンドウが浮かび上がり、首尾よく運んだことにロコは思わず笑顔を浮かべ……。



「――え?」



 その笑みは、一瞬にして凍りついた。

 浮かび上がった画面を前に、ロコの目は大きく、大きく見開かれる。


「こん、な……。こんなことって……」


 自分の目にしたものが信じられず、ロコは思わず大きくあとずさった。


 呼吸が整わない。

 心臓が早鐘を打つ。


「なん、ですか? なんなん、ですか、これ」


 受け止めきれない現実を前に、わななく唇から震える声が漏れる。


「ルキ、さん。あなた、は……」


 つぶやく声に答えはない。

 ただ、無機質なウィンドウだけが、ロコの視界に浮かび続けていた。




―――――【ルキ】――――――


駆け出し冒険者/なし

LV    0/――

HP   10/10

SP   10/10


攻撃:1  防御:0

魔攻:0  魔防:0


使用可能スキル:3

装備アビリティ:3


―――――――――――――――


タイトル回収!!




下に新作のリンクを(たぶん)作りました!

ラストルーキーは王道すぎて書くのがちょっとつらかったのですが、二作同時連載で気分転換をすることによってエタりにくくなる……のか、二倍の速度で失踪するのか、お楽しみに!!

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胃が痛くなった人に向けた新しい避難所です! 「主人公じゃない!
― 新着の感想 ―
ラストルキ!
[気になる点] これは一体……?
[一言] 奇跡の指輪と主人公がブーストを常用してるような描写からもしかしたらと思ったけどやっぱりHPとSPは10か
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