第二十六話 ピンク・ルーキー
あしたっていまさ!
安全地帯である塔のロビーから外に一歩を踏み出した瞬間、世界が一変するのを感じた。
――ああ、変わらないな。
真っ白に輝く太陽と、一面に広がる無機質な灰色の大地。
それから、地上をうごめく悪意の色。
ロコが来て、俺の生活は大きく変わっても、外には何の変化もない。
塔の外は、いつだって俺に厳しい現実を突きつけてくる。
そして、変わらないと言えば……。
「ブォオオオオオオオ!!」
間延びした雄叫びをあげて、早速オークの一団がこっちに迫ってくる。
あいかわらずのオークの熱烈歓迎には少し辟易させられるが……。
「まぁ、ちょうどいいさ」
闘技大会の一件で、もう少しオークのストックが欲しいと思い始めてたところだ。
……あと、豚肉も増えるし、な。
今さらオークごときに遅れを取る訳にはいかない。
俺は肩慣らしに愛剣を振り回しながら、オークの群れに向かって歩き始めたのだった。
※ ※ ※
それからの時間は、まあ、一言で言ってしまえばオーク祭りだった。
とりあえず目の前のオークを倒した、と思ったら戦いの音を聞きつけた隣のオークが駆けつけて、それも倒したと思ったらそこらを歩いていたオークの一団に発見されて、と、そんな具合だ。
――ほんと、オークしかいないんだからなぁ。
謎の生態系システムのせいで、初心者の塔のあるエリアではオーク以外のモンスターを見たことがない。
スキルも使わず、HPが減っても変な動きもしないオークは非常に戦いやすいので、下手なモンスターが残るよりはいいとは思うのだが、流石にオークだけ、というのではうんざりさせられてしまう。
それに、いくらオークが戦いやすいと言っても一気に二十も三十も集まってくれば話は別だ。
オークがあまり増えないようにリンクに気を付けながら殲滅していき、とやっていたら、結局フィールドを抜けるまでに二時間近くかかってしまった。
いまだに俺は基礎能力ではギルドのほかのメンバーに遠く及ばない。
だからその分、スキルやアビリティを使ってうまい立ち回りを模索する必要がある。
――そのためにも、これから少しずつ、行ける場所を増やさないとな。
そんな目的も考えると、今から行く果樹園はちょうどいい社会復帰場所と言えるだろう。
まず、果樹園では一部の決まったモンスターしか出現しない。
いや、これはまあほかのフィールドも同じなのだが、この果樹園フィールドではさらに徹底されていて、フィールド内の区画ごとに出てくる敵が一種で固定なのだ。
これなら俺のようなプレイヤーでも戦いやすい。
次に、この果樹園フィールドは初心者の塔の西側にある。
初心者の塔は西エリアの西側にあり、魔王が東エリアの東側にあることから、基本的に東に行けば行くほど敵は手ごわく、強くなる。
いや、正確には初心者の塔の付近が一番弱く、西に行っても敵は強くなるのだが、東ほどではない。
塔の西の方は攻略の主流ではないためか、どちらかというとネタ系やお遊び系のフィールドが多く配置されているのだ。
……そのため、俺が塔の外に出始めた頃にはすでに塔の西側に向かう人はほとんどおらず、当然今日も含め、果樹園に訪れた時に誰かと会った経験がないのだが、それはそれだ。
不人気エリアには不人気エリアなりのメリットがある。
そのメリットというのが三つ目。
果樹園の果実は、成長する。
だから、人が取らない期間が長いほど立派な実がなるのだ!
ジェネシスが寂れてしまってから長い時間が経った。
人の訪れなくなった果樹園は、きっと素晴らしい果物がたくさん生息しているだろう。
……そう、果樹園がリハビリにいいという最後の理由。
それは、この果樹園にいるのは倒すと必ず対応する果物を落とす「果物型モンスター」であるということ!
この果樹園は、畑に行けば地中からスイカが奇襲をかけてきて、上を向けばリンゴが木から躍りかかり、気を抜いた途端にイチゴが大挙して襲ってくる、食と戦闘のワンダーランドなのだ!
俺はあらためて気を引き締めながら果樹園フィールドの中に足を踏み入れ、
「…………は?」
そこに映った驚愕の光景に、一歩目にして思わずその足を止めたのだった。
※ ※ ※
「……なんだかなぁ」
結論だけ言うならば。
果物狩りの成果は上々というか、上々以上だった。
ただ、その過程があまりにもあんまりで、俺はつい脱力してしまっていた。
その原因は、放置のされすぎ。
想定以上に大きくなった果物モンスターたちにあった。
突然地中から飛び出し、一撃必殺の噛みつき攻撃をかましてくるはずのスイカは巨大になりすぎて身体半分が地面から顔を出した状態で柵にハマって動けず、木から落ちて強烈なボディプレスを繰り出すはずのリンゴは巨大になりすぎて最初から地面に落ちていて、機敏に襲ってくるはずのイチゴは巨大になりすぎて地面に転がったままビクンビクンと浜に打ち上げられた魚のように動くだけ。
何だかもう、呆れるとかを通り越してただただ切なかった。
結局、俺は身動きすら取れない果物たちを作業的に倒し、果物だけを回収していく作業に従事する羽目に。
むしろ襲ってこないのにやたら体力だけは高いモンスターの処理に困り、相手が動けないのをいいことにその巨大な口に剣を突っ込んで剣をかじられながら無理矢理に倒すことになったため、それはそれで危険な作業ではあった。
あったのだが、命がけのビリビリとした戦いを想像していた俺には正直拍子抜け感は否めないところだ。
――まあ、いいか。
果物モンスターは巨大だった分、そのドロップ品は質がよさそうだ。
ちなみにジェネシスでは敵を倒すと自動的にそのドロップアイテムがインベントリに転送される仕組みになっている。
インベントリには所持上限はあるが、入れたものの重量は考慮されないため、この程度のドロップなら移動の負担になることはない。
想定よりも多くの果物を殺った割に時間もあまりかかっていない。
往復のオーク退治にかけた時間を考慮しても、予定としてロコに話しておいた五時間にちょうど間に合いそうだ。
――やっぱり、出迎えてくれる人がいるっていいな。
俺は最近ずっと、塔に一人でこもっていた。
それはそれで訓練に集中出来るいい環境ではあったが、外から出て帰ってきた時、ただいまを言える相手がいないというのはやはり寂しい。
だから俺は意気揚々と扉を開き、
「――ただい、ま?」
目に飛び込んできたロコに、目を見開く。
「おかえりなさい、ルキさん!」
そして、当然のように俺に抱き着いてこようとするロコの頭を、手のひらで押しとどめた。
「ルキ、さん?」
何が起こったか分からない、とばかりにきょとん、と首を傾げるロコに、俺は静かに口を開く。
「えっと、まず、出迎えてくれてありがとう」
「はいっ! 当然です!」
「うん、その、気持ちは嬉しいよ。ただ、その、ちょっと、聞いていいかな」
「なんでも聞いてください!」
はきはきと答えるロコ。
うん。
とてもいい返事だ。
いい返事、なんだけど……。
俺は混乱する頭をどうにかして正常化しようと頭を振り、隙あらば俺に密着しようとしてくるロコの頭を押さえ続けながら、おそるおそる尋ねた。
「その、どうして、その服を?」
俺の疑問にロコは――いつぞやの時と色違いの真っ赤なビキニを着た彼女は、よくぞ聞いてくれました、とばかりにこぶしを握って……。
「はいっ! ルキさんのためにがんばってみました!」
その邪気の一切ない輝くような笑顔に、俺は頭を抱えたのだった。
※ ※ ※
「ロコ、ちょっと座りなさい」
「はいっ!」
そそくさと俺の隣に身を寄せ、肩を触れ合わせながら、えへへ、と見上げてくるロコ。
かわいい……ではなく!
「そ、そうじゃなくてだな。向かい合わせに」
「はいっ!」
威勢のいい返事と共に、今度は俺と向かい合うように俺の膝の上に座ろうとするのを慌てて止める。
「いや、そういうとこだよ!」
「……?」
不思議そうにしているロコを何とか俺の向かいに座らせると、はぁ、とため息をついた。
「あのな。ロコもその、恥じらいを持つべきというか。そもそも俺は別に、そういう水着とかも特に興味がある訳じゃ……」
「あ、あの! それはウソだと思います!」
控えめながら断定的な口調で、ロコは俺の言葉を一刀両断にした。
普段、俺の言うことを否定しないロコにしては、めずらしい。
ただ、俺もここで引く訳にはいかない。
「どうしてそう思うんだ?」
「だ、だって――」
俺が強硬な態度で尋ねると、ロコは言おうか言うまいか、少し迷うようなそぶりを見せて……。
「――ルキさんの持ってたエッチな映像記録には、こんな格好をした人が映ってました!!」
めのまえが まっくらに なった!
「あ、え、うぇええ……?」
口から変な言葉が出て、冷汗がダラダラと流れて止まらない。
い、いや、落ち着け。
落ち着くだ、いや、落ち着くんだ。
「な、なに、なにを、言ってるんだ? そ、そもそもどこで? どこで見たんだ、そんなの」
あ、ありえないはずだ。
だってそういうのは全部深い階層に入れて視聴制限をしたはずだから、そんなことは絶対に……。
「『ジェネシスの車窓から』に、同じ回が二つ入ってるのがあって、それをつけたら……」
――あ、うわあああああああああああああああああああ!!
俺は心の中で絶叫した。
そうだった!
どうせジェネシスの車窓からなんて見る奴いないだろうと思って、初期のエッチなアレのファイル名を偽装して、ジェネシスの車窓からフォルダに突っ込んでおいたのだ。
だいぶ昔のことだったから、完全に忘れてた!
「み、見たのか? あれ見たのか!?」
「さ、最初の方だけ、ですけど……」
――ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!
俺はふたたび心の中で叫ぶ。
アレは、いや、ほんとに、アレだけは色々とまずい!
いや、全部まずいんだけど、いやでもうわああああああああああああ!!
懊悩する俺に、しかしロコは慈愛の笑みを浮かべる。
「だ、だいじょうぶです! わたし、理解ありますから! むしろ、理解しましたから!」
「しないで! 頼むから!」
ロコの心遣いが逆に心に刺さる!
俺は心の中で七転八倒して転げまわった。
「そ、それに、わたしだったら、映像じゃできないことでも……」
「ス、ストォォォォォォォップ!!」
なんかすごいこと言い始めたロコを慌てて止める。
うん、まあ、俺はこんな年下の子をそんな目で見たりはしないから大丈夫なんだけど、まあ、あれだ。
念のため、なんかこう、予防的なアレで止めた方がいいと本能が叫んでいたのだ。
「と、ということで!!」
「え? ど、どういうことですか?」
「まだ早いかと思ってたけど、対人関係の設定を今やってしまおう! そうしよう!」
「えっ? あ、あの」
「ロコ! メニュー画面から設定、対人設定を開いて!」
突然大声を出して思考力を奪い、そのまま勢いで押し切る。
ロコは基本押しに弱い!
とにかくここを乗り切るんだ!
「え、えっと、対人設定の画面まで、きました」
「うん。それで、今はどうなってる?」
「ええと……フレンドリーファイアは『あり』。ほかは大体『なし』になってるみたいです」
やっぱりか。
俺はわざとらしくうなずいた。
「ルキさん。この『フレンドリーファイア』とか『犯罪認定』とか、どういう意味なんですか?」
「ああ、それはな……」
ロコの疑問にうなずきながら、俺は内心しめしめとうなずく。
対人関係の設定はいつかやってもらわないと、と思っていた部分ではあるが、このタイミングにしたのは先の映像記録の一件から話を逸らすため。
そして狙い通り、どうやらロコの興味はあっさりと新しい設定に移ってくれたようだ。
俺に質問をするためだろう。
いつのまにか俺の隣にぴったりとくっついてうんうんとうなっているロコを見て、ちょろい子だなと思いながらも、俺は解説をしていく。
「このページでは、主にプレイヤーに対する設定を行うんだ。ええと、ロコはPvPとか、PKって言葉、聞いたことあるか?」
ロコはぶんぶんと首を横に振った。
まあ、MMOとかの本格的なゲームをやったことがなければそんなものだろう。
「その辺の用語は基本的にプレイヤーがモンスターじゃなくて、プレイヤー同士で戦う時に使う用語なんだけど、ジェネシスでは基本的にそういう要素は制限されてるんだ」
これは、ジェネシスが世界一リアルなVRゲーム、と言われていたことに起因するらしい。
普通のMMOでもプレイヤーに殺されたら嫌な気分になるのに、このリアルなジェネシスで人に殺されたらトラウマになりかねない。
「だから、ジェネシスではプレイヤーがプレイヤーを殺すようなことがやりにくいように設定が出来る。例えば、フレンドリーファイアはプレイヤーの攻撃が自分に当たるかどうかを設定で、これを『なし』にしておけば、どんな強力なスキルを当てられても全く影響がなくなるんだ」
「あ、じゃあこれは『なし』にした方がいいんですね」
「ああ。とは言っても、アサシンとか呪術師の対人専門スキルとか、一部の自分も巻き込むような無差別の爆発系魔法とかは防げないし、ゲーム的な補正がなくなるだけで、例えばほかのプレイヤーから防具のない場所を刃物で刺されたら普通に死んじゃうから、完璧に安全って訳じゃないんだけどな」
それでもフレンドリーファイアをオンにして得する状況というのはほとんどない。
これはなしにしておいた方がいいだろう。
そして今回、より重要なのは次の項目だ。
「で、その下にある犯罪設定。これは、プレイヤーがプレイヤーに嫌がらせをした時なんかに、それを犯罪として認定するかどうかを決める項目だ。例えばこの接触設定で『全面禁止』を選ぶと、ほかのプレイヤーに身体を触れられた時にそのプレイヤーを犯罪者にすることが出来るんだ。あ、あくまで『触られた時』で『自分から触った時』には関係ないから注意な」
「ええと……犯罪って認定されると、どうなるんですか?」
「ジェネシス内にある牢獄に転送されて、そこで刑期を過ごすことになる。とは言っても『女性キャラの胸に触った罪で刑期十時間』とかそんなんで、その時間が終わるとすぐに元の場所に送り返されるんだけどな」
そこで、ロコはまた首を傾げた。
「え、でも、十時間くらいなら寝たりすれば、一瞬で……」
「いや、そこはちゃんと作ってあるから。刑期はログインしてる時にしか消化不可能で、牢獄の中では一部の『機能が制限される』から、眠って時間を潰したり、新しいキャラを作ってやり直すことも出来ない」
「きのうが、せいげん……」
牢獄の中ではお腹が減ったり眠くなったりといった生理的な機能は制限されるが、代わりにアイテムを使うことも睡眠を取ることも出来ない。
無為な時間をただただ十時間分過ごすことになるのだ。
おまけに、正式稼働前の三時間しかログイン出来ない状況だと丸三日以上進行が出来なくなる。
これはそれなりに厳しい措置だと思う。
「ま、もともとジェネシスにはあんまりマナーの悪い奴とかいないから、ほとんど犯罪が発生することもなかったそうだけど……」
「けど?」
「一度だけ、牢獄が愉快犯のプレイヤーに壊されたことがあったらしくてさ。その時は大変だったみたいだよ」
普段は善良な人でも、今だけしか出来ない、という免罪符があると、途端にはっちゃけたりもする。
「具体的に言うと、セクハラ祭り。特に女性プレイヤーを中心に何十人も被害にあって大変だったんだけど、ほら、牢獄が破壊されても犯罪のシステム自体は生きてるから、犯罪者は牢獄跡に転送されるんだ。で、そこをスクショ取ってゲーム内掲示板に晒すって運動が起こってやっと鎮火。それがあってから要望でプレイヤーが公共の建物を破壊することは出来なくなった、って顛末らしい」
「よ、よくわからないですけど、大変そう、ですね」
どこか他人事なロコに、俺も苦笑する。
まあ、俺も人から聞いただけの話で、あまりピンと来ていないのだが。
「とにかく、自己防衛は大事だってことだ。ギルドメンバーとそれ以外とで別の設定にも出来るから……」
「わかりました! 全体設定は全部『禁止』にして、ギルドメンバーには全部『なし』にしておきますね!」
おお、話が早くて助かる……って、
「い、いやいや、だからさ。万一の事故をなくすためにも、ギルドメンバー相手にももっと厳しくしようって話で! ほ、ほら、接触設定で『性的接触禁止』を選ぶと、胸とか唇とかへの接触は犯罪になるから、せめてそれくらい……」
「でも――」
そこで、ロコはじっと俺の目を見据えて、
「――ルキさんは、リューさんにあっさりキスされてました、よね?」
その時なぜか、ロコの目が鈍く光った……ような錯覚がした。
不意に感じた悪寒を振り払うように、俺は慌てて弁解した。
「た、確かに設定してないけど、ほら、俺は男だし、まさか仲間を牢獄に飛ばす訳にもいかないし」
「それはわたしも同じです! その、いっしょに暮らしてるんだし、事故でそういうことが起きたら……」
「システムはその辺も考慮してくれるし、そういう場合は、『〇〇を牢獄に送りますか?』ってウィンドウが出てくるから、そこで被害者が十秒以内にキャンセルを押せば大丈夫だよ!」
ちなみに「操作をすると牢獄送り」ではなく、「時間内にキャンセル操作しないと牢獄送り」なのは、被害者が動きを封じられた場合を想定して、らしい。
俺はそう説明したが、やはりロコは納得いかないらしい。
「で、でも、その……。い、いざという時が来たら……」
顔を赤くして言うロコに、俺もつい、「いざという時」を想像してしまった。
視線が、自然とロコの小さな唇に吸い寄せられる。
「ルキ、さん?」
その唇があでやかに動いて、俺はハッと我に返る。
「と、とにかく、とりあえず今はそういう設定にしてくれないか? なんというか、その……」
説得力もあったものじゃない。
しどろもどろになりながら、何とかロコを説得しないとという義務感だけで口を開くと、
「……いいですよ」
ロコからあっさりと、了承の答えが返ってきた。
「え?」
聞き間違いだろうか。
俺が驚いてロコを見ると、ロコは穏やかに微笑んでいた。
「わたし、ルキさんが困ること、したくないですから。ルキさんがそうしてほしいなら、それでだいじょうぶです」
「ロコ……」
その温かい言葉に、俺はうるっとしてしまう。
何だか年下の子に情けをかけられたような気もするが、気にしたら負けだ。
「えへへ。それじゃ、そろそろラウンジに行きませんか? ルキさんに見せたいものがあるんです!」
「あー。俺はその前にちょっと荷物を置いてこないと。あと、ロコはその間にその服を着替えてくること」
「むぅぅ。……わかりました。でも、すぐに来てくださいね」
そう言って、ロコがドアの奥に消えたのを見届けると、俺はふう、と息を吐く。
「……さて」
――ここからは、男の時間だ。
俺は、表情を引き締めると、
「う、うおおおおおお!! いそげえええええ!!」
全速のダッシュでオーディオルームに向かい、「ジェネシスの車窓から」フォルダの中身を急いで秘密のフォルダに移したのだった。
次が短くなるけど、区切りの問題で分割
次回更新は5/19の18時予定




