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第二十四話 決着! 燃え上がれ魂の獣人デッキ!!

気になり始めると色々修正点が

後でもう少し変えるかも


 モンスターリーグ、第一回戦。

 俺はリューと向かい合い、激しい舌戦を交わしていた。


「いくら強いと言っても所詮はコモンモンスター! 選ばれし高レアリティモンスターの前には無力だってこと、思い知らせてあげるよ!」

「抜かせ! モンスターのレアリティの違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてやる!」


 リューはぶんっと腕を振ると、モンスターの群れの中から、一匹のモンスターが空に飛び出す。


「高レア四天王、最初の一人! 空の支配者、URウルトラレアスカイルーラー!」


 スカイルーラーは青い体毛のグリフォンだ。

 オークたちの頭上に移動すると、まるでバカにするかのように、甲高い声でいななく。


「いくらオークが強くても、所詮は地を這う雑魚モンスター! いくらレベルが上がっても、その習性は変わらない! 天空を支配する本物の魔物には、決して敵わない!」

「そいつはどうかな? 俺の切り札が、オークだけだと思ったら、大間違いだぜ!」

「な、なにっ!」


 そして俺は呼ぶ。

 誇り高き狩人、竜すら堕とす強弓の射手を!


 その名を――



「――オークアーチャー!!」



「結局オークなんじゃないのよ!!」


 実況席から突っ込みが入るが、全然違う。


 オークアーチャーは十体の群れの中に一体か二体しかいないレアもの。

 その辺の雑魚オークとは一味も二味も違うのだ!


「行け! オークアーチャー! 射撃だ!」

「それって単なる通常攻撃じゃ……」


 まあ、オークってスキル使えないし。


 しかし、通常攻撃だけでも合成オークアーチャーの弓の威力はすさまじい。

 オークアーチャーは悠然と空を漂っていたスカイルーラーに次々と矢を浴びせかけ、あっという間に倒してしまった。


 消えていくスカイルーラーを前に、呆然とするリュー。

 しかし、俺の視線に気づくと、虚勢を張るようにキッとまなじりをあげた。


「ま、まだだ! 所詮奴は四天王の中でも最弱! 四天王の面汚しよ! 次はこいつだ! LRレジェンドレアのモンスター、フェニックスドラゴン!」

「フェニックスなのかドラゴンなのかはっきりしろよ」

「ふふっ。そうやって減らず口を利いていられるのもこの時までだよ」


 リューの口に浮かぶのは会心の笑み。


「フェニックスドラゴンは不死鳥の再生力を持ったドラゴン。こいつはたとえ致命傷を受けても、数回程度なら再生して……」

「はいはい。トラップモンスターオープン、オーク×20」

「ちょ、待っ、フェニックスドラゴーン!!」


 再生能力があっても、数の力には敵わない。

 フェニックスドラゴンはボッコボコにされて消えた。


「よ、よくぞフェニックスドラゴンを破ったな! だが、次はそうは行かないぞ。次は四天王最強と謳われるモンスター! 小細工など要らない。必要なのは絶対的な力! いくら強化されたオークといえど、数多のミノタウロスを統べる王の力を備えた、キングミノタウロスには……」

「え? そいつ今、ふつーにオークに力負けしてふつーにやられてるけど」

「ぼ、僕の王の力がああああああああああああああ!!」

「い、いや、なんかごめん」


 対戦相手のはずなのに、何だか可哀想になってきた。

 だが、リューにとってはそれこそが不満だったようだ。


「謝るなよ! まだ四天王は一人残ってる! 四天王最後の一角、守護神ミドガル……」

「あ、そいつたぶんキングミノタウロスと一緒に倒したけど」

「まだ名前も言ってなかったのにぃいいい!!」


 八つ当たり気味に怒鳴られるが、そんなこと言われても……。

 しかし、リューは案外立ち直りが早かった。


「ま、まだだ! まだ終わってない! ここから裏四天王と真の四天王が……」

「それもう四人じゃなくなってるだろ! いい加減にしろ!」

「……こいつら、ほんとに真面目に戦う気、あるのかしら」


 と、まあこんな感じで、俺のオーク軍団は順調にリューのモンスターたちを倒せていたのだが、その勢いは途中で止まってしまった。


「カオスフェイス! 敵の足を止めろ!」

「くっ! オーク隊! そっちはダメだ! オークアーチャー、援護を!」

「今だ、フラットランダ! アローカーン!」

「ここでかよ! くそ、オークアーチャー、撃ち方やめ!」

「ふっふん! 隙を作ったね。魔法使い隊、放て!」


 図らずもリューがスカイルーラーを出した時に言った通り、どんなにレベルが上がっても、オークがオークであることに変わりはない。


 オークには物理攻撃以外に攻撃手段がなく、魔法攻撃に対して全く耐性を持たない。

 だから、十三枚の顔を持つ超防御型モンスター、カオスフェイスや、遠距離攻撃を反射するスキルを持つフラットランダには防御に回られると突破は厳しいし、その後ろから魔法を使われればいくら高レベルであってもじりじりと体力を削られる。


 それに、相性の問題だけでなく、やはりリューの指示の出し方は速くて的確だ。

 この辺りは、やはり専門家。

 ずっと、一心にモンスターバトルを繰り返してきたリューの面目躍如と言ったところか。


 とはいえ、かと言って俺が劣勢か、というと必ずしもそうではない。

 むしろ俺は、勝利への手ごたえを感じていた。


 最初の奇襲の効果は大きく、リューの主力はそれなりの数削れている。

 初め、五十体いたはずのリューのモンスターは、いまや十数匹にまで減っている。


 それでも向こうが陣形を立て直してからはこっちの損害の方が多くなっているが、それでも初めからモンスターの数が四倍いたことも加味すれば、戦力値では圧倒的にこっちが有利だ。

 加えて、俺が温存していたモンスターたちを次々とリューの軍団に攻め込ませたおかげで、何とか進軍を遅らせることが出来ている。


 このペースで行けば……。


「さぁ、残り時間、いよいよ十分を切りました。進軍を続けているブルーチームですが、戦力値では依然としてレッドチーム有利! ブルーチームの敗色濃厚か!」


 ミィヤによる実況も、俺の有利を告げている。

 このままリューを押さえ続けることが出来れば、そう思って、リューの顔を見る。


 だが、そこで俺は気付いた。


「リュー。何でお前、笑ってるんだ?」


 戦力差は圧倒的。

 リューのモンスターたちが俺のフラッグに到達するまでは、少なく見積もってもあと二十分はかかる。

 この状況で、笑顔を見せているのは、なぜだ?


「そりゃ、もちろん、おかしいからさ。ねぇ、ルキ君。この画面と情報を見比べてみて、何かおかしいとは思わないかい?」

「一体、何を言って……しまった!」


 俺はハッとして、情報画面とレーダーを見比べる。


 最初はモンスターが百匹だったから、レーダーで一匹一匹の数を数えることなんて出来なかった。

 でも、数が少なくなった今なら分かる!


 リュー陣営のモンスターの数は、戦況画面には残り十三と出ている。

 しかし、光点の数を数えてみると……。


「十二体しかない!? じゃあ、残り一体は……」

「やっと気付いたようだね。でも、もう遅いよ。……トラップモンスター、オープン」


 リューが、手を閃かせる。




「――出でよ、竜の王! カイザードラゴン!!」




 現われたのは、主力モンスターの一角、カイザードラゴン。


 そのレア度は圧巻のULSGRウルトラレジェンドスーパーゴールドレア

 出現確率0.000001%の超激レアモンスター!


「合成モンスターの強さは想定外ではあったけど、この程度の苦戦は予想済みさ」

「だ、だからって、たった一匹のモンスターで……」

「そう思うかい? カイザードラゴンは移動速度に優れ、空を駆ける王の中の王。そして今、君のモンスターのほとんどは僕の主力を止めるために一ヶ所に固まっている。その状況で、主力と逆側を飛んで攻めたら、どうなると思う?」

「まさか……!?」


 リューがにやりと笑い、カイザードラゴンに指示を出す。


「行け、カイザー! 忌まわしき記憶と共に!!」

「や、やめ……っ!」


 制止の言葉は、当然意味をなさない。

 リューの作戦は、右翼の主力を押さえるため、手薄になった左翼を抜ける、カイザードラゴンによる単騎掛け。


「くそ、トラップモンスターオープン!」

「ははは! 無駄だよ!」


 俺は慌てて左翼側のモンスターを出現させるが、もう右翼への対応で、戦力はほとんど残っていない。

 しかも、カイザードラゴンは高速で飛翔している。

 こいつを止めるには、アーチャー以外に役に立たない。


「くそ! なんてスピードだ! 速すぎる!」


 四十九体いた主力部隊が越えられなかった俺の防衛線を、たった一匹の軍隊が、悠々と駆けて突破していく!

 カイザードラゴンは瞬く間に俺のフラッグの目前まで迫る。


「ルキ君。君はがんばったよ。だけど、この戦いだけは、モンスターバトルでだけは僕は負けるわけにはいかないんだ。悪いね」


 リューの、堂々たる勝利宣言。

 俺はがっくりと肩を落とし、


「はぁ、やっぱりモンスターバトルじゃリューには勝てないな……なんて、言うとでも思ったか?」

「えっ?」

「トラップモンスター、オープン」


 そして次の瞬間、目に力をよみがえらせ、その言葉を口にする。

 勝負の終わりを告げるその言葉を。




「――オークアーチャー×50」




 突如として、フラッグの周りに現れる弓を構えたオークの大軍。

 その数、50体。


「う、うそだ! なんでこんな場所に!」

「何で、なんて心外だな。本拠地前に兵士を伏せるのは定石だろ」

「ち、違う! そうだけど、そうじゃなくて! 何でここにアーチャー(・・・・・)を用意してるんだ! これじゃ、これじゃまるで……」

「この展開を、読んでいたみたいだ、って? その通りだよ」


 流石にカイザードラゴンを自陣に伏せていることまでは読めていなかったが、あらかじめドラゴンによる奇襲があることは想定していた。

 だから、最後の押さえとして、全体の四分の一にも及ぶ戦力を旗の手前に伏せておいたのだ。


「そん、な……」


 ガクリ、と膝をつくリュー。

 その姿に向かって、俺は哄笑をあげる。


「あはははは! かかったな、リュー! お前も、気付かなかったか? 情報に比べて、モンスターの数が少ないんじゃないかって! この瞬間のために、あえてモンスターを小出しにして、ここに大量のモンスターを伏せていることを隠してたのさ!」


 なんかちょっと面白くなってきてお互いにテンションがおかしなことになっているが、楽しいからいいか。

 俺が高笑いを続けていると、実況席からまたもぼそりと声が飛ぶ。


「というかそのアーチャーを先に出して、まとめて攻めておけば普通に勝てたんじゃ……」


 外野が何か無粋なことを言っているが、これが様式美なのだ。

 俺は構わずにアーチャーにトドメの指示を出そうと、口を開き、


「まだだ! まだ、終わってない! カイザードラゴン! お前の力を見せてやれ!」

「面白い! それでこそ俺のライバルだ! 来い!」


 その言葉に、勝負がまだ決着していないことを知る。


「行け、カイザー! 帝王の力、あいつに見せてやれ!」

「戦いは数だ! 押しつぶせ、オークアーチャー!」


 俺のオークたちが天に向かって弓引くのと同時に、空に昇ったカイザードラゴンが、渾身のブレスを吐き出す。


「フルバーストフレア!!」

「全員、撃てぇ!!」


 カイザードラゴンの口から、極彩色のブレスが迸る。

 オークアーチャーの撃った矢は、カイザードラゴンのブレスにかき消され、その翼までは届かない。


 しかし、それでも数の力は圧倒的。

 こんなブレスをいつまでも放ち続けられるはずがない。

 このまま撃ち続ければ……。


「まだ! まだだ! もうこれで終わってもいい! だから、ありったけを!!」

「なっ! まだ、強くなるだと!?」


 まばゆく光る極彩色のブレスが、飛んできた矢を、フラッグを、そしてオークの軍団を、呑み込んでいく。


 それは、十数秒にも及ぶ、光の暴力。

 見ていた俺の瞳に残光が焼き付くほどに強烈なそのブレスは、辺り一面を真っ白く染め、そして……。


「……ありがとう、カイザー」


 ブレスを吐き終わったカイザードラゴンは、もはや空を飛ぶ力すらなく、地面に落ちた。


「オークたちは!?」


 俺は光にくらんだ目を見開き、必死にその姿を探す。

 まさか、さっきので本当に全滅してしまったなんてことは……。


「は、はははは! そうだよな! そりゃ、そうだよなぁ!」


 だが、俺の目に映った光景は、俺の不安を綺麗さっぱり打ち消すものだった。


 ――オーク軍団、健在!!


 確かにダメージを受け、煤けている者もいたが、ほとんどのオークアーチャーは、いまだに弓を構えたまま、一体も欠けることなくそこに立ち、弓を構えていた。


「……終わり、か」


 向かいで、リューが驚くほど穏やかな顔をして、目を閉じる。


「リュー。お前は、本当に強かったよ。……オークアーチャー、撃ち方、はじめ!!」


 俺はそんなライバルに、最大限の賞賛を込めてその言葉を贈り、いよいよ幕引きの言葉を口にして……。


「おーっと、ここで決着! レッドチームフラッグ全損のため、ブルーチーム勝利です!」

「え……」


 オークアーチャーたちの後ろに、ブレスで溶かされた自分のチームの旗を見て、がっくりとその場に膝をついたのだった。


 ※ ※ ※


「えっへっへっへ。ごめんね、ルキ君。勝負の世界ってのは厳しいからさ」


 今となっては、勝ち誇っていた自分が恥ずかしい。

 リューのブレスは苦し紛れの攻撃ではなく、最初からオークアーチャーの背後のフラッグを狙ったものだったらしい。


「ル、ルキさん! ルキさんは、その、がんばったと思います! ナイスファイトです!」

「ありがとう、ロコ」


 解説のはずが完全に俺の応援団になっているのはどうかと思うが、今はその言葉だけが俺の癒やしだった。


「そ、それに、これはトーナメントじゃなくてリーグ戦です! ま、負けたってまだ、チャンスはあります! 次の試合でがんばれば……」


 それからも、必死で俺を慰めてくれるロコ。

 気持ちは嬉しい。

 嬉しいんだけど……。


「え、えーっとね、ロコ。言いにくいんだけど、モンスターバトルってすごい不人気競技で、しかも選手登録ができるシミュレーターって、今闘技場と初心者の塔の二カ所にしかないの。だから……」


 見かねたシアがロコに真実を打ち明ける、その前に、



「――では、モンスターバトルリーグの全試合が終了しましたので、これから表彰式に移ります! 素晴らしい戦いを見せてくれた選手の皆さんに、拍手をお願いします!」

「えっ? え、えええええええええええええ!!」


 ミィヤのアナウンスによって、出場選手が俺たちだけ(・・・・・)だったという事実に気付かされたロコは、ぽかーんと口を開けたのだった。



 ※ ※ ※



 表彰式は、つつがなく行われた。

 と、言っても、特に誰かが表彰しに来てくれる訳ではなく、例の段差のある表彰台に上って、ミィヤのアナウンスに合わせて空から降ってくるトロフィーを受け取るというゲームっぽい演出の表彰式だった。


 表彰が終わり、ジェネシスのテーマソング(こういう場面で必ず流れる歌。歌詞は存在するらしいが誰も知らない)を聞きながら、あとは閉会を待つ。

 そんな寂寥感漂う雰囲気の中、一番はしゃいでいたのは、もちろん、


「あっはははは! 賞金額三百億ゴールドだって! 億だよ億! すっごーい! あー! さいっこうの気分だよ!」


 表彰台の一番高いところに立つ、リューだった。


「そりゃまあ、勝ったんだから、気分はいいだろうけどさ」


 俺がちょっとふてくされて言うと、リューは笑顔を崩さないまま、俺を見る。


「うん、まあ、それはもちろんあるけど、それだけじゃなくて。こんな風に全力で君と遊んだのが、何だかひさしぶりだなって思って」


 俺の目を見つめるその笑顔に、一瞬だけ、言葉を忘れた。


 そこには、いつものどこか斜に構えたひねくれ者の姿はどこにもなく。

 ただただ屈託なく笑う、一人の少女がいた。


「……俺も、楽しかったよ。やっぱり俺たち、趣味が合うのかもな」


 俺がうなずくと、リューの笑みは、さらに大きく、明るくなる。

 我ながら単純だけど、それだけで今日この大会に出て、よかったんだと思えた。


「実はさ。僕はずっと、ずうっと前からここに立つことを夢見てたんだ」

「そんな、大げさな……」

「大げさなんかじゃないよ。ずっと、何ヶ月も前から、ここに立って最高のトロフィーを手に入れるんだ、って思ってがんばってたから」


 真剣に言い募るその言葉に、嘘は見られない。

 でも、少しだけ違和感があった。


 リューはどちらかというと、トロフィーだとか記録だとか、そういうものに興味を示すタイプに見えなかったから。

 そんな俺を見て、リューは淡く笑った。


「あはは。もう鈍いなぁ、ルキ君は。……はい」


 突然金色のトロフィーを押し付けられ、思わず受け取ってしまう。

 リューは両手に金と銀のトロフィーを抱えて身動きの出来ない俺を満足そうに見つめると、俺の方に顔を寄せながら、安心したように言った。


「やっぱり、優勝できてよかったよ。逆だったら、背伸びしても届かなかったかもしれないし」


 届かないって、一体何に?

 そんな疑問を口にしようとして、しかし出来なかった。


「――ッ!?」


 疑問を口にしようとしたその口が、何かやわらかいものに塞がれていたからだ。


「――――――!!」


 背後の実況席から、絶叫のような、怒号のような悲鳴があがる。


 だが、それもどこか遠い世界の出来事のように思えた。

 ただ、びっくりするほど近くにリューの顔があって、その両手が、俺の首の後ろに回されていて……。


「……んっ」


 俺の口に触れていたのがリューの唇だったとはっきり認識出来たのは、顔を真っ赤にしたリューが、俺から離れた時だった。


「え、へへ。うまく、できたかな」

「い、いまっ!」


 口がうまく回らない。

 動揺から立ち直る暇も、俺が何かを言う暇もなかった。

 リューはそれから機敏な動作で俺の手から金色の優勝トロフィーを奪い去ると、



このトロフィー(・・・・・・・)は一生大事にするから、ね」



 そう言って、ギュッとその胸に抱き寄せたのだった。



 ※ ※ ※



 ……それからのことは、あまり思い出したくもない。


 きっと、狙っていたのだろう。

 あの直後、大会終了となってお役御免となった俺たちは元の場所に転送し直された。


 大変だったのはロコで、俺に向かって何かを言いかけては口を閉じる、ということを十数回は繰り返し、結局何も言わないまま、その日はそれからずっと、俺の手を痛いほどに握りしめて一瞬たりとも離さなかった。


 そして翌日の正午。

 俺がチャット画面をつけると、イライラとしたシアと、どこか暗い目をして虚ろな笑顔をしたミィヤがいた。

 しかし、その中に昨日とんでもないことをしたリューの姿がないことに、俺は少し安心してしまった。


 リューは一体、どういうつもりであんなことをしたのか。

 一体リューと、どんな顔をして会えばいいのか。


 俺にはまだ、結論が出ていなかったのだ。


 ……しかし、そんな余裕があったのも、最初の十分間だけ。

 十分が経ち、二十分が経っても姿を現さないリューに、みんな苛立ちよりも不安を覚えるようになる。


「ルキ、さん。だいじょうぶ、ですか?」


 今まで、一言も口を利いてくれなかったロコから、心配されるほどに。

 俺の胸に、不吉な予感が広がる。


 思い浮かぶのは、明るくて、儚げな笑顔。

 あの日、ギルマスと別れた日も、こんな風に……。



「――やった! やったよルキ君!!」



 ただ、そんな俺たちの心配は、あっさりと杞憂に終わる。

 チャット開始から三十分が過ぎようとした頃、突然新しいチャット窓が開き、そこからリューが顔を出したのだ。


「リュー! お、お前、どうしてこんな時間まで……」

「そんなことより、聞いてよ! ついに最高レアのULSSSGGR(ウルトラレジェンドスペシャルダブルスーパーゴールドグレートレア)の真カイザーフェニックスドラゴンを手に入れたんだ! これさえあれば……うふ、えひひひひ!!」

「お、お前は……」


 全く反省の色もなく、ただただレアモンスターの自慢をするリューに、呆れを通り越して毒気を抜かれてしまう。


「はぁ。まったく、心配して損したわよ」


 そしてそれは、シアも同じのようだった。

 なんだかなんだでギルドメンバーのことを人一倍気にかけているシアは、こっそりと目じりに浮かんだ雫をぬぐうと、厳しい声を作ってシアに語りかける。


「まあ、いいわ。とにかく、今後はあんたへの仕送り、停止するからね」

「え? なんで?」

「何で、って……あんた、優勝賞金で三百億ゴールド、もらったんでしょ」


 その説明に、リューはああ、とばかりにうなずいたが、すぐにこう返した。


「バカだなぁシアは。……そんなのもう、残ってるわけないじゃん!」

「……は?」


 空気が、凍りつく。

 こいつ今、なんて言ったんだ?


「そもそも今日僕が遅れたのって、大会から今までの二十時間、飲まず食わずでずっっっと、ガチャを引いてたからだよ!」

「え? あんた、え?」


 こいつ正気か、というシアの視線に動じることもなく、屈託のない輝くような笑顔を浮かべ、


「おかげで念願のモンスターも手に入ったし、今日もほんとーに最高の日だよ!」

「あ、あ、あんたは、あんたって奴はあああああああ!!」


 シアの叫び声がチャット画面を揺らした。


 ……まあ、でも、そうだった。


 リューは大のゲーム好きで、ひねくれ者で、でも好きなものには一途だったりもして、単純に見えて意外と頭脳派で、人をからかうのが好きで、それでも実はちゃんと女の子で、そしてやっぱり……。



 ――根っからの、ガチャ中毒者、なのだ。



 そうして俺は、いつになっても変わらない、シアとリューのいつも通りの口喧嘩をどこか微笑ましい気持ちで聞きながら、こっそりと忍び足で部屋から逃げ出したのだった。

大団円!!




次回もある意味バトル回の予定

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胃が痛くなった人に向けた新しい避難所です! 「主人公じゃない!
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