第十六話 芸術
い、いきなり早く更新するとみんなびっくりさせちゃうし多少はね
「レアモンスター」と聞いた時、一体どんなモンスターを思い浮かべるだろうか。
経験値を大量に持っているはぐれた感じのモンスターや、お金をたくさん持っている金色のモンスター、あるいはダンジョンの奥地にいるレアなアイテムを落とすモンスターなど、人によって思いつくものは違うだろう。
ただ、ジェネシスにおいて「レアモンスター」と言えば、ほとんどがとある有名モンスターを思い浮かべる。
それは、ゲームにおける定番モンスターで、誰もが名前を知っている魔物にもかかわらず、とある事情によって幻のモンスターとなってしまった悲運のモンスター。
――その名も、『ゴブリン』である。
※ ※ ※
「と、いう訳で、ロコにはこれからそのゴブリンと戦ってもらう!」
「い、いきなり、ですか?」
すれ違いとジェネシスの遊び心が生んだ悲しき事件のあと。
装備の問題を一旦棚上げにした俺たちは、とりあえずマジカルガンナーの強さを知るためにもまずは戦うべき、という結論に達した。
そこで俺たちは例によって手をつないで仲良くシミュレーターまでやってきて、ゴブリン討伐を提案したのだが……。
「で、でも、めずらしいモンスターなんですよね? つ、強いんじゃ」
「いや、ゴブリンがレアなのは、強いからじゃないんだ。むしろ逆。弱いから、レアになったんだ」
ジェネシスには生態系を再現する、的なシステムが中途半端に導入されている。
同じフィールドでたくさん倒されているモンスターは数が減少するし、モンスターにも対立があって、そのフィールドのモンスターが増えた場合に抗争が起きる場合もある。
その場合に消えていくのは当然、弱いモンスターであり、ゴブリンはあらゆる場所でフルボッコにされ、ついには通常のフィールドで見かけることはほぼなくなってしまったという訳だ。
ちなみに初心者の塔の周りにも最初はゴブリンと、あとはこの前戦ったコボルトも生息していたのだが、長い時間が経つうちにオークに滅ぼされてほぼオークだけしか出なくなってしまった。
これはあからさまな欠陥システムではないかと思う。
「ゴブリンさんってそんなに弱いんですか?」
まだ半信半疑と言った様子のロコに、俺は自信を持って答える。
「ああ! 弱い! ひたすらに、弱い!」
ゴブリンがいかに弱いのか。
詳しく説明すると……。
・ゴブリンが弱い理由、その一「持っている武器が弱い」
まず、ゴブリンは初期装備は「折れた木の枝」なのだが、この武器、モンスターが持っているものの中でもダントツに弱い。
何しろ攻撃力が18しかないのだ。
これがどのくらい弱いかと言うと、もはや素手よりも弱い。
あの弱い弱いと言われているチュートリアルソードと比べてもその弱さは歴然!
何しろ折れた木の枝は、チュートリアルソードのたったの十八倍の攻撃力しかないのだ!
……ほんとローミー今からでもぶん殴れねえかな。
・ゴブリンが弱い理由、その二「武器に対する職人じみたこだわり」
また、彼らは戦闘中に武器が壊れると新しい武器を探そうとするのだが、彼らは違いの分かるモンスターなので近くに強い武器があったとしても決して折れた木の枝以外の武器を持とうとしない。
そして折れた木の枝なんてそうそう落ちてないので、大抵は武器を壊した時点で勝ち確になるのだ。
・ゴブリンが弱い理由、その三「耳が遠い」
あんな耳がとんがってるくせに、あいつらは近くで音が鳴ってもあんまり気付かない。
結果、遠距離武器で攻撃すると一網打尽に出来ることが多い。
・ゴブリンが弱い理由、その四「集まると雑談する」
モンスターは群れで生成されることが多いのだが、ゴブリンの場合は群れると隣のゴブリンと話を始める。
修学旅行の学生くらい騒ぐのですぐに発見出来るし、耳の遠さとあいまって先制攻撃が簡単。
・ゴブリンが弱い理由、その五「人を見つけると叫ぶ」
プレイヤーを発見すると嬉しくなってしまうのか、ものすごい勢いで叫ぶ。
それはもう、後ろからこっそり襲いかかる時に「隙ありー!」って言ってしまう人くらいの音量で叫び散らす。
おかげで不意討ちされる心配はないし、例によって耳が遠いのでその声を聞きつけてほかのゴブリンが駆けつけたり、ということもない。
・ゴブリンが弱い理由、その六「普通に弱い」
とにかく普通に弱い。
「という訳で、ゴブリンはジェネシスの最弱モンスター・オブ・ザ・イヤーに殿堂入りするレベルで弱いんだよ!」
「よくわかりませんでしたが、よわそうってオーラはひしひしと感じました!」
「よし!」
ジェネシスにおいて、自分が相手より強い、という自信は非常に大切だ。
通常のゲームならまだしも、ジェネシスでは感覚的には生身で恐ろしい怪物に立ち向かうことになる。
そこで怯えずに戦うためには、何かしらの動機付けが必要なのだ。
「あ、あの。でも、だいじょうぶでしょうか。まだ、装備が……」
と迷いを見せるロコだったが、そこについては心配はしていない。
「ガンナーって職業は、その性質上、攻撃を受けない立ち回りが基本になる。それに装備については今でも十分だと思う。ロコ、初期装備の銃、ちょっと見てみてくれ」
「は、はい!」
片手は俺と手をつないだままなのに、ロコは実に鮮やかな手つきで、自分の初期装備「古ぼけた魔導銃」のステータスを呼び出す。
―――
【古ぼけた魔導銃】
種別:魔導銃
性能:300
耐久:500
属性:なし
遮断:50%
装備可能LV:LV1~
装備可能職業
・マジカルガンナー
―――
「こ、攻撃力300!?」
ロコは驚きの声をあげるが、思った通りだ。
上級のジョブは下級ジョブを前提としている関係上、初期装備が強い傾向がある。
さらにそれが、その職業でしか扱えない「専用装備」であれば、その基準は跳ね上がる。
ロコは尻ごみしていたようだが、俺としてはむしろ、こんなもん持ってる奴に木の枝持って襲いかからなきゃいけないゴブリンの方に同情したい。
「でも、油断はするなよ。いくら攻撃力が高くても、防御力まで上がる訳じゃない。防具による軽減は期待出来ない以上、敵の攻撃をレベル1の素の防御力だけで攻撃を受けることになる。もし、銃でゴブリンを仕留めきれずに、その攻撃を受けることになったら……」
「なったら……?」
「結構痛い!」
俺の言葉に、えぇ、という顔をするロコ。
いや、だってぶっちゃけ最弱モンスターだしね。
ゴブリンと比べたらリンカーボアの方が三倍くらい強い。
まさかローミーでもあるまいし、いくら死んでもミッション失敗になるだけとはいえ、可愛い可愛い初心者プレイヤーをいきなり即死級の敵にぶつけるなんて非道なことはしない。
ロコはぬるま湯のような環境で、ゆっくりゆっくり育ってもらうと決めているのだ。
「まあ、だからそこまで緊張することはないけど、これでゴブリンから攻撃を食らうようじゃ、ガンナーとしてプレイしていくのは厳しい。攻撃されたら殺される、くらいの気持ちで全力で挑むように!」
「はい!」
とまあ、口ではそう言うものの、実際には俺も見守るつもりなので、大丈夫だろう。
「じゃあ、今回はロコがセッティングしてみようか」
俺はロコと手をつないだまま、ステージ選択と設定を指示して、ロコに操作をさせる。
今回挑むステージは、推奨レベル三の「ゴブリンアタック!」で、敵はゴブリン三体だ。
前回とは違い、参戦は「フリー」、ただし観戦は「不可」に設定した。
参戦は文字通りほかのプレイヤーが途中から参戦すること、観戦はほかのプレイヤーがその戦いを見学することなのでどちらも「フリー」とするのが基本なのだが、観戦がオンになっていると、闘技場のシミュレーターからリューが顔を出して何やらうるさいことを言ってくる可能性もある。
せっかくの初陣に水を差させるのもよくないだろう、うん。
「じゃ、じゃあ、始めますね!」
気合十分でロコがボタンを押そうとするが、
「あ、悪い。俺はちょっとやっておくことがあるから、先に始めておいてくれ」
「え……?」
その言葉に、見捨てられた子犬のような目で俺を見た。
「い、いや! ほんと一瞬で終わるからさ! その間、魔導銃の試し撃ちでもして待っててくれよ」
ロコはいまだにこの世の終わりみたいな顔をしていたが、基本的には聞き分けのいい子だ。
悲しそうながらうなずくと、
「……わかり、ました。早く、来てくださいね」
素直に開始ボタンを押して、仮想の世界に旅立っていった。
「……さて」
それを見届けた俺は、さっとメニュー画面を呼び出すと、そこからシミュレーターの設定を選んでミッションのリプレイ保存設定を「オン」に変えた。
「うん! ロコは恥ずかしがりそうだけど、やっぱり弟子の晴れ舞台はちゃんと撮っておかないとな!」
そうして完全に運動会の見学気分で、俺はシミュレーターの参加ボタンを押したのだった。
※ ※ ※
今回のフィールドも、前回と同じく森の広間だ。
早速俺を見つけたロコが何かを言っているが、ちょっとよく聞き取れない。
とりあえず適当にうなずきを返して、ロコに近付いていく。
俺はそのままロコの肩に手を置こう……としてちょっとためらって、その隙にパッとロコの左手に手を絡め取られた。
結局いつものように手をつなぐ形になったが、これから戦うという場面で左手が塞がっていていいのだろうか。
一瞬だけ考えたが、「ルキさん?」と不安そうに口にするロコの可愛さに全てが吹っ飛んだ。
まあいいや。
右手で魔導銃を撃つなら別に左手が塞がってても問題ないし、いざとなったら俺が何とかすれば……。
と、思いっ切り今回の趣旨に反したことを考えてしまったが、ここは心を鬼にする。
ゴブリンが襲ってきたらロコがどんなに泣きわめいても手を放すという非情な決断を内心で決意しながら、ロコに問いかける。
「どうかな? やれそう?」
「あ、足元がちょっとチクチクしますし、や、やっぱりちょっと、落ち着かない感じですけど……やれます!」
気合の入った答え。
だけど、求めていたものとはちょっと違うような。
「いや、そうじゃなくてさ。銃の試し撃ちはしたのかなと思って」
「あ、はい! 使いやすいと思います。その、反動、とかもないですし、狙ったところにまっすぐ飛ぶ感じで、すごいです!」
さらにロコは「見ててください」と言って、実際に魔導銃を撃ってみせた。
ロコが引き金を引いた瞬間、パシュ、という押し殺したような小さな音がして、青い光が木々の隙間を猛スピードで飛んでいく。
想像していたよりも弾速は速いし、見たところ射程距離も相当ある。
地味なところで、サイレンサーもつけてないのに音がほとんどしない、というのもプラスポイントだろう。
「なるほど。確かにこれは、便利そうだな」
「そ、そうですよね! やった!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるロコに目を細めるが、実際これはかなり使い心地がよさそうだ。
調べてみたところ、魔導銃というのは弾丸の代わりに魔法を弾にして撃つもので、ロコが最初から覚えていたアビリティ「魔弾の射手」の説明によると「魔導銃での通常攻撃が魔弾になる。魔弾はSPを一消費し、魔法攻撃力に依存するダメージを与える」らしい。
反動がなく、弾道がまっすぐというのは初心者にとっては扱いやすい部分だろうし、銃使いや弓使いのネックである弾丸消費がないというのは強みになる。
その反面、通常攻撃にSPを消費するというのは、特にレベルの低い間は苦労することになるかもしれない。
「よし、じゃあロコ。ゴブリンと戦う前に、その銃の性質の復習だ」
正直に言えば、銃なんてFPSをちょっとかじった時の知識程度しかないが、ロコよりはきっとマシだろう。
一応の先輩としての威厳を損なわないように、出来るだけ知ったかする。
「あ、あの、でも、ゴブリン……」
「大丈夫、あいつらは耳が遠いって言っただろ。話をする時間くらいはあるさ。ロコは、ゲームでも何でもいいけど、銃を撃った経験は?」
「え、えっと……。い、一度だけ、友達とゲームセンターでゾンビを撃つゲームをやったことがあります。怖いからどんどん撃ってただけなんですけど、友達からはうまいってほめられました!」
「へぇ。意外だな」
あんまりそういうのが得意そうには見えなかったのだが。
俺の言葉に、ロコはもじもじと身をよじり、それでもまんざらでもなさそうに笑った。
「えへへ。結局それがお母さんにバレて、そのあと物置に閉じ込められた上に一週間外出禁止にされちゃったんですけどね」
「あ、うん。大変、だったな」
そんな軽い感じで重量級エピソードをぶっ込んでこないでほしい。
「え、ええっと、魔導銃に話を戻そうか。これはデザイン的に、分かりやすいオサレ銃だ。スコープどころか、アイアンサイトすらないから、正確な狙いをつけるのは難しい。弾自体の射程はもっとあるかもしれないが、確実に当てられる距離は数メートル程度だと思っていい」
「あ、あの……」
「それから、ここは遮蔽物が多いから、どうしても視界がさえぎられて……」
俺がさらに魔導銃についての解説をしようと、息を吸った時だった。
「あの!!」
「ど、どうしたんだ?」
ロコが急に、大きな声をあげた。
思わず動きが止まる。
「す、すみません、ルキさん」
するとロコは、ちょっとだけ申し訳なさそうな顔をして、
「でもゴブリンさんたち、もう倒しちゃったんです」
「……へ?」
ミッションクリアのファンファーレと共に、俺たちは仮想空間から弾き出されたのだった。
※ ※ ※
「ご、ごめんなさい。実はルキさんが来る前にゴブリンさんたちを見かけて、びっくりして反射的に撃っちゃったんです」
「え、ええ……」
何でも、最初に俺が近寄っていった時、ロコが話そうとしていたのはこのことだったのか。
「ミ、ミッションの様子は録画されてるから、とにかく見てみようか」
まさか、こんなにも早くリプレイ機能が役に立つとは。
俺は先程のミッションのリプレイを呼び出すと、平面の画面で見られる動画モードを選択、カメラを「プレイヤーを追従」に設定してリプレイを再生する。
見下ろし視点で映し出されたロコが画面内に現れ、驚いた顔をしたかと思うと、いきなり銃を乱射する。
何発か分の銃声が響いたあと、やってしまった、と泣きそうな顔になったロコがきょろきょろと辺りを見回していると、その数秒後に俺がやってくる。
この間、たったの十二秒。
いや、銃を撃ち終えたところまでだと、ほんの四秒ほどだ。
「え? これで、倒したのか?」
このミッションに登場するゴブリンは、三体。
こいつらはバラバラに配置されているため複数体に同時に襲われる危険は少ないが、だからこそ本来、時間がかかるミッションでもある。
その、はずだ。
俺は慌ててリプレイを最初に戻し、今度はもう少し視界を広く取って再生する。
すると、ロコが焦ったように撃ち出した青い光が全てのゴブリンを捉え、倒れたゴブリンが光の粒へと変わっていく様子が見て取れた。
「うそ、だろ……」
もう一度視点を変えて再生。
すると、さらに驚くべきことが分かった。
ロコが矢継ぎ早に繰り出した弾丸は、その全てがゴブリンの頭部を捉えている。
これは、本当にロコがやったことなのか。
いや、こんなことが、実際に可能なのか。
興奮した俺は、ずっと握りしめていた現実のロコの手を放すと、身を乗り出してもう一度リプレイ映像を最初に戻す。
「あ……」
悲しそうなロコの声に胸が痛むが、今はそれよりも映像に夢中だった。
今度はロコの全身とゴブリンがギリギリ移り込むような位置取りにカメラを動かし、今度はスローモーションにしてその様子を子細に眺める。
「すごい……」
それはまさに、圧巻と呼ぶしかない光景だった。
怯えたように撥ね上げられたロコの手は、しかしブレがない。
最初のゴブリンへの延長線上でピタリと止まり、引き金を引く。
その弾丸の行方を確かめることもなく、ロコの手は滑らかに動き、次のゴブリンをポイント。
やはり全くためらうことなくピタリと銃口を定め、発砲。
最後は圧巻だった。
目標となる三匹目は、一匹目の頭が撃ち抜かれたことで、驚きに勢いよく顔を上げていた。
しかしロコはその動きすら読み切って銃撃。
撃ってから着弾までのほんのわずかなタイムラグすら補正して、青い光がゴブリンの額を貫く。
俺は、久しぶりの興奮に、胸が熱くなるのを感じた。
間違い、ない。
――ロコは、天才だ。
この才能が、何に由来するものかは、分からない。
けれど、これは、この才能の煌めきは、平凡な俺が決して持ちえなかったもので。
かつてジェネシスを熱狂させた、トッププレイヤーと同質の、いや、あるいはそれ以上の何か、だ。
嫉妬の感情が、全くない、とは言えない。
ただ、それでも俺は、その映像から目が離せなかった。
たった四秒間の映像を。
完成された芸術のようなその姿を。
小さな体躯から繰り出されたその絶技を。
何度も、何度も、繰り返し、目に焼き付ける。
アングルを変え、距離を変え、その芸術に酔いしれる。
「ルキ、さん……」
俺は、魅せられたようにロコの姿を眺め続けていた俺が我に返ったのは、肩を揺する小さな手によって、だった。
「そ、そんなに見られると、はずかしい、です」
顔を上げると、ほおを赤くしたロコが、照れくさくてたまらない、といった面持ちでそこに立っていた。
「……そ、っか。そうなんだ、な」
あんなすさまじい技を見せて、どんな熟練プレイヤーすら及ばない、とんでもないことをしてみせても。
今のロコにとって大事なのは「注目されると恥ずかしい」という、単なる普通の女の子としての感覚、なんだ。
「悪い悪い。ロコがすごい頑張ってるし、可愛かったからさ。つい何度も見たくなっちゃって」
「あ、う……。それは……」
顔を伏せて、もじもじと太ももをすり合わせるロコに、俺は誓った。
――たとえ、この子の才能が、どれだけ大きくて、どれだけ得難いものであっても。
――この純粋な女の子を、攻略のための道具にだけは、絶対にしない、と。
「でも、この調子なら、もっと難しいミッションをやっても大丈夫そうだな」
「そ、それは……。お、おてやわらかに、おねがいします、ね?」
あれだけのことをしてみせて、あくまで自信がなさそうなロコを見て、もう一度笑ってから、俺は立ち上がる。
この素直さを、この穏やかな時間を、大切にしよう。
そのためには焦らず、一歩一歩進んでいけばいい。
「あ、でも、その前に、これは保存しとかないとな」
それはそれとして。
この映像を失わせてしまうなんて、人類の損失だ。
「う、うぅ。そ、そこまでしなくても……」
と、おののくロコの言葉を黙殺しながら、俺は迷いなくさっきのリプレイ映像データを呼び出す。
そして、保存前の最後の見納めに、と俺はもう一度だけそのリプレイ映像を……。
「怯えた目をした水着の少女がフリルをひらめかせながら銃を撃ちまくる映像」を堪能すると、そっと「永久保存」と名前のついたフォルダに移動させたのだった。
その映像、プレイスレス!!
次回更新はきょ、きょ……