表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第13章「身も蓋もないバイブルを焼き捨てる夜へ」
96/250

第96話 「ベリーグッドナイト」




挿絵(By みてみん)




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ドドドドドド……

 トレーラーは一路(いちろ)、大型道を東へ向かう。

 

 コンテナに詰めこまれたトラ、フォックス、そしてルディ。

 その内部は……すごい。

 

 コンテナの中は、まるで小さな教会だ。いちばん奥に(そな)えられた祭壇(さいだん)の前には、長椅子(いす)が並んでいる。


 その祭壇には蝋燭(ろうそく)が10本。 

 ルディは手を組み、ぶつぶつと祈りを捧げていた。ゆらゆらと揺らめく炎と、天井に設置された明かりが、じわじわと車内を照らしている。


 本当になんなんだ、この車は?

 移動式の教会なのか?



 で、トラとフォックス。

 ふたりは長椅子に座らされていた。なかよく並んで。


「ねえねえ、オーナー。うふふ」

「……」

 フォックスに肩を寄せるトラ。

 逃げるフォックス。




挿絵(By みてみん)




「オーナーってば。うふふ」

「……」


 (はし)っこに追いつめられるフォックス。

 やっと口を開いた。


「……なに?」

「なんか……結婚式みたいですね」


 神父が祈りをささげる祭壇の前に、男女。

 たしかに結婚式のようだ。

 だがフォックスは、目も合わせずにつぶやく。


「葬式みたいだ」

「オーナー、これで安心してできますね(・・・・・)。俺たち、その……いつします(・・・・・)?」


 トラは意にも(かい)さない。

 もじもじ。

 照れながら、さっきの続きをささやく。こういうとこピュアな、かわいいトラ。


 ああ、楽しみだな。

 どんなスゴいことになるんだろう。

 うふふ。

   

 果てなく広がる、卑猥(ひわい)な妄想。

 そっとフォックスの肩に手をまわす。


 直後、トラの顔面にフォックスの籠手が叩きこまれた。

 ドガッ!


「ぶげッ!」

     

 ボゴッ、バキャ!!

 タコ殴りだ。

 立て続けに()り出される、パンチパンチパンチ。


「ブッ死ね!!!」

「ぎゃっ痛い! やめ……なぜ……!」


 馬乗りになってトラを殴るフォックス。

 たちまちトラは意識を失った。 


「やめたまえ! こ、こら。やめろ、やめないか!」

 驚いて祈りを中断したルディ。

 すぐにフォックスを引きはがそうとするが、ビクともしない。


「死にさらせ!」

 ボグッ、ドガッ!

 フォックスは止まらない―――



「よさないか!」

 ついにルディが、フォックスを羽交(はが)()めにした。

 ようやく処刑は終わった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「気が済んだかね、フォックスくん」


「はぁ、はぁ……ああ」

 汗をぬぐうフォックス。

 さんざん殴って、ようやく落ち着いたらしい。


 無残な姿で、床に横たわるトラ。

 死んだのか?



「トラくん、死んだんじゃあるまいね」

「知るか! アタシも寝る!」


 ぷんすか怒るフォックス。

 そのまま長椅子に、ごろんと寝転がった。


「ああ、そうしたまえ。着いたら起こしてあげるから」

 ふたたびルディは祭壇に向かう。


「おやすみ、私は祈りを続けるよ」



「……なあ」

「まだなにか?」


「このトレーラーなんなんだ? 教会みてえだ」

「みたいじゃなくて教会だよ。僻地(へきち)や災害地に派遣するためのね。移動用の教会だ」


「シーカは、あんたとどういう関係なんだ? ニニコが……妹があいつと緒にいるんだ」

「安心したまえ。シーカ君が、ちゃんと保護してるはずだから」


「……アタシ達、どこに向かってんだコレ」

「いいから寝たまえ」


「ていうかこのトレーラー、誰が運転してんだ……?」

「寝たまえ」



 ルディはふたたび背を向け、祈りはじめた。

 その後ろ姿を見ながら、フォックスの意識はだんだん薄れていく。


 おやすみフォックス。

 おやすみトラ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※




 どのくらい時間がたったのか―――


 ギィイイイイイィ!

 トレーラーは、ブレーキ音を(きし)ませて停止した。床に転がっていたトラが、慣性でズズズと前方にすべり、ゴチンと頭を椅子の脚にぶつけた。


「ゴチン! あ()た! うーん、スヤ……」

 起きない。


「やれやれ……着いたよ、起きたまえ」

 ルディが、トラをやさしく()する。


「うー……ん」

 ようやく、むくりと上体を起こすトラ。その顔は……かわいそうに、ボコボコではないか。

「あれ? ここは……?」




挿絵(By みてみん)




「起きたかね?」

「ぎゃあ―――! 化け物!」


 30センチくらいの近距離の、ルディのガイコツ面。

 思わず叫んでしまう。


「わああ! え……あ、アンタか、悪い……」

 やっとルディだと気づいたトラ。

 気まずくて謝る。


「……いや、気にしていない。はやく立ちたまえ」

 完全に気にしているルディ。

 今度は、長椅子で眠るフォックスに近づいた。

 

「フンガー、グー」

「着いたよ、フォックスくん。起きたまえ」


 (たか)イビキのフォックス。

 そのうち、じわじわと目を開き……やっぱり悲鳴をあげた。


「うーん……うわあっ、化け物!」

 飛び起きる。

 起き抜けに、いきなり目の前にドクロの仮面。驚かないはずがない。


「ぬわあ―――! お、おお………アンタか、ゴメン」

 やっとルディだと気づいたフォックス。

 謝る。



「……いや、気にしていない。はやく立ちたまえ」

 完全に気にしているルディ。



 と。 

 荷台の扉が、外から開かれた。


 ガシャン。

 キイイイイ。


 左右に開いた扉の向こうから……



 パ――――――ン!

 パ――――――ン!!

 パパパ――――――ン!!



「おかえりなさい!」

「おめでとうございます、神父さま!!」

「お疲れ様です!」




挿絵(By みてみん)




 大歓声(かんせい)

 6人の修道女が、いっせいにクラッカーを鳴らす。

 

 紙吹雪(ふぶき)を浴びるルディ。

 ひっくり返るトラとフォックス。


 いきなりなにこれ?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ