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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第12章「なす術もないパニックを焼き捨てる神の使いへ」
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第89話 「チャッカマンズ マスコット」



 船の甲板に出た―――晴天。


 そとは波の影響を受けやすいのか、上下の揺れがきつくなったような気がする。ギィ、ギィ、ギィ……海風がすごい。


 あちこちで、カモメの叫び声が聞こえる。

 ミャアミャア!

 ギャアギャアギャア!



挿絵(By みてみん)



「ひゃ……」

 港の光景を見るや、ニニコが驚声をもらした。


 大きな港……海上保安庁の基地のようだ。

 何隻もの巡視艇(じゅんしてい)哨戒艇(しょうかいてい)が停泊している。すぐ近くにそびえたつ巨大なビル、宿舎(バラック)、倉庫、倉庫、またビル……


 あたりをキョロキョロと見まわすニニコ。甲板から埠頭(ふとう)をのぞき、ぞっと身震(みぶる)いした。


 1メートルほど低い岸壁に、保安隊員がずらりと並んでいる。総勢(そうぜい)100名はいるだろうか。

 高い位置から見下ろすと、全員がこちらを見ている気さえする。


 グラリグラリと船が揺れる。

 高い、怖い、フラフラする。

 足がすくむ―――

 


「なにしてる! 降りろ!」


 ビク……!


 真後(まうし)ろに立つ隊員が叫んだ。

 あわてて、さきを歩くフォックスに追いついた。怖い。

  

 金属の階段(タラップ)が、船の(へり)にかけられているのに気がついた。アルミ製の、軽量のタラップ。



「あ゛―――……こりゃ無理だわ。乗れん」

 トラがボヤきながら、ぐっと(ひざ)を曲げ……

「よっ」

 飛び降りた。


 ズドォ!!


 港にひびく振動。

 反動で、勢いよく上下する船。

 ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ―――

 

「きゃ……」

「おーおー、怖いな」

 

 ニニコがフォックスにしがみつく。


 飛び降りたトラは、すぐさま数人の隊員に取り囲まれた。


「オラぁ! なにしてやがる」

「ナメてんじゃねえぞ貴様!」

 大男たちが、トラにつかみかかる。迫力(はくりょく)のある連中だ。


「いやいや、なんもしねえッスよ。なんも」

 手錠をかけられた両手を前に、無抵抗(むていこう)ですよとアピールするトラ。包囲を、ゴメンナサイ、失礼しますとかき分け……

「ちょっとスイマセン。ホントすいません。さ、オーナー」


 タラップの上にいるフォックスに、手を伸ばした。

 エスコート―――


 にんまりと笑顔を向けるフォックスが、やはり手錠をされた両手を伸ばした。

 左手をトラの手のひらに載せ、カン、コンとタラップを降りながら……さみしそうにつぶやいた。


「トラ、ニニコ。楽しかったな、この2か月は」

「なんていうか、息もつかせねえほど楽しかったな」

「もしこれが小説か漫画だったら、ここで終わるのがもったいねえほど、楽しかったな」



挿絵(By みてみん)



「……」

「……」

 言葉につまるニニコ。

 言葉につまるトラ。

 はいとも、いいえとも言えない。なにも言えない。


「元気でな。いつか……2人とも、呪いを解いてくれ」


 埠頭(ふとう)に下りたフォックスは、それきり黙ってしまった。

 


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

「よし、移送作業にかかれ」


 隊長らしき男の合図で、大型の護送バスが2台やってきた。

 2台(・・)―――


「マルヒ③と④は、こっちのバスだ。バーベキューファイアとコイツ(・・・)は、あっちのバスに乗せろ。急げ!」

 

 指揮官の合図で、隊員たちが動き出す。

 コイツ呼ばわりされたレインショットは背を丸め、視点も(さだ)まらない様子だ。しきりにブツブツとつぶやいている。

 無理もない。

 彼に(くだ)される判決など、死刑しかありえない。正気でいられるはずもない。

 

 屈強(くっきょう)な大男たちが壁となり、4人が分けられる。トラとニニコが顔を見合わせ、うなだれた。

 これでフォックスと本当にお別れ。

 もう二度と会えない。

 

 何も言えないトラ。

 何も言えないニニコ。

 もう、二度と会えない――――――







  『ようやく会えたな』



 声がした。

 とても、低い声。


 ニニコの足元(あしもと)で、声がした。

 例えじゃない。

 本当に足元で、声がした。


『見つけたぞ、ニニコ―――』


 低い低い、悪魔のような声。



挿絵(By みてみん)



「……え?」   

 とつぜん名前を呼ばれ、きょろきょろとあたりを見回すニニコ。

 

 いや、その場にいた全員が、周辺に目を見張(みは)る。

 誰もいない。

 誰もいないではないか。


「トラ、いまの声なに……ロボット!」

「誰か、お前を呼んだよな? 誰もいねえぞ……ロボット!?」


 トラとニニコが周辺を見まわす……


 ロボット!?

 


 なにこれ!?

 ロボット!??



 保安隊員らもざわめき始めた。

「え……」

「なんだ?」


「ワッ! なんだそりゃ」

「なんだ、どうした?」

「見ろ……ろ、ロボット?」

「どうした? に、人形だ!」


 ざわつきは、やがて騒然となった。


「な、なんだこりゃ?」

「ラジコンか?」

 全員がニニコの足元(あしもと)を注視し、なんだなんだと騒ぎ立てる。離れた場所にいる隊員たちには、なにが起こっているのか分からない。

 


 トラ、ニニコは目を丸くした。

 言葉が出てこない。

 2人ともポカンと口を開けて『人形』を(なが)めている。


 歩いてこちらにやってくる人形―――いやロボット?


 ガシャ、ガシャ、ガシャ。

 トコ、トコ、トコ。

 

 高さ30センチほどの、ゆるキャラっぽいロボット。漫画に出てくるようなコミカルな姿だ。

 ケーキの箱に、短い手足が生えたような小さなロボット。

 それがヨチヨチと近づいてくる。


 ラジオペンチのような、オモチャのごとき腕をニニコに伸ばし―――言った。



『ようやく見つけたぞ、ニニコ。(われ)のネジを返せ』





 ネジ……


 ネジ!?!?!?



挿絵(By みてみん)



「!!!!!!!!!!!!!!!」

「ぎ……!!!!!!!!!!!」


 トラ、ニニコが飛び上がる!

 言葉にならない叫び―――


「え、え、え、え!!」

(えん)……!!」

 2人の悲鳴が、波止場にとどろく。



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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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