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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第10章「恥も外聞もないトリップを焼き捨てる馬鹿者たちへ」
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第81話 「レベッカ」




挿絵(By みてみん)




「あ……フォックス……ガソリンが……」


 ニニコの小さな体が、どんどん(かわ)いていく。

 体中を(ひた)していたガソリンが、重力を無視するように()義肢(ぎし)に集まりだした。

 肌も、髪も、衣服も、床も、すっかり乾いてしまった。


 ()義肢(ぎし)だ。

 水な義肢の表面に、ガソリンの(まく)が出来た。



「な……な……」

 唐突(とうとつ)に起こるいろんな出来事に、ニニコはきょろきょろする。


 一方、フォックスは……泣いてよろこぶマリィを見て、なにが起きているのかを(さと)った。


 アタシを、レベッカと混同している。

 ニニコを、フゥ(アタシ)と混同している。



「マリィ、お前……ハイドランジアを吸ってるな。いったい今を、いつだと(・・・・)思ってんだ……?」

 声をしぼり出す。


 今をいつだと思ってるのか―――?


 間違いない。

 マリィは、あの日の記憶と混同している。


 コレラで、村のみんなが死んだ日。

 アタシがみんなを火葬した日。

 レベッカが、憲兵隊に殺された日。




挿絵(By みてみん)




 そして、事態は変わる。

 

 通路から絶叫が聞こえた。

 十数人の、男らの声だ。

  

「艦長どの!」

「少佐、ご無事で!」

「ひどいヤケドだ、すぐに医務室へ……」

「いや、医官を呼べ!」

   

 乗組員たちが駆けつけてきたようだ。

 彼らはそのまま、司令室になだれこんできた。



「博士!」

「な、なんだ、これは……」


 兵隊たちが、めちゃくちゃになった司令室に驚きの声を上げる。いや、司令室の状態なんかどうでもいい。

 巨大な腕みたいなものを装備した女がいるではないか。


 明らかに侵入者だ。

 しかも、博士とその妹が襲われている。


「だ、誰だ! なにをしている!」

「博士から離れろ! 拘束しろ!」

「貴様、そこを動くなよ!」

 

 屈強な大男たちが、マリィに(つか)みかかった。

 だが……




「私たち(・・)に触るなアアアアアアア!」


 ドガドガドガ!!

 飛びかかってくる海兵たちを、マリィは振り払う。


 いや、振りはらうなんてもんじゃない! 

 ()義肢(ぎし)の両アームを、ムチのようにメチャクチャに振りまわした。




挿絵(By みてみん)

 



「ぐわあ!」

「うおお!」

 海兵たちが宙を舞う。

 ガソリンの(しずく)が飛び散る―――



「離れろ! レベッカとフゥに触らないで!」

 ()義肢(ぎし)をひろげて、マリィは威嚇(いかく)する。鬼気(きき)せまるその顔や、女とは思えないほど怖い。


「レベッカ! フゥ! こっちに来なさい、はやく!」


「行くか!」

 怒鳴(どな)るレベッカ……じゃない、フォックス。



「貴様!」

「よくも……ちょ、ちょっと待て。な、なんだそりゃ?」

「つ、つばさ? 天使……?」


 海兵たちが拳銃を抜いた。

 シャキン、ジャキンと全員の銃口がマリィに向けられる。


「私たち(・・)が、いつまでも憲兵を恐れると思ったら大間違いだ! 党の犬め……!」

 怒鳴るマリィ。


 ギチギチギチ!

 アームが(ちぢ)んでいく。

 ……()義肢(ぎし)による、パンチの構えだ。



「け、憲兵?」

「なに言ってるんだコイツ……おい、貴様! おとなしくしろ」

「その腕、いや……なんだかわからないものを下ろせ!」


 海兵たちは、()義肢(ぎし)の動きを見て、ギョッと固まった。無理もない、あまりにも非現実的な光景だ。


「マリィ、よせ! 全員()せろォ!」

 フォックスの叫び。


 

 殺される。

 海兵たちが、殺される――――――


 いや!


 いいや!!


 

「俺じゃあああああ! マリイイイイイ!」

 窓の外に、トラが来た。 

 登ってきやがった!


「殺す――――――!」


 咆哮(ほうこう)

 窓に貼りついたトラが、絶叫する。




挿絵(By みてみん)




「ッッッ! なによ……」


 振り返ったマリィが、トラに向けて()義肢(ぎし)を伸ばした。


 ボッ! 

 風切り音。


 (やり)のごとき速さで、マジックハンドがトラに襲いかかる。

 

 ドガァ!

 直撃!


 ……してない!

 長靴を盾にして、水な義肢を防いだ!


 ガチリ!

 アームが、長靴に貼りついた。


「うぅりああああああああああ!」

 トラが渾身(こんしん)の脚力で長靴を振り回した。

 半回転……

 勢いそのままに転落する。


 ちがう。

 飛び降りやがった!


「道連れじゃアアアア!!」

 


「トラ!」

「トラぁ!」 

 フォックスとニニコが、同時に叫んだ。

 しかしもう遅い。


 再登場して、6秒で退場するトラ。

 奈落から()い上がり、ふたたび奈落へ落ちていく。長靴に、()義肢(ぎし)を貼りつけて。


 ギャリギャリギャリギャリ………!!

 水な義肢のアームが窓枠に(こす)られ、すさまじい音をあげた。



「うわッ!」

 引っぱられたマリィの体が、宙に浮く。

 窓に向かって。

 いや外に向かって、引きずられていく。


「あ……」


 ちいさな悲鳴をひとつ()らし、マリィはふたたび甲板へと落ちて行った。




挿絵(By みてみん)




 司令室に残された全員が、いっせいに叫ぶ。


「トラ! きゃあああああ!」

「マリィ……!」


「うそだろ……!」

「落ちやがったぞ!」

「下だ! 下へ……」


 悲鳴、絶叫、悲鳴、悲鳴……


 直後――――――



 ドオオオオオオオオオオオオオン!

 

 轟音が鳴り響いた。

 



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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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