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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第9章「あられもないハプニングを焼き捨てる再会へ」
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第66話 「マリィ ミーツ フゥ」




 食糧庫。

 そこはもう火の海だった。


「消火! 消火!」

「艦長は!? 連絡はまだか、まだ連絡はつかないのか!」

「シャッターを下ろせ! 消火器持ってこい、消火器だクソッタレ!」




挿絵(By みてみん)




 艦の乗組員すべて、と言えるほどの人数が集まっていた。彼らは通路に列を組み、バケツリレーをくり返している。

 何百杯も、何百杯もバケツが往復する。


 もう何本の消火器をカラにしただろう。

 火の勢いが、だんだん小さくなってきたように感じる。



「博士! はやくここから避難してください!」


 若い下士官がフォックスの肩を抱き、火災現場から追い出した。彼は、フォックスのギプスをかばうようにして避難の誘導をしてくれた。


「は、はい。みなさんお気をつけて……」

 

 フォックスは食糧庫を背に、その場を離れる。

 配管とダクトだらけの狭い通路を、逃げるように進む。ようやく誰もいなくなったことを確認すると―――


「レインショット……死にやがれ」


 鬼のような表情で、つぶやいた。



(鳴らねえじゃねえか、警報がよお!)

 

 すさまじい怒り。

 そして、なにか嫌な予感がした。


 警報が作動しなかった。

 なにかおかしい……!

 

 仕事はカンペキに終わった。

 ハイドランジアは完全焼失させたし、証拠はなにも残してない。


 だが、事前の打ち合わせとちがう。

 作戦の成否にかかわるほど重要な予定がだ。


 まさかレインショットのやつ、まだなにか(たくら)んでいるのでは? 警報が鳴らなかったのも、ヤツがなにかしたのではないか?


 いやいや、さすがにそれはない。

 いくらなんでも、自分の乗ってる船を全焼させるようなことはしないだろう。やっぱりさっきのは警報が故障していただけだろう。


「どっかで(ツメ)切り借りれねえかな」


 フォックスはいま、とてつもなく疑心暗鬼になっている。同時に、とてつもなく残酷になっている。


 フォックスは、本気でレインショットを拷問しようと考えている。ほかにも隠しごとがないか、洗いざらい吐かせるつもりだ。

 

 爪切りなんかをどう使う気なのかはわからない。

 でも、殺しはキモいからイヤだ。

 合理的理由から、フォックスは爪切りを使うことにした。



「それはそれとしてニニコだな……メンドくせえ」


 レインショットの依頼を引き受けないでほしい。

 ニニコの言ったことが、いまごろフォックスの胸に刺さる。たしかにこんな依頼は、引き受けないほうがよかったかもしれない。

 

 だーからー、そういうワケにいかなかったんだってば!

 

 ひとまずレインショットのことは、あとにしよう。

 どうせ海の上では逃がすこともないし。

 

 まずはニニコだ。

 このあとニニコとするであろう会話のリハーサルを、頭の中でくり返した。


 レインショットを拷問しようと思うんだ!

 お前もやる?


 さすがにこんなことニニコには言えない。べつに言う必要なんかないんだが、はたして隠せるものだろうか。

 

(アタシ、すぐに顔に出るからなあ……)


 

 とくに考えがまとまらないうちに、部屋についてしまった。

 たぶんニニコ、まだ泣いてるだろう。


 これが陸の上だったら、フラペチーノでも飲みに行かない? みたいな感じで仲直りのきっかけを作れるんだけど。

 海の上じゃどうしようもない。

 船の生活というのは、なんとも不便なものだ。


 ああもう!

 考えててもどうにもならん!


「おーい、起きてるか?」


 ガチャ。

 ドアを開いたフォックスは、つとめて明るい声で入室した。

 

 しかし。



「はい、起きてます」



「うわあ!!」

 フォックスは飛び上がるほど驚いた!

 部屋にいたのは、ぜんぜん知らないひとだった。


「お邪魔してますよ」

 見知らぬ女が挨拶(あいさつ)してきた。

 あろうことか、アイテムを(まと)った女がベッドに腰かけている。



「ちょっとあんた誰!? ここにいた女の子は??」

 パニックのフォックス。

 わーわー!




挿絵(By みてみん)




 混乱するフォックスに追い打ちをかけるように、女のアイテムが動く。巨大な腕みたいなのが持ち上がり、にゅっと近づいてきた。

 マジックハンドみたいに、ぎゅるるとフォックスに伸びてくる。


「ひゃあ、あっち行け! なにこの手!?」

 

 腕のアイテムが、フォックスに襲いかかる。 

 いや、(ねら)いは右腕のギプスだった。マジックハンドが器用に包帯をつかみ、ビリビリと(やぶ)いていく。


 ビリビリビリ。

 (あら)わになる籠手。


「な、なんだよテメエは!」

 ガシャン!

 フォックスが籠手を突き出した。なんでも燃やす籠手……見られてしまった以上、戦うしかない。

 

 しかし女の反応は、予想外だった。

 目を(うる)ませて、なぜかフォックスに抱きついてきたではないか。


「会いたかった……」

「にゃあ! なにする!」


 しがみつかれた! 

 会いたかったってなに!? 本気でワケがわからない!


「な、なんだよてめえは! ちょ……はなせ! ぐええ……」

 ぜんぜん逃げられない。

 すごい(ちから)だ。


「マジでなんなんだよ!? 離せっての!」

 

 離さない。

 女は泣き出しそうな顔を向け、すこしだけ腕の力を(ゆる)めた。


「フゥ。ほんとうに、フゥですか……」

「はあ!?」


 心臓が止まりそうになる。


 フゥ。

 10年ぶりに呼ばれる、とっくに捨てた名前。

 そして気づいた。


 目の前にいる女は―――



「マリィ……マリィか!?」

 驚きで声が高まる。


「マリィ、生きてたんだな! マリィ!」


「ええ、私です。フゥ……」




挿絵(By みてみん)




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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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