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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第9章「あられもないハプニングを焼き捨てる再会へ」
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第63話 「アップ アンド ダウン」




「レインショットは、手下をかならず近くに置いてるんだってな……アンタらがそうか?」

 トラが低い声をもらす。

 じろり、ふたりの水兵を(にら)みつけた。


「なんのマネだ、俺はレインショットの客だぞ……それを……」



「な、なんでテメエが知って……! ああそうか、バーベキューファイアに聞いたな」

「ちょいと状況が変わってよ、全員殺すことになっちまったんだ。ひひひ」


 アイラとベックスは、悪事を隠す気がないらしい。それどころか、トラに聞かれるがまま正体まで明かしてしまった。

 まだ計画に着手すらしてないのに、バカかこいつらは。


「どうしたマリィ。早くこいつを始末してくれ、ほかのやつに見つかる」

 


 女。

 以下、マリィと記載する。


 マリィの肩シールドは、すでにトラの長靴をつかんでいる。なんとか持ち上げようとしているが……だめだ。


「こ、こいつ重すぎます。なんですかこれは」

 

 マリィはがんばっているが、まるっきりトラは動かない。

 あきらめたのか、肩シールドは長靴を離した。


「だめです、こいつは後まわしにしましょう。アイラ、ベックス、さきに死んでください」


「……は?」

「いま、なんて言った?」


 思いがけないマリィの言葉に、アイラとベックスが固まる。

 は? 

 いまなんて?


「おい、どういう意味だ? ぐえ!」

「な……なにを……!」

 

 ガシ!

 ガシン!

 左右のアームが、ベックスとアイラの首を(つか)んだ。


 2人の足が甲板から離れた。

 なんという力だ。成人男子2名を宙づりにしてしまうほどのパワー。いやアイテムもすごいが、それを支えるマリィの足はどうなってるのだ?

 女の、いや人間の筋力ではない。


「うぐ……」

「あ、あぐ……」

 アイラとベックスは足をばたつかせ、泡をふく。


「全員殺すことになっちまった、のです。さようなら」


 ブン!

 マリィが、ふたりを海に放り投げた。


「ぎゃあああ!」

「あああああああ!」

 

 絶叫を上げて、暗い海へと真っ逆さまに落ちていく2名―――


 ドバン!

 ドバァン!

 数秒後に2つの水音がした。

 

 水面までの乾舷(かんげん)高は、約7メートル。

 たぶん死んでないと思うが、断言はできない。



「どうした!」

「なにごとだ! な、なんだお前……?」

「おい貴様、そこでなにを……なにしてる!」


 人が集まってきた。

 3人、4人……だれもが女を見て、ぎょっと固まる。


「なんだ?」

「て、天使……?」



「ふふ」

 マリィが初めて笑った。

 薄い(くちびる)をすこしだけ上げて、小さく微笑(ほほえ)む。 


 白鳥が両翼を広げるように、腕みたいな(・・・・)なにかが左右に伸びていく。まるで天使の羽のように。


「ようこそ、私の沈没船へ」

 


「な……ぐわ!」

「ひ……」

「うお……!」

「あああああ!」

 

 海に放りこむ。

 マジックハンドが水兵たちを、次々に捕まえては海に放りこんでいく。



「てめ、なんちゅうことしやがんだ! ぬおおおおお!」

 ドガァ!

 床を踏み鳴らして、トラが起き上がる。

 

 そして、ドッシドッシと走り出した。

 

「うわ、なに!?」

 身構えるマリィ。


 ものすごい雄たけびと足音をあげて走ってくるトラに、さすがにビビってしまった。

 

 だが、トラはマリィなんかに目もくれない。

 叫びながら、甲板から飛び降りた。


「ぬおおおおおおおおおお! 待ってろ、いま行くぞおおおおお!」

 

 いや、トラは飛び降りたのではない。

 ガンガンガン!

 船の側壁を、2本の足でかけ下りていく。落下同然のスピードでだ。


 そのまま、ザブンと海に突入した。




挿絵(By みてみん)




「……え?」

 目を丸くするマリィ。

 ガシャ、と力が抜けたように肩シールドが垂れ下がった。


「な、なにいまの?」


(なんだったんでしょう、いまの男は)

(あんな体重の男が存在するなんて、おどろきましたね)

(と思ったら、入水自殺してしまいました)


(私にかかってくるのかと思いきや、とんだイカレ者です)

(いいです、忘れましょう)


 マリィは気を取り直し、仕事に戻る。

 カツン、カツンと甲板を踏み鳴らし、速射砲へ歩きだした。

 


「な、なんだ? おい止まれ!」

「侵入者……うわああああ!」

「あああああ!」

「ぎゃあ!」

「おあああ!」


 途中、10何人かを海に放りこんだ。

 他愛(たあい)もない。


 それより速射砲だ。

 98式50口径連装速射砲、なんという大きさだろう。



「へえ……いままで見たなかで、いちばん大きいですね」

 

 まるで小山のようだ。

 高さ3メートルはあるんじゃないか? こんなもんで撃たれたら、あとかたも無くなるだろう。


 ハンドルを回し、窓ほどの大きさのハッチを開く。窮屈(きゅうくつ)な入口から、左のアームをスルリと内部に侵入させた。


 ゴソゴソ。

 天井を探ると、すぐにブツは見つかった。

 

 箱だ。

 金属の箱が、ふたつある。


 ひとつは警報器。

 そのとなりに、まったく同じ大きさの箱がある。警報器の付属物のように偽装(ぎそう)してある。とても安上がりな密輸手段だ。

 フェイクのほうを強引に引きちぎる。




挿絵(By みてみん)




 ジリリリリリリリリリリリ!!

 ウィンウィンウィンウィンウィン!!

 ビビビビビビビビ!!!


 すさまじい警報が、艦中に鳴り響く。



「うわっ! やっちゃった」


 どうやら間違えたらしい。

 警報器のほうをちぎってしまった。


「しまった、どうしましょう」

 あわててもうひとつも引きちぎり、アームをしゅるしゅると外に出した。

 救急箱ほどの大きさの、金属の箱。

 マリィが、よいしょと(わき)にかかえた。


 まもなく警報を聞きつけた連中が、大挙(たいきょ)してここに来るだろう。



(おあいにくさま、どんどん海に放りこんであげましょう)

(私のノルマのために……)



 1分、2分……


 来ない。



「……来ませんねえ」


 だれも来ない。

 おかしいではないか。


「どうなってるんでしょう。しかたありません、さきに沈没作業にかかりましょうか」



 そこへ!

 ドガァ!!


「ああああああああ! 冷てえええ!」


 全身ずぶぬれのトラが戻ってきた。

 ガンガンと船壁をのぼり、ふたたび甲板に戻ってきたようだ。


「ハァ、ハァ。て、てんめえ……ひとりも助けられなかったじゃねえか! はあ、はあ……」


 なんと、落下者を助けに海面まで行ってたらしい。

 だが、誰も助けられなかった。


 ガン、ガン!

 トラは憤怒(ふんぬ)の形相で、マリィに歩みよる。1歩ごとに、びちゃびちゃと甲板に水たまりができた。


「そのアイテム……ゲホッ! はぁ、はぁ、名前はなんだ……? なにができるアイテムだ!」

 絶叫!!



「な……なんですって?」 

 マリィの表情が変わった。

 驚愕(きょうがく)―――


「いま、なんと言いましたかお前。アイテム(・・・・)って言いましたか?」


 アイテム。

 その言葉に、マリィの目の色が変わった。




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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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