第49話 「チャッカ」
「穢卑面、彼に謝罪しろ」
『やかましいルディ! よけいな口を挟むな』
「話を聞いているのか? 彼に謝罪しろと言ったんだ」
『ケケケ! 貴様、言葉に気をつけろ。人間の出る幕ではないわ』
口論を始める仮面と、それを被る男。
以下、男をルディと記載する。
ルディの白い髪がサラサラと揺れる。
『差し出がましい口を聞くな! 貴様はだまって祈ってろ』
「穢卑面よ。死ねと言ったことを、彼に謝罪するんだ」
『説教がましいヤツめ。これだからお前とは話す気になれんのだ』
「6年ぶりに喋ったと思えばそれか? 私の祈りも、馬の耳に念仏だったようだな」
言い争いが激しくなってきた。
何度も記載するが、上の会話は、仮面とそれを被る男のケンカである。しかし傍目には、ひとりで二役を演じているようにしか見えない。
『やかましいぞ。いいから聞いてくれ』
たまらず煙羅煙羅が割って入った。
うんざりした口調でだ。
『ここに来るまでに、足枷 、焼き籠手、真っ白闇にも会ったぞ。いずれも眠っておったが、それぞれ人間に憑依していた』
『なに本当か? いや待て、足枷だと? あいつも人間に憑依しているのか』
驚きの声をあげる穢卑面。
『驚くのはここからだ。その人間……トラとか言ったかな。そやつ、足枷を履いて歩いておった』
『な!? あ、歩いた? 足枷に呪われてか!?』
また穢卑面は驚く。
あの長靴に呪われて歩ける人間が、信じられないらしい。
『そこでだ。我らがもう一度ひとつの鎧となるうえで、2つのプランがある』
うきうきと話す煙羅煙羅。
『プラン、だと?』
不審がる穢卑面。
『プランその1。トラに鎧を着せる』
『ふざけるな!』
『ふざけてなどおらん。我はずっと、鎧に戻ったあとのことを考えていたのだ。我らは、ついに一度も戦場に行ったことがない。それはなぜだ?』
『聞くまでもない、足枷のせいだ』
『そうだ。足枷の重さのあまり、人間は鎧を扱えなかった。そのために我らは、13に解体されてしまった』
『……』
『だが、いたのだ! 足枷を動かせる人間が! ふたたび我らが結集のときは、トラに鎧を纏わせようぞ。そして我らは、とうとう初陣を飾れるのだ。世界中の戦争に赴くのだ……』
煙羅煙羅が、とんでもない野望を語る。
静まり返る礼拝堂。
『…………』
なにも答えない穢卑面。
『反応が良くないな。では、プランその2だ。14個目のパーツを作ろう』
『はあ???』
素っ頓狂な声を出す穢卑面。
「な……?」
黙って聞いていたルディも、思わず声を上げた。
『足枷のことはもう忘れよう。そして、ほかの脚甲を作ろう。もっと軽いやつをな』
『足枷をいちど壊し、それを材料にして新規足枷を作るのだ』
『いや待てよ。そうなると “ 足枷 ” はおかしいか』
煙羅煙羅の、悪魔のような声。
『だれにでも装着できる靴』
『どこにでも到着できる靴』
『なんにでも吸着できる靴』
『 “ 着靴 ” と呼ぶのがふさわしい』




