第48話 「チャーチ」
研究所での大さわぎから、もう2カ月たった。
ここは……どこだろうか。
現在の時刻は20時15分。
ここは教会の礼拝堂のようだ。
ステンドグラスの窓から、月明かりが差しこんでいる。カラフルな光が、祭壇、長椅子、カーテンを照らした。
祭壇には10本の蝋燭が供えられている。慰霊のための、故人の名前が彫られた蝋燭だ。
月明かりと蝋燭の明かりが、礼拝堂の2人をゆらゆらと照らす。
ふたりの人間。
ひとりはシーカだ。
ずらりと並んだ長椅子の最前列に、どっかりと腰かけている。左頬を縫った傷あとが痛々しい。
そして、もう1人。
祭壇の前に立つ男がいた。
長い白髪の男は、どうやらこの教会の神父のようだ。真っ黒な祭服をまとっている。だが、その顔は仮面に覆われているではないか。
ドクロのような、仮面のアイテムだ。
アイテムの名を “ 穢卑面 ” という。
『ケケケ。いきなりやってきて驚いたぞ。1332年ぶりか……久しいな、朽ち灯。久しいな、煙羅煙羅』
再会を喜んでいるらしい、仮面のアイテム。
以下、穢卑面と記載する。
『おい、朽ち灯よ。聞いているのか? なんだ、眠っているのか』
『そうなのだ穢卑面よ。これがまた笑える事情でな』
朽ち灯はなにも答えない。
代わりに、煙羅煙羅が答えた。
……なんという、異様な会合だろう。
シーカも神父も、人間はまったくしゃべらない。
なのに、アイテムの喋ること喋ること……
『では早速だが……シーカだったか? 死ね』
『そして朽ち灯、煙羅煙羅よ。お前たちもルディに憑りつけ』
『ふたたびひとつに……』
穢卑面が恐ろしいことを言い出した。
「ムス!」
眉をしかめるシーカ。
死ねと言われて、さすがのこいつもカチンときたらしい。
「ふざけるな穢卑面。すまないシーカ君、気を悪くしないでくれ」
神父だ。
穢卑面をかぶる神父が、はじめて口を開いた。落ち着いた口調……中年をすぎたくらいの、高齢の男の声だ。
「き、き、気にして、ないよ」
シーカは、にっこりと笑顔を向けた。
左頬の縫いキズが、ぐにゃりと曲がる。
アイテムも含めて、コイツがいちばん人間味がない。
困ったもんだよ。




