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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第6章「にべもないアイテムを焼き捨てる幻想へ」
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第45話 「ナイスキャッチ」



早速(さっそく)ですが、お引き取りを。俺の世界から、今すぐにだ」

 


挿絵(By みてみん)



 ゴォン!

 ドドドド……トレーラーが荒野を走る。


 すでに研究所の敷地は、はるか後ろ―――ボロボロになりながらも猛スピードで走る車体を、朝焼けの太陽が照らす。

 なんと、そんなに時間が()っていたとは……地平線から朝日が()しこみ、運転席のフォックスが目を細めた。


 そんなことより。

 後方から、怒鳴(どな)り声と悲鳴と、なんか物騒(ぶっそう)な音が聞こえる。


 ガゴン、ガゴン、ゴコン!

 ざっけんなコラ、死にやがれ、きゃあフォックス、きゃあ、きゃあ……


 大揺れするコンテナ。

 大小無数の破片が、車体からバラバラと飛び散るのが……さっきからサイドミラーに(うつ)ってるんですけど。


「い、いったい後ろで、なにしてやがんだぁ?」

 パチパチと、バックカメラのスイッチをオンオフするが、モニターには何も映らない。

「くそッ、こんのポンコツ!」

 

 振動が激しくなる。



※ ※



 ズギャ、バキン!

 長靴がコンテナのバックカメラを踏みつぶした。


「こんにゃろ、ブッ切るぞゴラぁ!」

「ふっ、だは!」

 ドガッ、ドガ!

 ドガ、ダゴッ、ボゴッ!


 めった打ち。

 いや、取っ組み合い。


 トラの長靴は、コンテナに貼りついていて使えない。

 シーカの左手は、やはりコンテナに()まって使えない。

 ひとりは水平立ち、ひとりは壁に刺さっている……人類史上、もっとも奇妙な肉弾戦がくり広げられていた。


 シーカはやはり、拳法かなにかの心得(こころえ)があるのだろう。両手で(なぐ)りかかってくるトラに対し、無理な体勢からでも蹴りを放ってくる。

 パンチだ!

 キックだ!

 もう収拾(しゅうしゅう)がつかない。


「ネ、ネジ。か、返せ!」

「俺に言うな! ウガッ、痛てぇなコラ! 上のラウンドガールに言え!」

 ドガ! 

 ドガ、ドゴ!



 コンテナの天井から、ニニコが乱打戦を見下ろしている。

「あ、危ないわ! トラ、シーカ!」

 必死で叫ぶが―――



「サンキュー教えてくれて! オラァ! お前こそパーツ返せ、ボケ!」

 バキャ!

 ガン!


「グア……! か、返し、返しかた、なんて、し、知らなガハッ!」

 ゴン!

 バキッ!


「だったら八つ裂きにしてやる! バラバラの残骸(ざんがい)からパーツ探してやる!」

  

 大立ちまわりが続く―――次の瞬間!


 ドドドド……ガッ!!


 なにかに乗り上げたのか、トレーラーが激しく()ねる。



「うお! あ――――――ッ!」

 バキン、バキバキ……長靴の重さに耐えきれず、扉の片方がまるごと外れた。コンテナの中に転がり落ちるトラ。

「おわ―――……ガン! 痛え!」


 バランバラン!

 ガラン、ガラン!! 

 (はず)れた扉が、地面にバウンドして粉々に砕け散った。



   それと同時!



「キャ……!」

 コンテナの上からニニコが落下した。


「!! ニニコ…………おぶッ!」


 ガシィ!

 シーカが右手を伸ばし、ニニコを抱きとめた。ナイスキャッチ。 



挿絵(By みてみん)



「ひー! ひー!」

「ぐ! お……お、重、おも……」

 パニック状態のニニコ。

 苦悶(くもん)の表情のシーカ。暴れる彼女の体重が、両肩にかかる。い、い、痛い……!


 どっかりとコンテナ扉に()さった煙羅煙羅が、煙をシュウと噴き上げる。

(むすめ)! 我のパーツを返せ!』


「ヒー、ヒー!」

「く、く、苦し、し、し……」


『聞いているのか、娘!』


「ヒー、ヒー!」

「く、く、苦し……」

 

 マジで収拾(しゅうしゅう)がつかなくなってきた。



※ ※



 一方―――


「ぬう、痛ててて……」

 コンテナの中に転がされたトラが、頭をさすりながら上体を起こした。


 思いっきり後頭部を強打(きょうだ)した。片っぽ無くなってしまった扉の向こうから、シーカと、ニニコと、煙羅煙羅のわめき声が聞こえる。

 よ、よくも……


「くそっ、ぶっ殺してや…… あン? なんだ……?」


 扉の内側に、なにかがある。

 暗くてよく見えない。目を()らすと―――


「なに……? うわ!!」



挿絵(By みてみん) 

 


『こんなバカな……こんな、こんなはずでは……アモロ……』


 ()()

 残ったほうのコンテナ扉を貫通して、突き出ている。


『なにかの間違いだ……間違いだと言ってくれ……』

 

 なにやら(つぶや)いている、コンテナから()える籠手(こて)



 ブチ切れのトラ―――

「てててめえ! (もと)はと言えばお前が……パーツ返せ、このキッチン手袋!」

 (つか)みかからんばかりに怒鳴(どな)りたてる。


 彼の真剣な(うった)えも、朽ち灯にはぜんぜん聞こえていないらしい。がちゃがちゃと指を震わせる。


『アモロ、アモロだ……アモロならば……』

 がちゃがちゃ。


『煙羅煙羅の呪いを解ける……』

 ガチャ。

 がちゃ……



   はい?


   

「おい聞いとんのか!! いい加減にしねえと…………はい?」

 

 耳を疑う。

 いま、なんと?


 呪いが、解ける――――――?

 呪いが解ける????????????



 ドドドドド――――――


 トレーラーの時速は90キロ、100キロ、95キロ……

 ドドドドドドドドドド――――――



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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