第41話 「スクリューパーツ」
シーカの左肩が、ブロックに覆われる……
「や、やめてっ」
ブロックにむかって駆け出すニニコ。
「お願い、もうやめてえ!」
シュルシュル、ガシッ!!
かたびらを振りまわし、パーツのひとつを掴みとった。だがプカプカと宙に浮くそれは、空中に固定されているかのようにビクともしない!
「ぐ~、う、動かない……トラ手伝って! 早く、なにしてるの! 私がどうなってもいいの!? 返事をして!」
「いますぐ黙んねぇと撲殺するぞ、クソガキャ!!」
ずしん、ずしん!
ハァハァ、ハァ!!
ニニコ撲殺……じゃない、救出に向かうトラ。
「だめよシーカ! こんなのの言うとおりにしちゃ……もうこれ以上、呪われないで!」
ワーワー!
「ちょ、待て! しょ、触手が俺の首にからまって……ギュウ……! や、やめ、ニニコ、やめ……」
うぐぐぐ……交差した触手に、トラの首が締めつけられる。
ち、窒息する……
2人がバカやってる間に、煙羅煙羅が形を成していく。
シーカの左腕に集う、肩から肘までを包むブロック、ブロック、ブロック。
カチャン、ガチャン。
ガチャ、ガチャン……
やがて朽ち灯が、はじめて弱々しい声をもらした。
『た、頼むシーカ。たのむ、いい子だから……』
懇願……朽ち灯が!?
信じられん。
だが、シーカはなにも答えない。
「あッ……」
ニニコが小さく悲鳴を上げる。
つかまえたパーツが、かたびらから強引に逃れ……本体に合流した。
ガチャン。
巨大な、左肩を覆いつくすアイテムが組みあがる。
煙羅煙羅――――――
シュー、シュー。
煙羅煙羅の各部から、シュウ、シュウと音が漏れる。やがて隙間という隙間から、煙が漏れ出した。
赤い煙。
血のように赤い煙。
シュー、シュー、シュー……
『735.5リットルの血をよこせ』
『それまでは決して離れない……ただし』
『完成してからだ……』
シーカの左腕は「煙羅煙羅」と「朽ち灯」に完全に覆われた。
……完成?
完成してから?
「ゲホゲホ。バカ、離せ……ウェッホ!」
咳こむトラ。
触手を振りほどき、固く握りこんだ右手を突き出した。憎らしいほどの笑みを浮かべて。
「ヘイ、シーカ。これなーんだ?」
「……!!」
目を見開くシーカ。
トラの手には、ネジ。
小さな小さな、ネジ状のブロック。
トラの指につままれたネジが、ぴくぴくと蠢いているではないか。
見せびらかす。
ヘイヘーイ、いいだろこれ。
トラの不気味な笑み。勝ち誇るような笑い声が、しぃんと静まる研究室に響く。
「へっへっへ……これ、もーらい」
バキバキ……ガシャン……
焼けた天井の一部が、蛍光灯を巻きこみ床へ落ちた。
トラの笑い。
シーカの殺意。
ニニコの悲鳴……
「ひひひ、へへへへ……お返しだ、ボケ」
「か、か、か、返……」
「もういや―――!」




