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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第5章「見る影もないラボを焼き捨てる涙へ」
37/250

第37話 「トゥ アッシュ」




挿絵(By みてみん)




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※




 トラとシーカが対峙しているころ、さっきの研究室では。


「ぷふ」


 顔を赤くしたニニコの頭から、ポカポカと湯気(ゆげ)が立ちのぼる。シャワーを浴びて、ようやくさっぱりしたようだ。

 ぼさぼさしていたグレーの髪も、すっきりとボリュームを落ち着かせている。

 

 なんだ。

 ニニコ、なかなか可愛(かわい)いじゃないの。



 その背後では、フォックスが顔をひきつらせていた。


「はっはっは……ベッドも(メシ)も用意できてねぇ。どうしてくれようか……」

 ブチ切れ寸前である。



「ふう……」

 ため息をつくニニコ。


 もう、またこんなことを言い出すんだから。

 この数日会う大人は、みんな私より子供で困るわ。


「あんまりガミガミ言っちゃいけないわ。ねぇ、フォックスとトラはどういう関係なの? 恋人なの?」

「はあ? ガキが()れたこと言うんじゃねえ。あいつとなんか寝てねえよ」


 イライラを隠すことなく、悪態(あくたい)づくフォックス。


 対して、ニニコの顔はちょっと赤くなった。

 や、やだわ!

 なにもそんな、イヤらしい言いかたしなくても。


「そ、そうなのね。そういう関係じゃないのね」

「へへへ。もしトラとヤるんだったら、女のほうが上に乗るしかねえな。アタシはそんな疲れるのゴメンだね」


 ますますニニコの顔は赤くなった。

 フォックスは、いちいち言いかたが露骨すぎる。



 そのとき。


 壁の向こうから、すさまじい絶叫が響いた。

 トラの声だ。



 ……

 …………

 ………………


「もうガマンできねえぞ、たっぷり可愛がってやる!」


「ケツの穴までメチャクチャにしてやる!!」


 ………………

   …………

     ……




 してやる、してやる、してやる……

 耳をふさぎたくなるようなやまびこ(・・・・)が、室内に反響した。


「なんてことなの……」


 内容のおぞましさに青ざめるニニコ。

 なにか誤解しているらしい。


「欠陥品のアタマがいよいよ壊れやがったな。もう始末するしか手がねえよ」


 フォックスがコキコキと籠手(こて)を振るう。

 殺す気満々だ、この女。


 

 と!

 いきなり!


 ドオォオオオオン!! 

 ガラガラガラ!


 研究室のゲートが、轟音(ごうおん)を立てた。

 ドオオオオオオオン!


「ぬわ! なに!?」

「ギャー! なに!?」

 

 大量のチリが舞う。

 鉄の扉に、スコップで掘りぬいたような大穴が開いているではないか。


 ……誰かいる。


 大穴の向こうにいるのは―――



「ひゃ! シ、シーカ……!」

 青ざめるニニコ。

 ほ、本当に来るなんて。


「あ、あ、あ……ニ、ニニコ……」

 

 すさまじい鉄粉が舞う穴をくぐり、シーカが侵入してきた。


 煙幕のような粉塵(ふんじん)のなかを、シーカはゆっくりと向かってくる。

 2人にではない。

 シーカは迷いなく、アイテムの水槽に向かう。



「なあんだ。もう来やがったのか、色男」

 ガチャ……

 籠手をひらくフォックス。


「アタシのメイドはどうした? 廊下で会ったんだろ?」



「……」

 シーカはなにも答えない。

 じっとフォックスを見返すばかりだ。


 緊迫(きんぱく)したムードなどまるで気にせず、またしても()()はひとりごとを始める。

 

『おお……なんという姿だ、煙羅煙羅(えんらえんら)……』

 ガシャン。

 ガシャン。

 朽ち灯が指を鳴らす。


『情けないヤツめ、こんな姿で封印されていようとはな。シーカよ、こいつは(あと)まわしだ。さきに “ ()白闇(しろやみ) ” を食うぞ。ニニコもろとも食ってやる……』

 

 恐ろしいことを平然と言ってのける朽ち灯。

 もう、本物の悪魔だ。


「ひ……ひい……」

 おびえ(ふる)えるニニコ。


「……」

 シーカは、無言で水槽を(なが)めていた。

 いや、ちがう。

 床を見たり、朽ち灯を見たり、やたら目が泳いでいる。どうやら極力、ニニコを見ないようにしているらしい。


「聞いてんのかオイ! アタシのメイドはどうしたってんだよ!」

 フォックスが怒鳴る。




挿絵(By みてみん)




「……」

 ようやくシーカがじろりと顔を向けた。

 だが、なにも答えない。


 代わりに、朽ち灯の笑い声が不気味に響く。


『メイドだと……足枷(あしかせ)の男のことか? ククク。あの男なら廊下に転がってるぞ』

 ククク。

 悪魔の笑い。


 だが。


 

「…………あのなあ」

 シュボッ!

 フォックスの籠手の中指(・・)に、きわめて小さな火が(とも)る。


 ヂヂヂと煙草に、火をつけた。

 朽ち灯を見るフォックスの目は、ゴミを見るかのように冷たい。


「スパ……ふー。お前になんか聞いてねぇよ。焼き直し(・・・・)


『な! に!?』


 またしても、またしても侮辱(ぶじょく)される朽ち灯。

 ついに。

 ついに朽ち灯の怒りが、頂点に達した。


『……灰にしてやる!』


 ボッ!

 朽ち灯の(てのひら)に、火球が生まれた。




挿絵(By みてみん)




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※




「どチクショォが。やってくれるぜ……」


 ズルズルと長靴を引きずりながら、研究室へ向かうトラ。

 ズシ……

 ズシ……

 壁に手をついて、よろよろと足を進ませる。


「痛だだだ……クソッ! やられたぜ……」

 顔の火傷(やけど)を押さえながら、トラは苦悶(くもん)の表情を浮かべた。


 渾身(こんしん)の力で、シーカに体当たりをブチかまそうとした。だが、カウンターの蹴りを食ってしまった。

 びっくりするくらい簡単に負けた。

 

 シーカはまるっきり無傷のままだ。反撃すらできなかった。おそらく、とっくに研究室に行ってしまっただろう。

 トラは考える。

 痛みをまぎらわせるために考える。


 なんでだ?

 なんで俺を殺さなかったんだ?

 ズシン、ズシン。


 昼間もそうだ。

 工場でバトったときも、途中でいなくなりやがったし。

 殺せたはずなのに、俺を殺さなかった。

 ズシン、ズシン。


 って、そりゃそうか。

 俺が死んだら、長靴の呪いが解けちまうもんな。

 ズシン、ズシン。


 そうかそうか。

 そりゃ、こんな長靴に呪われたらたまらんわな。

 ズシン、ズシン。


 くやしい。

 ズシン、ズシン。


 ようやく研究室の前までやってきたが―――



「おい、ウソだろ」


 鉄扉に、大穴が空いているではないか。

 これじゃまるでトンネルだ。


 間違いなく、朽ち灯によって貫通された穴。

 ぱらぱらと(こま)かい(チリ)が舞っている。


「もうカンベンしてくれよ……」


 頭がぐらぐらする。

 だが、引き返してもしかたない。


 穴に顔をもぐりこませて、室内をうかがう。



 すると中から!

 


「トラ、トラ……()せて!!」

「うわ、ニニコ!? ちょちょちょ、うわあ!」


 ニニコがこちらに駆け寄ってきた。

 いや、ちょっと速すぎる!


「とう!」

 助走そのまま、ニニコは飛びこむみたいに穴をくぐり抜けた。トラにダイビングタックルだ!


「ぐへっ! ゴチン、痛え!」

 押し倒されるトラ。

 ゴチンと、後頭部を廊下に打ちつけた。

「頭が! ぐええ!」

 


 直後……


 ボゥオオッ!!

 ニニコに続くかのように、火球が飛び出した。




挿絵(By みてみん)




 ブワァ! 

 飛び出した火球が、背後の壁に当たって爆散する。

 

 炎上。

 モルタルの壁が燃える。


 いったい、研究所の中ではなにが起こっているのか……?




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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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