表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第5章「見る影もないラボを焼き捨てる涙へ」
37/249

第37話 「トゥ アッシュ」





挿絵(By みてみん)



 トラとシーカが対峙する、そのころ―――



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ―――研究室の中。


「ぷふ」


 シャワーを浴びてさっぱりとしたらしい。顔を赤くしたニニコの頭から、ポカポカと湯気(ゆげ)が立ちのぼる。

 ぼさぼさしていたグレーの髪が、すっきりとボリュームを落ち着かせている。

 なんだ、可愛(かわい)いじゃないか。


 その背後では、フォックスが顔をひきつらせていた。

「はっはっは……ベッドも(メシ)も用意できてねぇ。どうしてくれようか……」


 ため息をつくニニコ。

 またこんなことを言い出すんだから、もう。この数日会う大人は、みんな私より子供で困るわ。

「……あんまりガミガミ言っちゃいけないわ。ねぇ、フォックスとトラはどういう関係なの?」


「あ? 関係なんかねぇよ。マセたこと言いやがる」

 イライラを隠すことなく悪態(あくたい)づくフォックス。



 その時、壁の向こうから怒声どせいが響いた。

 トラの声だ。



 ……

 …………

 ………………


「メチャクチャにしてやる! ソープにも行けねえ体にしてやる!」


 ………………

   …………

     ……



 してやる、してやる、してやる……

 耳をふさぎたくなるような山彦(やまびこ)が、室内に反響する。


「なんてことなの……」

 内容のおぞましさに青ざめるニニコ。

 なにか誤解しているらしい。


「追いつめすぎてイカレやがったな。もう殺すしか手がねぇよ」

 フォックスがコキコキと籠手(こて)を振るう。



   と――――――

 

   ドオォオオオオン!!

   ガラガラガラ……



「ぬわ! なに!?」

「ギャー! なに!?」

 分厚い鉄扉(てっぴ)が、轟音(ごうおん)を立てて崩れた。

 その向こうから現れたのは―――


「ひゃ……シ、シーカ……!」


 壁の粉が、煙幕のように()う。

 そのなかを、シーカがゆっくり室内に入ってきた。

「あ、あ、あ……ニ、ニニコ……」


「ひ……」

 シーカの姿に、身をすくめるニニコ。



「なあんだ、もう来やがったのか。よぉ、色男」

 ガチャ……

 シーカの前に立ちはだかり、籠手をひらくフォックス。


「意外と早かったな。アタシのメイドは? どうした?」



「……」

 シーカはなにも答えない。

 じっとフォックスを見据(みす)えるのみ。


 緊迫(きんぱく)した(にら)みあいを破ったのは、()()だった。



『おお……なんという姿だ、煙羅煙羅(えんらえんら)……』

 ジャキ……!

 シーカが、いや、朽ち灯が水槽に向かって指を開く。

『情けないヤツめ。こんな姿で封印されていようとはな。シーカよ、こいつは後回(あとまわ)しだ。先に「()白闇(しろやみ)」を食うぞ。ニニコごと食う……』 

 恐ろしいことを平然と言ってのける。


「ひ……ひ……」

 ニニコはその言葉に、おびえ(ふる)えた。


 シーカは無言で、水槽を(なが)めている。

 こっちを見ようともしないその様子に、フォックスが(まゆ)()り上げた。

 無視してけつかる!


「聞いてんのかオイ! アタシのメイドはどうしたってんだよ!」


 声を()りあげるフォックスに、シーカがじろりと顔を向けた。



挿絵(By みてみん)



 が、シーカはもちろんなにも答えない。

 代わりに朽ち灯の笑い声が、不気味に響く。


『メイド……メイドだと? ふふ、あの男なら廊下に転がっているぞ』

    


 ヂリヂリヂリ。

 フォックスの(くわ)えた煙草に、火が(とも)る。彼女の目は、小石でも見るかのようにシーカの左手へ……


「おい……お前になんか聞いてねぇよ。なおし」


『!!!!!!!』



 ……またしても侮辱(ぶじょく)される朽ち灯。

 フォックスの目はもう、シーカにしか向いていない。


 ついに朽ち灯の我慢(ガマン)が、限界に(たっ)したらしい。


『……灰にしてやる』


 ボッ!

 突き出した朽ち灯の(てのひら)に、火球が生まれた。



挿絵(By みてみん)



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

 同、廊下。

 トラ――――――


「ど畜生(チクショ)ォが。やってくれるぜ……」


 ふらふらと足を引きずりながら、研究室へ向かう。

 ズシ……

 ズシ……

 壁に手をついて、ズルズルと足を進ませた。


「痛だだだ……クソッ! やられたぜ……」

 顔中の(きず)を押さえ、苦悶(くもん)の表情を浮かべた。


 渾身(こんしん)の力で、シーカに体当たりをブチかまそうとした。だが、カウンターの蹴りを食らい倒れてしまった。

 シーカは無傷……そのうえ逃げられた。


 おそらくシーカは、すでに研究室に入っているだろう。最悪だ……


 でも、なんでだ?

 なんで俺を殺さねえ?

 ズシ……ズシ……


 昼間もそうだ。

 途中でいなくなりやがったし。

 殺せたはずなのに殺さなかったのは……ああ、そりゃそうか。

 ズシ……ズシ……


 俺が死んだら、長靴の呪いが解けちまうもんな。

 組長のときがそうだった。

 そうかそうか。

 そりゃ、こんな長靴に呪われたらたまらんわな……


 ほんじゃあ(ぬす)むなや! 

 パーツ返せや!!

 ズシ……ズシ……



 ようやく研究室の前までやってきたが―――


「うそ、だろ……」



 扉に、大穴が空いているのが見えた。


 間違いなく、朽ち灯によって貫通(かんつう)された穴。ぱらぱらと(こま)かい(チリ)が舞っている。

 サラサラと崩れる穴からは、室内の強烈な光が()れていた。


「もうカンベンしてくれよ……」

 頭がぐらぐらする。

 それでも必死に、ズシリズシリと明かりの()れる穴へ……なんとか、たどり着いた。

 穴に手をかけて、中をうかがう。



   すると――――――

 


「トラ! トラ……!」

 ニニコが、中からこちらに駆け寄ってきた。


「ニニ……わっ!」

()せて!」

 悲鳴をあげて穴から飛び出し、トラに飛びかかる。タックル―――


「ぐへっ!」

 そのまま、真後ろに押し倒される。

 

 ゴチン! 

 後頭部を廊下に打ちつけた。

「痛え!」

 


   直後……



   ボゥオオッ!!



挿絵(By みてみん)



 続けざま火球が飛び出し、通路の壁に当たった。


 ブワァ! 

 爆散する炎。


 いったい、中ではなにが……?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ