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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第4章「他愛もないプロローグを焼き捨てる新章へ」
32/250

第32話 「グレイブ」




挿絵(By みてみん)




 ゴゴゴ…… 

 巨大な扉が、ゴンゴンと派手(はで)な音を立てながら開いてゆく。


 トラとフォックスが、驚きの声を上げる。


「おお、開いた!? おい、今のなんだニニコ。触手が黄色になったぞ!」

「いまのって電気か? なんで扉のパスワード知ってんだよ。お前、ここの関係者なのか?」

 ワーワー!


 だが、ニニコは答えず。

 開いていく扉を、じっと見つめるばかりだ。

 

 ゴウン!

 扉が完全に開いた。


「行きましょ。トラ、フォックス」


 バン! 

 バン! 

 自動で明かりがつき、だだっ広い室内が(あら)わになる。


 そこは―――……


 研究所のようだ。



 ずらりと並ぶ大型の精密機器。

 4つ並んだ広いデスクには、パソコンや書類が乱雑に積まれている。医療機械のようなモニターが何台も、室内中にケーブルを()わせていた。

 


 そして床には、砂山がある。


 真っ白な砂山が、ひとつ、ふたつ、みっつ……数えきれない。まるで粉砂糖(こなざとう)の何百袋を、床にぶちまけたようだ。


 その白砂のなかに、原型を(とど)めない白骨が、いくつも(うず)もれている。


 左半分しかない頭蓋骨(ずがいこつ)

 (とが)って突き出ているのは、アバラ骨だろうか?

 あとは、どこの骨だかもわからない。

 

 この白い山は、すべて……骨?

 人間の骨がすり(つぶ)されたものか?


 パウダー状に分解された白骨の砂山、砂山。

 何十人分あるのだろうか。

 いや。

 なにをすれば、人間がこう(・・)なるのだ?


 まるで朽ち灯に食われたみたいだ。



「ここは研究所だったの、化学兵器の」

 ニニコが、重々(おもおも)しく語りはじめた。


「3年前にテログループに襲撃されたの。そのとき曝露(ばくろ)した毒ガスで、研究所のみんなは死んだわ」


「ここにある白い砂山は、みんなの死体よ。あれがパパとママ。あれとあれが助手の人で、そっちが部長さん。それから……」


 ニニコは砂山を指さし、ひとつひとつ紹介する。



「……なあ。いまのは空耳(そらみみ)か? 毒ガスって聞こえたぜ」

 トラがつぶやく。


「うん、トルエン(・・・・)系の毒ガス。体内に入ると、酵素が分解されて骨がスカスカになるの」

「アタシらを殺す気かよ、お前」 

 淡々(たんたん)としたニニコ。

 にらむフォックス。


「安心して。残留してる毒はないわ。3年がかりで、すみずみまで私が()め取ったから」


「はあ!?」

「お前まさか、その毒ガスの事故のとき、ここにいたのか? で……ずっとここの除染してたのかよ!?」 

 

 フォックスとトラが顔を見合わせる。

 な、なんちゅう……ひでえ話。



「私が " ()白闇(しろやみ) " に呪われたのは、4歳くらいのときだったわ。そのときのことは、あんまり覚えてないんだけどね」

 骨の山を踏まないように、ニニコはゆっくりと歩く。  


「パパもママも、この施設でいちばん(えら)い研究員だったの。 私の呪いを解くために、いろんな実験をしてくれたわ」

 

「ノルマなんか(こな)さなくていい、かならず科学的に呪いを解けるはずだって」


「でも3年前のあの日、ここは反政府グループに襲撃されたの。襲われた理由はわかんないわ。保管してある毒物を盗むのが目的だったのかしら」


「そのとき、たぶん電気系統を破壊されたのね。研究室内に、毒ガスが()れたの」


「ガス漏れに気づいた所長は、みんなを研究室ごと封鎖したの。きっと、大変な決断だったはずよ。私は所長さんを(うら)んでいないわ」


 骨の山を、なつかしげに、悲しげに、ひとつひとつ目を(くば)りながらニニコは歩く。



「だって所長さん、すごくいい人だったのよ? パパとママのお仕事を評価してくれて……だから私の呪いを解く研究のために、ここの設備を貸してくれたんだもの」


「真っ白闇のノルマは、触手を12色に染めること(・・・・・・・・・)よ」


「いろんなものを食べて、いろんなものを吸って、いろんなものを飲んで……それを真っ白闇に蓄積させるの。それが触手(かたびら)をカラフルに染めるの」


「あの日、私も毒ガスを吸いこんで意識を失ったわ。けど真っ白闇が、体内の毒素をぜんぶ吸収してくれたみたい。目が覚めたらみんなは死んでて、白かった触手は、黒になってたわ」


「いまは黒のほかに、黄色でしょ。それから水色、茶色、黄ミドリの5色よ」


「私こう見えても、電車でいろんな場所を旅してるんだから。真っ白闇のノルマを探す旅行よ。いろんなものを食べて、触手を新しい色に染めるなにか(・・・)を探してるの」


「……けど、どうしてもこれ以上見つからないの。あと7色もあるのに」


「だからこれからは、もっと遠いところへ出かけるつもりよ。だから今日は、旅に出るまえにお墓参りがしたかったの」


「ここに来たのも半年ぶりくらいかしら。この研究所が、もっと町の近くにあったらいいんだけど。そしたら私、いつもここにいられるのに」


「そうだったらいいのにって思うわ」


「―――ただいま、みんな」




挿絵(By みてみん)




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※




 同時刻。

 研究所の外に、彼()はいた。


 まただ。

 またコイツらが!


 シーカと()()が、やってきた。



『あっちだ』

 ビシ。

 朽ち灯が3人のいる方向を指さす。

『シーカよ……今度、あんなゴミどもに(おく)れを取ってみろ。(ほお)の肉だけでは済まさんぞ』


 頬の肉……?

 シーカの左頬には、厚いガーゼが当てられている。じんわりと血がにじんでいるではないか。シーカは答えることなく、小さくコクリと(うなず)く。



『いい子だ、シーカ』

『食うぞ……真っ白闇……ニニコ……』


『食ってやるぞ、煙羅煙羅(えんらえんら)……』

 



挿絵(By みてみん)




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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


― 新着の感想 ―
[一言] え!? ニニコちゃんの過去って、凄絶じゃないですか。まだ14歳なのに。
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