表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第4章「他愛もないプロローグを焼き捨てる新章へ」
31/249

第31話 「スパァク」




 とぼとぼ。

 ズシズシ。


 真っ暗な廊下を3人は進む。

 だが、トラとフォックスの足取りは重い。落ちこみまくりの2人に、ニニコはなんと声をかけていいものかわからない。

 さっきも、しりとりをしようとか言ってスベったばかりだ。



 ようやくトラが(くち)を開いた。

「ねえオーナー。あの左手野郎……シーカって名前なんスけど、どうしましょ?」

 ズシン、ズシン。


「どうって? なんだよ」

 カツン、カツン。

 ぶっきらぼうに、フォックスが()き捨てる。



「オーナーはホラ、人殺せないんでしょ? だから死人が出ないように放火してたんでしょ?」

 ズシン、ズシン。


「はあ? なんの話だよ?」

 カツン、カツン。



挿絵(By みてみん)



 ニニコが、ギョッと2人の顔をうかがう。

「ほ、放火……? 何のこと?」


 トラもフォックスも答えない。

 無視―――


 しゅん、と口をつぐむニニコ。



「だから俺を旅に同行させたんでしょ? もし、シーカを殺さなきゃ、(・・・・・・・・・・)パーツを取り戻せない(・・・・・・・・・・)、みたいな状況になったら、俺にあいつを始末させるために」

 ズシィ……ン。


「…………ああ! ああ~、なーる! その手があったか。気づかなかったぜ」

 カツン! 

 カツン、カツン、カツン!


「俺ね。シーカをとっ捕まえりゃ、なんとかなる―――みたいに考えてたんスよ」

 ズシ。ズシ。


「……」

 ダン! ダン! ダン!


「俺たちのアイテムのパーツ……跡形(あとかた)もなく消されてたら、どうしたらいいんスかね? さらさら~って」

「やめろ、ボケ!」

 ダン!


「……あいよ、やめます。おいニニコ」


「ひゃっ? な、なに?」

 ビク!

 いきなり話を振られて、ニニコがびくりと足を止めた。


 こ、怖いわ。

 2人ともなんだか、ケンカモードだし……

 


「なあニニコ。なんでシーカのやつに(おそ)われてたんだ?」

「え、ええと。あの、その……」

 テンパって答えが出てこない。


 フォックスは、ケッと(つぶや)いてタバコを(くわ)えた。スパー。 


「ええと、あのね。シーカは3日前に突然、私のところに来たの。それで “ ()白闇(しろやみ) ” を食べさせてほしいって言ったの」


「うん、それさっき聞いた」



「でね。真っ白闇を食べてくれたら私、呪いから解放されるんじゃないかなって思ったの」

「でも三日後に……つまり今日だけど、 “ ()() ” が私のことも食べたいって言いだしたの。私、びっくりして逃げたわ。その途中でトラとぶつかったの」

「朽ち灯は怖いわ。なんでも灰みたいにしちゃうんだもん。まるで……」


「まるで、なんだ?」


「……ううん、なんでもない」

「?」


 急に(くち)ごもるニニコ。



 フォックスがようやく落ち着いたらしい。

 話に戻ってくる。

「なんで3日も経ってから? そのあいだ何してたんだ?」


 ニニコの答えは―――


「なにも。だってシーカの(しゃべ)りかたは、その……すごく聞き取りにくいでしょう? 普通に会話してただけで3日かかったわ。そのあいだに朽ち灯の興味が、私に向いたみたい。すごく怖かったわ」


「え? 喋りかた? なにそれ」

 


「なにって……ほら。タヌキだったら「タ、タ、タヌキ」みたいな」



吃音(チック)症のことか? いや、あいつ前に会ったときは、普通にしゃべってたぞ。なあトラ」

「それがホントなんですよ。あいつ、針の飛んだレコードみたく、たどたどしい(・・・・・・)話しかたになってたんです。橋から落ちたときに、頭でもぶつけたんスかね?」


「……ま、アイツのことはいいや。で、よろいってのは?」



「真っ白闇も、フォックスの籠手も、トラの長靴も、朽ち灯も。もとはひとつの(よろい)だったんですって。それが大昔に、13個に分かれたらしいの」


「じゅ……13個!? こんなのがまだあんのかよ!」

 フォックスが自分の右手を見る。


 眉間(みけん)にしわを寄せるトラ。

「それがなんで人間を呪うんだ? そもそも、なんで13個に分かれたんだよ」


「さあ? わかんないわ。あ、そうそう。トラとフォックスのノルマってなに? シーカに取られちゃったパーツが(そろ)えば、カウントがまた始まるんでしょう?」



「……揃えばな。俺のノルマは歩数だ。1億歩(ある)けとさ」

「アタシは……フン! さっき言ったろ、119軒に放火することさ。ニニコのは? おっと……」


   

   3人が歩みを止めた。

   行き止まりだ。


   

 突き当りが、鉄のゲートで厳重(げんじゅう)に閉ざされている。


 大きな大きな、見ただけで分厚(ぶあつ)いとわかる鉄のゲート。

 格納庫……いや、まるでシェルターだ。



「ニニコ、ここか?」 


「……2人とも下がってて」

 ニニコがダンボールをゆかに置くと、スカートから触手…… “ かたびら ” をズルズルと伸ばした。



   すると―――


   バチバチバチバチ……!!



 (ムチ)のように()らめく「かたびら」から、バチバチと音がする。


 なんの音だ?

 トラとフォックスが何事かと(なが)めていると……


「え?」

「うわっ!」



   かたびらの色が変わった。



 根元から先っぽへ、(あざ)やかな黄色に染まってゆく。


   バチバチバチバチ……


 はじけるような、けたたましいスパーク音。

 火花が飛び散る。

 目がくらむような閃光


 ――――――電気!? 


 電気を(まと)った「かたびら」の1本を、ゲートに向けて伸ばすニニコ。

 しゅるしゅる。

 

 バチバチバチ!!


 亀裂(きれつ)の入った電子パネルに、するりと侵入する触手。

 うにょうにょ。

 バチバチ!


 パァッ……

   

 数秒して、電光板が発光した。


 スピーカーのランプが点灯し、機械の音声が流れる。


【ざ、ザザザ、ざ……】

【ロックパターン、225、承認(しょうにん)、ざざ……】

【ザ、ザ……開錠(かいじょう)ワードをどうぞ……】



 ニニコがすぅっと息を軽く吸い、歌う。


「ちぃっと通してくだしゃんせ―――」



挿絵(By みてみん)



 ゴゴゴ…… 

 巨大な扉が、ゴンゴンと派手(はで)な音を立てながら開いてゆく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ