第30話 「ホラー」
ズシン、ズシン……
トラの長靴が、ガレキだらけの地面を揺らす。
3人が侵入した敷地内は、すごい有様だった。
爆発によって破壊された外壁、樹木、敷石……バラバラに壊れた車の残骸まで散らばっている。
建物の外観たるや、ひどいものだ。
あちこち壁が砕けて、コンクリート片が散乱している。
3人は、ガラスがすべて割れた正面玄関から、建物のなかに入った。
また内部もひどい。
通路が奥まで続いているようだが、まったく先が見えない。真っ暗闇だ。
ジャリ、ジャリン。
3人が歩くたび、なにかの破片を踏みしめる音がする。
「……ねぇ、暗いわフォックス。火をつけて」
「ハァ? あぁハイハイ、お嬢さま。少々おまちを」
フォックスが、イヤミたっぷりに答える。
シュボ!
“ 焼き籠手 ” の人差し指に、たいまつのような火が灯った。
「これでよろしゅうございますかぁ?」
「……うん」
……嫌われている?
しゅん、と口をつぐむニニコ。
明かりに照らされた廊下、そこはまさに廃墟だった。
床はホコリだらけ、ガレキだらけ……壁には亀裂が無数に入り、弾痕や焼けあとも見られる。
どう見ても、ここで銃撃戦があったとしか思えない。
トラの息切れと足音が、通路に反響する。
はあ、はあ。
ズシン、ズシイイン。
やがて雑談がはじまる。
最初に沈黙をやぶったのは、もちろんトラ。
「ふうふう。おいニニコ、なんでオーナーの籠手の力を知ってんだ? よく火のことがわかったな」
「オーナー……フォックスのこと? ここに来る途中、運転席で聞いたの。トラの長靴は? まさか、壁に引っつくだけなんてことないでしょう?」
「もちろん、他にもあるぜ。すげえ重い! ……以上だ」
「ごめんなさい。私、ひどいことを……」
「……いや、いいんだ。気にしないでくれ」
ちょっと気まずい空気になった。
トラが続ける。
「なあ……いったい、ここに何があるんだよ?」
「白骨死体よ」
「ちょ……! この雰囲気で悪い冗談やめろ!」
おびえるトラ。
こいつでも怖いらしい。
「うるせぇぞ! ただでさえなにか出てきそうなのに、脳天気はやめろ!」
黙って聞いていたフォックスが、2人に怒鳴る。
「ったく。アタシの趣味じゃねえな、ここは。ところでニニコ。あの左手野郎とは、どういう関係なんだ?」
「へ? 左手……あ、シーカのことね」
ニニコの表情がゆるむ。
フォックスが話を振ってくれた。ちょっと声の調子が明るくなる。
「シーカとは3日前に会ったの。いきなり私のとこに来たのよ。なんか、最初はすごくフレンドリーだったわ。なに言ってるのか、聞き取るのが大変だったけど」
「それでね。 “ 真っ白闇 ” を、ちょっとでいいから触らせてほしいって言ってきたの」
「どうしてって聞いたら、 “ 朽ち灯 ” が食べたがってるんだって言うのよ。ほら、朽ち灯は触れたものを、さらさらに崩せるでしょう?」
「それが朽ち灯には、すごく美味しいらしいの」
おだやかに話すニニコ。
それに対し、トラとフォックスは震えあがった。
「マジでゾッとしちまった。美味しいとは恐れ入ったぜ。あの籠手、食うためにアイテムを集めてやがるんだ」
「しかも食ったアイテムの力を、自分のものにできるってわけか」
「オーナー。やっぱ俺たちのパーツは食われちまったんですよ、サラサラに砕かれて……ああ、最悪だ」
「トラ。たしかお前、あいつの籠手が火を吹いたとか言ってたよな?」
「ええ。きっとあいつ、オーナーの籠手のちからを取りこんだんですよ。だから炎を使えやがったんだ。ま、まさか俺の長靴の力も……」
フォックスとトラの表情がどんどん曇る。
「……ちょっと待てよ。じゃあアタシたちのパーツ、もう取り返せないってことか?」
「俺に聞かないでくださいよ! 最悪だ、ああ……」
うなだれる2人。
それを見てニニコは……
「しりとりでもしない? 私からね。クリームソーダ! はい次、ダよ」
「だまれ!!」
「だまれ!!」
トラとフォックスの絶叫が、通路に反響した。
だまれ、だまれ、だまれ……




