表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第4章「他愛もないプロローグを焼き捨てる新章へ」
29/249

第29話 「クエスト」




 同夜。

 ニニコの指示で、トレーラーを走らせるフォックス。


 ドドドドドド……どこへ向かっているのか。


 一本道。

 ひたすら一本道。

 町から遠ざかるように、トレーラーは荒れた舗装道(ほそうどう)を進む、進む。

 


「これどこ向かってんだ? まっすぐでいいのか、ニニコ」

「ええ、まっすぐよ。ええと……フォックス」


 助手席にニニコを乗せ、ひた走ること30分。

 あたりには民家も建物も見えなくなった。


 がたがたの道路に揺られながら、ひたすら夜の荒れ道を進む。


 ドドドドドドドォォ……



※ ※



 荷台の最後尾で、トラはコンテナによりかかっていた。


 言っとくがコンテナの中じゃないぞ。おなじみの車外の(・・・)最後尾だ。なんだかんだで、トラはこの場所が気に入っていた。

 真うしろに、景色がブッ飛んでいく爽快感(そうかいかん)

 夜空に星がきらめいて、きらめいて……


 だがトラの顔は(けわ)しい。 

 と、いうのも……


「あのガキ、どうすんだコレ……?」


 ガシャ、とコンテナの扉を開く。

 なかにはダンボールが7つ、乱雑に積まれていた。出発前、ニニコが町の花屋で買い求めたものだ。厳密に言えば、代金を払ったのはフォックスだが。


「ひィっきシ! ちぇっ、鼻ぁムズムズするぜ」 


 ダンボールには大量のバラ、ユリ、ラン……その他もろもろ。いっぱいに花が()められている。このダンボール、全部そうだ。


「ヘッ、まるでハネムーンだね」



挿絵(By みてみん)



※ ※



 ふたたび、運転席のフォックスとニニコ。

 かなり険悪(けんあく)な雰囲気である。


「で、さっきの触手はなんだったんだ? ニニコのアイテムってどういう能力だよ」

「……」


「おーい。10万出して、お花買ってやったのはどこの誰だ?」

「……アイテム(・・・・)って? 鎧のこと? 奇抜(きばつ)な表現だわ」


「どうでもいいよ。スカートから触手が出てきたときゃ、お前が巨大イカ(・・・・)でも産んだのかと思ったぜ。ズルズルってな」


 左手を伸ばし、ニニコの薄い腹をフォックスが(さす)る。

 (あわ)てて、その手を払いのけるニニコ。


「や、やめてっ……二度としないで! アイテムでいいわ。名前は “ ()白闇(しろやみ) ” よ」 


「白? 黒かったじゃん」

「最初は白かったわ。吸収すると (・・・・・)、色が変わるの」


「え……なんだって? 吸収?」


 意味が分からない。

 (まゆ)をしかめるフォックス。


 ニニコが、うーんと考える。


「えっとね……説明が難しいわ。 “ ()白闇(しろやみ) ” は、栄養とか毒素とかを吸い取って、ためておける(・・・・・・)の。私の体を通せばだけど」


「?? あァン? どういうこと? ケーキ食ったら、アイテムが太るってことか?」

「ちょっと違うわ。なんて言えばいいかしら。ケーキに例えるなら、糖分を()めるというか」 

  

生物濃縮(せいぶつのうしゅく)みてえな能力か?」

「? せい……ぶつ?」


 今度はニニコが(まゆ)をしかめる。意味を知らないらしい。


「いやいい。そんじゃ何か? 黒かったのはつまり……ニニコの体の、鉄分とかミネラルとかを溜めてあるわけ?」

「なんとかいう神経ガスよ。それに枯葉剤(かれはざい)と、窒息(ちっそく)ガス……」



   キキキ、ギャギャ!!


   急ハンドル! 

   トレーラーが揺れる。



  「うあわ! な、なんだぁ?」

   荷台のトラが落ちそうになった。



※ ※



「危ないわ、フォックス。びっくりするじゃない」

「びっくりしたのはこっちだ! んなモンでアタシを()めつけたのかよ!」


「大丈夫よ。ちゃんと私がコントロールしてるもの」 


 大丈夫と言われても、ちっとも安心ではない。淡々(たんたん)と話すニニコに、フォックスが疑いの目を向ける。

 どこまでマジなんだよ、ったく。


「……とにかくよ、どこに向かってんのか教えろよ」


「見えてきたわ。あれよ、あの建物……」



   あの建物―――



挿絵(By みてみん)



 荒野のド真ん中に見えてきたのは、場違いなほど巨大な建物。

 (つた)のように有刺鉄線(ゆうしてっせん)が巻きついたフェンス。そこには、立ち入り禁止のプレートがかけられているではないか。そのプレートも、ひどくボロボロだ。


 ここは……廃棄された施設、だろうか?

 

 博物館のような、県庁舎のような、水族館のような建物。

 あちこちの窓ガラスが割られ、壁のコンクリートが()がれ落ちている。心霊スポットのような不気味(ぶきみ)な建物。



 停車したトレーラーから3人が降り、ゲートの前に立つ。

 ニニコが荷台を(ゆび)さし、トラに話しかけた。


「なかに入りましょう。あ、お花を忘れないで」


「はぁ? 冗談だろ、ダンボール7つもあるんだぞ!」

「おねがいよ、私も2つ持つわ。トラが3つ、フォックスが2つ……」


「つまりトラが5つだな、行こうぜ」


 フォックスがこちらを見もせず言い放つ。

 だが、ニニコには理由が分からない。


「?? なぜ?」


「……いいんだ、ほっといてくれ。下がってろ、フェンス(やぶ)るからよ」

 金網(かなあみ)に、トラが蹴りを入れた。 

 ガシャア!!

 ギ、イイ、ィイイ……ガシャァアアアァン!!

 6(じょう)ほどの広さのフェンスが、根こそぎブっ倒れた。

「入口つくったぜ、ニニコ」



「あ……うん。ごくろうさま」

 長靴の威力に、ぽかんと口をあけるニニコ。


 トラは荷台からダンボールをすべて降ろすと、5つを積み上げて、えいと持ちあげた。

「えい! お、重いぜ……」

 ふらふら、よろよろ。


 ニニコも、ダンボール2つに “ かたびら ” を()ばす。

 しゅるしゅる。

 触手(しょくしゅ)の1本1本は、けっこうな(ちから)があるらしい。ゾウの鼻のように器用にダンボールに巻きつき、ぐいと持ち上げてしまった。



 トラの作った入口―――

 ニニコが先頭に立って、敷地内へと侵入する。


「こっちよ。なかに入りましょう。着いてきて」


 すました表情で、2人を先導(せんどう)するニニコ。

 トラとフォックスは顔を見合わせ……


「へーい」

「フン!」


 ニニコにつづいて敷地に入る、2人。

 めざすは建物の……



 そういえば、何しにここに来たんだっけ?

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ