第28話 「シー イズ クール」
「なんじゃそら! んじゃムザムザ逃がしたのか、このマヌケ! ガミガミ!」
シーカを取り逃したことを知り、フォックスの怒りは頂点に達した。
さっきの場所からすぐ近くの廃倉庫で、さんざんに怒られるトラ。ガレキや金属片の散乱する地べたに正座させられていた。
お説教が始まって、すでに30分がたつ。
「あのオーナー。ご報告することが」
「アタシは情けない! 開いた口がふさがらない! ガミガミ!」
弁明するトラ。
激昂するフォックス。
「あの野郎ですね、手から火を……もしかしたらオーナーの籠手の力を取りこんで……」
「もうお前の顔すら見たくない! いますぐ薬局行って毒薬買ってこい! ガミガミ!」
説明するトラ。
激昂するフォックス。
「オ、オーナー。も、も、もういい加減に……」
いい加減にしやがれ、と言いたいのだろう。
トラの顔面に、ビキビキと太い血管が浮き出る。辛抱強く罵声に耐えていたが、もう爆発寸前だった。
ちなみに、触手の女の子もこの場にいる。
以下、彼女をニニコと記載する。
ニニコは、フォックスのお説教が終わるのを行儀よく待っていた……のだが、まるっきり終わる気配がないではないか。
うんざりした表情で、埃だらけのコンベアに腰かけ、足をぶらぶらさせている。
あ、ようやく説教が終わったようだ。
「ハァー、ハァー! こ、このくらいにしといてやる。ところで……お前、誰なんだよ」
じろりと女の子を睨むフォックス。
ムッ、と女の子も睨み返した。
ようやくこっちに話を振ったと思えば、「お前」呼ばわり?
「ニニコよ」
「あ?」
「お前じゃないわ。私、ニニコ。あなたたちも鎧に呪われてるのね」
ニニコの口調は、生意気だが反抗的ではない。
丁寧。
この状況にあって、とても丁寧に話す。
だが……
「ヨロイ?」
「なんだよ、ヨロイって?」
トラとフォックスが声をそろえる。
「……え? まさか、知らないの?」
ニニコが、きょとんと目を丸くした。
「あきれた。鎧っていうのはね……ひっ!!」
解説しようとしたニニコだったが、2人の表情を見て、悲鳴をあげた。
「いひひひ」
「ふ、ふふふへへへ」
笑っている。
トラとフォックスが、ギヒヒと笑いながら少女に近づく。
「ツいてる、こりゃツいてるぜ。拉致るぞ、トラ。ふっへっへっへ。こんな情報源が手に入るとはな」
すごいこと言いだすフォックス。
さすがこの女、広域指名手配されてるだけある。
「あいよオーナー。このガキ、よくも10万を……覚悟しな」
いっひっひ。
おびえる少女に手を伸ばすトラ。
「や、やめてっ!」
恐怖に震えるニニコ。
「真っ白闇! たすけて!」
悲鳴。
すると!
ニニコのスカートから触手が這い出し、2人をぐるぐる巻きにした!
ぶわあ!
グルグル、キュッ。
「うわ! なんじゃこ……き、気持ち悪い!」
胸を締めつけられ、フォックスがわめく。
「ギュウ……!!!」
喉を絞められ、もがくトラ。
し、死んでしまう。
2人が抵抗できなくなったのを見て、ニニコは少し落ち着いたらしい。
ゆっくりと問いかける。
「……ねえ、交換条件ならどう? 聞きたいことが、たくさんあるんでしょう?」
「うぐぐぐ!」
「……ィ! ……ゥ!」
トラもフォックスも、答えない。
なにも返事をしない。
……そりゃ、できないだろう。




