表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第3章「突拍子もないバトルを焼き捨てる出会いへ」
26/249

第26話 「デスマッチ」



「パーツ! 返せボルァああ!」 

 全身に触手(しょくしゅ)を巻き付けたまま、ドズドズドズとシーカに突進するトラ。


 さきに、触手の正式名称を書いておく。


   「かたびら」という。


 トラの体には、かたびらが巻きついたままだ。引きずられる女の子!

「痛だだだい!」

 ザザザザ!


 トラはそんなのお構いなしに、グルンと半回転してシーカに蹴りを放った。

 回転に “ かたびら ” が巻きこまれ、女の子が遠心力で浮く。


「ふぃいいいいい!」

 少女の、悲鳴。


 トラの蹴りは……


 ドシィイン!!

 当たらない。

 ひらりと(かわ)され、長靴はそのまま壁にめり()んだ。

 トラとシーカの距離は、わずか数10センチ。


「お、お、遅……」

 言葉を震わせながら、シーカが長靴に触れようと左手……朽ち灯を持ちあげる。

 いや、長靴ではない。

 狙いはトラの顔面!

 肩を引いて、パンチの構えをとる。

 

 ヤヤヤ、ヤバイ!


「うおおおお!」

 とっさに全体重を壁に乗せるトラ。絶命する―――



 ドパンッッッ!

 シーカの左ストレートが、壁を消し飛ばした。


 トラは?


 上。

 上に、駆けあがった。

「うるああああああああああ!!」

 


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

 


 ドドドドドドドォ……!

 垂直の壁を2本の足で駆け上がった。回避―――


 ズダン、ズダンと壁をのぼるトラ。

 それに引っぱられる少女。


 ぽかんと見上げるシーカ。



 瞬間!!

 

 6メートルほど上空で、ダン! と()び降りた。


「うあらぎゃ!」

 技の名前だろうか。

 トラが叫びながら、シーカの頭上へ降ってくる。



「! ……な……」

 今度はシーカが、ヤバい。

 

 ドゴォオオオオオオオオン!!!

 着地……いや、墜落(ついらく)

 落下の衝撃でクレーターが出来た。


 シーカは?

 間一髪(かんいっぱつ)跳転(ちょうてん)してトラを避けた!



挿絵(By みてみん)

 


「……く! し、しま、た……」

 しかし、わずか30センチ後ろはドブ川。


 追いつめられた。

 すぐに体勢を立て直し、トラに左手を突き出すが……

「こ、こ、こいつ……あ、あれ……?」



挿絵(By みてみん)



「ぐ、ぐぐ……」

 どうやら、トラはそれどころではないらしい。

「く、首が締まる。し、死ぬ……!」


 首に “ かたびら ” の1本が(から)み、首吊りのように(のど)を絞めつけられているではないか。


 女の子は、その真上2メートル。


 壁から突き出した(クギ)かなにかに引っかかっているらしい。トラの頭上で「きゃあ!」とか「ひい」とか叫んでいた。

 宙吊(ちゅうづ)りになりながらも、必死にスカートを押さえている。

 見えちゃうわ、見えちゃう!


 そのスカートの中から伸びるかたびらは、6本がトラを縛り、ほかの6本は釘を外そうとしている。

 あ、いまようやく外れた。


 ドシン!!

 窒息(ちっそく)寸前だったところへ、女の子がトラの頭に降ってきた。


「きゃあ!」

「ゴゲエ!!」


 意識がブッ飛びそうになりながら、それでも倒れないトラ。女の子を肩に乗っけたまま、さらに激昂(げっこう)する。

 怒りの矛先(ほこさき)は、なぜかシーカへ。


「痛え! よくもやったな!」

「きゃー!」

 ズドンズドン!

 ふたたび突進。

 

 シーカの背後は、川!

 後ろに下がることは出来ない!

 大振(おおぶ)りの蹴りがシーカに向かう。

 ブンッッ!! 


 スカッ!


「……フン」

 余裕で避けられた。

 完全に見切られているらしい。半歩ほど左に移動しただけで、かんたんに(かわ)される。

 

 カラ振り―――蹴りの勢いそのまま、今度はトラと少女がドブ川へ落ちそうになる。形勢(けいせい)逆転。

「おお!?」

「きゃー!」

 落ちまいと踏んばるトラ。

 トラにしがみつく女の子。



「あ゛――――――!!!」

 落ちた。

 姿が見えなくなる。



『いかん、真っ白闇が!! 追え、シーカ!』


 少女の落下に " ()() " が叫ぶ。


 そう。

 トラはどうでもいいが、少女が落ちるのは困る。

 アイテムを逃がしてはいけない。


 朽ち灯の声にシーカは駆け出し、(あわ)ててドブ川をのぞきこんだ。 

「に、に、ニニコ……わ!」


 

  「嘘じゃあああああああああああ!!」


   ドガッ!

   トラの蹴りが飛んできた。


  「落ちてねえわ! ボケェ!」



 2人は川に落ちていなかった。 

 トラは長靴で堤防(ていぼう)に貼りつき、シーカが顔をのぞかせるのを待っていた。まるでヤモリ―――待ってましたと蹴りを放つ!

 今度こそ直撃した!


 いや!


 ズガンと強い衝撃が、シーカの左手にかかった。

「ぐ……!!」

 朽ち灯を(たて)にした。


 かろうじて防御……だが、とてつもなく恐ろしい声が、朽ち灯から発せられる。



『ぐぅ! 我を……き、貴様、我を足蹴(あしげ)に……』

 朽ち灯が(うな)る。

 恐ろしい声で、トラを()める。

 恐ろしい声で、シーカを()める。

『我を盾に……シーカ……悪い子だ。あとで覚えておれ』


「う、う……」

 シーカが身震(みぶる)いする。

 その目が、恐怖に染まる。


 だがそれどころではない!


 ガチン! 

 長靴が、朽ち灯に貼りついた。

 はがれない。


「うりゃああああああああああ!」

 トラが()える。


 朽ち灯を貼りつけたまま、長靴をブンまわした。シーカごと……なんちゅう脚力(きゃくりょく)!!

 (ちゅう)に舞ったシーカが、地面に叩きつけられた。


 ズダンッッ!!


「が…………」


 効いているらしい。

 もう一発!

 岸に上がり、シーカを貼りつけたまま、ふたたび足を振りあげる。

 今度は壁に叩きつけてやる!


 だが…… ボゴォ!!


「ぐべぇ! 痛え!」

 

 シーカが体をひねって、トラの顔面に蹴りを食いこませた。たまらずシーカを解放するトラ。

 

 ちなみに女の子はまだトラの頭にしがみついている。

 べつに記載の必要なかったので(はぶ)いたが、彼女はずっと「ヒィ」とか「ぎゃあ」とか(わめ)いていた。



「こんの……よくも……」

 ズザッ!


「は、はあ、はあ……」 

 ジャキ……


 距離をとる2人。 

 トラとシーカが互いに構えた。

 すると……


「や、や、や、やい。に、ニニコを、乱暴に、あ、あつ、あつかうな」

 シーカが(くちびる)をふるわせる。


「降ろして! あなた、降ろして!」

 トラの耳元でわめく女の子。


 ……ニニコ?

 いまさらながら、この少女の名前だろうか?


 女の子を見もせず、トラが吐き捨てる。


「ニニコ? ああ、このスリのこと? そうはいくかよ」


「ニ、ニ、ニニコを、降ろ、せ」 

 シーカは(ひる)まない。

 とてつもなく(つたな)い話しかた。眼光だけが(するど)くトラを見すえている。

 


 (まゆ)をしかめるトラ。

 なんだ? 

 なに、コイツのしゃべりかた。


「オイ。その(しゃべ)りかた、どうした? マジに頭でもやっちまったのか? えー……誰だっけ?」


「し、し、し、シーカ」

「そうか、覚えとくぜ。ロリコン野郎」


「……ギリッ」

 あからさまな侮辱(ぶじょく)に、シーカの顔色が変わった。

 にらみ殺さんばかりの目を向ける。



挿絵(By みてみん)



 怒りを隠そうともしない。

 トラと違うのは、それを言葉にできないこと。ギリ、と歯を(きし)り、朽ち灯の(てのひら)を上に向けた。


 その掌に―――……



   パチパチ……ボゥ!!


   掌に火花が走り、火球が生まれた。



挿絵(By みてみん)



 トラの悲鳴。

「ンな……火ィイイイイイ!?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ