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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第22章「とてつもないパワーを焼き捨てる脱力劇へ」
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第208話 「オフロード」



『見事だったぞ人間ども! さあ立ちあがれ、我こそはというものはここに集え! 魔王さまに忠勇を誓う者たちよ、ここに参れ! さあ名乗り出よ!』


 短い手足をふりふり、SUVの屋根で煙羅煙羅はスピーチをはじめた。

 

『どうした、誰もおらんのか! 人間の底力とはそんなものか!』

 


「あいたた……ここにいるわよ」

「人間を・なめる・な」

 立ちあがった。

 シーカとニニコが立ちあがった。

 

 ニニコはふらふらと、車のキーを握りしめて立ちあがる。アントニオのポケットから奪ったものだ。なんだ、結局盗んでしまった。

「ぐす……」

 血だらけの口をぬぐいながら、めそめそと泣く。

「なんでこんなに思い通りにならないのよ……グスン」


「泣いても・この世界の・思うツボ・だぞ」

 シーカは立ちあがった。気絶したジェニファーの(ワキ)を抱え、うんしょうんしょと引きずっていく。

「に、に、ニニコ。手伝って・くれよ」


「グス。わかったわ、私が足を……重っも!」

 よっころしょ、よっこらしょとジェニファーを運ぶ2人。彼女をどうしようというのか……もちろん一緒に来てもらうつもりだ。

 魔王誘拐計画は、なんの支障もなく継続中なり。ニニコとシーカは、ついでにジェニファーも誘拐する気だ。人質は多いに越したことはない。


 ウソ。

 ジェニファーがいたほうが楽しい。彼女をさらう理由はそれだけです。



『やれやれ、疲れた。ああ、美味いものばかり食って満足したわ……』

 シーカの左手で、朽ち灯は笑う。



「ぐすん。トラとフォックスはどうしてるかしら。ハムハム、無事なのかしら」

「あ、あ、あいつらが・死ぬとは・思えない・ね」

 ボロボロのニニコ。

 ボロボロのシーカ。

 ジェニファーを連れて、魔王の馬車に……いやSUVに()(さん)じた。

「ふうふう。お、重かったわ」

「ふ、ふだん・なに・食べてるんだ・ジェニファーは」


『フハハハハハ、よくぞ来たニニコ! よくぞ来たシーカ! 見直したぞ、お前たちにこれほどの底力があったとは』

 プッシュー。

 やたらハイテンションの煙羅煙羅。

『お前たちに、魔王様のお側に仕える栄誉をくれてやる。人間にはもったいない名誉ぞ! フハハハハハハ!』

 屋根の上からめっちゃ誉めてくる。プシュー! 


「ニニコ・鍵をくれ」

「待って。さきにうしろのドアを開けるわ。ジェニファーを寝かせましょ」

 2人は煙羅煙羅を無視。

 ジェニファーを後部座席に寝かせ、それぞれ運転席と助手席に乗りこんだ。


『フハハハ! フアハハハハ!!』

 興奮おさまらない煙羅煙羅も、車内にもぐりこんだ。車の中は煙だらけだ。

『プシュプシュー! プシュー!』



挿絵(By みてみん)



 グォン!

 ブルルル……ついにSUVは動き出した。シーカ、ニニコ、マオちゃん、煙羅煙羅を乗せて走り出した。

 幸い、下までは一本道だ。

 坂を下って行けば国道に出るだろう。ナビを見れば、ここが市街地のすぐ近くなのが確認できる。だが、まずは魔王城の敷地を出なければ。


「い、い、イヤに・なってくるな。こ、ここからが・本番だぞ」

 ハンドルを握るシーカの疲れた顔よ。

「魔王城から・出る橋は・検問が・あるはずだ。も、も、もう1戦・あるぞ」


「……フォックスとトラ、大丈夫かしら。ハムハムも……見捨ててきちゃった」

 助手席のニニコの、泣きそうな顔よ。

「どうしよう。どうしよう」

 グス。


『あの2人なら生きておるぞ。のう、朽ち灯よ』

『ああ、ピンピンしているようだな。さっき屋根の上から落ちたようだが、頑丈なやつらだ』

 煙羅煙羅と()()の楽しげなことよ。




   なぬ!?



「え……え!? 待って、あの2人も脱出できたの!?」

 助手席のシートを倒し、うしろの煙羅煙羅に詰め寄るニニコ。

「なんでそんなことわかるのよ! なんでなんでなんで!」


『落ちつけ。足枷(あしかせ)()籠手(ごて)の気配をまだ感じる。ということは、奴らは死んでいないということだ。どうだ安心したか』

 

「……ま、待て・よ。()き・籠手(ごて)? フォックス・籠手が・戻ったのか?」


 シーカのハンドルさばきは荒い。グオングオン、右へ左へと車は揺れる。いや、道のせいだ。極端に湾曲した下り坂は、丘の斜面を活用するためなのだろう。

 大きな施設を2、3ほど通りすぎ、ついに車は魔王城の門へ―――すなわち唯一の出入り口である橋にたどり着いた。


「チッッ! そ、そういや・そうだった」

 シーカは思いきり舌打ちをした。このままスピードをあげて、橋の検問を突破するつもりだった。だが、アクセルから足を離す。


 グオオオ……SUVが速度を落とし、ついに徐行する。橋の両岸には機関銃を持った男たちがいる。何台か車も止まっているが、問題は橋そのものだ。

 車止めのストッパーで閉ざされているのはもちろん、橋はカクカクと直角に曲がっている。暴走車が入ってこれないようにする対策だろう。やはり魔王城を名乗るだけある。一流の警備機構だ。


 ここに来るときも、シーカはそれに感心したはずなのに……今の今までうっかり忘れていた。突破できないではないか!


「(警備を殺すしかないな)」

 シーカは覚悟を決めた。ニニコの前で殺人を犯す決意を。キィ……SUVは、ついに橋の前で停車した。



挿絵(By みてみん)



 警備員らが車に集まってきた。もう駄目だ……シーカはため息をつき、ドアに手をかけた。

 降りる。

 そして即、殺す。

 相手は5人。

 問題ない、殺す―――


 だがそんな場合じゃなかった。



「どきやがれ、この野郎ォオオオ!」

 バタン!

 助手席のドアを外から開けられた。そしてバカでかい声で怒鳴りつけられる。


「ぎゃあ!」

「うわー!」

 耳をふさぐシーカとニニコ。



挿絵(By みてみん)



「車をどかさねえか―――! なんでこんなとこにいるんだ!」

 ハワードだ。

 ハワード部長が血相を変えて、車内をのぞきこんできたではないか。


「耳が、耳が!」

 悶絶するニニコ。ついでに心臓も止まるとこだった。


「ぶ、ぶぶ・部長・さんかよ」

 シーカはもうがっかり……肩を落とす。見知らぬ他人ならともかく、世話になったこの人を殺すのは忍びない。忍びないが……

「(ああ、ヤダな。ニニコに確実に嫌われる)」



「ニニコちゃんとシーカ君じゃねえか! こんなとこに車止められちゃ困るよ、どいたどいた!」

 絶叫のハワード部長。

「魔王城が火事らしいんだ! もうすぐ消防車と救急車が来るから、そこをどいてくれ!」


 ……?

 え????

 シーカはきょろきょろとハワードの顔をながめ返す。この人は……この人は……


 俺たちが何をしたのか知らない?



「おい、まだ来ねえのか消防は!! もう一度かけてみろ、署長を出せと言え!」 

 荒ぶるハワード。

 警備員たちに怒鳴りつける姿はゴリラのようだ。気の毒に、警備員たちはなにも悪くないのに謝っている。


「ぶ、ぶ、部長・さん!」

「部長さん! 私たち病院に行くところなの! 私もシーカもジェニファーも、火事で大ケガしちゃったのよ!」

 シーカもニニコも、ここぞと声をはりあげる。


 ハワードは―――

「なんだとぉおおおおおおおおおお! ホントだ、2人とも大ケガしてるじゃねえかああああああ! ちょっと待て、ジェニファーもだとおお!!」

 怒号。

 なにもそんなに叫ばなくても……いまごろ2人のケガに気付く。ついでに後部座席のジェニファーにも気づいた。横たわったまま、ぐったりと動かないではないか。

「ジェニファア―――!! 死んでるううううううううう!」


「死んで・ないよ!」

「死んでないわ! お、お願いだから黙って、耳が……病院に行くのに、アントニオさんに車を借りたの、はやく行かせて!」


「なんでそんな大事なことを先に言わねえんだ! おいゲートを開けろ! はやく行け!」

 ハワードの怒号が飛ぶ。

 警備員らはハイハイと、車止めのストッパーを下げた。そして対岸の検問にも連絡してくれているらしい。橋の向こう、反対側のゲートが開くのが見える。


 顔を見合わせるシーカとニニコ。

 ま、まさかこんな……こんなアホなくらい簡単に?

 ハワードが勘違いをしてくれたなんていう、くだらない理由で?

 命がけの脱出劇の締めくくりが、こんな結末で解決を迎えていいのだろうか。



   いいのだ。



「はやく、早く行くんだ! 病院の場所はわかるか!?」

 必死のハワード。 

 ダマすのがかわいそうになる。

「はやく行けええええええええええええええええ! 殺すぞおおおおおおおおおお!」

 また叫ぶ。


「はい、行きます! 病院行ってきます!」

「じゃ、じゃ、じゃ……」


 ブロロロ。

 ふたたび車は動き出した。橋を通りすぎ……対岸の検問所も抜けて……ブオオオオオオオオオオン!!

 アクセル全開で国道に向かう。


「ふふ、ふふふ。あははは、キャハハ!」

「あ・ははは・は・はは……」

 笑うニニコ。

 笑うシーカ。

 

 魔王城はもう、はるか後方。バックミラーにも映っていない。脱出成功、脱出に成功した!

「キャハハ! やった、やったあ!」 

「こ、こら! あ、あ、あぶな・あははは・はは!」

 シーカの腕にしがみつくニニコ。

 

 ……うれしいか?

 仲間を置いて逃げるのが、そんなに。


『うれしいか? 仲間を3人も置いて逃げるのが。クク……それでこそ人間よ』

 朽ち灯は笑う。

 クハクハ、クハクハ。


「ちがうもーん。マオちゃんがいるから、こっちの立場のほうが上よ。魔王城に来てよかったわ」

「あ、あ、あ、最高の・一日だった・な」

 笑う。

 

「ふにゃ」

 後部座席のジェニファーはまだ起きない。まさか死にはしないと思うが……たぶん。


『ああ、最高の一日だったな!』

 ゴキゲンの煙羅煙羅。

『これで魔王様は我のもの……我のものだ』

 

 SUVは走る。

 魔王を誘拐し、猛スピードで城から遠ざかる。どこへ行こうというのか、いまはどこでもいいさ。

 どこへでも―――



挿絵(By みてみん)



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] マオちゃんを誘拐してどうなるのか気になる展開 車の作画いいですね~
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