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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第20章「勝ち目もないラスボスを焼き捨てる主人公らへ」
175/248

第175話 「ウィ アー ヒューマン」



挿絵(By みてみん)




「アモロは、人間の身体機能を一時的に消せるんですって。ヤバくない?」



 ついに明かされたアモロの秘密。

 ニニコの言葉に、トラとフォックスは―――



「もう意味がわからん。フォックス、俺にもタバコくれ」

「あいよ」

 トラに煙草を差し出し、火をつけてあげるフォックス。


「……え? え??」

 目を丸めるニニコ。目の前で起こったことに、信じられない様子だ。


 トラが、フォックスにタメ(ぐち)……からの指図!?



「なんだ、お前ら。そ、そ、そういう・関係に・なったのか」

 ここでようやく、シーカが話に入った。

「おい・クリクリ。こいつら・出来てるのか?」


 クリクリに目を向ける。

 ……クリクリ?


 ため息をつくハムハム。

「アンタとは合いそうもないね……誰がクリクリなのさ」


 ぱん!

 手を打つフォックス。

「はいそれで! アモロの能力だけど、もうちょっと補足(ほそく)してくれ!」

 ちょっと照れてる。


「マジなの、2人とも……そう言えば、トラがフォックスのこと、オーナーじゃなくってフォックスって言ったわ」

 目を輝かせるニニコ。

「なんてエッチな関係になったの……!」

 

「なってるか! 続きを言え、ボケっ!」

 怒るフォックス。



「えー、アモロの能力ですが……」

 敬語になるニニコ。

「たとえば、(つめ)が伸びるのを一時的に止めたりできるそうです。ほかにも、しゃっくりを止めたりできます。以上です」



 沈黙。

 あー、沈黙。

 

「えーっと……それ、だけ?」

「なんじゃそら?? なんの役に立つんだよ」

 トラもフォックスも(あき)れ顔だ。

 最後のアイテムにしては、大したものじゃないらしい。


 だがニニコの演説は熱を増す。


「どうして? すごく便利じゃないの! 肉体の機能を消せるのよ。小麦アレルギーの人の、アレルギー反応を消すこともできるわ」

 興奮。

「フォックスだってそうでしょ。サバを食べたら、必ずジンマシンが出るじゃない。きっとアレルギーだわ。知ってるかしら、アレルギーっていうのは免疫(めんえき)機能の過剰反応が原因で起こるのよ」


「知っとるわ」

「知ってる知ってる」



「アモロなら、それも消してくれるわ。サバへの過剰反応を消してもらうの。フォックスも、もうブツブツが出る心配しないでサバが食べれるわよ」


「死んでもごめんだね。誰が食うか」

「いや……でも」

「なるほど、なるほどね」


 

 ……なるほど。

 納得するトラ、フォックス、ハムハム。



 たしかに。


 トラは、かつてテレビで見たホラー映画を思いだした。

 ナイフを持った怪人に追われたヒロインが、物陰に隠れるシーン。物音ひとつ立ててはいけない状況……にも関わらず、ヒロインは足もとにいた毛虫に驚いて悲鳴をあげてしまう。そしてメッタ刺しにされてしまった。


 トラはその演出を見た瞬間、あまりのアホな展開にキレた。夜中にもかかわらず、脚本家を殺してやると叫びまくり、隣人に通報された。


 もしもそのヒロインが、声をアモロで封印していれば? 

 殺されずに済んだかもしれない。


 自分でも制御できない反射運動や疲労感、中毒症やアレルギーを消すことが出来る能力……いや、待って。



「いや、ちょっと待って。その能力でどうやって呪いを解くのさ」

 ハムハムが挙手。


「はい、とてもいい質問です」

 先生みたいなニニコ。

「そこなのよ。ロドニーもそれがわかんないって半ギレだったわ。アモロにはまだ秘密の能力があるのかも」

 

「わかんねーのかよ。それで? アモロのノルマは?」



「とてもいい質問だわ、トラ」

 先生みたいなニニコ。

「アモロのノルマは、3つの身体機能(・・・・・・・)を永遠に消すことよ。アモロに肉体の3つを(ささ)げるって感じかしら」



 ぞっ。


 全員の顔がこわばる。

 いや、青ざめる。

 身の毛がよだつ(・・・)ようなノルマ……


「おっかねえ……なんちゅう代物だ。マジの呪いじゃねえか」

「なんつうの。アタシは籠手で、まだよかったぜ」

「怖すぎるよ。下手なホラーよりイカれてる……」


 

「どうして怖いの? 自分で自分の欠点を消せるのよ!? 私だったら消してほしいものが山ほどあるわ」

 興奮するニニコ。

「まずはワキの毛よ、ホントいらない。2つ目は……あ、そうだわ。ホクロもこれ以上いらない。それからペンダコもいらないわ。これで3つよ、余裕じゃない」


 

 全員が、なるほどと顔を見合わせる。


「え? いや、そんなんでいいのか? けど、たしかに……言われてみれば、人間なんていらない機能だらけだよな」

「そんなんだったらアタシだって。生えてこなくていい毛なんか3つ以上あんぞ。サバのアレルギーも、一応いらねえしな」

「そう考えるといいことづくめ(・・・・・・・)なのかな。本当にアレルギー反応まで消せるんなら、すごいよ」



挿絵(By みてみん)



「ね? これでまた宇宙服説に、一歩近づいたわ。宇宙にはどんなアレルゲンがあるかわかんないもの。フフン」

 なぜか威張(いば)るニニコ。



 (まゆ)をしかめるトラとフォックス。

「は……ハァ? なに言ってんだ、お前。なんだよ宇宙服って」

「まーたトンチンカンなこと言い出したぜ」

 


 ムッ、とするニニコ。

「なによ、また(・・)って! それもロドニーが言ってたのよ。鎧の正体はなんなのかって。それがね……」



 かくかくしかじか。

 

 ・ロドニーが鎧の正体を知るために、研究を続けていたこと。

 ・鎧の正体は、作業服だという結論に至ったこと。

 ・ヨロイは、宇宙からやってきたかもしれないということ。




「……」

「……」

「……」

 ぽかんと口を開きっぱなしの3人。

「……」

「なーんじゃ、そら」


「ものすごすぎる……なんて有りえないんだ」

 気が遠くなるハムハム。

「そのロドニーって博士の言うとおり、鎧は宇宙服なのかな。そんなの考えたこともなかったよ」


 誰が誰に()るともなしに、鎧の話へ。

 答えたのはニニコだ。


「でも、ロドニーはこうも言ってたわ。宇宙服のはずがないって」

 

 ムッ?

 首をかしげるハムハム。

「どっちなのさ。宇宙服かもって言い出したのは、その博士なんだろ?」



「だって……ねえ、シーカ」

 ちょっと気まずそうな顔で、助けを求めるニニコ。

「鎧は、放射線も空気も素通(すどお)りするらしいの。宇宙服になんか、まったく使えないってロドニーが言ってたのよ」


「……ああ。言って・たな」

 足を組んで黙っていたシーカが、低い声をもらす。



 話に続いたのはトラ。


「その、なに? 空気だの放射能だのが素通りしちまったら、宇宙服としてはマズいのけ?」

 

「……」

「……」

 アホな質問に、フォックスもハムハムも頭を抱える。


「マズいに決まってんだろ」

「死んじゃうよ」


 そう。

 そんなスカスカの服で宇宙に出たら、確実に死ぬ。

 だが……



挿絵(By みてみん)



「そう考えるのは、俺たちが(・・・・)地球人だからじゃねえか?」



「前にテレビで見たぜ。なんか、放射能を浴びても平気な生き物がいるらしいじゃねえか。もちろん地球の生き物だぜ?」

 真面目な顔のトラ。

「ってことはだ。広い宇宙には、生身で宇宙遊泳とかできる宇宙人がいても、おかしくないんじゃねえか?」


「……ふむ」

「……」

「……それで?」



「べつに? もしもそういうスーパー星人が、この鎧を作ったとしたらだ。放射能の遮断だの、気密性だのっていう発想自体が(・・・・・)まず出て来ねえと思ってよ。それなら耐久力だけのスーツになっても、おかしくないんじゃねーの?」

 珍しく饒舌(じょうぜつ)なトラ……



挿絵(By みてみん)



「なんの話だっけ? そうだ、SF話してる場合じゃねえ。ニニコ、その魔王軍ってのはどういう目的で動いてんだ?」


 

「えー……シーカ、どういう目的?」

 目が泳ぐニニコ。


「さあ・ね。どうせ・鎧を・結集して・悪だくみ・だろ」

 ギシ、足を組みなおすシーカ。



 フォックスがため息をつく。

「おいおいおい……まさか、連中の目的も知らずに仲間に入ったのか? あきれたぜ」


 じろりと(にら)むシーカ。

「お互い・さまだ。お前らも・ここにいる、だろ」


「ハァ? 今なんつった?」

 じろりと睨み返すトラ。



「ちょ、ちょっとシーカ」

「ちょ。ちょっとトラ」

 あたふたとなだめるニニコ、ハムハム。


 と―――



挿絵(By みてみん)



 ガチャン。


 また、ドアが開いた。



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] 宇宙人なら宇宙大丈夫なんじゃないの?はちょっと思ってましたね 〇リーザとか普通に宇宙空間大丈夫ですし
[一言] アイテムは宇宙人の鎧。 おお。これからトラたちは、宇宙戦争に巻き込まれていくんですな! >「アモロは「人間の身体機能を一時的に消すことができる」んですって」 「一時的に消す=後で元に戻る」…
[気になる点] >フォックスだってそうでしょ。  サバを食べたら、必ずジンマシンが出るじゃない~ そうだったんですね・・・ さば・としては申し訳ないと思うんですよ、ホント [一言] しかし~・・・…
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