表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第19章「年甲斐もないドリーマーを焼き捨てる懇親会へ」
166/249

第166話 「ヘウレーカ」



挿絵(By みてみん)



「ぬぅいいいい! もう限界……!」

 歯を食いしばるニニコ。


『がんばれ、それでも女か!』

 わめく煙羅煙羅。

 ぴぃんと張りつめたロープの中心で、ニニコに引っぱられている。

 

 ……煙羅煙羅をパチンコの玉にしようとしている。



「ふざけ、ふざっ、ふざけるな!!」

 ドガン!

 ドガンッ!

 ドガン!!

 独楽(どぐら)砲3連射!!

 

 だが、ニニコには届かない。


「ぐぅお……む・だ・だ!」

 シーカは立ちあがった。

 なんという根性……撃ち放たれた弾を3発とも粉砕した。そのたびに大衝撃が彼を襲う。だが今度は倒れない。

 ズバン!

 ズバ!

 ズバン!

 鉄球でも食らったみたいな衝撃。だが倒れない! だが……変な方向にシーカの腕は曲がった。顔を苦痛にゆがめ、汗だくで、それでも笑う。

「俺の・負けだ。肩・折れたぞ……」

 

「貴様、どけ! 見えん! どけ!!」

 絶叫。

 立ちあがったシーカのせいで、背後のニニコが見えない。


 ガコン!

 スライドする独楽(どぐら)。もう1発……撃つことは出来なかった。



「ひゃ……100問目の・答えは・わ、わかったか……?」

 ドサ。

 前のめりに倒れたシーカ。今度こそ倒れてしまった。



 ロドニーが、ようやくニニコの姿を捕らえた。

 だがそれも、ほんの一瞬だけ。



挿絵(By みてみん)



「もうダメ! 発射! ワーワー!」

 ニニコの手から、煙羅煙羅が離れた。


 次の瞬間、


   ロドニーは吹っ飛んでいた。

 

 

   ドガアアアアアアア!!

 

  「ぐぅえ!!」

 


 触手のボウガンから、煙羅煙羅が放たれた。

 まるでロケット弾!

 一直線にロドニーをブッ飛ばした。


 だが直撃はしていない。

 独楽(どぐら)だ。

 一瞬早く大バサミが閉じ、盾となった。

 (いな)

 煙羅煙羅をはさみ取った。


『おのれ……っ! 煙羅煙羅……なんだこの力は……!!』


 

『どうだ独楽(どぐら)よ。クロロプレンゴム(・・・・・・・・)投石(カタパルト)だぞ! すばらしい加速だ……!』

 楽しそうな煙羅煙羅。

 だがすぐに、恐ろしい声を漏らす。

『離せ、独楽(どぐら)。それともこのまま、ランデブーといくか!?』

 

 

 ドォオオオン!!

 


 空へ。

 上空、約40メートル。50メートル……ジェットの推進力で、ロドニーは空に舞い上がる。


「うおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 高い。

 高い高い高い!!

 今日2度目の飛翔。


 だが今度はコントロールできない。ものすごいG。体がちぎれるほどの速度―――


 地上がはっきり見える。

 買い占めた土地が、開発を任された土地が、全景が。


「は、ははは……」

 笑うロドニー。

 ……なにを笑う?

「は、はは……わ、私は……なにを笑ってるんだ? はは、わ、笑うしかないわ」


 圧力。

 独楽(どぐら)が空中分解しそうな圧力。内臓が圧迫される。レバーの操作などまったくできない。

 眼下に、ニニコとシーカが見える。

 なんという、なんという!


「は、はは……笑ってしまうね。な、なんて小さいんだ」


 ははは。

 下の2人も、私を見てそう思っているんだろうか。



挿絵(By みてみん)



 同じく、煙羅煙羅も笑う。

 興奮した笑い。

 爆笑!


『ハーハッハ、すばらしい! ()めてやるぞ、バスター・ロドニー! まったく貴様はすばらしい!』


『まさか、まさか鎧を改造する人間がいようとはな!! 独楽(どぐら)を使ったキャタピラ、感心したぞ! 目を奪われたわ!』


『あの機構があれば、どんな重い靴を(・・・・・・・)履いても(・・・・)自由に動ける……! 脚力などまったく(・・・・・・・・)関係なく(・・・・)、移動することができようて!』


『貴様はうわさ通りの天才だ! ハハハ! ほうびに生かしておいてやる。貴様は殺すにはもったいなすぎる、ハハハ!』


 爆笑。

 爆笑の煙羅煙羅。


 ロドニーの表情は、絶望に染まる。


「死ぬのか……死ぬのか、クソ」


 生かしておいてやるとか(わめ)いてるな、このロボット。


 ということはつまり、私は死ぬのか。

 死ぬのか、私は。

 ああ……こんな若くして死ぬのか。


 若くもないか、もう39だしな。

 いかんいかん。 

 こういう感覚のズレが、私が変わり者に見える元凶なんだ。

 最年少で教授になんぞなるもんだから、周りの同僚が年寄りばかりだから、自分がまだ若いように錯覚してしまう。

 私はもう39なんだ。


 待て。

 それでも死ぬにはまだ早すぎんか。

 やれやれだ。

 研究研究でこの歳まで来てしまった。


 あの少女くらいの子供がいても不思議じゃないわけだ。

 そんな子供に、してやられるとは。

 いや少女のほうはいい。

 あんな学のなさそうな若造にやられるとは。


 おまけに独楽(どぐら)の最後のクイズもわからん。

 女が3人いなければ出来ない、これなーんだ?

 知るか。

 なんだ、そりゃ……待て。


 まて、待て待て。

 待て。


 子ども?

 子ども……あ、わかった。



   ひ孫だ。



「わかった。ひ孫だ」

 空中のロドニーが、なんかつぶやいた。

「親、子、孫……ぜったいに、女が3人必要だ」


 回答。

 独楽(どぐら)のクイズの100問目、回答―――

 




挿絵(By みてみん)



 バアアアアアアアアン!!



『正解~! 100問達成だ……呪いは解かれた』 

 バァアン!! 

 バッラバラになる独楽(どぐら)

『お前を解放しよう……次が待ち遠しい……』

 

 空中で呪いは解かれた。

 


『な、なに!?』

 いきなり独楽(どぐら)が無くなって、煙羅煙羅はどっか遠くに飛んでいった。

『あ――――――……!!』

 

 まるでミサイル。一瞬で見えなくなってしまった。赤い噴射炎だけが、どこまでも空に続いている。

 さようなら煙羅煙羅(えんらえんら)


 

「な・に!?」

「なんてこと!」

 ニニコとシーカも地上で叫ぶ。

「あいつ……ク、クイズを・解きやがった!」

「呪いも解いちゃった……すごいわ」

 

 まったく煙羅煙羅の心配などしていない2人。

 それどころじゃない。

 ロドニーが落ちてくる。


 助けないと、確実に転落死するだろう―――だが、一緒に独楽(どぐら)のパーツも降ってくる。その数、おそらく数百個。


 呪いから解放された鎧がどうなるか。

 簡単である。

 次の犠牲者に憑りつくのみ。


 落下地点に行ってはならない……なんて理屈で、ニニコが動くものか!



「あああああああああ!」

 ダッシュ。

 ニニコは走る。


「ニニコ! だ、だ、やめ、しばくぞ!」

 倒れたままのシーカ。

 テンパリながら叫ぶ。

 

 ムダだ!

 ニニコが言うこと聞くものか!


「クロロプレンゴム発動! ワーワー!」

 バババババ!! 

 フトモモ……()白闇(しろやみ)から、12本の灰色の触手が飛びだした。


 灰色の触手が、周りのコンクリートや鉄材に巻きついて(あみ)を作った。まるでクモの巣―――

 まるでクッション。

 

 そして。


「だああああああああああ!」

 ロドニーはネットに着地した。

 


挿絵(By みてみん)



 びょん!

 ナイスキャッチ!

 びょーん!


「だあああああああああ!」

 トランポリンのごとく、ふたたびロドニーは宙に舞う。

 高い。

 今度は独楽(どぐら)すらない、生身の体。

「ひぃいいいいいい!」

 

 ズドォオオン!!

 数秒の滞空のあと、ロドニーは地面に激突した。


「グベァ! むぅ……か、か、カバン……私のカバン……」

 砂利(じゃり)の上に転がりながら、必死でうめく。

 アタッシュケース。

 アタッシュケースがどこかにいった……

「あれが、ないと……魔王から、金を……か、かね……」

 体が動かない。



「アッ、ロドニー! えらいことに……!」 

 ニニコの絶叫。


 

 次の瞬間!



『腰だ、腰がある……』

 バラバラバラ!

 無数の、独楽(どぐら)のパーツが降ってきた。

 ハチの群れのように。

 流星群のように。

『100問に答えろ……』


 バラバラバラバラ……!



「ギャ―――!!」

「うわ・わあ―――!!」

 逃げまどうニニコ。

 地べたで丸まるしかないシーカ。



挿絵(By みてみん)



「ど……ドグ、ラ……」

 土石雨のごとく降りそそぐブロック群に、ロドニーは手を伸ばす。

「わ、私を、捨てないで、くれ……」


 ロドニーの意識は、そこで途切れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] 独楽は今度誰につくのか。 もしやニニコ!? そして煙羅煙羅〜 いいやつだったよ( ̄^ ̄)ゞ
[一言] 独楽解放! そろそろアイテムは集束していくんですかね。 多数に取り付かれるほど強くなりそうではありますが。 >『腰だ、腰がある……』 人の腰に取り付くとか、考えてみると独楽は微妙にエロいで…
[良い点] へへへ! 待っていたぞケンシ○ウッ!(更新を) [一言] 毎回すげぇ展開ッスね。 いの一番に読みました。 いいや、作画の腕前に感心しきり。 そしてニニコさんの頭になんか当たってるしW …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ