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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第18章「なんの変哲もないバカンスを焼き捨てる打撃戦へ」
159/249

第159話 「ブランチ」



挿絵(By みてみん)



 保安官の口から出た言葉は……

「俺は、魔王軍さ。聞いたことないかい?」

 


「ま、まおうぐん…………魔王軍!?」

「うぇ!?」

 バッと顔を見合わせるニニコ&シーカ。

「ま、前に・どっかで・聞いたな」

「魔王軍って、あの……なんだっけ? レインショットが言ってたわよ!」

 

 そう。

 第91話 「NGワード」にて、レインショットがたしかに言っていた。


 困惑する2人。

 だが……それにもまして、煙羅煙羅の驚きようは(すご)かった。小さな体をガタガタと揺らし、声を震わせる。

『お、おおお、な、な、魔王……魔王だと……』

 

 いつも人間を小馬鹿にしている煙羅煙羅が、人間の言葉に動揺している。はじめてのことだ。


『な、なんと言った人間。魔王さまが……おられるのか、魔王さまがこの空港に……』

 ガタガタと震える。

『いや、ちがうな……感じない。魔王さまは、ここにはおられん……』



 かつてないほど取り乱す煙羅煙羅に、さすがにシーカもニニコも声をかけられない。


 沈黙を破ったのは、保安官。

「まず……俺のボスに電話をかけさせてくれ。君たちに、どうしても聞いてほしい話があるんだ」




 そこからは話が早かった。


 ていうか急展開だった。



「よーお、君たちが呪いの? イカスねぇ、よろしくヨロシク。俺はハワード・スティングレン! こう見えて部長やってまーす、ってな!」


 部下10数人を引き連れ、ハワードが派出所にやってきた。なんとうるさい男なのか……それが第一印象だった。彼の(ひき)いる集団のなかにジェニファーもいたが、この時はまだ、ともに行動することになるとは思わなかった。


「こんな(せま)いとこじゃロクに話も出来ねえ! まずはメシでも食いに行こうや」


 有無を言わせぬ強引さで、ハワードは2人を食事に誘う。向かったのは空港内の2階にある寿司屋だ。

 この国に来たらスシバーに行かなきゃ! というハワードに連れられ、ぞろぞろと総勢15人は移動する。もちろん煙羅煙羅も含めて。


 その間、ニニコは不安そうにキョロキョロとしていたが、シーカは薄ら笑いを浮かべていた。

「強い・ね」

 一団には、ケタ外れの実力者が含まれている。強い、なんてもんじゃないほどの実力者が。

「手合わせ・願いたいな」

 


挿絵(By みてみん)



 さて、寿司割烹……この国ではスシバーと言うのか? 

 店の座敷に通されてからは、ハワード部長によるプレゼン大会(・・・・・・)だった。


「俺たちは魔王さまの命令で動いてんだよね。13の " 神器 " を集めんのが俺たちの仕事でさァ」


 単刀直入すぎてよくわからない。

 その後、ハワードのスピーチは1時間も続いた。スシをつまみながら聞いた話を要約すると……


①ハワードたちは、魔王軍という組織に属している。

②魔王というのは鎧のひとつ。

③ハワードたちは、魔王の命令で神器を集めている。


④この国には、神器を持った男がいる。

⑤そいつの名前はバスター・ロドニー。

⑥ロドニーの神器は、独楽(どぐら)という。

⑦ロドニーをスカウトするために、ハワードら魔王軍はこの国に派遣された。


⑧しかしロドニーは、別件で逮捕されそうになっている。

⑨彼が国外逃亡しないよう、空港職員に部下をもぐりこませていた。

⑩そしたらニニコとシーカがやってきた。



「いや待て。なんで俺たちが・呪われてることを・知ってる?」

「ていうか、そもそも私たちのことをなんで知ってるの?」

 マグロとキスとイクラの合体寿司、もぐもぐ。



⑪言えない。

⑫君たちも、魔王軍に入ってくれたら教えるよ。



「その・魔王軍に・入ると・なんか・いいことあるのか?」

「お給料とか出るのかしら」

 ローストチキンをレタスで巻いた寿司、もぐもぐ。



⑬一生、生活の面倒は見る。

⑭そのうえで、警察に追われないよう新しい身分を用意する。



「どうしようかしら? 私わかんないわ」

「話が・急すぎるな」

 オクラの手巻き寿司、もぐもぐ。



『そこまでだ、人間ども!』

 煙羅煙羅の絶叫がスシ屋に(とどろ)く。

『おい、貴様……さっきから黙って聞いておればベラベラと……!』


 短い手を振りまわして煙羅煙羅は怒る。テーブルの上を歩いて、ハワードの眼前にやってきた。 

『ハワードとやら……魔王さまの手下と言ったな。なにか証拠を出してみよ。まるで信用できぬ!』


 大きな目を細めて、うるさい箱をじっと見つめるハワード。

「……失礼ながら。あなたは神器のひとつ、煙羅煙羅さんですかな? もしよろしければ、今から魔王さまに電話いたしましょうか?」


『なぬ!?』

 プシュー!

 赤い煙、プシュー。


「ブ―――!」

「ブ―――!」

 お茶を吹きだすニニコとシーカ。

「ゲホッ、ちょっと待って。魔王ってそんな気軽に話できるの?」

「ど、ど、どうも・調子が・狂うな」


 ガハハと笑うハワード。

「君たちのことは、とっくに魔王様に一報入れたよォ。ぜひ話がしたいってさ」

 ガッハッハ。


『おい、貴様! 本当だろうな……では魔王さまに電話してみよ!』

 ワーワー。

 早く早くと煙羅煙羅はせがむ。


 ハワードはもったいぶる様子もなく、カバンからタブレットを取り出した。差しこまれたイヤホンマイクを耳につけると、スイスイと太い指でなにやら操作をはじめた。

 

 そして―――



「あ、魔王様。スティングレンです。がはは! 話はつきましたよ」

 つながったらしい。

 ディスプレイにお辞儀するハワード。

「え? いやあ、お待たせしまして。ちょっとスシをつまみながら話してたもんですから。ええ、代わります」

 イヤホンのコードを抜き、タブレットを3人に向ける。


「それじゃ、感動のご対面~」


 

『魔王さま!?』

 大興奮の煙羅煙羅。



 と、タブレットから可愛い声が返ってきた。


《その声……本当に煙羅煙羅か》

 かわいい声。


「い!?」

「ななな・なな!?」


 シーカとニニコが顔を見合わせる。

 まさかこれ、これが魔王か?

 女の子!?


《私が魔王だよー》

 かわいい声。

《初めまして、2人とも。そして……655年ぶりだね、煙羅煙羅》


 学生服の女の子。

 どうやら車の中から通信しているらしい。



挿絵(By みてみん)



『魔王さま! 昔と変わらぬお姿……ご壮健(そうけん)でなにより』

 

 かしこまる煙羅煙羅に対し、魔王は……


《君は変わったな。なんか、ゆるキャラみたいだ》

 


「なんて残酷な言いかたを……」

「礼儀・知らずの・娘だな」

 ヒソヒソ。

「ねえ……本当に魔王なのかしら?」

「信じ・られないな」



『貴様ら、なんてことを!』

 プシュー!

 湯気を吹きだす煙羅煙羅。



《あれ? ちょっと待って煙羅煙羅……なんかネジのパーツ(・・・・・・)足りなくない(・・・・・・)?》


 と―――魔王は画面越しに、煙羅煙羅、シーカ、ニニコを見まわし、ポンと手を叩いた。ぐんとアップになった顔の不気味なことよ。


《ん……ああ、そういうことか。煙羅煙羅、君の一部が「真っ白闇」に吸収されてるのか》

《そっちの女の子が、真っ白闇の宿主だね。いけないな、なんでもかんでも食べちゃ》


《それにそっちのイケメン君。キミが「朽ち灯」と「煙羅煙羅」の宿主か……え、待って。なんで朽ち灯に、「足枷」と「焼き籠手」を含んでるんだ? ダメじゃないか》




挿絵(By みてみん)









挿絵(By みてみん)




 

挿絵(By みてみん)




 ……正解。


 いままでのストーリーで起こったすべてを、見ただけで言い当てた。不思議なことに、ニニコの " ()白闇(しろやみ) " はスカートに隠れて見えない。

 というかテーブルに隠れて、スカートすら見えないはず。


 つまり、ニニコの顔を見ただけで言い当てた。

 それもカメラ越しに。



「……このひと、本物の魔王だわ」

「め、め、めまいが・して・きたよ」

 濃いお茶をすする2人。

 ズズー。



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] この章は全体的にお腹空きますね(笑) 魔王様の絵は中々この作品では見たことない画風(?)で面白いです
[一言] ゆるキャラ(笑)。 私は「煙羅煙羅」の文字を見る度に、頭の中でブルーハーツのリ○ダリ○ダが流れます。 アイテム全部にそれぞれ自意識があるなら、合体(?)した後でモメそうですねえ。 トラの長…
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