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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第16章「行くあてもないゴーストを焼き捨てる列福の朝へ」
146/249

第146話 「コミカル」



 場面は再びバルコニーと、その階下―――



 一触即発の現場に、べつの男たちがやってきた。オスカーの部下たちだ。



「勇者どの、どこですか!」

「勇者どの! シルフィードどの!」

 

 デリック、ウェブナー、そしてイーグル。


 覚えてる?

 フォックスに恨みを持っていた、元警察のオスカー隊員。1階にやってきた平和維持軍を食い止めていた3人だ。

 彼らがここにいるということは、やはり平和維持軍は……


 シルフィードが少し笑顔になる。

 

「お疲れ様です。ルディ神父、亡くなったみたいですよ。いまは穢卑面(エヒメ)さんが死体を操縦してるみたいです」

 

『ケケケ、よろしくな……』

 


 歯を食いしばる3人。


「……ええ。ええ、知ってます。連絡がありましたから」 

「オスカー主任も死んじまいましたよ。いますぐ14階に行って、まだ息のあるやつを助けないと……クソッ!」

「急ごうぜ。さっさと(カタ)をつけようや」


 ジャギジャギジャギ!!

 腰のホルスターから銃を抜き、2階に向ける3人。

「バーベキューファイア……くたばれ」



「ヒッ!」

「ッ!!」

 ステフの悲鳴。フォックスが身構える。



 が―――



挿絵(By みてみん)



「やめてください」

 シルフィードの制止。

 同時に、彼らの手にあったオートマチック銃の銃身がすっぱりと切れた。


 カラン、カラン、カッ。

 地面に転がる、銃身の半分。

「うおっ!」

「……ッ!」


「やめてください、お願いです」

 シルフィードのジャケットが、一部だけ(おび)のようにほどけて宙に揺らいでいる。

 ジャケットの(そで)が変化し、鉄筒をぶった切ったらしい。



「……勇者どの」

 イーグルが赤鬼のような顔でシルフィードをにらむ。もはや、なんの殺傷力もなくなった銃の残骸をぎゅっと握りしめる。

「勇者どの、なんで邪魔されるんです。我々の任務はもう達成不可能だ。おまけに指揮官は戦死。部隊は潰滅(かいめつ)……あの女を生かしてはおけません。絶対に生かしておけない」


「ていうか、いま勇者どのが()っちゃってくださいよ。楽勝でしょう」

 同じく真剣に訴える、もっとも背の低いデリック。



「……いやです。僕には彼女は殺せません」

 シルフィードが困った顔を向ける。

「それに、僕が彼女に勝てるとは限りませんよ。いざ戦闘になったら、ここは火の海です」


『ケケケ! ケケケケケ!!』

 楽しそうな穢卑面(エヒメ)……


 

「ふぅ……おいバーベキューファイア!!」

 3人のなかでいちばん小柄(こがら)なデリックが、フォックスを見上げて叫ぶ。吐き捨てるように。

「受け取れ、クソアマ!!」


 ブンとなにかを2階へ放り投げた。


 なにを―――携帯電話だ。

 

   

 パシッ。 

 2つ折りケータイをつかみ取ったフォックスが悪態をつく。


「なんだこれ……って、これ! アタシのじゃねえか!」


 ケータイ。

 シルフィードからもらい、オスカー隊に押収された携帯電話だ。

 (第116話 「バー フェアリア」を参照のこと)



挿絵(By みてみん)



「黙って聞け! その中の電話帳に、パムズ製粉(・・・・・)って名前と番号が登録してある。見てみろ」

 吐き捨てるように指示するデリック。

 

「指図こいてんじゃねえ! アタシのケータイになにしやがった!」

 叫ぶフォックス。



 シルフィードが少しだけ笑う。

「元は僕のなんだけど……」


 イーグルとウェブナーが叫ぶ。

「おいデリック!」

「なに渡してんだよ!」


 だが、デリックはとても冷静だ。

 2人をじっと見すえる。

「俺達はまだ、オスカー主任の作戦下にある。最後まで主任のマニュアルを守れ」


  

「……チッ!」

「……くそっ! クソが!!」

 舌打ちして黙りこむウェブナー。 

 イーグルが銃の半身を投げ捨てた。 



「漫才をやめろってのがわかんねえのか、殺すぞ……」

 もうブチ切れのフォックス。

 あまりに意味不明な展開に、いいかげんガマンの限界らしい。ぐいと握りしめたケータイが、みしみしと音を立てる。

「ていうか、いまなんつった? 最後まで(・・・・)主任のマニュアルを守れ、だ? あのボサボサ頭のオッサン、くたばったのか? じゃあトラとハムハムは無事なわけか?」

 質問攻め。


 デリックは……すこし間をおいて、正直に答える。

「ああ、残念なことにな」


「なんでいま来たばっかで、そんなに事情にくわしいんだ? 盗聴してやがったのか!?」

 叫ぶフォックス。


 イーグルの激高。

「盗聴だあ!? ざけんな! 14階にいる瀕死(ひんし)の仲間が電話してきたんだよ、お前らを殺せってな!」

 

「ンなこた、どうでもいい!!」

 怒るウェブナー。

 まるでトリオコントだ。

命拾(いのちびろ)いしたな、バーベキューファイア! 必ずこっちから電話してやる。そいつは大事に持っとけ!」


 デリックのダミ声が響く。 

「バーベキューファイア、よく聞け。中央駅西口から、南に50メートルの製粉工場に行け。俺たちの協力者が経営してる会社だ、そこで隠れてろ。くれぐれも俺たち以外の捜査機関に見つかるようなマネすんなよ」


「イヤとは言わせねえぞ。神父がいなくなった今、もう俺たちにすがるしかねえのは分かってんよなあ!?」

 イーグルの脅迫。



 フォックスの答えは?

「やだね、そんなことはアタシが決めるんだ」



「どうやってこの国から出る気だい?」

 シルフィードがほほえむ。

「この国で孤立無援(こりつむえん)になったら、ほんとに死んじゃうよ。だから一緒においでよ」

 


「いや、駄目ですよ!」

「もう……いまはダメ!」

「道中で逃げられたらどうすんの!」

 オスカー隊からツッコミの嵐。


「カンペキに拘束できる条件が(ととの)うまで、バーベキューファイアの移送はムリですよ。いったん本国に戻って、チームを立て直さないと」

 冷静なウェブナー。

「さすがに俺達だけじゃ、もう作戦継続は無理ですね……」


 イーグルがふたたびフォックスに怒鳴る。

「お前に待ってんのは死刑台か、俺達の飼い犬になるかだ! この国で息をひそめて、よく考えとくんだな!」


 

 フォックスの答えは―――


「さっさと失せろ、さもねえと……」

 鬼のような顔で階下の5人をにらむ。



 さもないと(・・・・・)、どうなるというのか。その答えを知ることはできない。誰にもできない。



 だって―――



「ウルアアアア――――――!!」

 天から、獣のような雄叫(おたけ)び。

 

「ひ―――!!」

 と、少年の悲鳴。


 ザアアアアアアアアアア!!

 ビルの側壁を、雪山スキーのようにすべり降りてくる2人組がいる。猛スピードで滑走(かっそう)……ほとんど自由落下のようなスピードだ。

 コンクリの壁を(けず)りながら、



挿絵(By みてみん)



 トラがバルコニーに降りて来た。ハムハムをおんぶして。


 ズドォオオオオン!!

 ズドンズドン、ズドンズドン!


「参上ォオオオオオ!!」

「参上!」

 

 息ぴったりのバカとガキ……








挿絵(By みてみん)



sbnbさんからいただきました。

髪が金髪のフォックスですね。


……次章でやってみようかな。


えー、この章もあと一話で終わりです。

すまんルディ。

すまん咲き銛。

あんな風に殺すつもりはなかった。


そして、すまんオスカー。


おそろしいバケモノにしてしまった。




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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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