表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第2章「紛れもないジョークを焼き捨てる決意へ」
13/249

第13話 「エスケイプ」




「「 わ――――――――――――!! 」」


 部屋中を()めつくす無数のブロック……


 トラとフォックスの脳裏(のうり)に、かつての恐怖がよみがえる。呪いにかけられた、あの日の恐怖。

 錯乱(さくらん)状態になる2人。


「ひいい!」

「ぬわあ!!」

 悲鳴、悲鳴! 

 隠れるところなんかない!

 逃げるところなんかない!!


「ぎゃあ! ぎゃあ!」

「ギャ―――!」


「助けてオーナー! ウギャー、ひー!」

 パニックをおこしたフォックスが、トラを(たて)にする。あ、アタシだけは……


「アタシだけは! アタシだけは……!」

「ば、バカ! やめ! しがみつくんじゃねー!」

 暴れまくる男女。


 ブロックが(せま)る!!



「おるあ――――――!!」

 

 ドバァアアン!!

 ブロックをかき分け、玄関のドアを()りやぶるトラ!


 脱出―――走る、走る!

 表通りを全力で逃げる。

 

 その背にフォックスをおんぶして―――


 ……おんぶじゃなかった、フォックスが勝手にしがみついている。首に。


「オ、オエ……は、はなせ……降り……」

「ぎゃあああ! にゃああああ!!」

 夜の町に絶叫がとどろく。


「ば、バカ! 離せ、苦し……!」

「離すもんか、私を捨てないでオーナー!」 

 メイド服のスカートが、バタバタと音を立てて(まく)れる。パンツまる見え……そんな場合じゃない!


 ダダダダダダダ……!


 路地裏を走り抜け、入りくんだ裏通りへと向かう。超特急!


 あっち……いやこっちだ!

 はやく、はやく……!

 

 

  『待て……』


    『足がある……』


      『腕がある……』



 ザアアアアアアアアアアアアアアア!

 ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



挿絵(By みてみん) 



 (はち)の大群のように、ブロック軍団は2人を追う。トラの猛スピードに匹敵(ひってき)する速さだ!


 ギャリリリ!

 ガン!

 バリン!


 ガガガ……!


 せまい路地のあらゆる所へぶつかるブロック。壁に、道に、無数の傷が(きざ)まれる。まるで嵐―――



  『逃がさん……』


   『そうら、もう追いつくぞ……』



「うわー! うわー!! 追いつかれる! はよ走れ! ダッシュダッシュダッシュ!」

「だ、黙れ!!」

 死にもの(ぐる)いのフォックス。

 本当に死にそうなトラ。


 追いつかれてたまるか! 

 くっ、苦しい……


 カーブのたび、フォックスの体は遠心力で振りまわされる。そのたびトラの首は()めつけられた。

 さすがのトラも、人間ひとり背負(せお)って疾走したのではたまらない。だんだんスピードが落ちてきた。


「ぬうううううううううええ……!」 


 ドドドドドドドドドドドドドドドド……!

 それでもトラは走る! 

 全霊全速で走る! 

 死んでも止まるもんか!


 だが――――――



 ドガア!!



「ぶべ!」

「にゃあ!」

 ギャギャギャと角を曲がった先は……


 コンクリート! 

 コンクリートの壁だった!!


 顔面から突っこみ、壁に全身を(たた)きつけられた!


 たまらず(うずくま)って顔を押さえるトラ。

 滝のような鼻血……


「ボタボタ。ぐええええええええ!」

「コラ立てよ! バカじゃねえの! 何してらっしゃるの! カモーン!」


 トラの背中でメチャクチャに(あば)れるフォックス。降りたらどうなんだ。


「や、やがまじい! 言われなぐでも……うわあっ!」

 


 ぶわあ!!

 もと来た道いっぱいにブロック群が広がる。


 なんてこった、引きかえせない! 

 囲まれた……!



 ブワアアアアアアアアア!



『追いついたぞ……』


 『さあ! 1000万歩(ある)け……』


  『119軒に火をつけろ……』 



   ザアアアアアアアアアアアアアアア!



 どこにも逃げられない。

 右も左も、うしろも壁……絶体絶命!


 しかし!!



「とおおおおおおおおお!」

「ひゃあ!」


 上!!


 ドドドドドドドドドドドドドドォ!


 7メートルはあろうかという直角の壁を、なんと足だけで駆けあがるトラ。フォックスを背負(しょ)ってだ!

「にゃっ、に゛ゃん!」

 ふり落とされそうになったフォックスが悲鳴を()らす。



 ザアアアアア……!

 バラバラバラ、ガラガラガラ!!

 ブロックは竜巻のごとく、1本の柱となって2人を追う。

 

『マズいぞ……そろそろ限界だ』

『まずい。眠くなってきた』


 『これはまずい。もうすぐ追えなくなる』

  

『まずいな。じきに限界だ』


『まずい。はやく憑依(ひょうい)せねば……』

『まずい……もうすぐ飛べなくなる』


 『まずいぞ、眠い……』



 ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

   


 ―――ビルの屋上。



「ぶわ! ハァ、ハァ……ぐ!」


 ずしゃ!

 なんとか屋根に飛び上がったトラだったが、ガックリと(ひざ)を落とした。

 ハァ、ハァ。


 も、もう限界……だがフォックスは容赦(ようしゃ)なく(わめ)き散らす。


「なにやってんだ! 立ち上がるんだ! このまま屋根伝いに逃げるんだ! 私を困らせるんじゃない! ワーワーワー!」

「降りろバカッ! ゲッ……!」



『つかまえた……』


 『間に合った……』

  

  『ギリギリだ……』


   『つかまえた……』


  

 ガシ、ガチ、ガチン……



「あ―――ッ」

「ギャ―― !」


 トラの足に、フォックスの右手に、ブロックが貼りついていく。2枚、7枚、16枚……数えきれない!


「わあああああああ!」

「ひゃあ!」


 2人に襲いかかるブロック群。


 これは……マズいぞ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ