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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第15章「息つく暇もないサスペンスを焼き捨てるわずか45分間へ」
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第129話 「スターズ&ベイ セントラルビルディング」



挿絵(By みてみん)



 機関銃弾を8~10発ほど食らったモーリス。

 詳細に書くと恐ろしいので、簡単に記述しよう。ちぎれ飛んで、コンテナ内に爆散した。ボンって。


「おぎゃあああ!」

 トラの悲鳴―――血を浴びる。口にも入った。いや、入ったって言っても、ほんのちょっとだけね。

「ぐええええええええ! オエエエエエエエエ!!」

 大げさなトラ。


 車体が大きく振動する。

 悲鳴はトレーラーの前方でも(とどろ)いていた。

「うわああ!」

「ハンドルを切れ、右に切れ! 切れってんだ……ぎゃあ!」

 

 トレーラーが急加速―――体当たりしてきやがった!

 

 ズドォォオオオオオオ!!


 とてつもない衝撃がつづく。追突された……いや止まらない! 100キロを超える速度で、1.4トンはあろうかという軍用ジープを押し続ける。 

 車内はもうパニックだった。

 屈強な軍人たちが、少女のように悲鳴をあげる。


「おいおいおい! 冗談だろオイ。ブレーキをかけろ、止めろ!」

「と、止まりません。ブレーキが利かな……た、助けて!」

「バカ野郎、ギアをバックに入れろ! 全速で……聞いてんのかボケッ!」


「だ、ダメだ! 脱出しろ!」

「飛び降りるんだ、飛び降りろクソッたれ!」

 屋根のない軍用ジープ。いまだに1人も車外に投げ出されていないのがミラクルだが、絶対そんな場合じゃない。

 ジープから脱出せねば。だが飛び降りるものは……いるわけないだろ。


「さっさと降りろ! いまだ、行け……なんで飛び降りねえんだ!」

「ふざけんな、死んじまうだろうが! 死んじまうよ!」

「ちくしょうが止まりやがれ、止まれこの……ぶっ殺すぞ!」


 トレーラーは止まらない。

 ステフは? 

 ステフはいま悶絶している。顔面を押さえて。


()ででで! ごああ!」

 

 女とは思えぬうめき声で叫ぶ。

 衝撃で開いたエアバッグ。ぱんぱんの風船にぶっ飛ばされ鼻を強打した。さらに舌まで噛んだ。耐えがたい激痛が2つ同時にステフを襲う。それでもアクセルから足を離さない。加速―――


 2台はそのまま直線距離をまっしぐら。激しい火花を散らしながら、突き当たりのガードレールに激突―――


   (いな)


 ガードレールを突き破った!!

 

 ドガンと轟音をたてて障害を突破……した先は、川。

 幅5メートルを超える川だ。


 

   飛ぶ。

 

 軍人、ステフ、トラを、無重力のような浮遊感が襲う。教会内に飛び散りまくるモーリスの肉。

 放物線を描く2台。仲よく大ジャンプ……



挿絵(By みてみん)



「ぎゃあ―――!」

「うわあ!」

「ひゃあ、死……」

 軍人たちが、つぎつぎと落下する。死―――いや、4名全員、川に転落した。

 ザバン!

 ザバン!!

 勢いよく水面に叩きつけられた。はたして無事だろうか。


 それどころじゃない。

 トレーラーと、無人になった軍用車はまだ空中。まるでCGのように川を飛び越え……

  

 向こう岸へ着地した。



 ドガアアアアアア!!!

 

「ぐわああああ!」←ステフ

「いやああああ!」←トラ


 ドガガガガガガガ!!


 先に着地したのは軍用ジープ。

 ワンバウンド!

 ドガガガガガガガガ!


 遅れてトレーラーがドガンと着地した! 

 窓が割れ、バンパー、ミラー、ドアも外れた。激しく上下に振動しながら、地面との衝突によって解体される車体。

 執念(しゅうねん)深い、と表現すべきだろうか。まだジープを押しているトレーラー。


 部品をまき散らしながら、まるでミニカーのようにすべり……2台は高層ビルに突っこんだ。

 壁をブチ抜き、巨大なホールに突入―――


 ドオオオオオオオオオオオオン!!



挿絵(By みてみん)



 星湾センタービルに突っこんだ。


 ビル全体に、とてつもない振動が起こる。


 ドオオオオオオン!!

 衝撃は30階建てのビルのすみずみまで走った。


  " 彼ら " の待つ、14階にも。



挿絵(By みてみん)



 ドオオオオオン……


「うわあっ! な、なんだ!?」

「な、なんだなんだ!?」


 とつぜんの揺れに驚くフォックスとハムハム。(おり)のなかで(あわ)てふためきながら、悲鳴をあげる。



 もちろんオスカー達も驚いていた。なんなんだ、この揺れは……!?


「な、なんなんだ? この揺れは!?」

「まさか、て、テロじゃねえだろうな」

「いや待て、こりゃ爆発……じゃねえぞ。みろ、もう(おさ)まっちまった」


 振動は、すぐに治まった。

 オスカーが叫ぶ!

「落ち着かないか! 1階だ、監視カメラの映像を出せ!」

 

「は、はい!」

 机のパソコンを操作するオスカーの部下。

 カタカタカタ……ものすごい早さでキーボードを操作し、1階の映像を映し出す。


 モニターの前に集まる男たちが叫んだ。


「な!」

「ゲッ!!」

「ウソだろ!?」



 映しだされた映像は……横たわる、原型を(とど)めていないトレーラーだった。


「ぎゃあ! なんだよこりゃ!」

「待て待て待て! これは……なに!?」

「おい、冗談じゃねえぞ!」

 わおわおと(あわ)てふためく男たち。


 オスカーがふたたび叫ぶ。

「取り乱すな! だれか3名、1階に行って見て来い!」

 

「は、はい!」

「行ってきます! おい急ぐぞ」

 3人の男が部屋を出ていった。イーグル、デリック、ウェブナーの3人が。

 


 けわしい顔のオスカーが、恐ろしい声でうなる。

「なんか……イヤな予感がするな。モーリスとクイックに連絡を取ってくれ。それから……」  

「ジョーイ。念のために1階のシャッターを下ろしてくれ。全部(・・)だ」



※ ※



 さて、1階―――


 ウィィイイイイイン……ガシャン。

 

 ガシャン。

 ガシャン、ガシャン。

 

 シャッターが下りていく。 

 鉄格子状のシャッターが、すべての入り口と窓を(ふさ)いでしまった。完全に外部と遮断(しゃだん)された。

 もちろん、トレーラーと軍用車が飛びこんだエントランスも。ガラスが粉砕された玄関も、鉄柵によって出入りを封じられた。



 その1階内部だが―――ムチャクチャだ。


 教会トレーラーは横転し、スクラップと呼ぶしかない有様……コンテナの教会部分は、床との摩擦でだろうか、筐体(きょうたい)の壁がめくれてしまっている。大穴―――


 トラとステフは生きているのだろうか?



 ……

 …………

 ………………



「マジに予定と全然ちげーよ! なんだって敵陣に飛びこんじゃったわけ!?」

「うるさいうるさい! 私だって好きでやったんじゃないわよ!」

  

 生きてました。



挿絵(By みてみん)



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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