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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第14章「かけがえもないパラダイスを焼き捨てる異邦人らへ」
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第117話 「マスト キル」



グアナ党(・・・・)。サントラクタ半島の、4か国分離を声明にしているテログループさ。って、トボけなくていいよ。警察機能の落ちこんだ都市に潜伏(せんぷく)するのは、彼らのいつもの手だしね」

 雄弁に語る勇者。

「で、この店がアジトのひとつだろ? 君もグアナ党(・・・・)のメンバーかい? こないだの爆弾テロの首謀者も、今夜来るのかな?」



挿絵(By みてみん)



 トランプに興じていた女たちが、いつの間にか全員こちらを見ている。いまにも刺し殺してきそうな目で。


 バーテンダーも同じ目を向けていた。

 その手にはアイスピック―――

「話にならねえ、悪酔(わるよ)いしてんのか? そのテロリストが、なんでこの店で集会すると思うんだ?」


「しらばっくれなくてもいいよ。こっちも、なんの情報もなしに来たわけじゃない。後ろの彼女たちは、グアナ党幹部たちの女かな?」


 にこにこと笑いを浮かべたままの勇者。

 カラカラカラ……グラスの氷が音を立てる。



 と―――



「ナメてんじゃねえデスよ、こんのクソアマ(・・)がデスよ」


 背後から、ムチャクチャな発音の女の声。



挿絵(By みてみん)



 グリーン。

 目が覚めるような(ミドリ)色の髪の女が、勇者のとなりにドカッと座った。その顔たるや、イレズミだらけ……やたらと面積の少ない、穴だらけのボンテージを着ている。

 なんちゅう特徴だらけの女だ。


メスイヌ(・・・・)め。余計なことにケツを(・・・)つっこむとどうなるか、教えてやるデスよ」

 

 ジャキン……女が勇者に銃を向けた。

 細い体に似合わない、とてつもなくゴツい銃。



「これは失礼。君がボスの女? どこの部族だい?」

 勇者はまったく動じない。

「なんていうか……僕はメスでもイヌでもないよ。そんなんで不法滞在がよくバレないね」


 女の表情がゆがむ。

「なんで、ミー(・・)が移民だとわかったデスか!? パパたち(・・・・)が来る前に殺してやんデスよ、ドロボウネコめ」

 

 パパたちが来るとか言う女。

 自供―――



「黙ってろキャロル! 頼むから黙れ!」

 叫ぶバーテンダー。

 

 いつの間にやら、ほかの女たちも勇者に銃を向けていた。

 それでも動じない勇者。

 ゆっくりゆっくり、最後までグラスの酒を飲みくだし……カタン。グラスをカウンターにそっと置いた。


「パパね……それ、だまされてるよ。現地妻(げんちづま)を作って内部工作をするのは、グアナ党の手口デスよ」


 勇者は、きわめて優しく語りかける。

 真剣に女を(さと)しているのか、単に(あお)っているのか。

 


 バーテンダーの声が震える。

 アイスピックを握る手も。

「……お前はなんなんだよ。サツじゃないよな? 連邦特捜局(DIF)か? 西州保安局(WGF)か?」

 

 なんか、よくわからない組織をうたがう。

 


「ちがうよ……僕はどこにも属してない、ただの個人だ」

 とつぜん、笑みを失う勇者の顔。つぶやくように否定し、うつろな目を浮かべて立ち上がった。

「この国を平和に導かなきゃいけないんだ……」 

 


「おい、動くんじゃねえ!」

「なに言ってんだ、コイツ……座れ!」

 口々に叫ぶ女たち。


 だが、勇者は……

「僕には、使命があるんだ。1945回、戦争を終わらせなければならないんだ。だから君たちみたいな反社会団体を、この世から根こそがなきゃ(・・・・・・・)いけないんだ」

 うつろな目。



挿絵(By みてみん)



「こーろさなくちゃ……♪」

 歌う。

 小さく歌う。 

 

 だが!


「こーろさ……うぐッ!」

 ぐっ。

 歌う勇者の口につっこまれる銃。


「黙れデスよ」

 銃を押しこむイレズミ女。

 ぐりぐり、ぐりぐり。銃身が半分以上、押しこまれる。

 

 信じられないかもしれないが、この状態でも勇者はまだ歌っている。

「おーおああうひゃ、うぐっ、おーろあにゃくちゃ……うぐうぐ」


 鉄を()む音がカチャカチャと鳴る。狂気―――女の人差し指が、引き金にかかった。


「そろそろ出すデスよ。全部飲めよ、シャチョーさん」

 

 女の射殺宣告。

 死―――


 



 次の瞬間のことは、ここに記載できない。

 マンガにもできない。




 勇者をのぞく、全員が死んだ。

 全員バラバラになった。

  


 もう一度。

 勇者をのぞく(・・・・・・)全員が死んだ(・・・・・・)



 血の海。

 血の海だ。

 天井、床、壁、真っ赤―――


「こーろさなくちゃ……♪」

 返り血にまみれる勇者。



 いったいなにが起こったのか?

 この説明は、先の展開をお待ちいただきたい。


 今日判明したことは、彼に課せられた使命。

 1945回、戦争を終わらせること。


 んで―――





  「うわあっ!!」

   悲鳴。

   悲鳴がした。


 店の入り口からだれか(・・・)の悲鳴が聞こえた。


 全身に返り血を浴びた勇者が、ゆっくりと目をやる。

 笑っているわけでもない。

 もう歌っていない。

 生気のない目―――


 吐きそうなほどの血の(にお)いが店内に立ちこめる。



「ひっ、ひっ……!」

 ツーブロックの大男が、入口の壁に寄りかかっていた。

「な、なんなんだよ、こりゃ……!!」



 とつぜん店にやってきて大騒ぎする男。いったい誰なのか―――勇者が男に近づく。


 血だまりを歩くたび、びちゃびちゃと足音が響いた。

 勇者の口から出た言葉は……


「君……ヒグマに似てるね。お仕事は? もしかして行政書士(・・・・)かい?」



挿絵(By みてみん)



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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