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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第14章「かけがえもないパラダイスを焼き捨てる異邦人らへ」
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第114話 「サーチ フォックス」

 


「私は帰りません!」

 強い、強いステフ。


「……」

 今度こそ黙りこむルディ。

 もう、なにも言わない。



「あー、終わった? お2人とも、いいレクチャーでした」

 めちゃくちゃダルそうに吐き捨てるトラ。

 ふたたびルディへ視線を向ける。

 (にら)むわけではない、普通に視線を向ける。


「本題に戻ろうぜ。いい加減決めてくれよ。フォックスにぜんぶ教えるのか? ていうか、フォックスにはどこまで(・・・・)教えてんのよ?」

 


「ぜんぶ教えたさ。ハムハムのことも、オスカーのことも伝えてある。教えていないのは、オスカーが()義肢(ぎし)を持って行ったことだけだ」

 まだすこし、声のトーンの小さいルディ。


 トラは語気を強めた。

「それ、フォックスに言うの? いつかは」


「言わないよ。少なくとも今はね。だが……とにかくフォックス君を呼び戻そう。電話してくれるかね?」

「いや、だからスマホ壊れてるんだって」

 

「あー……しまった。フォックス君を見続けておく(・・・・・・)べきだったな。心当たりはないかねトラくん、彼女の行き先に」


「逆だろ。さっきから言おうと思ってたんだけど、アンタはなんで知らねえんだ? 俺はてっきり、四六時中、アンタに監視されてるんだと思ってたよ」



 そう。

 第112話「キャットファイト」にて、フォックスも同じことを言ってたよね。

 はたして真相は―――?



「してないよ、そんなこと。本当に私は知らん」


 してないと主張する。

 ホントに?

 いや、まあ……信じるしかないけどさ。


 トラはどう思うだろうか?


「信じるよ。先生」


 信じるそうだ。

 ホントに?



「……」

「……」

 また沈黙―――


「……」

「……」

「……フォックスくん、いつ戻ってくるかな。ステフももう怒ってないのに」

 沈黙に耐えきれず、地雷を踏むルディ。


「ハア?」

 にらむ地雷、じゃないステフ。


 

 歩き出すトラ。

 どこへ―――ズシズシ。 

「雰囲気がギスってきたな。ちょっくら出かけてくんぜ」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! アンタまでどこ行く気よ!」

 あわてて止めるステフ。



「散歩ついでに、フォックスが近くにいないか見てくるわ」

 ギィイ。

 コンテナ教会の扉が開かれた。

 外はもう真っ暗だ。


「とりあえず近所は探してみるよ。じゃあ今日はこれで解散な」


 ズシズシズシ……バタン。

 さっさと出ていってしまった。



挿絵(By みてみん)



 礼拝堂に残されたルディ、ステフ。

 あと咲き銛も。


 重い沈黙のなか、ステフが椅子に蹴りを見舞う。

 ガンッ!

「なんなのアイツ……死ね!」

 ガン、ガン!


『同感です』

 ステフに同意する咲き銛。


 ガンッ、ガツッ、ガッ!!

 長椅子が凹むまで蹴りを連発したステフ。キッとルディをにらむと―――

「神父様、ちょっと行ってきます!」


「どこへかね?」

 

「あいつらを連れ戻すに決まってんでしょ! 懺悔(ざんげ)しかできない体に(・・・・・・・・)してやる……」


 鬼の形相で、礼拝堂を飛び出した。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

 場面は変わって、外―――公園。


 何百ものテントがぼんやりと明かりを照らしている。黄色や白のランタンが公園を埋めつくす。

 頭上には、満天の星。


 これが内戦地の光景なのか?

 美しい―――

 今この瞬間にも、次の爆弾テロが起こるかもしれないのに。しれないのに。


 そんなこととは全く関係なく、トラとステフ。

 夜の静寂を破るかのような男女の叫び声。


「誰が内緒になんかするかボケ! 全部フォックスにぶっちゃけてやる。どんな反応するかな、あー楽しみだぜ!」

 ギャンギャン()えるトラ。

 ぜんぶバラすとか言ってる。もうアホ……


「クソヤローが! そんな勝手なこと許さないわよ!」

 ギャンギャン()えるステフ。

 

「うるせえな、ついてくんなよ。俺はフォックスを探さなきゃなんねーんだからな」

「いまなんつった! やっぱフォックスの居場所知ってんじゃないの!」



挿絵(By みてみん)



 そのステフの顔を指さし、勝ち誇ったような汚い笑みを浮かべるトラ。


「あいにく知らねーよ。フォックスはどこだ(・・・・・・・・・)?」


「はあ?? 頭パッパラパー女の居場所なんか、私が知るわけ……」







   ズシン……



挿絵(By みてみん)



 トラの長靴が、勝手に歩き始めた。


 探索―――

 ズシン、ズシン、ズシン……


「久々だから感覚忘れちまったぜ。おお、楽だこと。じゃあステフ、バイバーイ」

 笑顔で手を振る。

 ズシンズシンズシン!

 どんどん行ってしまう。


 ズシン。

 ズシン。

 ズシン。

 

 

「まっま、ま待ちなさいよ! 待ってっての!」

 あとを追うステフ。

 


 夜の繁華街へ2人は向かう。

 フォックスを探しに、ズシズシと。

 あちこち爆弾で崩落した繁華街へ。


 活気もクソもない。

 内戦の爪あとを刻む、繁華を忘れた繁華街へ―――



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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