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光る闇  作者: よし
1/2

日常

『はぁー、、、、。』


深いため息を吐きながらソファに横たわる。

激しい喪失感と自己嫌悪で何もする気が起きない。


耳鳴りと服に染み付いたタバコの匂いが気持ちを更に苛立たせる。


『、、、ちっ、、くそっ、、。』


匂いと耳鳴りに耐えかねてソファから起き上がる。


とりあえず気持ちを落ち着かせよう。

このままでは自暴自棄になって何をするか自分でも分からない。


匂いの染み付いたTシャツを着替えると不思議と少し気分が和らいだ。

ようやく冷静に物事を考えることができそうだ。

今後のことを考えながら脱いだTシャツを脱衣所へと持っていく。

洗濯カゴに目をやると恐らくは1週間分以上あるであろう洗濯物が入っている。

今日は1日快晴だと朝のニュースでやっていた。

朝のうちにやっとけと今朝の自分に言ってやりたい。


流しにはいくつもの食器が乱雑に置かれている。

このところ自炊もせずコンビニ弁当やカップ麺ばかりだったので少しずつ溜まっていったのだろう。


『はぁー、、、、。』


深いため息と共に自分の置かれている状況と自分の行ったことの重大さを改めて思い知った。


『死んだらやり直せるのにな、、。』


こう考えるのは何度目だろう。


喪失感、罪悪感、絶望感、自己嫌悪。


いくつもの感情が大波のように押し寄せてくる。

それなのに何故か冷静でいられたのはこの状況が一度や二度のことではないからだろう。


服を着替え食器を洗い終えて再びソファに腰掛ける。

ふと携帯に目をやるとメールが届いている。


『おはよー!今日は何してるのー?』


彼女からのメールだった。


『おはよー。今日は家でのんびりしてるよー。』


普通のカップルの何気ないメールのやりとりなのだろう。

ただ僕にとってはこのやりとりが何よりも辛かった。


僕は彼女に嘘をついている。

いや、彼女だけではない。

家族にも友人にも、そして、自分にも。






僕はギャンブル依存症だ。

一昔前とは違い今は精神的な病気として認知され始めているらしい。

だが、病気だと割り切るには僕はあまりに多くのものを失ってしまった。


僕が依存してしまったのはパチンコ、パチスロ。

いわゆるパチンコ依存症だ。

派手な演出、大音量で流れる音楽。

そんなものに一喜一憂しながら何のためらいもなくお金を機械に入れていく。

まるでメモ用紙を使うように次々とお金を使う。

パチンコが好きなのか?と聞かれると少し違う気がする。

5000円が5万円になることがある。

1000円が10万円になることがある。

そんなことは滅多にないことなのだが、少なからず僕にも経験がある。

その時の強烈な記憶が僕を支配している。

僕が依存した理由はたった一つ。


”あの快感をもう一度味わいたい”



店の中には様々な様子の人がいる。

たくさんのドル箱を積み上げ満足そうにしている人。

腰を丸め前のめりになり画面にかじりつくようにハンドルを握りしめている人。

虚ろな目をして店内を徘徊する人。


僕はあの空間以上に欲望と狂気に満ちた空間を知らない。

いや、あれ以上の空間は無いのではないだろうか。

そう思えてしまう程にあの空間は異様なものだ。

だが、その空間こそが今の僕の日常となっていた。


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