第八話 既知との遭遇
奐泉との散手の後、要は『公会』の会員たちと夕食を食べることになった。
会員の中には、大酒店の料理長をやっている者もいた。彼の手によって極上の料理がふるまわれたのだ。要を含む全会員は大喜びでかじりついた。……ただし、響豊だけはリアクションを一切取らず淡々と食していたが。
満腹になった後、会員のほとんどが家へと帰った。今日ここに来たのは、要との顔合わせのためだそうだ。次の日にいよいよ行われる要の拝師式に再び顔を出すとのこと。
要、易宝、深嵐、奐泉、楊氏、そして響豊の計六人は四合院に泊まることとなった。四合院は、塀に囲われた広い敷地の中に大小多くの建物が寄り集まってできている。六人程度の宿泊など容易かった。
伝統建築というので、ロウソクや行燈で明かりを用意したりといった前時代的な生活を想像していたが、電気が通っているため電灯がきちんと設置されていて、水も通っており、おまけに冷暖房完備。伝統的景観が台無しな気がしないでもないが、現代的な生活ができるのはやはりありがたかった。暑い今の季節にエアコンは神器のごとしだ。
そうして一晩眠りにつき、あっという間に翌日となった。
お腹のあたりに妙な重みを感じて重いまぶたを開くと、奐泉が乗馬よろしく腹部へまたがり、要の顔を覗き込んでいた。
「……なにしてる?」
「寝顔を拝見させてもらっていましたの。すごく可愛でしたので、五十枚くらい写メっちゃいましたわ。うふふ、宝物にしますわね」
消せと要求した。
奐泉は「後で消しますわ」と頷きこそしたが、本当に消したのかどうか怪しいもんだ。ていうか、俺の寝顔なんか撮って何が楽しいんだ。
その後、昨夜に夕食をとったのと同じ場所で朝食を食べた。
そして要は現在、森の中を歩いていた。
四合院の周囲に茂る木々の一角から入り、五分くらい直進している。
不規則に、しかしたくさん生えた太い木々は、夏の顔をしていた。緑色の葉を枝中にもっさりと生やし、それらが折り重なり、天然の天蓋となって上空を遮っていた。
拝師式は、今日の午後から始まるため、それまでの間は暇になる。四合院にいてもやることがないので、要はこうして森をぶらついていた。
それほど入り組んではいないようなので、迷子になる心配もないだろう。
ひゅうぅ……と、奥からそよ風がやってくる。この広大な木陰の中で冷やされた空気がやさしく肌を撫でた。天然のクーラーだ。
ぱきり、ぱきり、と小枝を踏む"二人分"の足音。
「…………なぁ、どうしてついて来るよ?」
要は気疲れしたような口調で、自分のすぐ傍らを歩く少女を横目で見た。
後頭部のポニーテールを馬の尾よろしく揺らしながら歩を進めているその少女、馮奐泉。
彼女は要に話しかけられた途端に表情を明るくし、
「カナ様と一緒にお話とかしたいからですわ! それとも……ご迷惑ですか?」
「え? べ、別に迷惑ってことはないけどさ……」
不安げな上目使いで訊いてきた奐泉に、要は困ったように答えた。
迷惑ではないが、正直戸惑っている。
昨日と今日一緒にいて分かったが、奐泉は好奇心旺盛で、且つぐいぐいと攻めてくる猪突猛進タイプだ。そういったタイプにありがちな勢いのすさまじさに、要はすっかり気後れしていた。
そして、今もその例にもれることなく、押しかかってくるかのように質問してきた。
「そういえばどうでしたか、昨日の夕食は? あの料理長さんの作る煮豚、わたくし好きなんですの!」
「そ、そっか。俺はシュウマイが美味しかったかも」
「ところで昨日の夜中、霍師傅がどこかへ出かけられるのを見ましたの。一体どこへ行ったんでしょうね?」
「いや、分かんないなぁ……」
「あ、それから――」
奐泉はとにかく話題を思いついては、それを要へとぶつけてきた。
そんな彼女から、「何が何でも話そう」という執念のようなものが強く感じられた。
「あのさ、俺と話しててそんなに楽しいのか?」
「楽しいですわっ!」
即答。にっこりと笑いかけてきた。
「だって……ずっと会いたくてたまらなかった人と、こうして話せているんですから」
今いる日陰が全部なくなりそうなほど、明るい笑顔だった。
要は思わず、頬が熱くなった。話していて楽しいと言われて妙に気恥ずかしかったし、それに嬉しくもあった。
さらに、それに追い打ちをかけるがごとく、要の片手を奐泉の手が優しく包み込んできた。おそろしくすべすべで、なおかつひんやりとした感触が手を覆う。
要は思わず体を一瞬震わせた。
奐泉が足を止めた。それに同調し、要の足並みも静止。
「……二人っきり、ですわね…………」
しなだれかかるような、艶っぽい声。
――場の空気が、強い甘味を帯びたような気がした。
要はどういうわけか、妙に緊張してきた。
隣の少女がもたらす手の感触、体温、声、甘い匂い、そして息遣い。
それら全ての情報が相乗効果を生み、いつもとは違う類の緊張感を要に与えてくる。
鼓動のリズムがいつもより速い。なんだか落ち着かない。胸焼けしたような感じがする。
この繋がれた手を離さないと、何かとんでもないことが起きそうだ。そんな根拠に欠ける予感がした。
しかし、奐泉は逃がさないとばかりに手をぎゅっと握ってくる。ひんやりとしていたその手は、暖かくなっていた。
彼女の横顔をそっと見る。目元が緩み、頬が桜色に紅潮し、口元には微笑み。
沈黙が続く。
要はこの甘い息苦しさを持つ静寂を取り払いたかったが、その方法が思いつかなかった。いや、それ以前に、喉に蓋をされたように声が出ない。
が、その時、どこからか音が聞こえてきた。
パキパキと落ちた枝を踏むような音が、一定のリズムを保ったまま繰り返される。
……何かの足音のようだ。
要は鋭く首を振って周囲を見回す。熊などの野生動物かもしれないと思ったからだ。
今になって、ようやく現在地の情景に気が付いた。
真上を守ってくれていた枝葉の天蓋は無く、直射日光がひりひりと体に当たっている。
二人が立っていたのは、森のど真ん中に丸く開けた土地だった。隆起した太い根や地面の凸凹が目立つ今までの通り道とは違い、野草が芝生のような程よい長さで茂っている平面の地。その中央には、樹齢数百年は経っていそうな大樹が天高く伸びており、草むらという緑のキャンパスに自らの影を描いていた。
音源は、周囲を取り囲む森。そのうち一箇所の奥から繰り返しパキリ、パキリと響いてきていた。
しかも、その足音は徐々にこちらへ近づいていた。
とうとう乱立する木々の奥に人影が二つ見えた。長身の影と、背の低い影。
それら二影は足音と同じく、少しずつこちらへ接近してきていた。
日向との距離が近くなる。それにともない、二人を覆っていた影が下から上へ取り払われていく。隠されていた真の姿をさらけ出していく。
やがて、顔を覆っていた影までもがはぎ取られた。
「な――――!?」
その二人の顔を見た瞬間、要は心臓が飛び出そうなほどの衝撃を受けた。
「え…………?」
要が目を合わせていた少女――背の低い影だった人物――も、驚いたように声をもらした。
木々の奥から、冷えた横風が吹く。腰まで伸びた長い黒髪が滑らかになびいた。
その少女は何を隠そう――――倉橋菊子だった。
「キク…………だよな?」
要は今自分の目の前にある光景が信じられず、思わず訪ねてしまう。
「う、うん…………そう、です」
対し、菊子はもじもじとしながら答えた。
この内気な仕草は良く知っている。間違いなく本物だ。
そしてその隣にいる長身痩躯の美丈夫は、彼女の使用人である夏臨玉。しかしその恰好はいつもの白黒ツートーンな執事服ではなく、白い半袖ワイシャツにベージュのスラックスという親しみやすそうなものであった。
「ちょ、キク!? どうしてここに!?」
要はようやく現実を認めるや、我知らず声を荒げていた。
菊子は「えーっと……」と苦笑しながら二秒くらい思案し、返してきた。
「この辺りにわたし達の別荘があって、今そこに滞在してるんです。夏休み前にも説明したと思うんだけど……」
あ。そうだった。
そういえば菊子は、夏休み中は別荘に宿泊すると言っていた。確か、北京とテキサスにあって、それらを夏休みの日数半々ずつで使うとか。
彼女の恰好は、薄手の白い長袖ワイシャツに濃紺のデニムパンツ。この真夏でも袖の長いものを着こんでいるあたり、服装の奥ゆかしさは筋金入りだ。
「あ、夏さんもこんにちは。こんな所で会うとは、偶然だとしてもすごいっすね」
要の挨拶に、臨玉は不思議そうな顔をして言った。
「ああ、ごきげんよう工藤くん。ところで僕からも聞きたいのだが、どうして君はこの北京に――んっ?」
が、彼の視線が突然要から、隣に立つ奐泉へと移動する。
その眼差しを受けた奐泉もまた、ひどく驚いた様子で臨玉を見ていた。
「貴方はまさか…………夏師傅、ですの?」
「ああ。久しいね、奐泉。小学生の頃以来かな? ずいぶん大きくなったじゃないか」
「覚えていてくださって嬉しいですわ。お久しぶりです」
「紅老師は元気かい?」
「元気すぎるくらいですわ」
奐泉と臨玉は、親しげに言葉を交わす。
どう聞いても顔見知り同士の会話であった。
「え……奐泉、夏さんと知り合いなのか?」
「はい。昔、何度かお会いしたことがあるんです。カナ様こそ、彼とお知り合いだったのですね」
「まあ……いろいろ奇妙な縁があってさ」
「うふふっ。世の中とは広いようで狭いですわね」
そう言ってくすくすと笑う奐泉。
要は彼女の言葉に同意する一方、さもありなんとも思った。
臨玉も、奐泉の師である深嵐も、共に易宝と旧知の仲だ。その繋がりで面識があっても何ら不思議ではない。
「まあ、それはいいとして、話を戻そうか。工藤くんはどうして北京に?」
臨玉のその問いに対し、要はここまで来ることになった事情と経緯をかいつまんで説明した。
すると、彼は呆れたように、
「なんだ、まだ拝師の儀を終えていなかったのか。易宝は相変わらずいい加減だね。あんな男の弟子で、君も苦労しているだろう」
「あはは……なんでも「崩陣拳を学び始めた瞬間から、すでに拝師したも同然」らしいんで」
「まあ……間違ってはいないと思うが」
そんな風に三人で会話を盛り上げていた時だった。
「……あの、カナちゃん」
菊子が、弱弱しく声をかけてきた。
「あ、ああ、ごめん。キクの事ほったらかしてた。それで、なんだ?」
要は軽く謝りつつ、振り向いた。
――しかし、彼女の様子を見て、思わず絶句した。
目ごと顔の半分が前髪によって隠れているので、一見すると表情はうまく読み取れない。
けれど、要には分かる。今の菊子が、ひどく不安そうな、そして泣きそうな顔をしていることが。雰囲気でなんとなく。
「その隣の女の子は…………どなたですか……?」
さらに、前髪の裏にある目が見ている方向さえ、容易に読めた。
菊子の視線は――繋がれた要と奐泉の手に集中している。
それによって、要はようやく手を繋いでいたという事実を思い出した。
「い、いや違う、これは――」
よく分からないが、このまま手を繋ぎ続けるのはマズイ。そう直感を得たので、慌てて手を離そうとした。
だが、奐泉は離すどころか、さらにその腕に抱きついてきた。やわらかい感触が腕を包み込む。
「お、おいコラ! 何を――」
「初めまして、わたくし、馮奐泉と申します。以後お見知りおきを」
要の咎める声には全く耳を貸さぬまま、奐泉はやや強い語気で自己紹介をした。
「――――」
一方、菊子は何故だかこちらへ視線を固定させながら、魂が抜けたように呆然としていた。
しかし、根が真面目なのだろう。慌てて我に返り、自分も自己紹介をしようと試みた。
「え、えっと、わたしは――」
「ああ、わざわざ自己紹介するには及びませんわ。カナ様からお話は伺っていますもの。倉橋菊子様、でしょう? 確かカナ様のご学友なのだとか」
菊子の出鼻をくじきつつ、「カナ様」と「ご学友」をことさらに強調して言う奐泉。
彼女は顔に満面の笑みこそ浮かべているが、目が全く笑っていなかった。まるで長年の宿敵を見るような目である。
さらに彼女の発する妙な威圧感。それは槍のような尖った形を取り、視線の先に立つ菊子へ真っ直ぐ向けられているような気がした。
その迫力に、要は何も声をかけることができなかった。
突然言動が挑戦的になった奐泉に、混乱を禁じ得ない。どうしてこうなった。
「ていうか、いい加減離れたらどうだ」
「えー? わたくしの名前は「おい」なんかじゃありませんわよぉ? ほぉらぁ、いつもみたいに「奐泉」ってお呼びになって? カ・ナ・さ・ま」
奐泉は耳元まで顔を寄せ、甘えた声と態度でそう催促してくる。
甘い吐息が耳をくすぐり、要はどうしようもないくらいドギマギしてしまう。
「――――――――っ!!」
菊子が悲痛に息を呑む音が聞こえた。
何度も言うが、彼女の目は前髪のせいで外からは見えない。しかし要には、今その双眸が涙で潤んでいることがよく分かった!
手足も、まるで生まれたての小鹿のごとく痙攣をきたしている!
危機感を覚えた。
理由はまったく不明。しかし菊子が、今にも泣きそうになっている。
自分は誘拐事件の時、この娘を悲しませないと心に誓ったはずだ。しかし今、その誓いを破ろうとしている。
ヤバイ。本気でヤバイ。
どうにかしたいけど、どうすればいいのか全く思いつかない。何をやっても裏目に出そうで怖いのだ。
もうこうなったら神様でも仏様でもドラ○もんでも黄飛鴻でも誰でもいいから何とかしてくれ。
そう心の中で哀願していた時だった。
「――そこまでだ、奐泉。あまりお嬢様をからかうのはやめてくれないか」
不信心な要の祈りは、天に届いたようだった。世の中捨てたもんじゃない。
臨玉が、落ち着いた口調でたしなめたのだ。
そうだ。親愛なるお嬢様の危機に、彼が立ち上がらないはずがなかったではないか。
「……申し訳ありませんわ、夏師傅。少し調子に乗っていました」
「ん。君の気持ちも分からないでもないが、お嬢様は金箔のようにナイーブなのだから、もう少し手加減してあげて欲しい。これは保護者としてのお願いだ」
こくん、と黙ってうなずく奐泉。結構素直なのな。
菊子へ目を向ける。カカシのように呆然と立ち尽くしているものの、先ほどのように泣きそうにはなっていなかった。一安心である。
た、助かった…………。
「おっと、そういえば僕たちは薪を拾いに来たのだった。この草むらでは良いのが取れそうにないから、別の場所へ行くとするよ」
「分かりましたわ夏師傅。それではわたくし達も本部へ引き返すことにします。そろそろ式の準備が終わってそうですから」
「ああ。どうやら我々の別荘とはずいぶん近いみたいだからね、またすぐに会えるよ」
その会話によって、別々の道を行くことが決まったのだった。
「……工藤くん、君も罪な男だね」
別れ際に臨玉が放ってきたそのセリフの意味は、理解できなかった。
少なくとも――――この時は。
「………………」
木々の隙間の奥へと歩いていく要と奐泉の後ろ姿を、倉橋菊子は呆けたまま見送った。
きっと、今の自分はかなり間抜けな顔をしているだろう。
胸中に渦巻く感情。
危機感、焦燥感、嫉妬心。密度の濃いそれらが暴れている。
それらを生み出したのは他でもない。
要のそばにいたあのポニーテールの少女、馮奐泉の存在だ。
「……カナちゃん」
思わず、去っていく後ろ姿へ呼びかける。しかし蚊の鳴くような声は彼に届くことなく、空間に溶け消えた。
――その女の子とは、いったいどんな関係なの?
――カナちゃんは、その女の子のことをどう思ってるの?
そう聞きたかった。しかし、奐泉が彼の片腕に抱きついたことがあまりにショックで、質問を浴びせる余裕など皆無だった。
自分の秘めたる想いを悟られるのが怖かったこともある。
しかし、はっきりと理解できたことが一つだけあった。
あの女の子は、間違いなくカナちゃんの事が――
「あ…………」
やがて、要と奐泉は木々のさらに奥へ入り、後ろ姿さえ見えなくなった。
消えた後ろ姿に、思わず手が伸ばされる。
いったい、この手で何を掴もうとしているのか。
――こんな、臆病者の手で。
奐泉は、そんな自分とは正反対の少女だった。自分の想いを素直に表現し、それに恥じることがない。
要は彼女のスキンシップに「離れろ」と言ってこそいたが、強い口調ではなかった。まるで添え置くような発言だ。本当に嫌であれば、彼の性格上、遠慮なしに突っぱねるはず。そうしないということは、つまり、本気で嫌ではないことを意味している。
地味に危険な状態だ。嫌がっていないということはすなわち、これからいくらでも心が傾く余地があるということ。
その調子でいけば、奐泉は要とどんどん親密な関係になっていくだろう。
そして、果てには――
「……嫌っ」
頭に浮かんだ辛い未来予想図を、菊子は恐怖のあまり黒く塗りつぶした。
けれど、その可能性から目を背けてはいけない。十分にあり得ることなのだから。
まさしく青天の霹靂。前触れもなく現れた好敵手の存在に、菊子の心は嵐に巻き込まれた船のように揺れていた。
――自分は今まで、慢心していたのかもしれない。
自分と要は同じ学校に通う同級生。これから三年間、たくさん顔を合わせる機会がある。
別に秘めたままにしておいても大丈夫。何度も一緒に過ごしていれば、彼は遅かれ早かれ自分の想いに気づいてくれるだろう。
そして、いつか彼の方から自分の事を抱き寄せ、唇を奪ってくれるだろう。
そんな人任せな都合の良いストーリーを、心のどこかで過信していたのかもしれない。常に彼のそばにいれば叶う。そんな根拠に乏しい理由に甘えて。
しかし、奐泉という少女の出現によって、そのストーリーは夢想に過ぎないと思い知らされた。
それでもなお、夢想にしがみつくのか?
しがみついたまま、あの二人が結ばれる場面を遠くから見ているつもりか?
――否。
「…………わたしだって」
そう静かに、しかし力強く呟き、ポケットに手を突っ込んだ。
誘拐事件以来、菊子は右ポケットにお守りを必ず入れるようにしている。神社で売っているような普通の御守りに、菊子流の「おまじない」を加えたものを。
そのお守りをポケットの中で握りしめ、心中で祈った。
――どうか、わたしに勇気をください。
「……お嬢様? どこへ行かれるのですか? お嬢様!」
後ろから響いてくる臨玉の呼びかけを余所に、菊子は二人の消えた方向へ向けて足を進め始めたのだった。
読んで下さった皆様、ありがとうございます!
次回は、ようやく拝師式となります。




