第十七話 証明してやる
「うぅ…………っ」
要はコンクリートの上に仰向けに倒れながら、小さく呻きを上げた。
天井にぶら下がる、光を発さない電灯を見るともなく見ながら、打たれた部位を強く押さえている。
しかし、そんなことをしても意味がない。打撃による影響が出ているのは体内であって、体表面ではないのだから。
全身をかき回されているような感覚が今でも渦巻いていて、とんでもなく気持ち悪い。それに付随するように、全身が浮かび上がるような眩暈までする。
体がしきりに震え、寒気を訴える。
そんな自分の元へ、カツカツと足音が近づいて来る。
足元へ視線を移動させたことで、それは林のものだと気づいた。
「これで終わりだな、小僧」
要の脇腹の辺りで足を止めた林は、そうつまらなそうに言い捨てた。
「ざっ……けんなっ…………まだ……」
そう言いかけた瞬間、脇腹に鈍痛が走る。林の爪先だった。
要が小さくえづくのを聞いてから、林は再度言ってきた。
「少年漫画の主役にでもなったつもりかよ。根性見せりゃ勝てるって道理が通じるほど世の中甘くねぇんだ。お前は俺にやられて息も絶え絶えに寝そべってて、俺はそれを傍らで見下ろしている。明確な勝者と敗者の図の出来上がりってわけだ」
その言葉の後に、林は自分の体を何度も何度も踏み蹴ってきた。
腕、足、腹、顔面、無差別に次々と痛みが襲う。
「ったく、貴重な体力消費してまで相手したってのにこれかよ。一杯食わされた気分だぜ。クソが、人が一生懸命やってんのに退屈させやがってよぉ! 白けんだよ、カロリー返せこのタコがぁ!!」
ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ。容赦なく全身に降り注ぐ痛みのリズム。
要は呻く暇すら与えられず、痛みに耐えていた。
「やっ――やめてくださいっ!」
切羽詰ったような女の子の声。それとともに急く足音が近づいてきた。
林の足がピタリと上下往復を止める。
見ると、さっきまで壁の隅で立っていた菊子が、林の腕を懸命に引っ張っていた。
「もう工藤くんは何もできないんです、これ以上やる意味があるんですかっ!?」
見たこともないほどアグレッシブな菊子に内心驚きを見せたが、それどころではない。
馬鹿何やってる危ないぞ下がってろ――言いたい言葉が全て喉で止まってしまう。
「離せこのアマァ!!」
林は掴む手を力づくで振りほどくと、後ろへよろめく菊子の二の腕へ回し蹴りを叩き込んだ。
「えうっ……」
一瞬息を詰まらせると、その軽い体が蹴りの向かう方向へ大きく投げ出される。
菊子は横向きに倒れて停止すると、内から絞り出すような痛々しい咳を繰り返した。
――野郎。
それを見た瞬間――燃えるような衝動が脊髄を貫いた。
気がつくと重い体を無理矢理立たせて、よそ見をしている林の近くに歩み寄っていた。
そして、林が振り向くと同時にその胸ぐらを掴み、握り締めた拳を――勢いよくその顔面へ叩きつけた。
肉を裂き、骨を打ち据える感触。
技とは呼べない、粗末な攻撃。
しかし、狙い過たずヒットしたその一撃は――自分よりも大きな林の体を五メートルほどへ吹き飛ばすに至った。
「…………」
ジンジンと痛む拳を振り抜いた体勢のまま、要は呆然としていた。
林は、不意打ち同然に来た今の一発に驚いたかもしれない。
しかし自分は今――それ以上に驚愕していると自信を持って言える。
自分にはもう、技を使わずにこんな力を出す余力は残されていないはず――いや、たとえ余力があっても、この細腕の力のみでこれほどの飛距離を叩き出せるパンチが打てるとは到底思えない。
火事場の馬鹿力、というやつだろうか。それとも――
「――今のはなかなか戦略的だったぞ、小僧」
そこから先の思考は、聞こえてきた林の声によって打ち切られた。
「ビビったぜ……まだこんな力が残ってやがったとはなぁ…………だが、そうじゃなきゃ面白くねぇ」
唇を切ったのか、口の端からは血の筋が顎まで伸びていて、そこから同じ色の雫がぽたぽたと落下している。
だが当の本人は不敵に笑っていた。まるでその痛みすら愉しんでいるかのように。
そんな相手の様子に気を呑まれそうになるが、グッと肚を座らせる。
体勢を整え、『百戦不殆式』の構えで対した。
林は一層目を細め、歯を見せて嗤った。
「そうだ、それでいい。んじゃ、他流試合再開といこうか。少なくとも――昨日繁華街で半殺しにした連中よりは楽しませろよなァ、オイィ!!」
林は五メートルの間隔を、一息で三十センチ未満まで狭めた。
そして全身を襲いかかった壁のような圧力――肩によるタックルだ。
「面」を使った強力な一撃に、要は一瞬呼吸ができなくなり、『百戦不殆式』の構えごと弾き飛ばされた。
だが要は片足をつっかえ棒のように後ろへ伸ばして踏ん張り、靴底でコンクリートを擦りながら力づくで慣性を殺す。
前方を睨むと、すでに林の姿はそこにはなかった。
要は五感を研ぎ澄まし、自分のパーソナルスペース全体に気を配った。今度はどこから出てくる? 前? 後ろ? 右? 左?
「下だぜ――!!」
その叫びが轟くと、要の重心が痛みとともに崩れた。
足元を見る。林が深く屈曲させてしゃがみこんだ片足を支点に、もう片方の足をコンパスのように円周させ、だるま落としよろしく自分の踵を蹴り飛ばしていた――知っている。これは『前掃腿』という、深く腰を落としつつ敵の足を薙ぎ払う蹴り技だ。自分も一応使えるが、あまり得意ではない。
足を取られた要は、そのまま背中からコンクリートへ転倒。ケホッと一度咳き込む。
急いで起きなければと焦りながら目を開けると――目の前には影が濃く差した林の靴底が浮いていた。
そして、その像が一気に拡大して襲ってきた。
要はとっさの判断で両手を伸ばし、踏み下ろされた靴底をキャッチ。
ギリギリと腕にかかる重み。その向こうで林は自分を冷ややかに見下ろしていた。
要は負けじと押し返す。渾身の膂力は徐々にだが林の靴底を押し返していき、最後にもうひと踏ん張りで思い切りプッシュ。自分の手と林の靴が切り離された。
「うおっ……?」
ほんのかすかにだが、真後ろへたたらを踏んだ林。
その僅かな猶予を見逃さず、要は素早く起立。沈むように腰を落としてから、すかさず『開拳』を一直線に放――とうとした時だった。
「――――」
絶句する。
――世界が、揺らいだ。
まるで魂が抜けたような気持ち悪い虚脱感と、冷凍庫の中にいるような寒気の混じっただるさ――体が今までごまかし続けていた不調を思い出してしまった。
筋肉が勝手に緩み、自分の意思とは無関係に体勢が崩れる。
ダメだダメだダメだ今は倒れるな――前のめりに傾き続ける自身の五体へダメ押しに指令を送る。
その決死の思いが通じたのか、片足が一歩前へズズッと進み、踏ん張ってバランスを取ってくれた。
だがその時にはすでに――林の蹴り足がすぐ傍まで飛び出して来ていた。
「ぐはっ―――!!」
振り子よろしく繰り出された爪先がドスンッ、と要の土手っ腹へ直撃。
強烈な痛みとともに体内の空気が強制的に絞り出され、口内に苦い味が広がる。
幸いだったことといえば、バランスを取るのに腹筋も使ったことで腹が硬くなり、蹴りがそれほど深く突き刺さらなかったことくらいだろうか。
蹴りの衝撃の余波により、酔っ払いのようにおぼつかない足取りで後ろへ下がらされる要。
しかし、すでに林は目の前にはいなかった。
「――『麒麟頂肘』ッ!」
今度は真横から襲って来た肘打ちによって吹っ飛ばされる。
「オラァ!!」
今度は背中から蹴り。
前へ押し出される――と思った瞬間、服を掴まれてまた引っ張り戻された。
「死ねやぁ!!」
再び背筋へ叩き込まれたのは膝。
前へ回り込んで頬を殴打。
二の腕へ回し蹴り。
腹部へ肘。
拳。
膝。
肘。
頭。
あらゆる部位、あらゆる方法を用いて、痛々しい衝撃を四方八方から嫌というほど浴びせられる。
衝撃で吹っ飛ばされても、その向かう先へいち早く回り込んでそこからさらに衝撃を加える――それをムカつくほど何度も繰り返されるため、倒れることさえできなかった。
そして――
「くたばれ――『抜歩衝捶』!!」
巨岩が氷上を勢いよく滑って襲ってきたかのような衝突力を一点に浴びせられ、要の意識が飛びかける。
風に吹かれた羽根もかくやという勢いでコンクリート上を転がり、ガラクタの山の傍らへ放り出された。
要はあちこち痛む全身に鞭を打ち、立ち上がろうと踏ん張るが、筋肉がうまく言うとおりに動いてくれない。一度寝転がってしまったためか、体の力がだらりと抜けてしまったようだ。
足音が近づく。この無遠慮な足取りから、林のものだと考えるまでもなく分かった。
「ケッ、ようやくエンジンかかったかと思ったらこのザマか。ガッカリさせやがって」
林はドスッ、と自分の胴体を踏みつけ、侮蔑の眼差しで見下ろしてきた。
「だが分かったか? これが蓄積を行った者とそうでない者の差だ。より多くの蓄積をした者にのみ勝利の女神は擦り寄ってくる。そこに根性や精神論の出る幕はねぇ。ったく、こんな平和ボケしたバカガキが「鄭家の秘拳」をサークル感覚で学んでると思うと死ぬほどムカつくぜ」
「鄭家の……秘拳?」
聞き慣れない単語を、要は思わず復唱する。
そんな要を、林は世間知らずでも見るかのような目で捉え、
「まさかお前…………師から何も聞いてねぇのか? ハッ、おめでたいこった。こいつはいよいよもって豚に真珠ってやつだな」
「……なんだと?」
「十九世紀、還俗した少林寺の武僧、鄭煕陽が創始したとされる崩陣拳。この拳法――普通ならそう簡単に学べるシロモノじゃねぇのさ」
「簡単に……習えない?」
「崩陣拳はとある理由から、「革新的な武術」と武術社会で高く評価された。だが当の鄭煕陽は自らが作ったその強力な拳法に対し、それ以上に危機感を抱いた。だから鄭は崩陣拳の悪用を阻止すべく――ある伝承体制を敷いた」
林は人差し指を立てて、
「一人につき、持てる門弟は一人だけ。そしてその一人も徹底的に選り好みする――ただでさえ秘密主義な中華武芸の世界でも滅多にやらねぇ、非常に閉鎖的な伝承体制だ。そうやって崩陣拳はこの現代まで、そんな一本道状の家系図の連なりを作ってきたんだよ。そして小僧――お前はその家系図の末端に位置する存在だ」
要を真っ直ぐ指差した。
――崩陣拳に、そんな事情があったなんて。
「ついでに言うとテメェの師――劉易宝の名も、武術社会においてはビッグネームだ。圧倒的な功夫を誇り、あらゆる武人を寄せ付けない。おまけに奴は二十年前、巨大黒社会『三才門』の幹部の一人、戴英元を殺しかけている。ヤクザどもからは公安局以上に恐ろしい存在として扱われている、江湖きっての怪物だ」
さらに絶句した。
易宝がヘビーな人生を歩んできたことは要も知っている。だが、そこまで修羅な話は初耳だった。
だが、納得はすんなりとできた。何せ、「眼鏡王蛇」などと大仰な呼び名を持つ夏臨玉と長年喧嘩友達をやっているのだ。それと双璧を成すレベルの力と知名度があっても何ら不思議ではない。
「だがその劉易宝も――その二十年の間で随分衰えたみてぇだなぁ。なんせ、テメェの才覚の無さを初見の段階で見極められず、そのまま入門を許しちまったんだからよぉ。見る目が無くなったどころの話じゃねぇだろ、老眼にでもなったのか劉の馬鹿野郎は?」
「……黙れ」
「ああん?」
要は自分を踏みつける足を掴みながら、真上の林を全力で睨み、かすれた声で言い放った。
「俺の事は何とでも言え……でも、師父を悪く言ったら、マジでぶっ飛ばすぞ」
「今更強がったこと言ってんじゃねぇよこの死に損ないがっ!!」
林は掴んでた足を乱暴に引き抜くと、そのまま体のあちこちを何度も何度も踏みつけてきた。
一踏み一踏みが体を潰さんばかりに重い。今までで一番力の入った足踏みだ。明らかに負の感情が介在している。
「ああああ気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ!! なんでテメェみてぇカスが崩陣拳の系譜に名を連ねてやがんだぁ!? テメェなんざより俺の方が上手く乗りこなせる!! 崩陣拳っていうスーパーカーをよぉ!! クソッ! クソッ!! クソがぁ!!!」
何度も何度も、執拗に自分を踏む林。
次第に意識が遠のいていく。
このまどろみに身を委ねてしまえば、どんなに楽だろうか。
だが、不意に林の靴底の豪雨が止んだ。
自分が気を失ったのかと思ったが、しっかりと廃工場の一角で仰向けになっていることを認識できている――そもそも気絶したなら、そんな風に思考すらできないはずだ。
細く閉じかけたまぶたを開くと――
「――何の真似だ、小娘」
菊子が両手を広げ、自分を後ろに庇うように立っていた。
だが、彼女をそうさせたのは林への闘争心でないことは、震えるその両肩を見てすぐに分かった。
「お願いです…………もう、やめて……やめてください…………」
菊子はその肩と同じく戦慄いた声で、林に許しを請う。
「……どけ、殺すぞ」
「お願いします……これ以上はやめて…………死んじゃう……工藤くんが死んじゃうよぉぉ……!」
最後の方で、菊子の声は嗚咽へと変わる。その足の間に、輝く粒が幾つも落ちる。
要は我知らず拳を握り締めていた。
情けない。
「泣かせてんじゃねーよ」と啖呵を切っておきながら、今、自分が彼女を泣かせてしまっている。
その事実がたまらなく情けなく、そして悔しかった。
「やかましいっ!!」
林は苛立たしげに菊子の黒髪を掴むと、力任せに横へ放り投げた。
コンクリートに叩きつけられた拍子に菊子の髪が大きく動き、前髪に下にあった泣き顔が露わになる――それを見て、要はひどく胸が痛んだ。
「いちいちでしゃばんじゃねぇ人質風情が。大人しくして……ん?」
林は、表にさらされた菊子の美しい素顔を見て、唾を飲み込んだ。
そして彼女の元へ歩み寄り、その長い前髪をガッと乱暴に掴み上げて彼女の顔をじっくり眺めた。
嬲るような眼差しだった。
「おいおい……どんなスーブーかと思ったら、随分いい女じゃねぇかよ。流石金持ち、よっぽどいいモン食って育ったんだろうなぁ。元々、夏の野郎を苦しめるための計画だ。ただ普通に返すだけじゃ面白くねぇ。傷物にしてやってから返すってのも面白ぇかもしんねぇなぁ…………キッヒヒヒヒヒヒヒ!!」
それを聞いて、菊子の顔が真っ青になる。
「っ――貴様っ!!」
憤激に任せて要は立ち上がった。
体中が今でも痛いが、痛がっている場合じゃない。今コイツの前で寝ているわけにはいかない――!
要は震える手足を無理矢理酷使し、途中で少しよろけながらも『百戦不殆式』となる。
「…………まだ立つか。痩せ我慢もそこまで来れば大したもんだ。そうだ――いいこと思いついた」
林は菊子の髪から手を離すと、要を指差して言った。
「おい小僧。お前、気絶するか死ぬかするまで――そうやって立ち上がり続けろ」
「何っ……!?」
「お前がそうやって立ち続けてる限り、この女には何もしねぇ。だがもしお前が立てなくなったら――この女をとってもハッピーな目に遭わせてやるよ。どうだ、おもしれぇゲームだろ?」
「ひっ……」という菊子の小さな悲鳴。
「この野郎…………!!」
要はこれ以上ないくらい林を鋭く睥睨する。
だが、疲労が現れたことで、足元が一瞬よろめいてしまった。
マズイ。おそらくもう長くは持たない。きっと、次に膝をついたらもう起き上がれなくなってしまう。
「……まぁ、起き上がれなくなるまでそう時間はかからなそうだがよぉ。その時はよろしくな、お嬢ちゃん?」
菊子は答えない。全身の震えを激しくすることで、言外に恐怖を示した。
そんな彼女を見て、要はひどくやるせない気持ちになった。
今にも地に伏したい気分の自分とは裏腹に、林はまだまだ余裕を見せている。マトモに向かっていったら、一撃で寝かされるだろう。はっきり言って勝ち目は無いに等しい。
――これで、終わりなのか。
自分は、目の前の女の子一人助けられない、情けない奴なのか。
自分は、自分で偉そうに宣言した事一つ守れない、嘘つき君なのか。
自分は、そんな奴で終わりたいのか。
――絶対に嫌だ。
なら、どうすればいいってんだ――要は自分で自分に食ってかかる。
奴の動きは素早い上に隙がなく、偶然でもない限り自分の動きでは捕まえられない。おまけに、もうそんなことに労力を割ける体力的余裕も残されていない。
どう転んでも、この冷たいコンクリートの箱の中で絶望するのがオチだと思える。
もう、勝つ方法なんて。
――――一つだけ、あった。
自分が今まで学んだもの。
自分が今一番欲しいもの。
敵の長所。
今いる空間。
そして――直感。
それら全てを総合して考えを巡らせたことで、ある一つの「策」が生まれた。
この絶望的な戦況を打破するための、たった一つの突破口となるかもしれない「策」が。
しかし、成功するか分からない。失敗すればその時点で全てが終わる。そうなったら…………
――いや、弱気に考えたらダメだ。
今、俺の一番の望みは「倉橋とここを出ること」のはずだ。
それを叶えるには、この男をぶちのめさなければならない。
そして、それができるかもしれない「策」が、まだ一つだけ残っているのだ。
なら――やらなきゃいけない。
いや――――やってみせる。
ならば、逃げ道を作らないよう、はっきりと宣言しなければなるまい。
「――なぁ、倉橋」
要は普段通りに近い口調で、菊子に語りかける。
「は……はい……?」
「俺さ、言ったよな? 「俺は強いんだから、関係は壊れない」って、さ」
「……うん」
「でも俺、さっきからやられっ放しで、強そうな所全然見せられてなかった。ホントにごめん」
「そっ、そんな事」
「――だからさ」
要は菊子に視線を送った。
彼女の震えが先ほどよりもおさまり、表情が明るくなっているのは、はたして都合のいい見方だろうか。
「今からこの誘拐野郎をノックアウトして――今度こそ「俺は強いんだ」って証明してやる。関係が壊れる、なんてことは杞憂なんだって笑い飛ばしてやるよ」
説得力も、裏付けも何もない、人によっては無責任と取られてしまいそうな言葉。
だが菊子は、自分のそんな不確かな発言に、曇りのない表情で頷いてくれた。
「うんっ」と――――
読んで下さった皆様、ありがとうございます!
暑くなってまいりました。
アイスがないので、家では氷を口に含みながら過ごしてます。




