~裏第一話・ロギアの被害~
世間一般上、ロギアは危険物として認識されている
当たり前だ。一つの力で災害を引き起こす物も存在するのだ
危険だと思われるのが普通である。
この世界にはその様な危険物を回収、そして保管する組織が存在する
その名も『アンチ』
安全な場所と言う意味合いだ。
コンセプトはロギアを見つけ素早く捕獲、又は破壊である
ロギアを持つ者からは忌み嫌われ、一般人からは畏怖の視線を向けられている。
そして、そのアンチに所属する者
世界の安全を守る者が……
黒鉄「……」
此処に……
上司「お~い黒鉄。また昼寝か~?そろそろ僕もキレるぞ~?」
一人……?
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
黒鉄「zzzZZZ」
上司「コイツ、勤務時間に完全に寝てやがる……そりゃ、見つからなきゃ暇なのも分かるがな……」
爆睡している男、この男こそアンチでもっともロギアの回収数が多い男である
ただし、勤務態度は最悪と通り越して超最悪
外に出ていなければ昼寝しかしない
まさに給料泥棒である。
上司「は~……あいつに起こしてもらうか……」
しかも、起きた時の期限が悪いので特定の人物が起こさないと危険である
白銀「……起きて黒鉄」
上司に言われ黒鉄を起こしに来たのは12歳程度に見える少女だった
彼女は黒鉄を揺すり起こそうとする。
黒鉄「ん~……後、3億光年……」
白銀「……」
白銀の揺すり起こしに黒鉄は寝ぼけて変な返答をする
白銀は右手に持ったフルートを振り上げ、容赦なく黒鉄の頭に振り落とした。
-----ゴンッ-----
黒鉄「いってーー!?なんだゴラッ!」
白銀「……仕事」
黒鉄の逆ギレにその一言で白銀は返す
そしてそのまま部屋を出て行った。
黒鉄「仕事って……って、待てよ白!」
そう言い黒鉄も白銀の後を追っていく
上司「ん~……今日は平和な1日になりそうだね~」
部屋に残された上司、“ベイル・メッサリナ”は静かに呟いた
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
黒鉄と白銀はアンチの所持している飛行型ロギアである場所へ向かっていた
黒鉄「っで、ロギアが確認された場所は何処だって?」
白銀「……A-1486」
黒鉄「おいおい、そんな辺境でか? あったのは小さい村程度だろ?」
白銀「……その辺境の村で確認された。現在、11位と13位の戦闘員と戦闘中」
白銀の言葉に黒鉄が反応する
その顔は歪んでいた。
黒鉄「……村の被害状況は?」
白銀「……」
黒鉄「答えろ白。どうなんだ?」
白銀「……村は殆ど壊滅状態」
その言葉を聞いた瞬間、黒鉄は飛行型ロギアを操作している者に問う
黒鉄「後何分で村に辿り着く?!」
パイロット「後20分程度です」
黒鉄はその言葉を聞くと閉じられていたロギアのドアを開けた
パイロット「黒鉄さん!? 何をする気ですか?! 危険です!」
黒鉄「20分もちんたらしてたら村が完全に壊滅する! 俺が先行するからお前らは後から来い!」
そう言うと黒鉄は空に飛ぶロギアの中から外へと飛び出して行った
パイロット「無茶だ。このロギアは移動に特化している。いくらあの人でも……」
白銀「……貴方、新人?」
パイロットが黒鉄に悪態を吐いている傍ら、白銀がパイロットに問う
パイロット「へ? ええ。まだ入って3ヶ月ですが……」
白銀「……黒鉄を乗せた事は何回?」
パイロット「今回で5回目です」
白銀「……そう。なら、覚えておいて」
一呼吸置いて白銀は呟く様に言う
白銀「……黒鉄は万能ロギア。その中でも最上位の物を所持してる」
パイロット「へ?」
パイロットの呆けた声は虚しく空中へと霧散した
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
所変わって辺境の村
そこでは阿鼻叫喚な光景が繰り広げられていた。
???「ひ~はっは! どうだい、アンチ諸君。これが俺のロギアの力だ!」
職員A「くっそ。こんな強力なロギアを所持しているとは……」
職員B「まだ諦めるな! もう少しであの人達が来てくれる筈……」
そう職員Bが言った瞬間、職員Bの顔が燃え上がる
職員B「ぐぁああああ!!」
職員A「バン!? くっそ!」
職員Aは職員Bを引っ張り物陰に隠れ、職員Bの火を消火した
???「油断は厳禁だぜえ、アンチ諸君。この俺、ヒヒ様のロギアは視界の範囲で何処にでも火を点ける事が出来るんだからな!」
そう言いヒヒと言う男は手に持った酒瓶を呷る
そして職員達が隠れている物陰の角に火を点けた。
ヒヒ「ヒヒヒ、速く俺を倒さないとそいつも助からないぞ~」
職員A「っく、この外道が!」
職員Aが悪態を吐くが、ヒヒはそれを嗤って受け流す
-----ガタッ-----
その時、違う方向から物音が聞こえた
ヒヒ「ん~?もしかして、まだ村の生き残りが居たのか~?」
ヒヒが音の方向に目を向けると、燃えた家の中から這い出す様に少年が出てきている所だった
ヒヒ「おお!あの火事で生き残った者が居るとは! これは驚きだ! 正にウルトラハッピーって奴だ!」
嬉々としてヒヒは少年に近づいていく
少年はそんなヒヒに気がついたのか、背中を向けて逃げ出した。
ヒヒ「ん~? どうして逃げるんだ~? 酷いな~傷つくな~そんな子供は……」
職員A「! 止めろ!」
職員Aは気付き、静止の声をヒヒに掛ける
だが、もう遅い。ヒヒの視線は少年に向いていた。
ヒヒ「燃えちゃいな!」
瞬間、少年に特大の火が纏わりつく
その火は大きすぎて少年の姿を隠した
ヒヒ「ひ~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
職員A「そんな……」
職員Aは地面に膝を着く
あまりにも悲惨な光景に動けなかった。
ヒヒ「ひひひ。さて、そろそろ終わらせるとしますか」
職員A「くそっ!」
職員Aは相討ち覚悟で物陰から出て行こうとする
だが、その無謀な行為はヒヒの後ろから出てきた人物を見て抑えられた。
職員A「く、黒鉄さん!」
ヒヒ「ひひひ?」
黒鉄「よう、ギリギリ間に合ったみたいだな」
少年を腕に抱えて火の中に黒鉄は立っていた
少年には少しの火傷が見られるが、そこまで重症には見えない。
ヒヒ「ひひひ、やるな。まさか俺の火から逃れられるとは……」
黒鉄「よう。強そうなロギア持ってるじゃねえか。いったい何位だそりゃ?」
ヒヒ「ひひひ。知らないな~。計った事が無いからな~……だが、9位の奴を殺した事はあるぜ~」
黒鉄「それじゃあ、暫定8位って所か?まぁ、お前に計る機会はもうないけd……」
黒鉄の言葉をヒヒの出した火が遮る
職員A「黒鉄さん!」
ヒヒ「ひひひ。油断大t」
ヒヒの言葉は黒鉄の言葉に凍る
黒鉄「危ないじゃないか。危うく燃えるところだったぞ」
燃えた火は直ぐに消された
ヒヒはどうしてそうなったか分からない
ヒヒ「ひひひ? どうやった? お前、水を操るロギアでも持ってるのか?」
黒鉄「いや。そんなもんは持ってないぞ」
ただ。と黒鉄は続ける
黒鉄「俺は金属を操れる」
ヒヒ「金……属?」
ヒヒがそう呟いた瞬間、ヒヒの首に何かが絡み付いた
ヒヒ「ぐっ!?」
黒鉄「今時、金属をもってないってのは無いんだ。ベルトの留め金にしろ、お金にしろ、金属は持っている」
黒鉄はそう言いヒヒの後ろを指さす
ヒヒが後ろを見るとそこには黒い黒い何かが在った
ヒヒ「ひ!?」
黒鉄「何時もなら俺もここまでしないんだが……今日は特別だ。外道に天罰を加えなきゃいけないからな」
それは村から集められた金属だった
それはお金、鍋、包丁、在りとあらゆる金属がまるで怨念の様に集まっていた。
ヒヒ「た、助け……」
ヒヒは逃げようとするがそれも出来ない
まるで逃がさないとでも言ってるかの様に楔となって金属がヒヒの四肢を地面に縫い付けている。
ヒヒ「待ってくれ! 俺、改心するよ! 真人間になる! アンチに入って……」
黒鉄「すまんな。これはこの子の意思なんだ」
黒鉄はそう言い腕の中で眠る少年を見る
そして、笑いながらヒヒに言った。
黒鉄「だから……潔く死ね」
ヒヒ「嫌だ死にたくない! 嫌だもっと燃やしてたい。嫌だい嫌だいy」
-----グチャ-----
最後の言葉は黒の塊に飲み込まれた
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白銀「……それで、生き残りはその子だけ?」
黒鉄「……そうみたいだな」
その後、10分後に来た白銀達に黒鉄はそう言う
少年はベッドに眠っていた。
白銀「……その子も孤児院に入れるの?」
黒鉄「そうだな。それしかこの子に生きる道は無い」
壊滅した村を見て黒鉄はそう言う
村では後から来た職員達が死体を埋める作業をしていた。
白銀「……貴方のせいじゃない」
黒鉄「……分かってるよ」
黒鉄はそう言うと飛行型ロギアの中に入っていった
白銀「……貴方は何時も自分を責めるのね」
白銀はそう呟き笛を吹き始める
それは村に捧げる鎮魂歌だった……
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僕の村は僕を残して全員死んだ
あのロギアを持つ男に皆燃やされた。
母さん、父さん、お姉ちゃん、隣のおばさん、おじさん、幼馴染のちぃちゃん……
僕はロギアを許さない。人を殺す人を許さない
少女「ハルく~ん」
少年「何?」
少女「お菓子の時間! 黒のおじさんが送ってきてくれたの!」
少年「ホント! 今行く!」
今も僕は覚えている
燃やされそうになった時、僕を抱きしめてくれたあの人の腕を
黒く冷たい何かが僕を守ってくれた事を。
『もう大丈夫だ。後は俺に任せて君は眠ってな』
『悔しいよ……殺して、あの人を……殺して』
『……任せろ。必ずアイツは殺す。だから……』
僕、頑張るよ
頑張っておじさんみたいに強くなる。
そして何時か……
少女「は~や~く~」
少年「待ってよ~」
僕が皆を守るんだ
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黒鉄「……」
白銀「……何を見てるの?」
黒鉄「ん? 白か……イヤな、この子達は俺みたいにならないで欲しいなってな」
白銀「……そう」
白銀「……無理ね(ボソッ」
黒鉄「ん? 何か言ったか?」
白銀「……何でも無い」
黒鉄が見ていた写真には孤児院に住んでいる少年少女とその真ん中に座る黒鉄が写っていた