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Crimson-Reason.  作者: 霧.
プロローグ
1/5

葬式

初めまして、そしておはようございます、こんにちは、こんばんは。霧.です。

この小説は、2011年の夏休みに、無制限の小説コンクールに学校から提出する為に書いていたものです。 ※実際は、〆切前に完成せず、提出できませんでした。投稿日現在でも完成していませんので、悪しからず。

2012年の夏にも提出できると思いますが、それまで、頭の中の構想が持つか不安なので、こちらにアップします。

私自身としては、初の現代ファンタジー&サスペンス(?)ものなので、不安ですが、宜しくお願い致します。 ご質問・ご感想・蔑み(←)受け付けております。

 それでは。 by霧.@夢音魁裏

 残冬。まだ、桜や梅が、その花の蕾を枝に付ける前の、木に空から降り積もった雪が溶けきらない頃、一人の少女が、暗い箱の中で深い眠りについた。


 彼女の周りには、一人一本ずつの白い花を添え、彼女を美しく飾り、彼女に祈りを捧げて、その場から去っていく。まるで、全て白い花のみで造られた花畑から、白を強調させる為に間引かれる黒い花の様だ。そしてやがて、黒い花は、二輪ふたりの若い()だけになった。


 二人は、彼女を囲むように立つと、それぞれ渡された白い花を、彼女の周りに添えていく。茶髪に近い黒髪の少年は、彼女の左手の近くに、銀髪の少年は、右手の近くに花を添える。二人は添えた花から手を離すと、静かに祈りをささげ、その場から去っていった。


 扉が、どこか古めかしい音を響かせながら時が止まった様に、しかし、確実に閉じていく。扉が完全に閉まった、その数十秒後、部屋から、小さく燃えさかる音が聞こえた。

 その音を、少し離れた所で聞いていた二人は、焚火の音とも、ガスコンロとも、花火とも違う、飛行機に乗った時に聞こえる耳鳴りのような音を、身をすくめながら聞いていた。


ふと、銀髪の少年が顔を上げると、少し震えた声で言った。

 「なぁ、瑞樹。浅村 瑞樹(あさむらみずき)。何で……アイツは燃やされる?」

浅村瑞樹と呼ばれた茶髪に近い黒髪の少年は、両目を閉じて、答えを述べる。

 「……何度、言わせるんだよ、レナード。レナード・アウリオン。彼女は……高宮 唯(たかみやゆい)は死んだんだ。体を数ヶ所、刃物で刺されて。お前の故郷じゃ、土葬がセオリーなんだろうけど、この国じゃ、火葬がセオリーなんだ。燃やされるのは……仕方ないよ」

 「違う!」

瑞樹の答えに、レナード・アウリオンと呼ばれた銀髪の少年は、その答えを、力任せな声で否定した。

彼は、ぶら下がったままの右手を、瞳を覆い隠す様に顔に置く。

 「俺が聞いているのは、何で、唯が殺されなきゃ……死ななきゃならなかったか。だ!くだらない後日談なんか、ハナから考えてないからな…!」

そう言い放って彼は顔を潰す勢いで右手を強くしめる。

瑞樹の位置からでは、彼の表情はよく見えない。

だが、手の平からあぶれた、口の端と、指の隙間から見えるわずかな目の端しか見えないが、それだけでも、よく判る。


彼女を殺した犯人への怒りや憎しみ。そして、高宮唯という、大切な人を失った、悲しみと絶望。それら「負」の感情が、彼の中で渦巻いているのが、表情からも、彼の周りに張られた空気からも、それが痛いほどに伝わってくるのが分かった。しかし、だからといって、彼の問いに正確に答えてくれる人間など、この式場には居ない。いや、日本中、世界中を探しても、彼女を殺した張本人以外は、誰も答えられないのだ。人は仮説や予想を立てる事はできても、それを立証できる人は、僅かしか居ないのだから。彼は、それが理解できているからこそ、こんな複雑な感情が滲み出ているのだ。


ふと、彼は右手を顔から離すと、

 「なぁ、瑞樹。俺達の世界は、変わるんだろうか」

と、言った。瑞樹は一瞬、目を見開くと、落ち着かせるように言った。

 「そりゃ、少なからずは、変わるだろう。だけど、時間が経てば、いずれ忘れて、日常に変わるんだ。違うか?」

その言葉はまるで、自分自身を慰め、落ち着かせる言葉にも聞こえるが、実際、そうなのだろう。

彼もまた、大切な人を失った悲しみに、苛まれているのだ。そんな彼の答えにレナードは、

 「……そうだな」

ただ短く、まるで自分自身を納得させるかのように、静かにそう答えた。


 その、翌日のことである。

銀髪の少年、レナード・アウリオンが、行方不明となったのは。

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