表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第6章 才女は全てを見通す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/44

44.幸せが来て

 ラッセリア公国を巡る騒乱が終わり、ディルダは退位となった。

 表向きは重病による執務不可。真実はカリダード帝国によって退位させられたということなのだけど。

 数々の証拠とレオールの証言により、言い逃れは不可能だった。

 そして、退位になったディルダの次はどうなるのか……。

 私はそこまで考えていた。

 公国には良い跡継ぎがすでにいる。ルーインだ。

 騒乱が終わってから四日後、ラッセリア公国の王都で簡易ながら戴冠式が行われた。

 爽やかな秋晴れの中、公国の民衆も歓呼でルーインを出迎える。

 私とレオールももちろん参列していた。

 ルーインは王冠と式典用のマントを羽織っても臆さず、堂々としていた。

 王都の大広場でルーインは大々的に宣言する。

「ここにルーイン・ラッセリアはラッセリア公国の王位を継ぎ、民と国の為に邁進することを宣言する!」

 穏やかな秋風に紙吹雪がまかれ、風船が打ち上がる。

 王宮からは鐘の音が響いてきた。初代国王の愛した音だ。

 式典が進む中、レオールがこそっと聞いてきた。

「問題はなさそうか」

「ええ、前の王様が酷すぎたからね。貴族たちも従順よ」

 ディルダがレオールによって捕縛された後、抗議してきた公国貴族は極少数だった。

 それも忠義心だからではなく保身であって、ディルダが復帰する見込みがないとわかるやすぐに手のひらを返したんだけど。

 実務を担う官僚たちはディルダを嫌っていた。というわけでルーインの即位は大歓迎のようで、すんなり受け入れられた。

 オルドスの存在も大きい。

 彼が全面的に協力してくれるので、実務での混乱もほとんどなかった。

 彼は責任を感じているようだけど、それには及ばないと私は思う。

 ディルダの悪行を止めるには、このようなきっかけがなければいけなかった。

 民衆もまだ地方は飲み込めきれていないところもあるけれど、少しすれば落ち着くだろう。

 仕事をしない――むしろ悪いところしかなかった王が代わるのだから。

 式典の後、盛大な晩餐会では各国の大使が口々にルーインの即位を褒め称えていた。

 喜ばしいところではあるが、これは期待の裏返しでもある。

 晩餐会で私は軽く息を吐いた。

「魔獣の討伐を増やして、報いなくちゃね」

「俺のところからも兵を出そうか?」

「ありがとう。でもそこまでは大丈夫よ。ディルダの隠していた資金を放出すれば足りるはずだから」

 あのディルダは自分の楽しみのために相当な金を流用、プールしていた。

 詳細までは把握できていないが、結構な金額だ。でもこれを使えば立て直しが出来るだろう。

 晩餐会も暮れて、夜に星が輝く。

「………」

 レオールの緑の瞳に小さな星が映っていた。

「少し話そうか」

「ええ」

 どちらからということもなく、私たちはベランダのテラスに向かった。

 レオールはお喋りではなく、私も読書好きなので喋りまくるほうではない。

 だからだろうか。彼と一緒にいるのは楽だった。

 一緒にいて楽というのもどうかというが……忘れられるのだ。

 生まれた時からの責務とか。腹の探り合いのようなものを越えて。

 でなければあんなに手紙のやり取りをしていない。

 私の感性はレオールと不思議なほど一致している。

 例えば今のように。

「戴冠式が終わり、一段落だな」

「本当にね」

 この数日はろくに寝られないほどの激動だった。

 まぁ、王位を動かすのだから楽なわけはない。

 四方八方に報告と根回し、人事の連続だったのだ。

(幸い、ディルダも大人しいと言うし……)

 両腕を失ったディルダにはもう何もする術がない。

 拠り所となる腕と王位を失い――ディルダも諦めたようだ。

 ディルダは南方の隔離所で静かにしているという。

 メルダは実家の子爵家が責任を持って、残りの生涯厳しく幽閉するとか……北の山の貴族なので、それでまぁ充分だろう。

「ディルダのことを気に病む必要はない」

「レオール……」

 やっぱりバレていたか。

 確かに理性では必要なことだとわかっている。

 魔獣を操作できるなんて伝説上の能力だ。

 二度と使われないよう確実に処置しなければいけない。

 でも――使いようによってはとてつもなく有用な力でもあるはずだった。

「ディルダは良き王となる機会を何度も払いのけた。それに彼の兄も件も今となっては疑わしい。全てを明らかにしなければ」

「そうね……」

 ディルダの兄は魔獣と戦い、不慮の死を遂げた。あの時は驚天動地で何が起きているのかわからなかったが、もしかするとディルダが裏で魔獣を仕掛けたのかもしれない。

 時間が経っていることだけど、いずれはこれも結論が出るだろう。

 レオールから改めて言われて、私も少し肩の荷が下りた。

 いや、本当に……そうなのだ。ルーインが公国の王となった今日こそ区切りの日だった。

 最後にひとつ、レオールに確かめたいことがあった。

 勢いを出すためにぐっとワインを飲む。

 レオールはそこに佇んでいた。

 ディルダが退位したので、私は妃ではなくなった。元妃だ。

 だけど今もヴォルデの領主のまま。

 レオールと何をするにしても、障害は消えた。

(ルーインは私の好きなようにしていいと言っているけれど)

 今回の件では帝国に大きな借りを作った。

 ディルダのやらかしではあるが、借りは借りだ。

(バランス的には……)

 私がレオールと結ばれるなら、当面はヴォルデごと……ということになるのだろうか?

 それでも実務や住民感情的に問題はなさそうだけど。

 レオールの緑の髪が秋風に揺れる。

 精悍な彼の姿はずっと見ていても飽きない。けれどそろそろはっきりさせなくては。

「……私でいいの?」

「君がいい」

 レオールははっきりと言った。

 正直、レオールを信じてはいる。でも介入の口実程度ではないかとも不安であった。

「信じられないか?」

 そうではない、と口を開こうとして。レオールの腕が私を抱き寄せた。

「――っ!」

 温かくて大きなレオールの胸の中。

 見たことがないほど彼の身体と顔が近い。

「あっ……」

「昔の君は本好きの才女だった。その部分は変わらないが、今の君はより強く輝いている」

「私は、上手くやれているかしら」

「人には出来ることと出来ないことがある。君は最善を尽くしている。普通の人間なら、側妃に落とされたことで心が折れていただろう」

「……そうかもね」

「君の才覚と意志がヴォルデの民を奮起させ、この未来に繋げたんだ」

 レオールの手が私の顎に触れて、持ち上げる。彼の指がとても熱い。

 彼は私を見てくれている。私の努力と意志を尊重してくれる。

 それが嬉しかった。

「時間が必要というのなら、いくらでも待つ」

「……大丈夫」

 私は少しだけ背伸びをしてレオールの頭に手を回した。

 レオールは私に応えて、背を屈めてくれる。

「私はもう子どもじゃないし」

「ふふっ、そうだな。じゃあ何か望みはあるか?」

「うー……そうね……」

 公国はこれから良くなっていくだろう。良くしなければならない。

 ヴォルデもさらに盛り上げなくては。近隣諸国とも上手くやらないと。

 ああ、それでも……ひとつ絶対に欠かせないことがあった。

「落ち着いたら、あなたの屋敷で一日中ずっと本を読みあさりたいわ」

「あの書庫で?」

「ええ、座椅子で横になりながら。あなたと一緒にね」

 レオールが微笑んだ。

 彼は約束を守ってくれる男だ。

 だから私も自然と笑みがこぼれた。

 きっと未来は今よりも良くなるのだろう。

これにて第1部完結です!

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


何卒、よろしくお願いいたします!


またWEB投稿版に大幅加筆と挿絵を加えました書籍版がピッコマ様にて配信開始しております!

↓の表紙より飛べますので、どうぞよろしくお願いいたしますー!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです』書籍版は↓の画像から販売サイトに飛べます!!
どうぞよろしくお願いいたしますー!!
>  <a href=

gzod3wrbc20f6aqdnxk4pj0p6i_a6t_jg_sj_8hc4.jpg

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ