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9話 クールな女神様 セイレス

「改めて久しぶり。アリシャ、元気だった?」


 セイレスが少し暗めの照明を四つ灯し、部屋がぼんやりと明るくなる。


「何とか元気よ、この通りね。

 セイレスは少し明るくなった?」


「そうね。これでも外界と触れる機会が増えたから……。昔よりは人とよく話すようになったわ。さっきのお仕事も、その一環よ」


 給仕用の制服のまま帰ってきたことに違和感を覚えたが、セイレスがパチンと指を鳴らすと、身体が光に包まれて一瞬のうちにモコモコの暖かそうな部屋着へと服が変化した。

 まとめられていた青く艶やかな髪が下ろされ、少しだけ甘い香りがする。


 すごい! めちゃくちゃ便利な魔法だ。

 俺が目を輝かせて見ていると、セイレスが少し笑う。


「変身魔法の基礎ができると、こうやって服だけ自由に変えることが出来るようになるわ。

 よければ教えましょうか? アリシャの旦那様」


「いいのか!? いやぁ助かるわ。俺もこのフードが邪魔でさ」


 フードを取ろうと手で掴んだ瞬間、アリシャがガバッと俺の頭を両手で押し固めるように押さえつけている。

 結構本気で握り潰そうとするからかなり痛い。


 不満の眼差しでアリシャを睨むが、頭を叩かれて俺の抗議はシャットアウト。その顔はまるで般若だ。わかったわかった。そのまま被ってまーす。


 アリシャとクラリスは人間と外観が変わらないからだろうが、普通にフードをとってスッキリしている。ズルい。


 アリシャの焦りから察するに、魔族に強い恨みでもあるのだろうか……?


 最終的に自分の正体はいつか知られるだろうから、なるべく早い方がいいと思ったが、今は止めろと嫁ちゃんからの命令だ。

 ここは大人しく従っておこう。


 女神の二人が昔話に花を咲かせている。とても絵になるから眼福なこと、この上ない。

 俺が魔王に転生する前、女神達がいる世界での楽しい思い出。だが、次第に話題は先代魔王に殺されてしまった、初めての勇者の話題へと変わっていく。


 そういえばもう新しい勇者って生まれてるのかな?


「本当にやってくれたわよあの魔王は!

 今まで何度も倒されるのが宿命だったのに!

 歴代魔王の力と記憶を、全部引き継いで勇者が倒されてしまうなんて」


「ええ。まさかこちら側の勇者があそこまで強さを見せたというのに……。

 歴代の魔王の能力を掛け合わせてしまうなんて……」


 二人の女神はトラウマを思い出したのか、表情が暗い。ここでまた深掘りするのは少し気が引けたが、この際聞いておくとしよう。


「なぁ二人とも。三人で封印した魔王ってどれくらい強かったの? 責めるわけじゃないけど、クラリスは知らないみたいだし」


 クラリスが申し訳なさそうに何度も頭を下げるのを見て、苦笑いを返しながら二人の女神を見る。


 すると、二人はさらに表情が暗くなりながらも、アリシャが一言でインパクトのある言葉を返してくる。


「今のあなたの魔力を十倍にした魔力保有量よ。

 少なく見積もってもね」


 じゅっ……!! 十倍!?

 先代ってそんなに魔力持ってるの!?

 驚いて言葉が出ない。

 俺……どうやって勝つの??

 ごめんね、それは俺が考えることだね。


 今全軍で攻められたら間違いなくデットエンドじゃん。フォローを入れようとしたのか、セイレスが目線をこちらに寄越してくる。


「それでも魔王の十分の一まで迫ってる人間なんて、勇者を除いて聞いたことないわ。

 誇るべきよ」


 やっぱり俺をただ魔力の高い人間だと思っている。魔力が高いのは見てわかったらしいけど、正体までわかってくれたらかなり楽なんだけどな……。さて、どうしたものか。


「ありがとう。セイレス様」


「いいえ、事実を言ったまでですもの。

 それと『様』はいらないわ。アリシャのことは普通に呼んでいるでしょう?

 私は女神と契約とはいえ、アリシャと結婚したあなたのことをもっと知りたいわ」


「じゃあ、アリシャと初めて会った時の話でもする?」


「ぜひ」


 それから話したのは、もちろん俺が魔王の部分は伏せて話す。所々不自然になってしまうところがありながらも、最初は拒否されたこと。

 覚悟を示して、結婚を承諾してもらったことを話した。


「アリシャが結婚をした理由は何となくわかった。でもやっぱり信じられないものもある。

 あなたがなぜ人間の身でありながら、そこまで高い魔力を持っているのか。


 求心力が落ちて、魔力が減っていた女神を救えるほどの指輪を持っているのか。

 今の女神にとってとても都合が良くて……」


 それは間違いなく先代魔王が不要とした指輪の宝物と、俺のチートスキルのせいですね!

 どっちも言えないけど!

 返答に困っていると、アリシャが助け舟を出してくれた。


「私が召喚したのは、そんな都合の良い人間を狙ったからよ。奥さんがいなくて寂しかったんだって」


「それは確かにその通り!」


 俺がツッコミを入れると、セイレスが小さく笑う。和やかな雰囲気が場を包んだ。

 木製の椅子に座り、ゆっくりと揺られながらセイレスが俺をじっと見る。


 綺麗な顔立ちだなぁ……!

 さすが三女神の一人だ。嫁ちゃんと同じくらいに可愛い。というより美しい? という表現が正しいのかもしれない。


 アリシャよりは目線が少し鋭いが、中身はかなり穏やかなのかも。

 アリシャが妹とするなら、セイレスは二つか三つ年上のお姉さんといった感じだ。

 クールな女神様っぽいイメージがピッタリの外見と口調! とても良きかな。


 表情には出していないはずだが、魔力のパスが繋がっているからだろう。

 俺の心を敏感に察したアリシャが小さく


「変態……」


 と零した。

 うーん、確かに家庭を持つ男のやるべきことではないから反省しよう。と思った矢先、セイレスから予想できない提案が飛んでくる。


「あなたは三女神全員と契約結婚をして、私達を助けて魔王を討つのに協力してくれる。

 そういう理解でいい?」


「ああ、俺は本気でそう思ってる」


 フード越しではあるが、真っ直ぐにセイレスの目を見て覚悟を伝える。


「そう。なら、私とも結婚して欲しいわ」


「え、マジで?」


「ええ、本気よ。ただその前に、そのフードを取って顔をよく見せて。

 契約とはいえ結婚には変わりない。

 素顔がわからない旦那様は嫌だもの」


 うーん……

 うーーーん!!!

 ごもっとも過ぎて唸ることしかできなかった。

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