表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

5話 招かれざるお客様

「まだ魔王様は初期魔法しか使えません。

 私も同行を……!」


 俺は首を横に振り、優しくクラリスに微笑みかける。


「ありがとうクラリス。だが狙いは間違いなく俺。新しく転生したばかりで、まだ魔族から見たら弱い新生魔王を討ちに来たんだ。


 せっかくだ。ここで待っていようじゃないか。

 とびっきりのおもてなしってやつさ」


 アリシャが身体を伸ばしながら、剣を一本具現化する。


「私も戦おうかしら。グレイヴに勉強教えるのも飽きたし」


「うーん……。なぁクラリス。敵は出て行った先代魔王の一派だと思う?」


「はい。恐らくは」


「だよな。なら向こうから見たら、俺はまだ味方のいない孤独な魔王だと思ってる。

 そこにこの世界じゃ有名な三女神のアリシャがいたらどうなる?」


アリシャがさも当然のように口を挟んだ。

自己評価がしっかり出来てる。えらい。


「間違いなく警戒するでしょうね」


「そう! だからアリシャには隠れてもらおうと思うけど、本人的にはどう?」


「まぁいいわ、今回は折れてあげる。

 あなたのためじゃなく、私達三女神が再び先代魔王を封印するために。勘違いしないこと」


 ジャパニーズ、ツンデレ!

 やべー! 生ツンデレ!! ご馳走様です!

 誤魔化すように咳払いを一つ。

 大丈夫だ、今回はバレてない。


「理解ある奥さんで助かるよ」


「んなっ!」


 奥さん呼ばわりでぎゃいぎゃい騒いでいるアリシャは、クラリスに連れられて別室に案内されて消えていく。さらばだ。


 さて、もう一度状況を整理しておこう。

 俺が使える魔法は、魔族なら誰でも使えるであろう初期魔法。

 ファイアボール、ウォーターボール、サンダーショック、ウィンドカッターの四つ。

 そして練度の甘い身体強化魔法。


 くっそ弱い。

 もうホント涙が溢れるレベルで。


 それでも転生してすぐに初期魔法と、莫大な魔力が与えられているだけマシなのだが、もし今の状況で勇者に転生していたら……。

 考えるだけで恐ろしい。


 後はアリシャと結婚して手に入れたチートスキル、『代行者』による無機物の切断。

 しかし、まだ使ったことがないからアテにはできない。

 宝物庫にあった魔剣グラムもまだ手に持つことすら叶わない。


 ならばどうするか!

 そう! 答えは一つしかなかった。


 アリシャが別室で待機してから数十分の時が過ぎた。クラリスは俺の横でただ静かに立っている。

 俺はこの魔王っぽいところの玉座で、大きく足を組んで偉そうな姿勢で刺客を待っていた。


 なかなか来ないな……。

 早く来て欲しいんだけど。


 すると、頭上から黒い暗器が飛んでくる。

 死角からの一撃だが、そんな軽い物理攻撃が、俺には通じるはずもなく。

 ただ、少しだけ毒が塗られている可能性を考えて頼れるメイドの名を呼ぶ。


「クラリス」


 声を低く演出し、あえて聞いているであろう暗殺者にも聞こえる声量で短く呼ぶ。


「お任せください」


 一瞬で俺の横から姿を消し、そしてまた元の位置に戻る。

 手には三本の黒い短剣が握られ、あらぬ方向へ三度投げつけた。


 どこに投げているかはわからないが、テンポよく呻き声が聞こえてくる。


「流石だな。褒めてやろう」


「過分なお言葉。ありがたく頂戴いたします」


 今の一瞬でわかった。

 俺のメイド、多分めっちゃ強い。

 俺を見捨てないでくれてありがとう!


 あと、勝手に始めた魔王ムーブにもしっかりとついて来てくれている。いい子だわぁ……。


「魔王様」


「わかっている。サンダーショック」


 手を前にかざし、クラリスに当たらないように、何となくイメージしながら全方向に雷撃を放つ。

 地面が激しくスパークしながら、壁や柱へと伝播していき、バラバラと刺客が雨のように降ってきた。


 晴れ。ところにより刺客が魔王の玉座前に降り注ぐでしょう。


「流石です、魔王様。これで刺客は全て……」


「待て、そこにいるんだろう? 今の攻撃を寸前で躱した強き者よ」


 クラリスの表情に緊張が走る。

 内心ただの当てずっぽう。本当にいたら嫌だから声をかけるだけ。精一杯のブラフ。


 だが、今回に限ってはそのブラフが功を奏した。


「おや? よくわかりましたねぇ……?

 私の隠蔽は完璧のはずですが、流石は新しい魔王様です。いい目をお持ちですねぇ……」


 ゆっくりと影から現れてきたのは、黒い装束を着た中性的な声の主。

 ユラユラと脱力した手には短剣らしき物が二本。恐らくこれも即効性の毒が塗られているのだろう。


「よく来た。歓迎してやろう。

 だからお前に提案だ。

 私の軍門に下る気はないか? 待遇は約束してやろう」


 暗殺者は俺から放たれる圧力? を過分に感じ取り一本下がる。それでも顔にはひきつりながらも笑みを浮かべて拒絶した。


「ははっ……! 何をおっしゃるかと思えばアナタの軍門に下る? 笑わせないで頂きたい!

 誰が好きでアナタのような弱い魔王の下にかしずくのか!


 そんな酔狂者! そこのメイドをおいて他にいませんよ! フフハハハハハハ!」


 俺はちょっと面白くなって、暗殺者から視線を切ってクラリスを見て肩をすくめる。


 次の瞬間、再び暗殺者のリーダーと思われる者が姿を消しながら、俺の首を取るべく動く。


「魔王様!」


 クラリスが焦った様子で俺の下へと駆け寄ろうとする。


 狙っていたのは間違いなく心臓部だろう。

 他を斬っても多分身体が毒を自然分解する。


 半分は確信、半分は賭けで、手に魔力を全力で集中して強化魔法をかける。

 殺気にも似た気配の先端を握り込むと。


 やはりビンゴ。

 狙われたのはそこだった。

 そのまま強化された手で短剣を握り潰す。


「なっ……!? 私の不可視の一撃を受け止めるなど……!」


「その程度の実力で魔王を討つなど笑わせる!

 お前は一度刃向かった。提案を断った。

 ならば待っているのは、もちろんわかるよな?」


「ひっ!!」


 床へ完全に座り込んで、許しを乞う暗殺者のリーダー。

 完璧に決まった。これでクラリスからの評価はまた上がるはずだ。

 アリシャは……、まぁ入ってこないってことは安心して見ているのだろう。


 今はそれよりも、この戦意を完全になくした奴をどう処罰するか。俺が知ってる魔王なら間違いなく殺すところだけど……。


 どうしようね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ