17話 回復魔法を唱えたら痛いんだが
書いてあったのは『回復魔法』
できれば攻撃に多彩さがほしかったが、回復も立派な補助魔法だ。
試しに使ってみるか。ステータス画面にある魔法名を唱えてみる。
「ヒーリング。っ!? 痛った! は? え?」
めちゃくちゃ痛い。
全身の血管が一斉に千切れたような激痛が駆け巡る。
間違いなくダメージ負っている。自らのスキルに苦しめられるってなんだよ!?
セイレスを見ると、意外そうな表情をしながらも、どこか納得しているようだ。
「やっぱり女神の力を得て、魔王のあなたには逆にダメージになる魔法もあるのね。
ヒーリングは本来癒しの力。でも、女神の規模になるとその効果は呪いを弾いたりする破邪の力になるの。
今回クレイヴが痛みを感じたのはきっとそのせいだわ」
「じゃあ回復目的ではセイレスの力は使えないってことか」
わかりやすく落ち込んでいると、少し突き放した言葉が返ってきた。
「本来魔王と手を組む女神なんてありえないのだから、仕方ないじゃない」
渋々ステータス画面を閉じ、魔族にとって回復魔法がダメージに変わってしまうことに肩を落とした。
ダメなこともあると簡単に切り捨てるのはちょっと冷静すぎませんかね?
実質魔力を無条件で渡しているものだが、まぁ、セイレスが元気になるならいいか。
気持ちを切り替えて魔法の練習へと戻ろうとした時、アリシャが俺の肩をトントンと叩いてくる。
「なに?」
「あなた、剣はどこかで習っていたの?」
「いや、まったく」
「そう。よく幹部のジェラルドに勝てたわね。あの幹部は剣技でちょっと手強い魔族だったのよ」
「あれは正直アリシャからもらった無機物を斬れるスキルがなければ負けていた。
ジェラルドも俺のことを舐めていたからこそできた騙し討ちだな」
「あら、結構謙虚じゃない」
「そりゃそうさ。戦ってみて俺も死ぬ一歩手前だったからな。
全身甲冑を装備してあの速さは反則だレベルだよ」
アリシャは少し微笑みながら
「でもクレイヴは勝った。私はね、剣も強くなってほしいと思っている。
せっかく魔剣があるんだもの。強い武器は積極的に使うべきよ」
俺はうーんと考え込みながら、言葉を探す。
「ちなみに魔法が使えるようになった後の話だけど、敵に魔法を無効化してくる奴っていると思う?」
二人は顔を見合わせて、すぐに返事を返してくる。
「いるわ」 「恐らくは」
まさに前途多難だ。インチキだろそんなの!
剣が通用しない相手の対策に魔法を覚えようとしているのに、今度は魔法を封じてくる敵までいるときた。
「と、言わないと、魔法ばかりに頼りそうだし」
「嘘かよ!!」
思わずツッコんでしまう。だが、さすがアリシャ。
俺のことをよくわかっている。セイレスも同じ気持ちのようで、二人がちょっと恐ろしい……。
「魔法だけ仮に強くなったとしても、先代魔王はその上いく可能性が高いの。
あくまでも魔法はあなたの手段して持っていてほしい。
だから剣を使えるようになるのは賛成。それに……」
「まだあるの?」
「クラリスと戦った側近を回収しに来たギルバートが、勇者を退けたら相手になるって言ってたのよね?
なら直近は歴代勇者が全員持っていた対魔力の高さを考えれば、剣を鍛えた方がいい」
対魔力ぅ!? 魔法の効果から身を守るスキルか何かだろうが、厄介だな。
あぶねぇ……。勇者のパーティーメンバーに上級魔法の使い手がいるなら、中級魔法では太刀打ちができない。
確かに魔法一辺倒よりかは剣と魔法、両方が必要。
「聖剣もあるし、魔剣グラムと同等以上の力で来る。どっちかに割り切って伸ばすのは危険だわ」
やはり勇者とくれば聖剣を持っているのか。
どんどん俺の知っている勇者と魔王の関係になってきたな。
「ちなみに今の勇者の年齢っていくつ?」
「十七よ」
そろそろ旅を始めていてもおかしくない年齢だ。
マジで時間ないな。
転移ができないと仮定しても、一年以内にはここまで到着しそうだ。
魔王のアドバンテージがいつの間にかなくなってて、もう笑うしかない!
許さんぞ、俺を魔王に進めた神よ! 今度会ったらグーで殴りたい。
このままでは先代魔王どころか勇者に殺されて死だ。
「アリシャは剣を教えられるの?」
「もちろん教えられるわ! 勇者以上に強くなってもらうんだから」
ここで一つ、疑問が浮かぶ。
「でもさ、聞いていい?」
「なに?」
「魔王が勇者に勝つことに協力しちゃっていいの?」
「「あっ」」
やっぱり二人とも忘れていたな。魔王が勇者に勝つということは、勇者を殺すことと同じ意味を持つ。
人間サイドの女神が、それを許していいはずはないはずだ。




